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磁気活水器(1999/04/19)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

ご注意:このページは、元ネタとなったウェブサイトが閉鎖され、新しいページも見つからないため、実態に合わなくなったという理由で商品名を消去し、若干の修正を加えて掲載しています。似たような宣伝文句をどこか他で見かけたときにでも活用してください。(2002/06/10)

 永久磁石を用いた磁気処理水製造装置を販売している。

 まずトップページに、

磁気の作用でクラスターを小さくし、水を活性化する装置です

とある。どうやってクラスターの大きさを測定したのだろうか。他でも書いたように、液体の水のクラスターサイズをちゃんと求める方法があるなら、一番喜ぶのはうちの研究室を始めとする水の研究者なのだが。

効果の詳しい説明を見ると、

クラスターが小さくかつ熱伝導率が高いので
ご飯、お茶、お味噌汁、コーヒー、麦茶など
とても美味しくなります。

とあるが、これと他の項目が矛盾しているように見える。他の項目とは、「汚れを落とすとともに雑菌の繁殖を抑える」「水道水の不純物が除かれる」「肌に優しい軟水になる」「汚れを落とす効果がある」「植物の成長が早くなる」である。

 これらの項目は、磁気処理水製造装置の原理はともかく、「不純物を除く効果がある」ということで説明できる。過剰なイオンが入っていなければ、水が肌にやさしくもなるだろうし、洗剤のあわ立ちも良くなって汚れがよく落ちることが期待される。このとき、水のクラスターは大きくなると考える方が妥当である。水分子同志のつながりを邪魔していた不純物が減るのだから。(注意:あくまでも、「水のクラスター」という概念は仮説である)

 なお、熱伝導率が高いというのは、測定結果なのでとりあえず信じることにする。実験がちゃんと行われたなら、多分事実なのだろう。この結果を、クラスターサイズの変化で説明できるかどうかは不明だが。

 よくわからないのが、浄化槽に対する効果で、

磁化作用により浄化槽内の酸素発生量が増加し、好気性バクテリアの活動が活発になり、浄化槽の臭いが大幅に低減します。

とあるが、「雑菌の成長を抑える」というのと矛盾しないのだろうか。「雑菌」って、本来そこにいてもらっては困る菌のことをいうので、立場によって具体的にどの菌をそう呼ぶか違ってくる。ヨーグルトを作る人にとっては、発酵に必要な菌以外のものはすべて雑菌だし、布巾を清潔にしたい人にとっては、布巾にくっついたヨーグルト菌は雑菌となる。まあ常識的に、台所や食器を清潔にしたい人にとっての菌について考えることにすると、ほとんどどの菌でも雑菌ということになるだろう。浄化槽に対する効果を信じた場合、好気性の雑菌なら活動が活発になるので期待した効果と逆になりそうだ。水そのものに、過去にかけられた磁場の状態を記憶する効果はない。うまく水処理をして不純物を減らすことで、浄化槽の様子が変わるというのならわからないでもないが、それを磁化作用とは言わないだろう。それとも、錆に寄与するはずの酸素が、磁石の作用で錆ができなくなるからそのまま浄化槽に到達するということなのだろうか。それでも、それを磁化作用とは呼ばない。

衛生能力に富む磁化イオン水のために、衛生機器やシンクに付着するヌルヌル、汚物等が減少し、衛生面での効果には抜群の威力を発揮します

磁場をかけるだけでは、イオンの存在量を大きく変えたりはできない。もしかしたらこの製品はアルカリイオン水製造装置も組み込まれているのだろうか。詳しい説明にたどりつけるかと思って、「ご質問・お申し込みは」という項目をクリックしたが、うまくつながらなかった。日をあらためてやってみよう。

赤錆防止効果についてはちゃんと書かれている。

追加情報(1999/12/20)

