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まず、最も最近の論文らしいのが、S. Esposito, R De Risi, L. Somma "Mpemba effect and phase transitions in the adiabatic cooling of water before freezing", Physica A 387(2008)757-763. とりあえずこれをとっかかりにしてみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
この論文では、クライオスタットを準備し、-8℃、-14℃、-22℃、-26℃にして、水の量を20cm3、50cm3、65cm3、80cm3と変えて、冷却曲線を繰り返し測定した。2回蒸留した水を用い、温度はNiCr-Ni熱電対で測定した。
(1)冷却開始温度の異なる20cm3の水では、クライオスタットの温度を-8℃にして冷却すると、過冷却が起きてから凍り始める。凍り始める時間は1800秒から5000秒(以上)にわたってばらついた。過冷却になるまでの時間は、冷却開始温度が高い方が長くかかるが、過冷却になった後では、いつ凍り始めるかは確率的に決まるため、どちらが先ともいえない状態であった。
(2)クライオスタットの温度を変えると、相転移に対応する(っぽい)曲線が平らになる領域が、6℃、3.5℃、1.3℃で見つかった。どれが見えやすいかは、クライオスタットの温度に依存して変わった。どの条件でも見えやすいのは3.5℃の転移であった。
(3)3つの相転移点で区切られる4つの温度領域で、冷却曲線の傾き(指数関数でフィッティングしているので、正確には時定数)が変わった。時定数を求めた結果、誤差が非常に大きいが、体積には無関係で、クライオスタットの温度と直線の関係にあることがわかった。
Mpemba effectとの関係。
Mpemba effectは確率的な現象である。
冷却開始時に適度な温度差がある場合、温度が下がって0℃に達するまでの時間は、温度がが高い方が長くかかる。しかし、その時間差は、熱の交換が温度差に比例するため、温度が高い方が冷却速度が大きい。
(論文では、冷却曲線の傾きが変わる温度があることと、その見えやすさが条件によることが書かれていた。)
(論文中の冷却曲線のグラフからから読み取れる内容:冷却速度の違いから、0℃になった頃には、さほど大きな時間差となって見えてこない。0℃以下の過冷却が実現する状態では、結晶成長の核がどのようにできるかが、かなり微妙で(容器表面や不純物に影響される)確率的であり、結晶ができ始める時間が長時間にわたってばらつくため、元の温度が高かった方で先に結晶が成長し始めることが実際に起こる。しかし、これはあくまでも確率的現象に過ぎない。)
その他、この論文に書かれていたこと。
○加熱すると水の構造が変わるといった話を書いた論文もあるが、注意して実験すれば、そのような考え方は適用できなくなる。
○もとのMpembaさんが見つけた現象は、水ではなく、アイスクリームを作っていた時の話である。
○日常で使う冷凍庫は、温度や圧力の変動があり、過冷却状態を安定して観測することは困難である。過冷却状態は準安定状態なので、温度や圧力の変化といった外的擾乱で、結晶(つまり氷)が出てきてしまう。
この実験が支持するのは、文献中に[4]で引用された、D. Auerbach, Amer. J. Phys. 63(1995)882である。また、6℃の相転移(?)は、K. Korera, T. Saito, T. Yamanaka, Phys. Lett. A 345 (2005)184に書かれている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の見解。
この論文の精度はそれなりに高そうなので、認めても構わないのではないか。実験の解釈にも、無理があるようには見えない。
家庭の冷凍庫でも、運が良ければ過冷却状態が実現することがあるので、「過冷却から結晶ができる過程が確率的である」ということにあてはまってしまい、Mpemba effectが見える可能性がある。さらに、試料の準備の際に、氷の核を作る種になるような不純物が紛れ込んだら、それで、凍り始める時間が変わってしまう。実験の準備に穴があればあるほど、何が影響して凍り始めの時間が決まるか、わけがわからなくなる一方に違いない。
この話のキモは、最初の温度差が適度なものであれば、0℃に達するまでの時間の差<<凍り始めるまでの時間のばらつき、が実現するというところにある。つまり、凍り始めるまでの時間のばらつきの方が圧倒的に大きいため、0℃になるまでの時間差の影響がそんなに見えないということである。
いずれにしても、Mpemba effectは常に起きる現象ではないし(むしろ一般家庭の冷凍庫では起こしづらいだろう)、温度の高いものを冷凍庫に入れたら冷やすために余分な電力が必要になることは明らかなので、Mpemba effectをあてにして温度の高いものを冷凍庫で氷にするということは全くお薦めできない。実験で使われたクライオスタットでも、試料部分の温度を一定に保つように制御するので、温度の高いものを入れたらその分だけ電力を要しているはずである(さすがに、投入電力までは論文に書いてないが^^;)。
