情報公開法5条6条の解釈

 情報公開法5条と6条の解釈。参考文献は,「新・情報公開法の逐条解説」宇賀克哉著(有斐閣)で,これより適宜抜粋して,私が今後利用するためのメモ書きを作ったもの。

 (行政文書の開示義務)
第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
 一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
  イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
  ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
  ハ 当該個人が公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条に規定する地方公務員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分
 二 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
  イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
  ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
 三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
 四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
 五 国の機関及び地方公共団体の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
 六 国の機関又は地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
  イ 監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
  ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
  ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
  ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
  ホ 国又は地方公共団体が経営する企業に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

(部分開示)
第六条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
2 開示請求に係る行政文書に前条第一号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。

 国家公務員法の場合:行政機関の職員に守秘義務を課す規定における秘密は実質秘,すなわち,非公知の事項であって,実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものである。

 個人に関する情報:個人の思想,信条,身分,地位,健康状態,その他一切の個人に関する情報が含まれる。事業を営む個人の当該事業に関する情報も個人に関する情報ではあるが,その開示・不開示の判断は,法人等の事業活動情報と同様の基準で行われるべきと考えられたため,個人に関する情報からは除いている。

 個人情報識別型:個人識別情報は原則不開示。個人の権利利益を侵害せず不開示にする必要のないもの,個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものをただし書で例外的開示事項として列挙する。プライバシーの保護が目的だが,プライバシーの範囲について見解がわかれるので,プライバシーのことが前面に出ていない。

 モザイク・アプローチ:他の情報との照合。開示請求は何人でもできるので,当該個人の同僚・親戚等も開示請求をする可能性がある。一般的に容易に入手しうる情報のみを基準とすることは適当でない。

 個人情報と集団の構成員との関係。

 法令の規定により公にされている情報としては,商業登記簿に登記されている法人の役員に関する情報等。

 慣行として公にされている情報とは,叙勲者名簿,中央省庁の職員録など。当事者がインターネットを使ってやり合ったため既に広くバレまくっている場合,なんてのはさすがに書いてないがどうなんだろう?

 公務員の氏名については,民間の職員の場合と区別することなく5条1号イで開示の是非を判断する。

 法人等が自己に遊離な政策決定を求めて,そのための資料を行政機関に持ち込んだような場合の非公開約束は保護に値しない。行政機関が行政事務を行う上で必要であるため,法人等に提出を依頼した場合に限って,非公開約束条項の保護対象になる。

 「法人等又は個人における通例として」とは,当該法人等または個人ではなく,当該法人等または個人が属する業界,業種の通常の慣行に照らして判断することを意味する。したがって,当該法人等または個人が非公開とすることが通例であると主張しさえすれば足りるわけではなく,客観的にみて,当該法人等または個人が属する業界,業種において,非公開とする慣行が存在するかを判断することになる。


Y.Amo / mailto:apj@atom.phys.ocha.ac.jp
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