答申書の写しの送付(諮問第484号)(2003/0415)

 情報公開審査会の答申が出たので写しが送付された。阪大宛に送付されたのだが私は広島に移動していたので,少し遅れて受け取った。カバーレターが1枚,大学宛答申書のカバーレターの写しが1枚,答申書の写し10枚という構成である。答申中には,私の主張とお茶の水大の主張のサマリーが書かれているので,わかりやすくするために,情報公開審査会の判断の部分を赤で示す。私の主張の他一部を黒,お茶の水大の主張を青とした。

府情審第998号
平成15年4月15日

天羽優子殿

情報公開審査会

答申書の写しの送付

 下記の事件については,平成15年4月15日に答申をしたので,行政機関の保有する情報の公開に関する法律第34条の規定に基づき,答申書の写しを送付します。

「お茶の水女子大学における広報委員会議事録等の一部開示決定に関する件」
(平成14年(行情)諮問第484号)


府情審第997号
平成15年4月15日

お茶の水女子大学長
 本田和子殿

情報公開審査会

行政機関の保有する情報の公開に関する法律第18条の規定に基づ諮問について(答申)

 平成14年11月21日付け茶女大企第48号による下記の諮問について,別紙の通り答申します(平成15年度(行審)答申第34号)。

「お茶の水女子大学における広報委員会議事録等の一部開示決定に関する件
(平成14年(行情)諮問第484号)


答申書

第1 審査会の結論
 お茶の水女子大学における広報委員会議事録,ホームページ運営委員会議事録及び企業への回答文書(以下「本件対象文書」という。)につき,一部を不開示とした決定については,不開示とした部分(企業の担当者の氏名を除く。)を開示すべきである。