確率的にしか起きない上に、繰り返し精密な実験が必要なので、演示実験の材料としては不適と考える。また、水の冷却過程の研究には役だっても、家庭での実用性は無いに等しいわけで、水の相転移や過冷却状態に興味のある研究者や技術者以外の一般の人に、ためしてガッテンのような番組で紹介するような話ではなかったのではないか。前提条件があまりにも入り組んでいる現象は、テレビで紹介する材料には不向きだろう。
これで、要らぬ誤解をして、温度の高いものを冷凍庫に入れる人が増えたら、その方がよろしくない。
確実にペットボトルで過冷却を見る方法もあるわけで(小中学校の理科実験で気軽に使えるセットが販売されていたはず)、水や氷の不思議を教えるなら、そちらを使った方が適切ではないか。
現在、1969年のMpembaさんの論文と、上記文献[4]を取り寄せているところである。
posted at 2008/07/23 18:23:54
lastupdate at 2008/08/15 14:10:31
さすがに、そんな古いバックナンバーは見つけ切れませんでしたが、適当に検索すると、
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この辺も参考になるのではないでしょうか。
1969年のはPhysics Educationという雑誌に出た論文です。アメリカの物理学会の物理教育誌。
その後、いくつかの論文がAm. J. Phys.に出ているので、3つばかり取り寄せ中です。
1つの説明としては、このエントリーで紹介したものになると思います。別エントリーで出ていた、制御系のオーバーシュートというのも、状況次第では発生するかもです。また、家庭の冷凍冷蔵庫で実験して再現を云々できるものでもなさそう。たまたま何度のものがどれだけ入っているかで、冷凍庫側で制御をしたときの温度変化が全く違ってきますので。
一見、気軽に実験できそうだけど、意味のある結果を出すための実験の難易度は実は相当高いし、道具もそろえてかからないと駄目だというのが、曲者かもしれません。
大槻義彦氏はこの効果にかなり懐疑的なようです。彼は物性屋でパリティ編集長(だった?)+一時は常温核融合にも比較的寛容だったかたですから、再現性がなさそうという直感があるのかもしれませんね。ただ、apj先生のように最新の論文にまでは目を通しはいないかもしれませんが・・・
ガッテンはたまたま見ていて、あわてて録画しました。
ハヤカワ「つかぬことを・・」で読んでいたのですが、ずいぶんと詳しいグラフが出てきたので、自分でも試さねばと・・。
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理科室の冷凍庫で、玩具のようなセンサで実験してみましたが、・・・結果がばらつく上に、条件が複雑すぎて^^;
「凍り始め→容器の外から中へ固化→全部固体になってさらに温度が下がる」のどの段階をもって「氷った」というのか?、水の質量は?、最初の温度は?、容器を密閉したときと解放したとき?、冷凍庫の容積と湿度?冷凍庫内の温度分布?・・・
結局、今は、時間を見つけて冷凍庫内の温度変化を測定して、その変動の大きさ(サーミスタで冷凍庫のスィッチがon/offされるらしく、のこぎりの歯のような上下10℃を越えるグラフになる上、1日に2回くらい霜取りかな、零度近くまで冷凍庫の気温が上がってる)に、どう実験すべきか途方に暮れていたところです。
秋には、自由研究の発表会。分会講師の予定なので、もしかしてムペンバ効果もでてくるかな?と期待していますが・・。(毎年、氷の研究は人気なのですが、他人の研究を検討した上での積み重ねじゃないので進歩がない・・)
もともとが確率的現象だとすると、再現性というよりは、実験条件を十分精密にしたときに何割、といった記述しかできなさそうです。
同じ温度の水で繰り返し凍結実験をやっても、凍り始めるまでの時間にばらつきがあるのが普通です。設定温度が低ければばらつきは押さえられますが、-20度くらいでは、多分まだばらつきがあるでしょう。
偶然に左右されて、凍り始める時間が逆転する現象に「効果」などと意味ありげな名前を付けたことが、誤解のもとじゃないですかね。
sigさん、
家庭用の冷凍庫では、どういう温度制御をしているかが製品任せなので、実験には不適じゃないですかね。ON/OFF制御のどこにあたるかで結果が違ってきそうですし、霜取りの前後にあたったら、また大きく違いそうです。結局、実験すれば結果は出るでしょうけれど、何を意味しているかがわからない結果しか得られないのでは。
一定温度に保つようにきちんと制御しても、凍るプロセスにはばらつきがあるために元の水の温度の違いがいつも反映されるわけじゃないんだよ、といった程度のことじゃないでしょうか。
発見からこれほど時間が経つのに、容器に蓋が必要かどうかさえ定まってないというのは、やっぱり変ですよね。
なお、凍らせながら溶存空気を抜くといった意図がない限り、普通の実験では容器に蓋をします。埃が入ったら氷の核になって結果が変わってきそうですし、蒸発した水が意図しないところに結露したら温度分布に影響するかもしれませんし、観察しづらくなることもありますので。
