自然現象を理解しようとすると、身の回りの「もの」に注目したり、光や音や熱といった現象の性質注目したりすることになる。高校だと、それぞれが「化学」「物理」に対応しているし、中学理科だとまとめて第一分野となっている。
物質が何からできているのかということについては、ギリシャの昔から議論されてきた。紀元前5世紀頃に、すべての物質は「土・空気・火・水」の4元素からなる、という説がエンペドクレスによって提唱され、アリストテレスによって引き継がれ、18世紀まで使われた。一方、永遠に変わらない究極の粒子が物質の根源であるという考え方も、デモクリトスらによって提案された。この2つの考え方が統一され「原子の種類が元素である」ということになったのは、19世紀になってからである。
これまでにどんな元素が発見されたかは、元素の周期表に出ている(このページの最後に掲載)。周期表では、軽い元素から重い方に、元素を順番に並べてある。元素の性質を順番に調べていくと、ある数ごとに似たような性質を持つものが出てくることがわかったので、それが周期表の縦一列に並ぶようになっている。この縦の列をまとめて「族」と呼ぶ。これから、物質の話をするのに、周期表の族ごとに性質を議論したりするが、周期表を暗記する必要はない。印刷してその辺に貼っておくと便利だし、他の本の周期表をすぐ見れるように手元に置いてもいいだろう。
永遠に変わらないし分割もできないはずだった原子だが、今では、中心に原子核という質量のほとんどが集中した部分があって、その外側に軽い電子が存在していることがわかっている。原子核は、陽子と中性子からできている。陽子は正の電気量を持ち、電子は負の電気量を持つ。中性子は電気量を持たない。陽子の個数と電子の個数は等しいので、原子全体としては電気的に中性である。陽子の数を原子番号という。周期表のアルファベットの前に、数字で記した。陽子の数が同じでも中性子の数が異なる原子が存在する。このような原子を同位体という。
水素(H)の原子番号は1、酸素(O)は8である。
電子が原子核のまわりに存在すると述べたが、わざわざこう書いたのには意味がある。子供向けの科学の本では、地球が太陽の周りを回るような絵で原子の構造が説明されていることがあるが、実はこれは粗すぎるモデルである。原子核程度のミクロな世界になってくると、電子や原子の運動の様子(位置と速度)を完全に知ることはできなくて、そのかわり、存在確率で記述される。つまり、このあたりを測定すると10回に1回は観測される、といった感じである。だから、地球の公転軌道のようにある曲線上を回っているのではなくて、原子核のまわりにぼやっと拡がっているのをイメージした方が現実によく合う。化学反応などで電子の「軌道」というものが出てくることがあるが、公転軌道のようなものとは違っていて、電子が主に存在する領域とか電子の存在の状態を意味する。
物質に固有の量として、質量がある。これは、蹴飛ばしたときにちょっとしか動かないとか、力を加えて押してみてもすぐには動かないとか、そういう性質のもとになっている量である。地球上では、物を持ち上げると重く感じるが、この重さの元になっている量でもある。当然、陽子も中性子も電子も質量を持つ。
質量以外の物質固有の量には、「電荷」と「スピン」がある。電荷は、電場の中に置いたときに力を受けるかどうかに関わる量である。スピンは、磁場の影響を受けるかどうかを決める量である。
物質の性質を調べるには、外から力を加えたり、磁場や電場の中に置いてみたり、温度や圧力を変えてみたり、光を当ててみたり、といったことをいろいろするのだが、その結果、物質固有の量として、質量・電荷・スピンを考えるとうまくいく、ということがわかった。(最近の素粒子論では、もっといろいろな量を考えないと粒子の性質が決まらないということになってきているが、原子(陽子、中性子、電子)の集まりとして物質の性質を考える限り、質量・電荷・スピンで足りる)
原子を構成するそれぞれの粒子についての具体的な値は、
質量 | 電荷 | スピン | |
---|---|---|---|
陽子(p) | 1.673e-27 kg | +1.602e-19 C | 1/2 |
中性子(n) | 1.675e-27 kg | 0 | 1/2 |
電子(e) | 9.109390e-31 kg | -1.602e-19 C | 1/2 |
となっている。原子核は、それを構成する陽子と中性子の数によって、異なった値のスピンを持つ。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | |
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1 | 1H | 2He | ||||||||||||||||
2 | 3Li | 4Be | 5B | 6C | 7N | 8O | 9F | 10Ne | ||||||||||
3 | 11Na | 12Mg | 13Al | 14Si | 15P | 16S | 17Cl | 18Ar | ||||||||||
4 | 19K | 20Ca | 21Sc | 22Ti | 23V | 24Cr | 25Mn | 26Fe | 27Co | 28Ni | 29Cu | 30Zn | 31Ga | 32Ge | 33As | 34Se | 35Br | 36Kr |
5 | 37Rb | 38Sr | 39Y | 40Zr | 41Nb | 42Mo | 43Tc | 44Ru | 45Rh | 46Pd | 47Ag | 48Cd | 49In | 50Sn | 51Sb | 52Te | 53I | 54Xe |
6 | 55Cs | 56Ba | 57-71 Lanthanoid |
72Hf | 73Ta | 74W | 75Re | 76Os | 77Ir | 78Pt | 79Au | 80Hg | 81Tl | 82Pb | 83Bi | 84Po | 85At | 86Rn |
7 | 87Fr | 88Ra | 89-103 Actinoid |
104Rf | 105Db | 106Sg | 107Bh | 108Hs | 109Mt |
Lanthanoid | 57La | 58Ce | 59Pr | 60Nd | 61Pm | 62Sm | 63Eu | 64Gd | 65Tb | 66Dy | 67Ho | 68Er | 69Tm | 70Yb | 71Lu |
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Actinoid | 89Ac | 90Th | 91Pa | 92U | 93Np | 94Pu | 95Am | 96Cm | 97Bk | 98Cf | 99Es | 100Fm | 101Md | 102No | 103Lr |
元素の周期表は、ならはらさんが入力したものをもとに編集した(http://dyc.ath.cx/~aconitum/table.html)。
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