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第10回
講義内容
- 表面の現象と水素発生反応
- 酸素発生反応
- 表面では意外なことも起きる
- どうして活性水素の話は怪しいのか
- 前回のまとめ
- 水と生物:化学感覚、水応答、生物の特徴
- 特許について
第10回の内容に関する質問とコメント
- 「硬水はカルシウムとマグネシウムの濃度が高い」と書いてありました。ということは、軟水より硬水の方が体にいいんですか?
→濃度が高いといっても、含まれている絶対量はわずかである。カルシウムを摂りたければ牛乳を飲んだり小魚を食べたりする方がよっぽど効率がいい。また、カルシウムは重要だし必要だが、摂りすぎると、結石などが出来やすい人は症状が悪くなることもある(健康な人だと何でもない)。マグネシウムについては、普通に生活していても、欠乏症になったという報告はないが、過剰になると問題がある。が、過剰になるのは、マグネシウムを溶かした水溶液を飲むようなことをした場合で、飲料水を飲んだ程度で過剰になった話はない。軟水と硬水で味が違うことは確かだが、体にいいわけでも悪いわけでもない。
- 純水は電気を通しづらいということですが、高圧で密閉して沸点を高くした状態の水は絶縁体となりますか?もし可能なら最も環境に優しい絶縁体になると思います。
→絶縁体にはなるが、絶縁体のまま長期間保つのは難しいだろう。金属片を入れておくと、どうしても錆びたりイオンとなって溶け出したりして、導電率が上がってくる。
- 中国武術に八極拳というものがあります。その武術の本当の達人というのは浸透勁という技を使うことができます。浸透勁というのは、人間の体の70%は水分ということを利用して体の水分に振動を加え、直接臓器に大きなダメージを与えるというものです。可能なことですか?ちなみに八極拳の創立者の李書文はできたと本で読みました。
→結局のところ、打撃系の技は、横軸に時間、縦軸に力ををとったグラフに表され、それが体のどの部分に作用するかで効き方が違ってくる。格闘技ごとに測定してグラフを描くとそれぞれ異なっていて、中国拳法の「発勁」は力が働いている時間が他の技より長いという結果だったはず(確か何かの本で読んだが、何で読んだか忘れた。知ってる人がいたら教えて欲しい)。体育大学や体育系の学部などで測定している人が居るはずだから、ネットで探してみてはどうか。
水の振動というが、分子レベルの振動はずっと速いので人間の動作する速度では追いつかない。打撃の疎密波を伝えるとしても、水中の音速は1500m/秒であり、これに匹敵する速度を出すのはまず無理である。拳法の流派の創立者ということなら、李書文は非常に効果的な打撃方法を会得していたのだろうが、水だけ選んで力を加えるのは物理的には難しいのではないか。
なお、中国ではいろいろ大げさに表現することもあるので……。
- 特許料納付にかかる金額はいくらですか?特許は別に高度な発見でなくてもいいのでは?主婦が足のツボを刺激するスリッパというので特許をとっているが高度な物ではないと思う。
→特許法107条1項によれば、毎年の金額が、1−3年:2600円+200円×請求項数、4−6年:8100円+600円×請求項数、7−9年:24300円+1900円×請求項数、10年以降:81200円+6400円×請求項数。後ほど高くなる。請求項がいくつになるかは、特許の申請にいくつ書かれているかによる。
また、発明と呼べるほど技術的に高度ではないが若干の工夫で新たなものが生み出された場合は、実用新案として登録を受けると保護される。主婦の発明はこちらではないか。もう一度確認してみてください。
- 活性水素の話を聞いて、マイナスイオンのときもそうだったけど、みんなが体にいいと言うからついそっちの方を買ってしまうという意識が自分の中にある(わからない人なら誰でも)から、気をつけてたい。
→これについては、弁護士の紀藤正樹氏が「インスタント志向」という呼び方をしている。例えば痩せるには、きちんと運動して努力して痩せないといけないはずなのに、食品や薬で手軽に結果を求めたがるというのが「インスタント志向」。同様に、資格をとって稼ぎたいとか、美しくなりたいからエステに行くとかいうのも全部「インスタント志向」で、こっちで引っかかるとローンを組まされて高額の役立たずの教材を交わされたり、効果のないエステティックサロンの契約を結ばされたりすることになる。本当なら何らかの努力が必要なことを「手軽にできる」かのように主張するものには、だましが含まれている。「インスタント志向」が含まれているかどうかが、一つの判断基準になるのではないか。
- 化粧品などの雑誌などで健康・水・ダイエットなどの情報がたくさんのっています。この授業を受けてから信用しないようにしているのですが、ウソと本当の見分け方がまだちょっとわかりません。コツはあるのですか?バラエティー番組でよく○○大学教授が出てきます。言っていることは信用してもいいのですか?