apj先生、コメントありがとうございます。要するに、
「水を熱したことが原因で、速く凍りやすくなるわけではない」
だろうということですね。(「水を熱しても、普通の人が思うほどには凍るまでの待ち時間が増えない」といってもいいかもしれませんね。)
ちょっと正確に書くと、”凍るまでの待ち時間”T=[0度まで冷える時間t1+0度になってから過冷却水状態が相転移して氷になるまでの時間t2]、とすると、t2は分散が非常に大きい確率分布に従っており、おそらく(熱したときでも)t1も[t2の平均]より小さい([t2の分散>>t1]または[t2の平均>>t1])、ということでよろしいでしょうか。
もしそうだとすると、日常常識に反するという意外性があっておもしろい話ではありますが、物理の教科書というよりは、確率・統計の教科書にのせるようなトピックになるのでしょうかね。「タバコ吸ってるのに長生きする人もいるが、非喫煙者より長生きした喫煙者においてもタバコが延命効果をもたらしたわけではない」っていう話と同様でしょうか・・・。
>「水を熱しても、普通の人が思うほどには凍るまでの待ち時間が増えない」
どうも、人間の感覚は、線形変化であれば実感がわいたり見当がついたりするのですが、対数関数になっていたり指数関数になっていたり、べき乗だったりするものに対しては、かなり直感とは外れてくるように思います。なぜそうなのかは、心理学の問題でしょうけど、その直感とのずれを突かれると、意外性を感じることがあるのかもしれません。
>「タバコ吸ってるのに長生きする人もいるが、非喫煙者より長生きした喫煙者においてもタバコが延命効果をもたらしたわけではない」
論理の構造としてはこれでいいと思います。
ただ、実際にいろんな人が「素人実験」をすると、
・加熱した水とそうでない水で、不純物の組成が違う。
・加熱のために容器を移し替えたりすると、その時に、核になる小さなホコリがたくさん紛れ込むことがある(実際、光散乱の実験をしていると、普通に溶液を作る理科実験の操作ではホコリ入りまくりです。最後にフィルターを通して濾過した試料でセルを全部洗い流して、外の空気に触れないようにしないと、レーザーを当てるとゴミで光りまくります)
・そもそも水道水がゴミだらけの上、地域によっても状況が違う。
・家庭用の冷凍庫は、温度変動が激しい上に、霜取りなどという温度が高い時間ができたりするから、その影響がどう入るか分からない。
といったことが同時に起きるので、凍るまでの時間を測定しても、おなじ論理をあてはめていいかどうかが疑問な結果しか得られないかと。
どうやら,先生のエントリで取り上げていただくに,一定の意味のあるテーマであったようで,余計なことを書いたわけではなかったとちょっとホッとしております。
素人目には,厳密な実験をしないと検証できないようには思えないところが,この話を更にややこしくしているのかなと思いました。NHKが番組で,誰でも家庭で再現出来るお話のように紹介してしまったところも問題ありと思います。更に番組の流れから見ると,一種の省エネのためのノウハウのように感じた視聴者も多かったのではないかと思いました。
「一見、気軽に実験できそうだけど、意味のある結果を出すための実験の難易度は実は相当高いし、道具もそろえてかからないと駄目だというのが、曲者」なんですね。
「Mpemba effectは確率的な現象である。」
詳しく書いていただいた御陰で,とりあえず,少しだけ賢くなったような気がします。現時点で,先生にお書きいただいたもの以上の総括は,日本語のネット上にはないと思います。
Wikiの紹介論文も,分野の感がないと,取り寄せて精読するというのも大変です。関連論文がまともかどうか,分野の知識無く,適正評価出来るとも思えませんでした。非常にありがたいです。
それと,このエントリ自体を私のエントリにて,追記紹介の上,リンクを張らせていただきますこと,お許し下さい。
問題があればお知らせ下さい。
男性にお湯をぶっかけるデモなどは、明らかに湯気が大量発生していて気化熱絡んでるだろうなあ、という感じだったのですが、とかく「確定的」である紹介の仕方は問題があった気がしますね。別エントリの杉山真大さんご紹介の雪氷学会MLも読みましたが、「まだ原理等が未解明である」ことを明示する以前の誤解があったように思います。
ところで、過冷却状態がいつまで続くかという確率的な話だというのなら、常に振動を与え続けた状態で実験したらどうなるんでしょうね。音波を当て続けるとかして、ここのばらつきを狭めることは出来るんでしょうか。実験条件のばらつきが増えるだけかもしれませんが。
夏休み突入ということで自由研究のネタを探してる子供も多いでしょうが、ムペンバエフェクトに目を付けて「お湯にクラシックを聴かせた時が一番早く凍った」とか言い出したりして(やや笑えない)。
Dに用事のあったムペンバさんは、ある日Bの駅から電車に乗って、Cで降りてタクシーでDまで行きました。
次の日にはA駅から乗ってみると、なんとDまで掛かった時間は前日よりも短かったのです。
A駅よりもB駅の方がC駅に近いのに、なぜ先に付くことが出来たのか?
