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グリーンアメニティー(1999/03/14)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 アルカリイオン還元水がつくれる浄水器の販売をしている。ここのページでしっかり読まなければならないのは、トップページから「3つの水」をクリックすると表示されるページである。8種類の水(アルカリ還元水、濾過水、ミネラルウォーター、スポーツ飲料、磁化水など)をあげて、それぞれが良い水の条件にどの程度当てはまるか比較している。

  1. 生命体に有害な物質の除去
  2. ミネラル類のバランス
  3. 弱アルカリ性のペーハー
  4. 水の硬度が高すぎないこと また低すぎないこと
  5. O2,CO2が十分溶存する
  6. 水の分子集団が小さいこと
  7. 酸化還元電位が低いこと(活性酸素消去能がある)

 飲料水を考えた場合、1から4までは妥当な条件だと思うのだが、5以降が微妙である。

 まず、O2,CO2が溶存している水を飲んだとしても、O2,CO2がその水からどの程度吸収されて体に影響を及ぼすのだろうか。CO2が大量に溶けている飲料の代表はビールやソーダ水などだが、CO2の効果でアルコールの吸収が速いという話はあっても、CO2が大量に吸収されて困っているという話はきかない。この条件の「十分溶存」はビールやソーダ水の濃度よりははるかに薄い濃度を意味すると考えられるので、一体どの程度の効果があるのか疑問である(はっきりした話をご存知の方はぜひお教えください)。

 6の、「水の分子集団が小さいこと」は、アルカリイオン水では二重丸がついていて、このことは別に誤りではないと思うのだが(但し、いわゆる水のクラスターとは無関係)、他のミネラルウォーターにも当てはまる。電解水の場合は水の解離は純水のときとはが異なっていて、だからpHも変化しているので、H+イオンやOH-イオンの濃度は純水とは異なっているはずである。水の分子集団の意味を、液体中でH2Oのみで構成される領域だと考えると、H+イオンやOH-イオンがあるところは、H2Oのみが存在する状態とは異なっている。もちろん、カウンターイオンも存在する。H+イオンやOH-イオンの濃度が増加すると、H2Oのみが存在するような大きな領域はなくなってくるので、「水の分子集団」が小さいということになる。しかし、同じことは水に他の何かが溶けても起こる。ミネラルウォーターは、ミネラルが水の中に溶けているので、やっぱり水分子のみが存在する領域はミネラルの濃度が増加すると小さくなると考えられる。さらに、これがどうして良い水の指標になるのだろうか?pHの効果やミネラルの効果は評価できるだろうが、水の分子集団が小さいことが直接の原因である効果は一体どうやって評価するのだろうか。水を飲むとまず胃液や胃の内容物と混じり、吸収は細胞膜やチャンネルを介しておこるので、物質が吸収されたり胃の中の酸性度が変化したりするなら話はわかるのだが、分子集団の大小は胃に入った時点で(不純物が大量に混じるから)大きく変わってしまうはずである。

 アルカリイオン水の酸化還元電位が低いことは、測定すれば誰でも確認できることだろう。活性酸素消去能の確認も、活性酸素をできたアルカリイオン水に添加してどの程度減少するか定量すれば評価可能である。しかし、これが直ちに良い水の指標になるのだろうか。同じページには、「胃腸内異常発酵で活性酸素ができて、それが病気のもとになる」という説明がなされている。腸内(=細胞外)に存在する食物に作用して、最終的に活性酸素の発生をおさえるというのなら、ちゃんとしたデータをしめしてくれれば納得できる。しかしそのデータへのポインタは記載されていない。
 活性酸素の除去能があるのは、「還元水、ビタミンC、E、カロチンなど」とされている。ビタミン類は物質として吸収されて作用するが、還元水に含まれるOH-イオンがそのまま細胞内に吸収されるとは考えにくい。生物には恒常性の維持という機能があって、細胞内のpHは常にほぼ一定に保つように制御されている。健康な生物(の細胞)なら、この機能が働くから、アルカリ性の水がそのまま吸収されることはないはずである。