第2 異議申立人の主張の要旨
1 異議申立ての趣旨
  本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」又は「情報公開法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成14年9月19日付け茶女大企第27−1号から27−3号までによりお茶の水女子大学長が行った一部開示決定について,これを取り消し,本件対象文書の開示を求めるというものである。
2 異議申立手の理由
  異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)本件対象文書について
 本件対象文書は,企業が公開している宣伝文句の科学的原理に関する論評を大学内ウェブサーバで公開したところ当該企業から抗議され,その抗議への対処について記載されたものである。問題となったもともとの情報は,企業と情報発信者双方ともインターネットを利用して不特定多数に公開しているものである。企業からの圧力によって,大学の方針が恣意的に変えられることがあったかどうかについて大学はアカウンタビリティを尽くすべきであることを考慮し,企業名や当事者名は極力公開すべき案件である。
(2)不開示部分の不開示情報該当性について
ア  研究室責任者の所属部局及び職務の遂行に係る部分については,法5条1号ただし書ハに規定された開示情報であるから開示しなければならない。本件の場合,もともとウェブページでの論評を論評社の実名を明示して公開しているのであるから,そのことにつき,抗議を受けた当事者すなわち論評者が開示された文書から特定されることがあっても,個人の権利利益を侵害するおそれはない(同号本文の反対解釈)。
イ 研究室の責任者の氏名について
 抗議の対象となった研究室ウェブページの管理責任者の氏名は,既に当該ウェブページ内において氏名及び略歴までもが公開されている。ウェブページでの個人に関する情報の公開は,インターネットにアクセスできる全世界の不特定多数の人に対して公開したことを意味する。現在のインターネット普及状況を考えると,管理責任者氏名及び抗議があった事実は公にされた情報と言ってよい。処分庁自らが公にした情報ではないが,処分庁も容易に確認できる形で公開されており,そのことについて処分庁から異議を申し立てた形跡はない。また,インターネットでの情報公開は,モザイク・アプローチによる情報の照合が行われることを当然予定したものである。したがって,そもそも個人の権利利益を害するおそれがないので,法5条1号ただし書イ及びハを考慮するまでもなく,同号の反対解釈の適用によって開示すべきである。
 なお,研究室ウェブページに特定の商品の論評を掲載することが職務の遂行に係るものであるならば,それに対して抗議等を受けることは社会通念状当然予想されることであり,その抗議への対処も含めて職務に係ると判断するのが妥当である。本件文書には,正にその抗議への対処が記載されている。論評をするのは職務であるが,論評に対する抗議への対応は職務ではないという判断基準を立てることは,論評を行う態度としてはあまりにも無責任なものであり,到底認められない。
ウ 企業名及び所在地について
 特定の企業が販売する特定の商品に関する論評に対して抗議をした企業名及び所在地名であることをもって,法5条2号イの規定に該当するというのが処分庁の判断である。ところが,理由説明書で,処分庁は当該ウェブページについて「大学のホームページ情で特定企業が製造する商品説明に用いた科学的原理に関する論評を掲載したことに対して抗議があったものである」と,論評の内容が「科学的原理に関する論評」であることを認めている。科学的原理に関する論評であるなら,それが科学の範囲である限り,公開されることによって特定企業が受ける不利益を公開する利益の方が上回ると考えるべきである。なぜなら,科学的論評には,一般に広く共有されるべき科学知識が含まれているから,こう表することの公益性は明らかだからである。仮に書かれた内容に部分的に謝りが含まれていたとしても,内容を読めばだれでも検証可能である。したがって,同号ただし書を直接適用して開示するべきである。処分庁がウェブページに書かれた内容を誹謗・中傷であると判断したのなら格別,科学的論評の場合にも同号イを適用するのは立法趣旨に反する。さらに,科学的論評であっても特定企業の利益に関わる場合は公表を差し控えるというのがお茶の水女子大学の方針であるならば,それは大学の社会的責任を放棄したに等しく,同号イによって合法的に社会的責任の放棄を実現するのは、妥当な解釈とはいえない。
エ 企業の担当者氏名について
 法5条1号ただし書イには登記情報が含まれる。登記されている代表取締役や役員以外の担当者の氏名については,同号ただし書イに該当しないので,登記されていない企業の担当者の氏名については異議を申し立てない。