まずB駅からは各駅停車しか乗れませんが、A駅からは快速が出ているので、C駅に到着するまでの時間は実はそう大きくは変わりません(でもA駅から乗った方が少し長く掛かります)。
C駅ではすぐにタクシーを拾えるとは限りません。かなり長くタクシーを待つこともありますし、すぐにタクシーが来ることもあります。
だからB駅から乗ってもC駅でタクシーを待たされた場合よりは、A駅から乗ってC駅ですぐにタクシーに乗れた場合の方が、Dに到着するまでの時間は短くなるのです。
つまりムペンバさんがA駅から乗ったときには、たまたまC駅ですぐにタクシーに乗れたので、早くDに到着したのでしょう。
A-B-Cが温度の違い、Dが氷結という相の違いなところは、一応電車とタクシーとして区別して見ました。
氷らせる水の問題ではないように思います。雰囲気が問題でしょう。
無風の低温雰囲気に、雰囲気よりは高温の二つの物体を入れますと、
当然、より高温の物体のほうに上昇気流が発生します。
より高温の物体のほうが強く冷却されるわけです。
その状態が、いつまで続くかというと、両者が同温になるまでです。
その温度が、物体の氷温程度ですと、その雰囲気の対流が維持される可能性があります。
そうすると、初期温度が高温だった物体のほうがその後、より強く冷却されることも考えられます。
まあ、五分五分よりは、かなり低い確率でしょうけれども。
あえて、無風にこだわるから、こんな変な結果が出るのです。
両者に1m/sでもいいから、有風状態で試験すれば、
普通に、低温の物のほうから先に氷るはずです。
ところで、apjさんのご自宅の冷蔵庫は、買い替われたのでしょうか。
古い冷蔵庫の場合、高温水のほうが霜を溶かして、エバポレータに密着するから、
とかいう説も、「つかぬことをうかがいますが…」に載っていたはずです。
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complex_catさん、apjさん、またこんにちは。
Tamaさん、
>ところで、過冷却状態がいつまで続くかという確率的な話だというのなら、常に振動を与え続けた状態で実験したらどうなるんでしょうね。音波を当て続けるとかして、ここのばらつきを狭めることは出来るんでしょうか。
ええ、振動を与えれば過冷却状態は崩れます。冷凍庫の中にスピーカーを入れて、その上に水の入ったビーカーをおいて、音を出せば過冷却になりにくいと思います。たぶん、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番よりは、ベートーベンの交響曲第5番の方が、いきなり振幅が大きいので効果が大きいかも知れません(半分本気)。
過冷却水の入ったビンに刺激を与えると氷になる現象はよく知られています。マジコールという冷凍庫が商品化されています。下記のホームページで過冷却の破れる様子を見ることができます。
» link here «
mimonさん、
過冷却状態を保つには、冷凍庫内の温度分布を均一にする必要があります。この冷凍庫は、冷却器からの空気を上から下に流して循環していると思います。たぶん、振動も抑えた設計になっているでしょう。もちろん、飲み物によっては凍ってしまうものもあると思います。
complex_catさん、apjさん、
この冷凍庫ならムペンベ効果が見られるかも知れませんね。apjさん、新しい冷蔵庫はこれにしませんか。
7月9日のNHK放送の内容は酷すぎます。
曰く来客などで急に氷が欲しい時の裏技として、
以下NHKによると、
「驚きの氷早作り技」
急に氷が必要になったとき、氷をもっと早く作る方法はないものでしょうか?
常識逆転! お湯は水より早く凍る
※ご注意:お湯は熱いほど早く凍りますが、やけどには十分ご注意ください!