→科学だけではなく「インスタント志向」の有無という視点でも考えてみるとよい。バラエティー番組の大学教授は、本当にその分野の専門家かどうかから調べないと、信憑性に疑問がある。専門家であっても、TV番組は編集次第でかなり違ったニュアンスで情報伝達がなされることもある。まあ、ネタだと思って楽しむのが無難では。
- 「特許出願中」という言葉に誤解をもっていた。それにしても好きなことを書いていいというのはちょっとひどいと思った。でもプリントの最後の「単なる不勉強」という一言で不本意ながら納得してしまいました。僕みたいに「特許」について誤解していた人は多いと思う。
→「B-Files!」というサイトhttp://b-files.hp.infoseek.co.jp/index.htmlが参考になる。とんでもない特許を分類して集めて公開している。大抵は日本語の解読自体が困難だ(=何言ってるかさっぱりわからない)が、それなりに味わいもあって楽しめる。
- ブルーベリーは本当に目が良くなるんですか?
→「目が良くなる」がそもそもわからない。暗いところでももっと見えるようになるのか、逆に明るすぎるところでもそんなにまぶしく感じず見えるようになるのか、視力検査表で下の方まで見えるようになるのか、結膜炎などの感染症への抵抗力を増す働きをするのか、何かもっと他の目の病気の予防効果があるのか……。このへんの情報がはっきりしていて、含まれている成分との関係が出ていない限り、デマか都市伝説だと判断しても良いのでは。
- ウーロン茶は本当に飲むとやせるんですか?
→痩せるかどうかはウーロン茶の問題ではなく、消費カロリーと摂取カロリーのどちらが多いかの問題。
- 先生はどのような研究を専門にしているのですか?
→液体の化学物理。主に光を使って、分子間の相互作用や運動を調べて、ミクロに見て液体がどうなているか調べている。水、水溶液、有機溶媒、何でも、比較的分子量の小さい液体であれば全部研究対象である。
- アロエは体にいいんですか?
→「体にいい」というのは曖昧すぎてさっぱりわからない。もし、「体にいい」しか情報が無いなら、それはほとんど何も言ってないのと同じ。確実に言えることは、アロエばっかり食べていたら栄養が偏って体に悪いだろうということだ。いろんなものを食べるのが、リスク分散という点でも望ましい。
- よく食べ物アレルギーの人がいるんですが、アレルギーになる人とならない人の違いは何ですか?
→体にとって異物(抗原)が体内に入ってきたとき、体は抗体を作って異物を排除するしくみを持っている。これを抗原抗体反応(免疫反応)というが、これが過剰に反応した場合はアレルギーとなる。アレルギーになる人は、特定の食物の成分に対して抗体が反応して起きる。ただ、どうして人によって、そういう抗体を作ったり作らなかったりするのかはわからない。メカニズムは研究されていて、正常な人とアレルギーを起こす人の違いはいろいろわかってきているが、なぜ、ある特定の人がアレルギーを起こすのかはわからない。
- 今日、情報が入り乱れていますが、この前インターネット上で相対論が間違っているというサイトがありました。自分は高校時代物理をとっていなく、大学で一応相対論をとっていますが、そのサイトの間違いを指摘できませんでした。早くこういう情報は嘘だということを見抜けるようになりたいですね。
→相対論が間違っていると主張する人は、世の中には多い(というか単に目立つ)ですが、大抵の場合は、単に数学についていけてないだけだったりする。実のところ、相対論は高い精度で成り立っている。運動する物体の上の時計が遅れる効果(特殊相対論)と、地球上より遠くて重力場の影響が小さいために時計が進む効果(一般相対論)の両方を考慮しないと、GPS(カーナビ)がまともに動かない。衛星側の時計が合ってないと位置決めできないわけで。GPS用の衛星を打ち上げたとき、米軍は半信半疑で、相対論の効果を入れた計算プログラムと入れない計算プログラムの両方を実装していたのだが、すぐに時計が狂い始めて、相対論の効果を取り入れることになったのは有名な話。なお、ジェット機を二機用意し、それぞれに精密な原子時計を積んで、地球を反対回りに一周させると、出会った時にはわずかだが時計がずれているのだそうな。まあ、カーナビのお世話になっておいて相対論は間違っているなどと言うなと。
冗談抜きで、都立大の千代島雅氏(専門は哲学)は、「相対論と統計力学は間違っている」と主張し(もちろん初歩的なところで間違ってるのは千代島氏の方だが)、なんと、青山学院大学がこの人を非常勤講師にしたので、青学でもそういう講義が行われるようになった。理学部物理学科もあるのに、一体何をしているのだろうか>青山学院大学。
- 「前回の講義に対するコメント」で「活性酸素を除去するとラットの寿命が短くなる」とありましたが、もしかして人も二酸化炭素や窒素がなくなると何か不具合が起こるんでしょうか?今までは酸素が含まれていれば大丈夫かと思っていたんですが……。最後の特許の話は面白かった。
→酸素濃度が高すぎても人間の体は対応できないし、低すぎれば窒息する。
- 車のバッテリー液として蒸留水をつかっても大丈夫なのか?
