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ウチは暮らしの手帖じゃない(2001/10/22)

 こういう内容のサイトを作っていると、読んだ方からのメールをいただくことがある。水そのものに関する質問にはもちろんわかる範囲で返事を書いている。ところが中にはこんなのがくる。

「バイオスペクトロニクス研究所のリー・H‐ロレンツェ博士は、水の特質を利用して、ある能力を水に覚えさせる実験を重ねています。例えば、世界的長寿村で知られるコーカサス地方で愛飲されているヨーグルトの機能・・・ビフィズス菌や栄養分の要素・・・を水に覚えさせて、長寿の水を作るという試みを行いました。水にはコピー能力があり、薬をコピーすることも出来るといいます。水が対象物の分子を記憶し、それを人間の細胞に伝えることができるという仮説もたてられています。」

や、あらゆる病気が治ったなどの体験談もふんだんです。

ネタ提供かと思ったら自社サイトの宣伝メールであった。ウチが、まさに水に記憶力があるなんていう宣伝を批判しているサイトなのに、一体なんでわざわざ送ってきたのかが謎である。

貴HPでは、水についてのいろいろな情報を研究されているようですので、新しい情報を提供します。
水の名前は・素美霊(すみれい)といいます。
その昔、底津地球の大宝(そこついわねのおおたから)と言われ、奈良時代の天平の疫病を治したという言い伝えのある水です。
この水から(煮詰めることにより)古代・「出雲石」といわれる、いまでこそ科学の力で証明されていますが、マイナスイオンが放出されている石ができたのです。

 マイナスイオンの話も、ちゃんとした測定結果が出るまでは信用しないというのが当方の立場なんだけどなあ。マイナスイオンの定量の段階では、測定器の原理がなかなか示されないし測定時に湿度の影響を受けているかどうかも情報がない。マイナスイオンがあったとしても体にいいかどうかを評価した試験は見当たらないし。

私どもは、貴方様のホームページにバナーもしくはリンクを
貼って頂きスポンサーという形で毎月決まった金額をお支払い
したいのですが如何なものでしょうか?

私どものホームページの内容を少し説明させていただきます。
このホームページでは、「枇杷の葉温圧療法」の体験例や
効能を判りやすく一般の興味のある方にご説明しております。
ホームページの趣旨は、より多くの方々に「枇杷の葉温圧療法」
を体験していただき、皆さんの健康のお手伝いをするということです。
無論ホームページ内で、購入を希望される方には、オンラインで
販売も致しております。
詳しい内容はURL: http://www.nanotech-jp.com/biwa/
   でご覧になってください。

 税金で運営されている国立大学であることを説明して丁寧にお断りした。そのあと、「健康情報の読み方」をやっている小内先生に問い合わせたら、同じメールを小内先生も既に受け取っていた。小内医師のページは、民間療法や健康関係の情報について医学の立場から批判を行っている。どうも、相手のウェブページの中身を全く読まず、この手の話に批判的である人にもおかまいなしに宣伝を送っているとしか思えない。逆効果ではないだろうか。

 一般の人からの質問は、この宣伝のこの記述がよくわからない、というものが多いが、中には漠然と、

 浄水器を購入予定なんですが、どれを選んだらいいかわかりません。おすすめはどれでしょうか?

 製品の評価試験をしているわけではないので、どの浄水器、あるいは活水器を選ぶといいかという情報を私は持っていない。こういう質問をされても答えようがない。まあ、「水質検査などの性能と値段を見て納得行くのをお選びください。病気が治る話はちゃんと臨床試験が行われいることが判断基準で、体験談だけの場合はあまり当てにはなりませんよ。」と無難な返事を書くことになるのだけれど。

 そうするうちに、富永教授から連絡があって、研究室宛に「活水器」が送られてきたということだった。宛先は研究室宛、宛名は指定していなかったらしい。学内を探したが送られる覚えのある人はおらず、結局、ある会社が問い合わせのつもりで送ったことが判明したとのことだ。

 ウチは暮らしの手帖じゃないし、製品テストもしていないので、個別の製品の評価試験を依頼されてもどうにもなりません。浄水器や活水器の評価には、水に溶けている微量な成分の分析が必要になりますが、当方は分析化学が専門でもないしそういう設備もありません。

 また、「水商売ウォッチング」では特定の製品の宣伝をすることもけなすこともしません。特定の製品の宣伝の内容についての批判はするが、それは製品そのものの評価とは別問題である。

 もっとも、例えば性能の宣伝で「有毒物質を分解」といったフレーズがあるのに、やっている有毒物質の定量法が変だというときは、そのことについて具体的な指摘はすることがある。その結果として、装置の性能が疑わしいという印象を与えることになるかもしれないが・・・。それでも、その後正しい分析法でやって結果が良ければ、それを宣伝してくれれば何の問題もないはずです。

 宣伝文句が変というのと製品の質とは、現状では必ずしも一致しない。普通の企業が普通に製品を作っているのに、宣伝内容に変な話が容易に入り込んでしまうということが、知識の普及という観点からは問題だと思う。つまり、普通に情報を集めたのではまともな情報に当たる確率が少なすぎるということを意味しているからだ。