(となっている)
しかも其の説明たるや『科学的に未解明のムペンバ効果』として一切の科学的説明を拒否する。
現象に対する説明の解説も全く無いんですよ。しかも冷蔵庫に因る製氷実験はやっていない。
用意はすれど最期の結果が出る前に突然唐突に番組が終わってしまうんですよ。
自分の自分のブログ似NHKのインチキ放送を書いたら山のように抗議コメントが送られてくる。
この人たちは、有りもしない熱湯で出来た即席氷を見ているんですよ。
科学では信じていても信じなくとも結果は同じとなります
今回のNHK放送では、同じものを見ても信じている者には見えて、疑っている者には見えない。
昔は夏には怪談が付き物でしたが、此れは正に現代の怪談話ですね。
、科学番組としてはお粗末ですが、メディアリテラシーの問題としてか情報操作、印象操作としては大変面白い話です。
積極的な情報操作を行ったというよりは、NHK自身も誤解し、騙されちゃったように見えます。扱いきれないものに手出ししちゃったのではないかと。
昨日、NHKの放送の録画を見る機会があったので、私の方でも番組に対するコメントを書きました。確かに、熱湯で氷を作ろうとする人が続出しても仕方がないほど変な話になってましたね。
それで逆に罠にはまったのか。もう少し,情報を得たいところですね。
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それと気化熱が絡んでいるのではというあたりで,説明としたかったようですね。
確かに、何らかの条件が重なれば、再現性は低くとも、温度の高かった容器の水の方が先に凍る現象は有りうる話でしょう。
しかし、NHK放送のように『全く同一条件下』での、温度の高い方(高ければ高いほど)から必ず凍るでは、物理的に説明不能(似非科学)だと言われても仕方が無いでしょう。
特に強調したい事は、あの放送では何の条件もつけずに誰にでも出来る方法、 『早く氷が欲しい時の裏技』として紹介していた点です。
しかも再現性は限りなく低い。(私は再現に失敗)
いくら贔屓目に解釈しても法螺話です。
科学的に見れば、デマ情報でしょう。
実はあの番組で一番不愉快だったのは、氷が出来たか出来なかったかではなく、NHKが一切の科学的説明を拒否したことです。
何しろ『現代科学では未解明な、ムペンバ効果』ですから。
この事(未解明)を何回も強調していた。(其れ以前の今までの放送では、そんなことは一回も無かった)
色々な学説(仮説)が、正しいか、間違っているかはともかく今までに出されていますが、放送では一切其のことには一言も触れていません。
これまでの放送と正反対の行動、態度ですね。
あの番組は懇切丁寧に、丁寧過ぎるほど、子供にも判るほど解明、解説するので定評があったのに今回はゼロです。
オカルトや奇術や超能力や宗教の奇跡の話では原因が判らなくとも、結果だけ成功すれば成功と呼べるが、科学での論文や研究では解明、解説無しでは誰からも信用されません。
今回の放送は、科学番組ではなく、神秘的な超常現象番組に近い内容でした。
まあ確かに、日本国中の人が機械に悪いうえに電力の浪費にもなるのに熱湯を冷凍庫に入れている姿は、海外から冷静に見れば『神秘的超常現象』と見えるかも知れません。
apj先生。当方の科学的解説としては未熟そのものの記事に対してわざわざ科学的な解説を頂き恐縮しています。
ブログ記事をわざわざ読んで頂いた上に至らぬところを指摘頂き感謝するやら、喜ぶやら、驚くやら。
有難うございました。
今回の放送は、私も『積極的な情報操作を行ったというよりは、NHK自身も誤解し、騙されちゃったように見えます。扱いきれないものに手出ししちゃったのではないかと。』と思います。
誰も成功していない熱湯からの早く氷を作る裏技は、NHK放送でも再現に失敗しているようです。(成功していれば放送しているはずです)
半分は笑い話のようにも見えるが、実験もそうですが、 疑いもなく信じた人たちが、毎日せっせと「お湯から氷」作りをしていたら・・・・。
ブログを検索してみたんですが、はっきりとNHKの氷作りの裏技はインチキと指摘しているものは、私以外では大槻教授とK氏だけで、あとはみんな不思議現象と書いてあるようです。
ほとんどの視聴者は番組内で出来てもいなかった氷を見ているらしい。
信じていると無いもモノが見えるんですよ。怖い話です。
>ほとんどの視聴者は番組内で出来てもいなかった氷を見ているらしい。
これは、デジタル温度計の数値を見せながら、ビーカーを並べて凍らせ、その後映像を逆回しにして、元の温度を見せる、という、あのVTRによるのではないでしょうか。
あれがツクリでなければ、両方が過冷却になってそれなりの時間が経ってたまたまお湯の方に結晶ができはじめる、といったことになっているのではないかと思って、注意して見たのですが、時間を適当に早送りされてしまい、確認ができませんでした。
0℃を切った時間の時間差と、0℃以下に保たれていた時間をきちんと出さないと判断材料にならないのですが、肝心の部分を早送りでごまかされてしまったように感じました。
(» link here «)
"The phenomenon had been identified by Aristotle in 300 BC and confirmation followed from Marliani in 1461, Bacon and Descartes in the 1620s."