 「食品・水などの酸化度・還元度」なる図が掲載されているが、引用元がよりによって(*1)

春山茂雄著「脳内革命」

である。酸化還元電位(oxidation reduction potential;ORP)は正確に定義でき、かつ測定可能な量であるが、「酸化度・還元度」という指標はないし、こういう言い方もしない。さらに、図に記載されている項目がまた謎である。「緑茶、水道水、ミネラルウォーター」などはまあわかるとしても、「塩、納豆、モルバ、貴松竹」って一体.....?これって固体なのだが、どうやって測定したのだろう。手元の理化学事典を見ると、酸化還元電位の項は以下のように説明されている。難しい専門用語はとりあえず無視しよう。

酸化還元電極の平衡電極電位で、溶液の酸化力(または還元力)の強さを表す量。酸化還元電極O,R|M(Mは不活性電極)における酸化還元反応を、O+ne→←Rとすると、酸化還元電位Eeは、Ee=E0+(RT/nF)log(aO/aR)で与えられる。Tは絶対温度、aO、aRはそれぞれ酸化体Oおよび還元体Rの活量。E0はこの系の標準電極電位で、標準酸化還元電位という。Eeが大きな正の値を持つ系ほど、一般に酸化力が強い。
(注:→←は反応式でよくある、右向きと左向きの矢印を重ねて書いたものですが、フォントの都合で出せないのでこう書きました)

 酸化還元電位は液体じゃないと測れないのだ。しかも、電極を液体中に入れて測定するので、電極と液体の間の電荷移動は、測ろうとする液体の拡散係数の影響を受ける。早い話が、食材を測ろうと思って、すり潰して水に混ぜたものを作っても、濃度の調整で測定結果が違ってくると予想される。「とろみのあるスープ」なんか測っても、出てきた結果はあてにならない。さらに謎なのが「肝臓・腎臓等の臓器」だ。生の組織をすり潰したりしたら、細胞内にある、電極と反応しそうな物質が全部出てくるので、そいういうものを合計した酸化還元電位を測ることになる。一体何の意味があるのだろうか?これが食材(レバーなど)を意味するのなら、食べるときは加熱してからだが、加熱によって成分が変わってしまうはずである。この図を引用したために、さらにわからなくなってないか?

 さて、売り文句

 通常、還元水は−100mV〜−200mVとされていますが、イオンガーデン?CI-2000はそれ以上の−600mV〜−800mVという驚異の還元力をもっています。

のあとは、市販のミネラルウォーターのpHとORPの測定値の表があって、ORPはすべて+200mV前後の値となっている。だから、市販のミネラルウォーターよりはイオンガーデン?CI-2000で作った水の方が良いですよ、と主張したいらしいのだ。しかし、この表を注意してみると、測定した水温が0.3℃から0.7℃になっている。なぜこんな温度で測ったのだろう。低すぎないか?酸化還元電位は温度に依存する。どの程度温度変化に対して敏感に変わるかは、log(aO/aR)で決まる。イオンガーデン?CI-2000で作った水の−600mV〜−800mVという値を出すときには、当然同じ温度で測定したんでしょうね?そうでなければ比較することに意味がなくなる。また、体に良い水の話なら、体内に吸収されるときは水の温度は大体体温に等しいはずなので、36℃〜37℃での酸化還元電位の比較をしないと意味がないのだが。何でこんな低い温度で測定しているのだろうか。

 なお、引用ではあえてそのままにしたが、どうやら商品名には機種依存文字が使われているらしく、私の環境では、途中に「(監)」という括弧付きで1文字のものが表示されてしまい、せっかくの商品名を正しく見れない状態である。

 

 

(*1)『脳内革命』他、志水一夫(「トンデモ本1999 このベストセラーがトンデモない!!」と学会 著、光文社(4-334-97204-7) \1500


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