→もともと水道水を使っていたところに、代わりに蒸留水を使うのであれば問題ない。
- 清涼飲料水に対する質問で、水は胃から吸収されにくく、大量に飲むと”水中毒”を起こして気分が悪くなるそうなので、清涼飲料水を飲み過ぎると”だるい”と感じるのではないかと思いました。(清涼飲料水:のどの乾きを癒し、清涼感を覚えさせる非アルコール系飲料の総称)
活性酸素に対する自分の知識が少しまちがっていたようで、指摘ありがとうございます。プリントで薬理作用があると書いてあったので詳しく知りたいと思いました。
→代表的なものは殺菌作用で、感染症にかかった時に、体内に入り込んだ菌を殺すために活性酸素が作られる。活性酸素を消去するナントカが本当にその効果を(抜群に)発揮するのならば、感染症にかかったときは絶対に飲んではいけないということになる。逆に言えば、そういう注意書きがない製品の効果はほとんど無いだろうということで……。
- 今日の内容は今までと違った傾向だったので少し驚きました。あとイオンチャンネルの意味がよく分からなかったのですが、イオンチャンネルって何ですか?
→細胞膜を貫通しているタンパク質で、筒状の構造をしていて、その中をイオンが出入りするようなもの。他の分子がくっついたり、細胞膜内外の電位差が変わったりすることで、特定のイオンを細胞内に取り込んだり、細胞外に出したりする。
- ”表面では意外なことも起きる”の部分で説明しているのは、いわゆる”触媒”についての話ですか?だとすると”表面の影響”というのが気になります。それが触媒を入れるとなぜ反応の進行が早くなる(活性化エネルギーが低くなる)のかを説明してくれるものなのですか?
→説明してくれるはずだが、触媒は専門外なので詳しいことまではわからない。金属表面にくっつけば、電子の軌道もエネルギー準位も変わり、反応に必要な活性化エネルギーも変わることがある。
- 私は、野菜があまり好きではなくてほとんど食べないのですが、「1日にコレ1本飲めば1日の野菜の栄養がとれる」というジュースを飲んでいます。ジュースの野菜と生の野菜はほんとうに同じ成分を含んでいるのでしょうか。
→普段飲んでるジュースの成分表と、食品成分表を見比べればわかるはず。
http://food.tokyo.jst.go.jp/に、食品成分データベースが公開されているので、これを見て、普段飲んでるジュースの成分と比べてみてはどうか。
- 最近、蒸気でものを暖める電子レンジというのが話題となり、それはカロリーダウンもされるということを聞きましたが本当でしょうか?
→電子レンジではなく、シャープのウォーターオーブンではないか。余分な塩分や脂肪分を落とすと説明されていること、使用後はオーブン内の水を捨てなければいけないことから、食物の下に、加熱で出てきた脂肪などを受けるようになっているのではないか。確認してみてほしい。実際に取り除かれた脂肪の分だけカロリーオフになるはず。
- コメントを見て、バラエティー番組はもとから信じていなかったけど、NHKでも信用できないものがあると知ってびっくりした。
- 最近、買い物をするときに、売り文句に「本当かよ!!」と疑うことが多くなりました。しかし、理由などが書かれている物はめったにありません。また、最近は無駄遣いが減りました。これからも広告やTVなどの文句に流されないような知識をつけていきたいです。
- 電子レンジの話で、解凍に時間がかかる理由がわかったのでよかった。
- エアコンをつけるなら窓は閉めた方がいいと思う。熱い(・_・;)
- 今日は少し暑かったのでクーラーを使ってほしかったです。
- 板書がなく、プリントに書き込みながら聞いていたのでわかりやすかった。
- 難しかったけど、よく聞いていたらわかりました。
- ちょっと難しかったので、しっかり理解できるようにもっとちゃんと話を聞こうと思う。
- 今日の講義もおもしろかった。
- 水とひと口に言ってしまっても、奧が深く毎回びっくりする。身の回りにあるものほど良くわかってないのかもしれない。
- 特許について知れてよかった。言葉だけで何なのかよく分からなかったから。(他1名)
- 『特許取得』という言葉が書いてあるだけで、その商品はきちんと認められたものだと勘違いしていました。確かに『特許出願中』と書いてあるけれど、あやしい商品はあると思います。
- 酸素発生反応について、溶液のpHによって何が起きるか違ってくるというのは、とてもおもしろいと思った。
- 特にないです(他1名)
- 先生はひとりひとりの質問にきちんと答えていてすごいですね!いつも真剣に読んでいます。あと、レポートについて詳しく教えてください。
→http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/support/general/general_education_report_howto.html
に公開中。
順番にたどり着くには、http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/の左側の「講義サポート(ちょっとずつ追加中)」をクリックし、画面が変わったら、左側メニューの「講義サポートのページ」をクリックし、右側の科学リテラシーの「レポート製作ガイド」をクリックすると、説明の文書が出る。
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