オ 研究室ページのURLについて
 ウェブページのURLは不特定多数に対して現実に公にされている情報である。それが制作者あるいは公開の責任者が問題の当事者になった途端,慣行として公にされているものではないと見なされることについては,合理的な説明が困難である。法5条ただし書イを適用して開示すべきである。
 URLそのものの開示やURLが指し示す文書内に個人情報がある場合の取扱いについては,出版物と同じ扱いが妥当であると考える。
 まずウェブコンテンツは多くの場合,著作物として取り扱われる。この点,出版物の制作と同じである。次にコンテンツをサーバに置いて一般に公開するということは,著作物を出版して公表するのと同じことになる。文書のURLを特定することは,書籍の題名,著作者,出版社,文献の所在場所等を特定するのと同じである。この情報が分かれば文書内容にだれでもたどり着くことができるからである。
 既に公になった情報について,だれが公表したのかということについて,出版物であれば政府刊行物のような公文書に近いものから自費出版された自叙伝のような個人情報を含むものまで,いろいろな種類がある。ウェブコンテンツの場合,これらの違いは,公的機関の委員会決定などを経て公開されたものなのか,個人の意志で公開したものなのかという違いに対応する。いずれにしても,出版済みであるものは,一般に公表済みということになる。
 本件では,処分庁は,文書中のURLについて,URLが指し示す文書の内容が個人の情報に関係したり企業の利害に関係するという理由で,不開示としている。この問題は,「議事録その他の行政文書中で特定の出版物について言及され,かつ,当該出版物の内容がだれかの権利を侵害する可能性がある場合に,当該出版物そのものを特定する情報が,法が定める不開示情報に該当するのか」という問題と同じものである。
 法が不開示情報を定めたのは,情報を開示することによって新たな権利侵害が発生することを防ぐためである。既に公表済みの出版物の内容が誰かの権利を侵害していた場合に,行政文書中に書かれた当該出版物の雑誌名や書籍の題名,著作者,出版社,文献の所在場所等を特定する部分を開示したとしても,更なる新たな権利侵害は発生しないと考えるべきではないだろうか。出版物の内容による権利侵害発生の責任は,出版を行った者(著作者や出版社)が負うのであって,「このような本がある,このような記事が出ている」と単に言及しただけの者が負うことはない。行政機関についても同様の基準で判断すべきではないだろうか。行政文書中で既に世の中に出回っている出版物に言及した場合,その出版物を特定する部分を情報開示するかどうかについて,処分庁がその出版物を逐一確認して権利侵害の可能性を考えて判断するというのは,明らかに負わなくていい責任まで処分庁が負っていることになる。
 URL及びコンテンツの内容は,処分庁の外で出版済みの本や雑誌と同じであるから,書籍や雑誌と同じ基準を適用して考えるべきである。URLは,それが指す文書中に個人情報や企業の利害に関する情報が含まれていたとしても,不開示にする必要がないものである。そもそも,本や雑誌を特定する情報もURLも,それだけでは法が定めた不開示情報に該当しないと考えるべきである。
カ 当該研究室が発信した内容をコピーし掲載した大学倍ウェブページのURLについて
 前記オのとおりである。
キ 研究室責任者のメールアドレスについて
 電子メールのアドレスについて,本人が開示されることを望んでいない場合は開示するべきでないというのが最近の判断の流れであるが,本人自らがウェブページなどで公開している場合はその限りではないと考える。
 電子メールの場合は,住所とかなり扱いが異なるものである。日本で普通に生活する場合,居住地で住民登録されるため,否応なしに住所が割り当てられる。したがって,平穏な生活のためには,住所をプライバシーに関する情報として保護する必要性がでてくる。一方電子メールは,使わないという選択をしたところで,生活に支障はない。さらに,一人が複数の電子メールアドレスを持って,自由に使い分けることがきわめて容易にできる。メッセージに広告を追加するかわりに,無料で使える電子メールを発行している企業も多数存在する。1つのアドレスは公表するが,多のアドレスは仲間しか知らないということも望むままにできるものである。アドレスと呼んではいても,現実社会の住所とは性質を全く異にするものである。
 したがって,所有者自らが,ウェブページなどで連絡先として公表している電子メールアドレスについて,行政文書中で特定した場合には,その部分を開示しても何ら差し支えないと考えられる。所有者が公開を予定しているメールアドレスを,行政機関の判断で「公開を予定していない」とすることは無意味ではないだろうか。