 この、磁気活水器のパンフレットを持っている方から、その一部抜粋をメールにて知らせていただいたので掲載する。ありがとうございました>元岡様。

磁気活水器によるクラスターの変化
水道水のクラスター:112.4Hz
磁気活水器のクラスター:65.7Hz

 クラスターの変化は凄まじい速さで起こっていることや、また分子レベルの変化であるため、ミクロのまたミクロという非常に小さな世界であり、通常、我々の感覚とはへだたった非常にイメージしにくい現象です。クラスターの大きさは直接には観察できないため、通常NMR(核磁気共鳴法)Nuclear Magunetic Resonannceという方法がとられます。これは医療にも使われているMRIと原理的には同じ物です。
 このグラフに表されている部分で重要な項目はHz(ヘルツ)の単位で表記されている数字で、これは何回という意味です。水という物質は、原子核の周りを運動する電子の移動により電場が形成され、その結果として磁場が形成されます。この磁場の共鳴現象を捉えるのがNMR法です。水の分子はくっついたり、離れたりを繰り返しているわけでこの速度が速ければ自然と集団であるクラスターが小さくなり、遅くなればクラスターが大きくなってくるわけです。この装置で計測しているのは水分子と水分子が結合している間に何回共鳴が発生したかということです。水道水が112.4Hzということは112.4回共鳴を起こして離れたということです。これに対して磁化水は65.7回共鳴を起こしただけで離れてしまったということで、その分くっつき合った分子が少ない、すなわちクラスターが小さいということと捉えられます。
 端的に述べるならば、長くっくっついていれば固まりは膨れ上がり、短いならば膨れるまえに離れていく、ということです。別の表現をすれば、分子運動が活発であればクラスターは小さく、そうでなければクラスターが大きいともいえます。そしてこの曲線グラフはその違いを目でみられるように表現したもので、MRA(Magnetic Resonance Anarizer)という装置です。

 付属のデータは、
「グラフはNMRのデータではないかと思われますが、何しろNMRのデータなどまともに見たことが無い物でよく分かりません。X軸のみでY軸の表示のないグラフで、センターに0(原点)があり、左に向かって100、200、300・・・右に向かって-100、-200、-300そしてHzの表記があります。原点の上にピークを持ってくる形で2本の曲線がありピーク幅の狭いものが磁気水、幅の広いものが原水となっています。17O−NMRの表記が見えますので、NMRのデータなのではと考えたのですが・・・」
というものらしい。

 パンフレットの第1段落はかろうじて正しい。クラスターの大きさは直接測定する方法はないし、間接的に何らかのモデルを仮定して議論するためにNMRが使われることがある。ただし、使われるのは線幅と関係するT2緩和時間ではなくて、T1緩和時間の方なのだが。

 第2段落は1番目と4番目の文以外は完璧に意味不明である。
 スピンの説明として、初学者向けの古典的説明では回転運動する荷電粒子というものを用いることもある。NMRでは、核スピンの共鳴を測定するわけだから、まずは回転する原子核を考えて、核のスピンというものを導入するべきだろう。「電子の作る磁場の共鳴現象」というのは、共鳴の主体が何であるかを誤解しているとしか思えない書き方である。正しくは、核スピンに強磁場をかけると核スピンのエネルギー状態がいくつかに分裂し、そのエネルギーの差と照射したラジオ波の共鳴である。
 4番目の文は、たとえば純粋な水でNMRのT1緩和時間の温度依存性を測定した場合の解釈としてならあり得る説明である。しかし、水道水のような不純物が多く、また不純物の成分が必ずしも一定でないものに対してそういう解釈を当てはめるべきではない。

 NMR分光器では、水分子同士が結合している間の共鳴の回数は測定できない。説明を読む限り、水道水の17O-NMRの線幅が112.4Hzで、プロスアクティブウォーターの17O-NMRの線幅が65.7Hzであるらしい。水の17O-NMRの線幅は、プロトン交換時間とT1緩和時間の両方に依存する。純水に少量の精製された電解質を溶かした場合は、T1緩和時間が変化しない(水分子の回転運動が変化しない)ので、線幅の変化からプロトン交換時間を得ることができる。常磁性であるような不純物が溶けている場合は、T1緩和時間の値が違ってくるはずで、そういうときに線幅からプロトン交換時間がどの程度議論できるか疑問である。いずれにしても、線幅だけ考えている限り、クラスターを議論できるような分子全体の回転相関に関する情報は得られない。線幅は、プロトン交換時間やpHにも影響されるので、分子運動が活発かどうかを知るには別途T1緩和時間を測定する必要がある。

 第3段落についてだが、まず、MRAとNMRとは何の関係もない。MRAは、「波動」測定器であるが、「波動」はインチキであることがすでにバレている。別冊宝島「トンデモさんの大逆襲」に記述があって、「波動測定器」には、磁気を測定する回路も共鳴を測定する回路も存在しないことが確認されたようである。今更「嘘でした」とも言えないので関係者全員ダンマリを決め込んでいるという話なので、ぜひとも「波動」測定の部分はパンフレットから削除することをおすすめしたい。評価法にインチキ「波動」を使っている時点で、せっかくの製品の値打ちが地に落ちている。

なお、このパンフレットに添付されていたデータの説明については、

また、このグラフには「東京都青梅市新町1769 東洋化学株式会社」として測定者が示され、ごていねいに印鑑まで押されています。東洋化学株式会社と聞けば、私のような有機化学出身のものは中堅化学メーカーの東洋化学(株)を想像してしまいますが、問い合わせてみたところ、この住所には関連施設等一切ないそうで、仮にかの地にそのような名前の会社があったとしても別会社のようです。

というところまで調べられたようです。ご苦労様です。