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甲14号証

甲14号証(原告:松井氏提出書類)

本件訴訟は2007年3月に第一審判決が言い渡され、既に確定しています。このページは、ネット上の表現を巡る紛争の記録として、そのままの形で残しているものです。

 htmlの性質上、元の印刷物とはフォントやレイアウトが違っているため折り返し位置が異なるが、できるだけ原文に忠実に再現した。


雑感306-2005.6.7「第1回口頭弁論の報告」

−−現在、OECDの会議に出席しており、通常の記事はありません。この報告は、出かける前の6月2日に書きました−−

(京都大学地球環境学大学院地球環境学堂教授 松井三郎さんから提訴された損害賠償請求事件)の第1回口頭弁論が、横浜地裁で2005年5月27日午前10時より開かれた。その日は、まさに風薫る5月という言葉がぴったりの気持ちの良い日。少し風が強いかなと言う感じだ。暑くもなく、寒くなく、緑がいっぱい。横浜はいいところ。

原告側は中下祐子さんのみ

驚いたことに、松井さん側での出席は中下祐子さんだけだった。松井さんも、その他の三人の弁護士、神山美智子さん、長沢美智子さん、中村晶子さんは来なかった。

この期日は、松井さん側が指定してきたものである。したがって、被告側は都合が悪くて欠席ということもあるが、原告側が出席しないのは、おかしいと思う。つまり、最初から出席する意志がないのだと思う。

松井さんは横浜地裁に出てくるべきだ

是非、松井さんは出てきてほしい。

私を訴えているのだから。知らない人を訴えたのではない。長いつきあいの知人を訴えたのだから。
団体や、組織を訴えたのではない。生身の個人を訴えたのだから。
礼儀としても出るべきだ。

陳述書

代理人の中下祐子弁護士によれば、松井さんの本人陳述書が出されるとのことである。

松井さんは、私の前で、自分の言葉で意見を言うべきだ。
私は、直接考えを聞きたい。
いや、直接聞かないと納得できない。

私も、陳述書を提出する。そして、出廷して、自分で意見の陳述をしたいと、弘中さん(私の代理人)にお願いしてある。

次回は7月15日

法廷の様子は益永さんの報告にあるので、省略。

益永さんの傍聴記
http://risk.kan.ynu.ac.jp/masunaga/index_J.htm

傍聴人が多いから、事情説明が必要かと裁判長(土屋文昭)から聞かれた時、事情は知っていると思うと答えたのだが、後で考えると、概要だけでも説明してもらった方が良かったかもしれない。傍聴に来て頂いても、次回以降どうするかを決めただけで、15分ほどで終わってしまったから。

第2回口頭弁論 7月15日(金)午前10:30
ラウンドテーブル方式(傍聴可)

答弁書の内容(解説)

答弁書の中の「被告の主張」として以下のようなことを書いた(文言を少し変え、註を加えた)

1.憲法第21条及び第23条からして、他人の学説あるいは研究発表の方法などについて、学問的見地から批判することは全く自由であり、その権利は最大限に保障される。厳しい相互批判がなくしては学問の進展など望むべくもない。

したがって、そのように批判されたことに憤慨して、それを「名誉毀損」などと評価して金銭的請求をするなどとということは、およそ学者・研究者としての立場をわきまえないものである。

2.甲1号証における被告の言論(雑感286-2004.12.24「環境省のシンポジウムを終わって−リスクコミュニケーションにおける研究者の役割と責任−」)が、被告の学者としての立場から、原告のナノ粒子の有害性についての問題提起のあり方を批判するものであったことは甲1号証を一読すれば明らかである。

すなわち、新聞は、往々にして、ニュース性のあるものを優先して、しかも刺激的な見出しを付けて掲載するのであるから、センセーショナルな見出しのついた記事を、何ら専門家としての判断を加えずに、そのまま掲げて、問題があるような話をするなどということは、参加者に誤った印象を植え付ける危険性が高く、専門家のプレゼンテーションとしては適切ではない。

3.本件で、原告が、新聞記事(原告の主張によれば京都新聞のようである)を掲げて、それを切り口として用いてナノ粒子について発表したことは事実である。

この基本的事実を踏まえて、被告は、そのようなプレゼンテーションは不適切であると批判したものである。原告の人格攻撃をしたものでないことは明白である。
 (*このことについて、後で説明)

4.以上のとおりであるから、本件提訴が理由がないのみならず、学問の自由・表現の自由の見地からして到底許されないものであることは明白であり、直ちに棄却されるべきである。  

なお、本件のような問題を訴訟の場に持ち込むことが不適当であることは明白であり、違法訴訟に当たるものと考えている。被告としては、原告が、冷静さを取り戻して、本件訴訟を速やかに取り下げることを期待するものである。以上

*新聞記事

すでに、雑感2005.4.19のB.名誉毀損事件のところで書いたことであるが、私が問題にしたのは、下記の環境省ホームページ、
http://www.env.go.jp/chemi/end/2004/sympo7_mats.html
にある、松井さんのスライドの3/3の二枚目のスライドである。

k14.jpg

このスライドには、2004年8月28日の京都新聞の写真がある。そのトップ記事には、異常に大きな文字の見出しがあって、「ナノ粒子 脳に蓄積」となっている。

この新聞記事のスライドを松井さんが、皆に見せた、私はそのことにひどく「驚いた」のである。その見出しの基になっている論文の内容は、その大きな見出しで伝えていいようなものではなかったからである。

そして、そもそも「学者が他の人に伝える時、新聞の記事そのままではおかしい。新聞にこう書いてあるが、自分はこう思うとか、・・・」と、専門家が新聞記事などを使って人に情報を伝えるとき、どうすべきかについて書いたのである。

繰り返して書けば、私が「雑感」の中で問題にしたのは、この答弁書の2.と3.にあるように、リスクコミュニケーションのあり方の視点から、センセーショナルな見出しのついた新聞記事の紹介の仕方について述べたものであった。

次回更新:6月21日です。