"That hot water freezes at a faster rate than cold water cannot be disputed. The difficulty is in explaining exactly why the warmer water freezes first."
NHKは、おもしろ可笑しく、日常生活風にやりすぎただけです。厳冬期に北米、北欧では、空中で熱湯が瞬間的に凍るのは知る人が多いみたいです。
過冷却水の件は、とりあえず、Mpemba効果とは別件です。
>過冷却水の件は、とりあえず、Mpemba効果とは別件です。
逆では?
元々のムペンバ君の報告では、空中で熱湯を凍らせる話ではなく、容器に入れたアイスクリームやビーカーに入れた水を冷凍庫で凍らせる話です。こちらであれば、過冷却は無関係ではありません。
「厳冬期に」「空中で」「熱湯が」という条件で起きる現象の方が、本来のムペンバ効果とは別のものではないでしょうか。そのかわり、NHKのドラマ仕立ての、熱湯をかける実験の方が、こちらの再現実験になり、成功ということになります。
この3条件で熱湯が瞬間的に凍る現象の方をムペンバ効果と呼ぶことにするのであれば、冷凍庫で氷を作る話をムペンバ効果として紹介するのが間違いなのでは。条件がかなり違うので、とりあえず別扱いにしておかないと、混乱する一方かと。
過冷却水の件は、0℃以下の「水」に衝撃を加えて凍らせる現象です。
Mpembaは、「同じ体積の35度の水と100度のお湯を冷凍庫に入れたら、100 度のお湯が先に凍りました。なぜでしょうか?」と提示しています。
確かにー20℃以下の「空中」で熱水が霧氷になるのと、Mpemba効果とは、別件かもしれませんね。
この現象はアリストテレスも認識していたと言うし、F.Bacon や Descartes も記録しているそうです。下記Blogに、まともに受け止め、理論を検証している記述があります。その書き込みは、NHKの「ためしてガッテン」の放送よりも以前かなと思われます(不明):
» link here «
>過冷却水の件は、0℃以下の「水」に衝撃を加えて凍らせる現象です。
NHKの演示実験ではそうですが、普通に液体を冷却しても、一旦過冷却になった後、衝撃やそれ以外の何らかのきっかけで結晶ができはじめる、という過程をたどります。「衝撃を加えて」はきっかけの1つになる場合があるだけなので、衝撃があることに限定してしまうとまずいでしょう。
>確かにー20℃以下の「空中」で熱水が霧氷になるのと、Mpemba効果とは、別件かもしれませんね。
現状では混乱しているようなので、ムペンバ効果を確認したという実験の論文を集め、空中で凍らせる、つまり表面の影響が大きく効くような実験をしているものと、容器に入れた状態で温度を下げるものに分けて、それぞれ何がどこまでわかっているかを調べようかな、と思っています。実験でうまく捕まえられない状態で、理論を考えたってあんまり意味が無さそうですし。
水のおもしろ実験の記事ですが、説明が何とも……。書かれた説明では、水の密度が4℃で最大だということが無視されてることに納得がいきません。冷却していけば、4℃の水が下に溜まる筈です。
実際、適当な大きさのコップに氷水を作って静かに置いて、コップの底に温度計を差し込んでおくと、4℃を示すようになります。
実験の再現性のがどの程度か記事からはわかりませんし、その上説明がこれでは、一体何をどこまで信じたらいいのか不明な記事、という結論になりますので、今回の調査の対象からは外しています。
論文に直接書かれている事ではなく、論文を読んでapjさんがお考えになった事
である点、もうちょっとはっきりされた方が良いように感じます。
「科学者であるapjさんのブログ」としては全然問題ないのですが
論文を自身で読む習慣のない一般人の方達は
・論文に書かれている事
と
・apjさんのお考え
が区別できなくなっているようです。
曖昧なのは、冷却曲線のグラフを読み取っている部分ですよね。
()をつけて、グラフを読み取った部分だと明記した上で、論文まとめの最初と最後に線を追加し、区別をもうすこしはっきりさせてみました。
今後もぜひよろしくお願い致します。
今回の話の背景にある過冷却水の第二臨界点仮説、
なんとなく超流動液体ヘリウム3の話と似ているなぁ
って思ってたら、既にapjさん周辺でラマン散乱測定をされてたんですね。
ちょっとカンドー
第二臨界点仮説について主にやっているのは、ウチではなくて、物材機構(だったかな、旧無機材研です)の三島さんです。
