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当コンテンツの歴史について

ウェブサイト構築の紆余曲折と、なぜ研究室の公式ページが学外にあるのかについて。

始まりは、1999年2月6日。お茶の水大冨永研究室でたまたま使われていなかったPCにLinuxをインストールしてネットに繋ぎ、ウェブサーバーを立てました。冨永研究窒はマックユーザーばかりで、PCは装置のコントローラーとして使われているだけでした。私が1つ目の博士号を取得したけれどもまだ無職で、冨永研究室に居候して実験していた頃の話です。

この少し前に、大学院の同窓会に行ったところ、酒造会社に就職した後輩が「クラスターの小さい水で酒を造るとおいしいという話があるが本当か調べるように上司に言われた」と話しかけてきました。液体の水クラスターの話はとっくに潰れた、つまりクラスターの小さい液体の水など存在しないということがわかっていると思っていたのに、それがまだ十分伝わっていなかったことに驚きました。同窓会の後、ネット検索してみたら、水のクラスターを小さくするという触れ込みの浄水器の宣伝がたくさん出てきました。この誤解を何とかしなければ、と考えたのが、サーバーを立てて情報発信をするきっかけでした。

NMRのデータ解釈の誤りから水のクラスターを小さくできるという間違いが広まったのを指摘した後、浄水器の宣伝を調べて具体的に間違いを指摘するということを始めました。大学に置いておいてそれだけでは何ですので、「冨永研究室非公式案内」というタイトルで、ほとんど勝手に研究室の案内ページも作りました。まあ、冨永教授のチェックは入ってましたが。

実際の浄水器の宣伝にツッコミを入れると、当然、業者からクレームが来ます、記念すべきクレーム第一号は日本システム企画株式会社からのものでした。

2001年株式会社プロホームアドバンスから、サーバーを置いていたお茶の水大に、「水商売ウォッチングを見た客が商品を解約した」というクレームが届きました。当時はまだウェブの運用規則がろくに無かったため、サイトの公開停止が決まりました。私は当時阪大VBLに居ました。ありがたいことに阪大理学部の菊地先生のグループがコンテンツ丸ごと引き受けてくださったので、移転しました。

移転している間にお茶の水大はウェブの運用規則を整備しました。

プロホームアドバンスには、解約が本当ならその分を教授と私で支払う覚悟で「当サイトを見て解約したという証拠を出せ」とやったところ、証拠が出せない状態であることがわかり拍子抜けでした。

新しいウェブ規則に沿って2003年にサイトをお茶の水大に戻しました。規則に従ったことでサイトのタイトルを「冨永研究室びじたー案内」と変更しました。

このとき、研究室のページについては大学ではなく研究室の責任者が管理責任を負う、という方向で規則ができました。そうするべきだと主張するように冨永教授にお願いしたのは私でした。

ただ、学内でそのように決めても、嫌がらせで大学を提訴することまでは民事訴訟法の制度上防げないだろうということでした。そうなった場合にどうするかを考えるのが次の課題でした。

この後、私は山形大学に職を得ましたが、水商売ウォッチングやその他もろもろの水関連のコンテンツは冨永研究窒に当面置いておくことにしました。掲示板も含めて研究窒の活動と一体のものだったからです。職場のサーバーでは、講義の案内や、教養教育での学生とのQandAを公開していました。

この頃に、情報発信のあり方が随分変わりました。htmlのページと掲示板を併用するものから、個人でブログを作り記事にコメントをもらってトラックバックを打ち合う、というものが主流になりました。私も、ppogというスクリプトで作ったブログ「事象の地平線」を学内に置いていました。

お茶の水大の方で出来た規則をチェックするチャンスは意外に早く巡ってきました。私の掲示板への書き込みを理由として、株式会社マグローブの吉岡氏がお茶の水大だけを提訴しました。そこで、私と冨永教授が相次いで訴訟参加し、民事訴訟の当事者となって争いました。結果は原告敗訴でした。

つまり、大学だけを訴えたところで、情報発信した当事者はいつでも訴訟参加できるので無意味だということを実際に示したわけです。

ブログの方は、学生がコメント欄を荒らしたことに対して反論したことが原因で、私が学科教員によってキャンパスハラスメントの加害者に仕立てあげられそうになるということが起きました。このとき、規則に根拠が無いにも関わらず、ブログを学外に出せと強要されました。学外避難所が必要だろうと考え、レンタルサーバーを借りてcml-office.orgのドメインを取りました。Condensed Matter Lab.の略のつもりでした。いずれはこちらに研究室公式のコンテンツもミラーするつもりで、CMSとしてGeekLogを導入しました。新たにpplogpというスクリプトを用いて「Archives」というブログを作り、「事象の地平線」の内容はpplogpで出せるようにした上で、コメントの受付と更新を停止しました。

