雑記帳

私は無関係だ(1999/04/14)

 今年は、千葉大学で集中講義をすることになっている。機会を与えてくださった先生方には感謝しつつ、講義のための資料の準備などを始めている。親しい知人や仲間には、そういう話もちらっとはしていた。

 連絡があったのが3月に入ってからだったため、シラバスの印刷に間に合わず、先生方が入手した初期のバージョンでは、講義題目の「凝縮系物理学特別講義」は存在するが半期の通常の講義で、講師の名前も具体的な内容も別のものになっていたそうだ。私のところに送られてきたバージョンでは、講師の名前のところだけ私の名前になっていたが、切り張りの跡がしっかり見えていて、講義内容は半導体の話を半期にわたってすることになっている。もちろん学生には、掲示板にて変更通知が行われており、講義の第1回目は、私に声をかけてくださった先生がとりあえず指定された教室に行き、受講票受け取るとともに詳細の説明をしてくださったので、掲示板をうっかり見忘れた学生へのフォローもちゃんと行われている。実は私も、前日に別の知り合いの先生から「明日からですねよろしく」なる内容のメールをいただき、集中講義のはずなのにと不安になって連絡したら、まあそういう状況だとわかったのだった。

 実際にやる予定なのは、水その他液体の研究の話で、レーザーラマン分光とマイクロ波分光の実験という立場からまとめたものである。当サイトの研究内容紹介のところにあるような話を、学部でやる物理学の話とちゃんとつながるような形にまとめようと、今いろいろ考えている。こういうことをすると、自分も基礎からちゃんと考え直すことになり、私にとっても勉強になる。

 ところが。入学式も済んで、進学・進級する人は今年度の履修案内をもらって、どういう授業をとろうか見当しているというこの時期に、うち(=共同研究先&居候先のお茶大)の関係の院生が
「天羽さんの講義ってここ(お茶大)でやるんですかぁ。そんならとろうかと思うんですけど」
と言い出した。一体なんでそんなことを言われるのかと思いつつ、まあちらっとしか言ってないから、どこでやるかまでちゃんと聞いていなかったんだなあと理解して、
へ?私が話をするのは千葉だし、集中講義で9月頃にやる予定だよぉ」
と答えた。そうしたら、院生が履修要項を見せてくれた。そこにはしっかり
「レーザー分光学特論」(天羽)
と書かれていた。
ずぎゃあ!身に覚えがないんだけど....誤植でなかったら別人ちゃうの?」

 うちの親父の話によれば、「天羽(あもう)」は全国で600軒ほどで、その大部分は、淡路島の洲本と徳島県の某田舎に存在しているらしい。これとは別に千葉方面に「天羽(あまは)」という姓の人々が棲息しているという話をきいたことがある。幼稚園以来、同じ姓の人間が同じ学校に存在したためしはなく、それどころか会う人ごとに「珍しい名字ですね」と言われてきたのだ。
 教授が世間話で、「ウチには院生が3人いて、天羽、王、安居院といいます。一人は中国人です」と言ったところ、大真面目に「それはどなたですか」と聞き返されたといって爆笑していた。なぜこの時期に変な姓の院生が集まったかはともかく、「天羽」も「安居院」も、正しく読んでくれる人は少なく、「珍しい姓の人のもあります」と銘打った3文判が出るまで印鑑はすべて特注していた。
 こういう状況なので、どの集団でも、見渡す限り自分と同姓の人には出会わずにこれまでの人生を生きてきたのだった。逆に、私が加わっている集団で「天羽」というとまず確実に私のことなのだった。

 さて、履修案内を詳しく読むと、お茶大で講義をする天羽さんは、「天羽 貴子」さんであることがわかった。ただし「あまは」さんか「あもう」さんかは今日の所は不明である。講義する専攻科を見ると、どうやら化学関係の学科が呼んだ先生らしい。ともかく、講師が滅多に近場に2名以上存在しない姓の上、講義内容がよりによって「レーザー分光学」で、私がしている実験も含まれるものであったため、勘違いする院生が私の周りにわらわらと出てきたので、
「お茶大の講義と私は無関係で、お茶大で話をする天羽さんは同姓の別人だよぉ。多分化学系の人らしいから、化学屋さんのレーザー分光の話がきけて、ためになるかもしれないよ」
と、言ってまわるはめになった。何でこんな気をつかわないかんのじゃー!(魂の叫び)



 「天羽 貴子」氏とは、私は面識がない。普段私が発表している物理学会の、化学物理や物性基礎・統計では名前を聞いたことがない。イオン結晶・半導体でも、同姓の人がいるという話はまだ伝わってきていない。多分化学系の学会で活動しておられる方ではないかと思われる。会う機会があったら同姓のよしみで挨拶でもしておこうかなあ。
 まあ、姓が「天羽」なのも、講義題目だけきくと同じ専門分野に見えるのも、たまたまお茶大関係者になってしまったことも、当然のことながらすべて偶然の産物である。だから、誰に文句を言えるわけでもないし言う気もない。今回のは純粋にわたしのぼやきである。(文責:天羽 優子)



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