私どものような、バルクの水の温度を下げる方法では、第二臨界点近くまでいくかなり前に水が凍ってしまうので、なかなか近づけません。
三島さんは、温度が高い方からは、エマルジョンの中に水を閉じ込めるという方法で調べておられますし、低い方からはアモルファス氷に低密度と高密度があって相転移するいう性質を手がかりにして調べておられます。
過冷却の水については、昔から論争があり、氷の結晶構造のもっと乱れたものに近いという話があったところに、むしろクラスレートハイドレートの構造に近いのでは、という話が出てきたりしています。
apjさんが強調される「過冷却からの冷却過程が確率的である」という推測や、
その根拠となった「お湯から冷やした方が、過冷却になりにくい」 (Ref.[3])
[3] D. Auerbach, Am. J. Phys. 63, 882 (1995)
という話は前振りであり、論文の本論はあくまで
・「三つの相転移点T1,T2,T3付近の振る舞い(相転移時間のTc依存性)」
がメインのように読めますが、このあたりの取り扱いはどうなったのでしょうね・・・。
NHKの実験ビデオを元に、温度変化グラフを起こした方が居るのですが、
興味深い事にそのグラフ上でも、この「相転移らしきもの」が確認できます。
» link here «
実験ビデオ: » link here «
温度変化グラフ: » link here «
同 数値: » link here «
zipに固めて再up。
» link here «
(1) zipを解凍し
(2) gifファイルを取り出し
(3) Webブラウザに投げ込む
と表示できるはず、です。
相転移らしきものですが、固液の相転移ではなく、あったとしても液液相転移になりますよね。今、ちょっと出先で論文を参照できないんですが、あのあたりに液液相転移があるという話は全く確立していないはずです。水についてはいろんな仮説が出てきていますので、そのうちの1つだけど、裏付けは乏しいという扱いです。
私は、熱測定から相転移点を決める精密な実験をやったことはないので、誤解しているかもしれません。が、これまでに知っている限りでは、相転移の議論をする熱測定実験としては、この論文の実験ではサンプル量が多すぎるように思います。20cm3の試料の温度を均一にするのは大変ですよ。もっと少ない試料で、温度勾配等の影響を減らすあるいはコントロールできる状態で測定するものではないかと……。私が思い描いている測定法はDSCなんですけど。
論文を紹介したときに、相転移点の話については「もしそうなら面白いけど、今のところ他に裏付けになる話はきいてないし、他のもうちょっと精密な熱測定や液体の構造の測定で裏付けられるまでは棚上げにしておこう」と思ったので、その部分には触れなかったのでした。
DSCで精密に調べる設備は持ってないし、あの論文を見たら熱測定屋さんは必ず何かやるだろうし、それでもし裏付けが出てくればそのうちもっと話題になるだろうし……などと思っています。
>20cm3の試料の温度を均一にするのは大変ですよ。
おっしゃる通りです。対流による温度の揺らぎを拾っている可能性があります。
液−液相転移ですか。。。
水に構造があるとすると、クラスターを想定することになるかも知れません。それはそれで興味深いですが、我田引水でお喜びになる方々がたくさんおられるような。
融点近傍の水にある程度の規則性があってもおかしくはないのですが、固−固相転移に見られるような、例えば六方晶系−立方晶系のような、ドラスティックな相転移ではないのではという気がします。そうすると、熱的に引っ掛からないかも知れません。
> DSCで精密に調べる設備は持ってないし、あの論文を見たら熱測定屋さんは必ず何かやるだろうし、
> それでもし裏付けが出てくればそのうちもっと話題になるだろうし……などと思っています。
この問題に関するスタンスはよくわかりました。
ただ、論文の主旨を捻じ曲げて伝えるのはよろしくないかと存じます。
omniさん
> 水に構造があるとすると、クラスターを想定することになるかも知れません。
> それはそれで興味深いですが、我田引水でお喜びになる方々がたくさんおられるような。
余計な話はする必要がないかと。
> そうすると、熱的に引っ掛からないかも知れません。
熱的にひっかかるという論文を議論している時に、その指摘は不適切かと。
>ただ、論文の主旨を捻じ曲げて伝えるのはよろしくないかと存じます。
