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速進(1999/04/22)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 磁気処理活水装置の販売。

 まず、

磁気処理装置により、スケール(錆)付着防止と防錆効果を発揮します。

とある。これは誰でも検証・確認可能だ。水道管の赤錆が除去できるという話は以前からあった。ただし、そのメカニズムはまだはっきりしないが。
 その次がアニメーションつきの説明で、

『おいしい水』『小さい水』
水道水や井戸水などで通常12分子程度で形成されてい
る水の分子集団(クラスター)の数を少なくしたクラス
ターからなる水と言うことになります。この「小さい
水」は、水中の過剰の気体(ガス)を空気中に放散させる
性質がある為、その分PHがアルカリサイドへ移行し、
バクテリアや藻類の繁殖を抑制し、衛生的でおいしい水
をつくることができます。

とあり、磁石のところを通過すると水分子の集まりが小さくなるという絵を表示してくれる。何度も書くが、水のクラスターの大きさをちゃんと測定した実験はないし、従って小さいクラスターの水がおいしいという話に根拠はない。1つだけいえることは、温度が上がれば分子運動が激しくなって、水分子間の水素結合が切れやすくなるので、クラスターが測定できたとしたらちいさくなるだろうという予想をすることができる、ということである。しかし、まだ予想である。上記の説明で、過剰の空気を除いたり、衛生的にしたり、という話をあわせると、この装置で作った水って、湯冷ましとどこが違うのだろうか。

 「磁気処理した水はおいしい」という結果は、磁気処理した水とそうでない水を飲み比べてみればわかる。個人差があるだろうから、あるていどの人数を集めて同じ条件でテストすればよい。先入観を除くためには、カップを2つ用意し、どちらに磁気処理した水が入っているかということが飲む人にわからないようにしておいて、どっちの水がおいしかったかアンケートを取る。こういうテストをちゃんと行って「磁気処理した水はおいしい」というのなら、それは本当なのだろう。でも、おいしい理由の説明が「水のクラスターが小さいから」だというのは相当無理があるし、クラスターを水の性質の評価の指標として使うということが全く確立していない現在では、ほとんど嘘になる。

 磁気処理された水の性質にいくつか上がっているが、これは詳しい実験条件も書いてないので突っ込みようがない。「実験したらこうなりました」ということなんだろう。でも、この実験結果を説明するのはかなり大変そうだ。水道水の不純物ってけっこうあるから、その成分をちゃんと押さえて、磁気処理の前後で何がかわったか差を出すところから始めないとうまく行かないと思う。大学でやるにしても、全部の測定を1つの研究室ではまかないきれないから、いくつかの研究室で集まってプロジェクトでも立ち上げないとしんどいだろう。

 まあ、原理はともかく効果があるので売りますってのは、企業の姿勢としては何の問題もない。測定の方法と結果とかをちゃんと書いたパンフレットを作ってくれるとなおいいんだけど。しかし、水のクラスターの話だけは、ちゃんと測定してから出してほしい。リストに上がっている測定結果を説明するのなら、水のクラスターなど持ち出さなくても、水に溶けている不純物の様子が変わったということで説明可能なはずだ。


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