しかし、情報発信の方法が、ブログからツィッターに移行したため、更新頻度が減ってしまいました。また、GeekLogも更新と整備を怠っていたら、スパムコメントを大量に書き込まれて極端に遅くなってしまったので、一旦削除しました。あらためてCMSを調べたところ、Ploneが良さそうだとわかりました。しかし、Ploneはrootになれないレンタルサーバーでは動かせませんでした。そこで、学内のサーバーにPloneを導入し、講義の案内やQandAなどを入れました。

裁判が終わって間もなく冨永教授は定年退職し、お茶の水大のコンテンツを一旦全部山形大のサーバーに置きました。誤解されないように、「冨永研究室びじたー案内の記録」とタイトルを変えて保存しました。私が保守していた水に関する記事は、Ploneの方に入れて、更新を続けることにしました。

念のため教員個人のページの位置づけについて総務に問い合わせたところ、責任は教員個人にある、という回答を得ました。また、大学の顧問弁護士も、教員個人のページなど知らん、という内容で弁論していましたので、この見解に間違いはないだろうと判断していました。

2012年に、ブログのシステムをもう少し扱いやすくするため、学外のサーバにWordPressを導入しました。スクリプトを書いて、「事象の地平線」「Archives」の記事とコメントを変換して一括して流し込みました。現「Archive」は2代目ということになります。しかし、記事に張り込んだ画像のリンクが切れたりしたため、「事象の地平線」と初代「Archives」も閲覧はできるようにして公開を続けることにしました、学内の方にはWordPressで「Ver.2」というブログを作りました。MySQLのインストールからやってみたかったのと、公式ページに取り込む前の記事の置き場所を作りたかったのと両方です。

2013年8月、井本剛司氏から「事象の地平線」過去ログに書かれたコメントに対して削除要求がありました。私は違法な内容ではないと判断したので、その旨井本氏に回答しました。元々学内に置いていた頃の内容についての削除要求だったので、「Ver.2」の方に削除要求があったこととその理由について書きました。そうしたら井本氏は、私とのメールのやりとりを誰でもダウンロードできる状態にした上、関係ない学部の関係ない先生にまで、そのダウンロードURLを示したメールをバラ撒いて、プライバシーの侵害だとクレームを付けました。

これがきっかけで、改めて大学に問い合わせたところ、yamagata-u.ac.jpのドメインの内容の責任は大学にある、という回答でした。それはそれで一つの管理ポリシーです。法人が違えばポリシーが違っても不思議はありません。また、掲示板やブログのように学外の人間が書き込めるサイトを学内に置くな、と理事に言われました。そういうサイトに学内からリンクすることも問題あがあるということらしいです(この辺は伝聞で文書が来ないので今ひとつはっきりしない)。

私は、学内のページであっても研究室のページについては教員が直接責任を負うべきだと考えていますが、作った当事者ではなく組織に文句を言うクレーマーが存在する以上、教員に責任を負わせる決断が出来ないのは仕方のないことかもしれません。今後も異論は述べますがポリシーには従います。しかし、これまでずっと研究室の公式ページと掲示板等は一体のものとして運用してきましたし、重要な情報を提供していただいたことも多々ありましたので、ブログと掲示板を切り離すつもりは全くありませんし、リンクを削除するつもりもありません。ですから、研究室の公式ページを全て学外に移転させるというのが今回の解決策となりました。なお、研究室の公式ページを学外に置くなという規則はありません。移転にあたって、VPSサーバを借りてPloneをインストールしました。ファイルを置くディレクトリ構成が変わったので、pplogpのブログは見えなくなりましたが、既に全コンテンツを引き継いだWordPress版Archivesがありますので無問題です。

学部長を通して、理事には、学外者が書き込めるページに学内からリンクもするなという内容を早く明文化するように、学部長を通して求めているところです。これをやれば人文学部公式のFaceBookが真っ先にひっかかりそうなので、そのあたりをどううまく処理するかお手並み拝見です。

 

情報発信の方法はどんどん変わっています。今はツィッターとFaceBookが人気で、LINEが伸びてきていますが、今後はわかりません。特に、震災以降はツイッターの方が情報発信の機動力が圧倒的に高い、というのを実感しています。一方、2ちゃんねるが有料会員情報の流出事件を起こしましたが、以前の状況から予想できる程には、この事件は盛り上がっていません。一時期に比べて人の興味と関心を集めていないように見えます。こんな状況では、研究室の公式ページを学内に置くか学外に置くかというのは大した問題ではなくなってきているだろう、というのが正直なところです。