別に、趣旨をねじ曲げているわけではありません。
実験の論文では、
・実験して得た内容
・解釈
の2つが書かれますが、解釈の部分はいつでも別の説明にとってかわられる可能性があります。
実験事実については、元のエントリーで列挙した通りです。
ムペンバ効果についてどう書かれているかを紹介する目的で論文をしめしたので、その部分についてはそのまま紹介しました。
水のモデルについては、今後別測定が必要だと考えたので、特に紹介はしませんでした。
もし、このエントリーが、ムペンバ効果を話題にしたものではなく、水の液・液相転移を話題にしたものであったら、水の構造の変化について述べられている部分の紹介を重点的にすることになったと考えます。
なお、論文を書くときの引用でも、
1)実験事実があるから引用する
(が、書かれている議論には同意しない)
2)実験事実と書かれている議論の両方を受け入れたから引用する
場合があります。1)をやったからといって、論文の主旨をねじ曲げたなどと言われることはありません。
× とりうすがり
○ 鶏薄狩の酔っ払い
前振り約半ページはこれまでの研究のまとめとして興味深いのだけど
残り2ページ半余りはかなり意味不明な展開になっていると感じます。
・ apjさんのおっしゃる通り、試料体積が20cm3もあったら温度の均一性を保つのが難しいでしょうし、
・ そのような実験で測定された冷却曲線の水平部を以って「相転移」とするのは違和感があるし
・ 何よりも、ムペンバ効果の実験中に興味深い現象が観測されたという以外、
ムペンバ効果とこの実験結果の関係が何も明らかにされないまま唐突に論文が終わっている点、
等々。
apjさんが何故そのような論文を紹介されたのか、真意を知りたく
この一ヶ月余り様子を見ていたのですが・・・。
真意を深読みせず、流しておけばよかったのかなぁ、と今は感じています。
>apjさんが何故そのような論文を紹介されたのか、真意を知りたく
>この一ヶ月余り様子を見ていたのですが・・・。
>真意を深読みせず、流しておけばよかったのかなぁ、と今は感じています。
真意と言われましても、論文の調査の出発点なので……。
・冷却曲線の測定でも、試料が少なければ(3cc程度)撹拌なしで測定しても、固体と液体が共存する条件で、過冷却の後凍り始めたときに温度一定が実現するのが測れる(こちらは学生実験で普段からやっている)。
・もうちょっと試料が多い場合は撹拌しながら測定して、固体が出てくる温度を調べると、そこそこの値が得られる。
ということがあって、その上での紹介なので……。
・この論文の場合は、過冷却部分の凍り始めは捉えているが、撹拌はしていない。「ムペンバ効果」にこだわる限り、撹拌するとまた違う話になりそうなので、そこは仕方がない。
・過冷却になってから結晶ができはじめるまでの時間がばらつくということは出ていて、過去の別グループの実験とも矛盾していない。
・とりあえず、凍り始める時間がずいぶんばらつくことは出ているので、撹拌せずに凍り始める時間を見れば、湯と水で湯が先に凍り始めることは普通の自然現象として起こりうるだろうということはこの論文から言ってよい。大槻さんみたいに、物理的に有り得ないなどと大声上げる話でもない(その後、この間の研究会では過冷却は除外しようという前野さんの提案があったので、今後は区別することになるが、紹介した時にはまだそういう話は出回っていなかった)。
・液・液相転移の根拠にするには熱測定が粗すぎる(からこの話は棚上げ。DSCでもやれよ……)。
・ムペンバ効果について、最新の実験の論文を手に入れて引用文献を過去にさかのぼって調べるための入り口として使える。まずは、実験をやっている論文(解釈はどうでもいい)を総ざらえするのが先なので、そのとっかかりには有効。
というあたりが私の評価です。つまり、過冷却の後結晶が出てくるまでの時間が結構ばらつくということを測って過去の実験の再確認をした、という部分は受け入れても良いが、それ以外の冷却曲線の傾きとか水の構造変化については話半分以下眉唾あたり、ということです。
それでも、追試ができるだけの情報がでているだけ、他の報告よりはなんぼかマシかなあ、と。実験せずに訳のわからん対流だのなんだのと理屈を付けたモノが山ほど、データが編集されていて本当のところがわからなかったり、実験装置の詳細や温度変化の方法について情報が無いものもあったりするわけで……。















それによると、昔からこの現象は、サー・フランシス・ベーコン、そしてアリストテレスも報告しているとのこと。