第3 諮問庁の説明の要旨
 1 本件対象文書及び不開示部分について
(1)経緯について
 本学の研究室ウェブページにリンクされたウェブページ(本学の職員ではない当該研究室の共同研究者が作成した非公式ウェブページ)において,特定の企業が製造する商品の説明に用いた科学的原理に対する論評が掲載され,その論評に対して,内容が不適切であり改善等の対策を採ってほしい旨の抗議が本学に寄せられたことについて,本学のウェブページを所掌するホームページ運営委員会及びその上部委員会である広報委員会で審議が行われた。
(2)本件対象文書について
 本件対象文書は,広報委員会議事録(平成13年12月19日,平成14年5月1日及び同月20日開催),大学ホームページ運営委員会議事録(平成13年11月26日,同年12月6日及び平成14年4月23日開催)及び企業への回答文書(平成13年11月30日付け及び平成14年5月2日付け)の3種類,8件である。
(3)不開示とした部分およびその理由について
 本学における教育・研究分野の論文等では特定企業名や特定の商品名を記載するが,今回の事例では大学のウェブページ情で特定企業が製造する商品説明に用いた科学的原理に対する論評を掲載したことに対して抗議があったものである。その問題の当事者に関する名称等を公にすることにより特定の企業又は特定の個人が不利益を被るおそれがあると判断し,本件対象文書の一部を不開示と決定したものである。なお,原処分においては個人に関する情報(法5条1号)に該当することを利畏友としているが,特定の企業に係る不開示部分については,同条2号イ該当に理由を差し替える。
ア 件杞憂室責任者の所属部局及び職名について
 研究室責任者である当事者の所属部局名は,他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなる情報である。このような問題の当事者の所属部局名は慣行として公にされているものではなく,又は公にすることが予定されているものとは言えず,法5条1号ただい書イの規定には該当しない。また,研究室ウェブページに特定の商品の論評を掲載することは職務の遂行に係るものではあるが,その論評に対し抗議をうけたことは職務遂行の内容に係るものではないため,同号ただし書ハの規定には該当しないと判断したので,不開示とした。
イ 研究室責任者の氏名について
 広報委員会議事録中の氏名(説明者)は抗議の対象となった研究室ウエブページの管理責任者名で,その問題の当事者名である。
 当事者の「氏名」は,特定の個人を識別することができる情報である。このような問題の当事者の氏名は慣行として公にされているものではなく,又は公にすることが予定されているものとは言えず,法5条1号ただし書イの規定には該当しない。また,研究室ウェブページに特定の商品の論評を掲載することは職務の遂行に係るものであるが,その論評に対し抗議を受けたことは職務遂行の内容に係るものではないため,同号ただし書ハの規定には該当しないと判断したので,不開示とした。
ウ 企業名及び所在地について
 当事者の「企業名及び所在地」は,通常一般に公開されている情報であるが,本件は特定の企業が販売する特定の商品に関する論評に対して抗議をした企業名及び所在地である。
 当該情報を公開することにより特定の企業のイメージを損なうおそれがあり,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イの規定に該当するものと判断したので,同号イ該当に理由を差し替え,不開示を維持する。
エ 企業の担当者の氏名について
 企業への回答文書中の「企業の担当者の氏名」は,文書の送付先として便宜上,記したものである。
 当該企業の登記簿謄本により,登記される役員でないことを確認しており,一社員である担当者の氏名は特定の個人を識別できる情報であるので,不開示とした。
オ 研究室ページのURLについて
 企業への回答文書中の「研究室ページのURL」は,本件当事者の研究室ページのURLであり,特定の個人を識別することができる情報である。このような問題の当事者の研究室ページURLは慣行として公にされているものではなく,又は公にすることが予定されているものとは言えず,法5条1号ただし書イの規定には該当しない。また,研究室ウェブページに特定の商品の論評を掲載することは職務の遂行に係るものであるが,その論評に対し抗議を受けたことは職務遂行の内容に係るものではないため,同号ただし書ハの規定には該当しないと判断したので,不開示とした。
 なお,当該ページには抗議の対象となったサイトがリンクされていることから当該企業を識別することができるものであり,特定の企業がイメージを損なうおそれがあり,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イの規定に該当するものと判断したので,同号イ該当に理由を差し替え,不開示を維持する。
カ 当該研究室が発信した内容をコピーし掲載した大学外ウェブページのURLについて
 大学外ウェブページのURLは,抗議の対象となった当該研究室の発信した内容がコピーされていることから,当該企業を識別することができるものであり,特定の企業がイメージを損なうおそれがあり,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イの規定に該当するものと判断したので,同号イ該当に理由を差し替え,不開示を維持する。
キ 研究室責任者のメールアドレスについて
 企業への回答文書中の「メールアドレス」は,当該問題の当事者である研究室責任者が使用するメールアドレスである。
 当事者の「メールアドレス」は,アカウント名にローマ字で姓を示す部分があり,他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなる情報である。このような問題の当事者のメールアドレスは慣行として公にされているものとは言えず,法5条但し書イの規定んいは該当しない。また,研究室ウェブページに特定の商品の論評を掲載することは職務の遂行に係るものであるが,その論評に対し抗議を受けたことは職務遂行の内容に係るものではないため,同号ただし書ハの規定には該当しないと判断したので,不開示とした。
ク 商品名について
 商品名については,前記ウと同様の理由により,不開示とした。

第4 調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
1)平成14年11月22日 諮問の受理
2)同日          諮問庁から理由説明書を収受
3)同年12月25日    異議申立人から意見書を収受
4)平成15年2月10日  諮問庁から補充理由説明書を収受
5)同月13日       本件対象文書の見分及び審議
6)同月27日       諮問庁から口頭説明の聴取
7)同年3月14日     異議申立人から口頭意見陳述の聴取
8)同月17日       異議申立人から意見書を収受
9)同年4月10日     審議

第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書及び不開示部部分について
(1)本件対象文書について
 本件対象文書は,1)広報委員会議事録(平成13年12月19日開催,平成14年5月1日開催及び同月20日開催),2)大学ホームページ運営委員会議事録(平成13年11月26日開催,同年12月6日及び平成14年4月23日開催),企業への回答文書(平成13年11月30日付及び平成14年5月2日付け)である。
(2)不開示部分について
 本件対象文書である3種類8件の行政文書のうち,不開示とされた部分は,異議申立ての対象とされていない企業の担当者の氏名のほか,次の通りである。
 ア 研究室責任者の所属部局及び職名
 イ 研究室責任者の氏名
 ウ 企業名及び所在地
 エ 研究室ページのURL
 オ 当該研究室が発信した内容をコピーし掲載した大学外ウェブページのURL
 カ 研究室責任者のメールアドレス
 キ 商品名
2 不開示情報該当性について
 ア 研究室責任者の所属部局及び職名について
  研究室が行う情報発信は,研究者が職務として行う研究成果の公表であり,研究室単位で行う情報発信については当該研究室の責任者がその責任を負うこととされているものである。その責任は,外部からの情報発信内容についての抗議に対処することも含まれるものである。
  事実,当該ウェブページにおいては,職務の一環として共同研究の内容や成果を情報発信し,その内容に関する責任者として研究室責任者の氏名及び所属部局等が明記されている。
  したがって,研究室が行う情報発信の内容に対し外部から抗議がなされたことについて対処するために研究室責任者が広報委員会に出席したこと及び企業への回答文書における研究室責任者の所属部局名等の記載は,職務遂行の内容に係るものであると認められる。  イ 研究室責任者の氏名について
  前記アのとおり,所属部局名及び職名は,研究者としての職務遂行に係るものであり,本件対象文書における研究室責任者の氏名についても,研究室から情報発信を行ったウェブページについて,本件の経緯等を説明する管理責任者としての職務に係る記載であることが認められる。
  諮問庁においては,研究室ウェブページにおいて研究室責任者の氏名を明記していることから,その氏名は慣行として公にされており,法5条1号ただし書イに該当するものと認められる。
  したがって,研究室責任者の氏名については,これを開示すべきである。
  なお,本件開示請求は,当該研究室責任者の氏名を示して請求したものである。これにたいして諮問庁は,その応答を拒否することなく,当該研究室責任者に関する文書として一部開示決定の処分を行っている。このことは,諮問庁が自ら,問題の当事者である研究室責任者の氏名を不開示情報に該当しないものとして,その氏名を開示したことと同様の結果を生じさせているものである。
 ウ 企業名及び所在地について
  大学の研究室のウェブぺージに対して抗議を行った企業名及び所在地が不開示とされている。
  当該企業は,自社の商品の宣伝内容に使った科学的原理について,大学の研究者が科学的見地から行った論評に対して,当該商品を扱う事業者としての利益を守るために大学に抗議をおこなったものである。また,当該企業において,大学に対して抗議を行ったことについて,当該研究者とのやりとりも含めて当該企業のウェブページに自ら掲載し,公にしていたことが認められる。
  以上のことから,抗議を行った企業名を明らかにしても当該企業の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものとは認められず,法5条2号イの不開示情報には該当しないため,これを開示すべきである。
  なお,本件開示請求は,当該企業名を示して請求したものである。これに対して諮問庁は,その応答を拒否することなく,当該企業に関する文書として一部開示決定の処分を行っている。このことは,諮問庁が自ら,大学に抗議を行った企業名を不開示情報に該当しないものとして,当該企業名を開示したことと同様の結果を生じさせているものである。
 エ 研究室のページのURLについて
  研究室ページのURLについて,諮問庁は,問題の当事者である研究室責任者及び当該企業を識別できるものとして不開示としているが,上記ア及びイのとおり研究室責任者の氏名等は開示すべきであり,さらに上記ウのとおり,企業名等を公にしても当該企業の正当な利益を害するおそれは認められないことから,研究室ページのURLは法5条1号及び2号イの不開示情報に該当しないため開示すべきである。
 オ 当該研究室が発信した内容をコピーし掲載した大学外ウェブページのURLについて
  当該URLについて,上記ウのとおり,企業名を公にしても当該企業の正当な利益を害するおそれは認められず,法5条2号イの不開示情報に該当しないため開示すべきである。
 カ 研究室責任者のメールアドレス
  研究室責任者の氏名は,上記アのとおり,慣行として公にされているものであるが,諮問庁におけるメールアドレスの扱いは,本人からの申請により,刊行物等に掲載する扱いとしている。本件研究室責任者のメールアドレスは,研究室ウェブページに掲載され,諮問庁において,慣行として公にされているものであると認められる。
  したがって,本件研究室責任者のメールアドレスについては,法5条1号ただし書きイに該当すると認められることから,これを開示すべきである。
 キ 商品名について
  商品名については,上記ウと同様の理由により,法5条2号イの不開示情報には該当しないため,開示すべきである。
4 本件一部開示決定の妥当性
 以上のことから,本件対象文書につき,法5条1号を理由として一部を不開示とした決定につき,諮問庁が同条1号及び2号イに該当するとして不開示とすべきと判断した部分(企業の担当者の氏名を除く。)は,同条1号及び2号イに該当せず,開示すべきであると認めた。

第6 答申に関与した委員
 新村正人,園マリ,藤原静雄

 


Y.Amo /
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