水商売ウォッチング:磁気処理水

株式会社エッチアールディ(2002/04/10)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 業務用の磁気活水器「ビッグポール」と家庭用の磁気活水器「ダイポール」と、水の殺菌システム「エコシステム」を販売している。エコシステムのページを見ると、紫外線による光化学反応を用いている、とあり、普通の殺菌装置に見える。ただし、磁気活水器を組み込んでいて、「水に電子を供給する」と書いてあるあたりは、何をしているのかがよくわからない。

 技術的な話は、「ビッグポール」のページの左側にある目次をクリックすると読むことができる。まず、「構造と原理」を見ると、

電子の入った水はマイナスイオン水となり、蛋白質・糖を活性化し、かつブラウン運動が大きくなるため、動物、植物の細胞への浸透効果があります。

と書かれているが、どの文節の記述も、我々の科学的知識とは相容れない。

 まず、「電子の入った水」だが、水の中に余分な電子がうろうろすることは、普通にはあり得ない。どうしても電子を注入したければ、水に高電圧をかけて絶縁破壊を起こさせるしかない【注1】。塩基、例えばNaOHを溶かした水では、水酸化物イオンOH-が生じることが知られている(というかこれが塩基の定義である)。OH-は確かにマイナスイオンの1種ではあるが、電子を入れたのではなく、塩基の電離によって生じたものである。塩基を水に溶かしたらできるのであって、単に水に溶けている不純物の化学的組成で決まる話で、磁場とは無関係である。

 次に、「蛋白質・糖を活性化し」だが、何度も書いたように、「活性化」とは具体的にどうすることかが全く謎である。蛋白質の活性化というのは、例えば、普段は反応しない状態になっている酵素に信号伝達を担う物質が結合することで立体構造が変わって酵素として働けるようになることをいう。これは、生物の都合でいつ活性化させるかが制御されているので、外部から活性化させられたりすると、生物にとっては却って有害だろう。糖の活性化についてはきいたことがない。

 ブラウン運動とは、要するに熱によるランダムな分子運動である。ブラウン運動を大きくするには、温度を上げれば良いだけである。湯は水よりもブラウン運動が大きい。これも磁場とは無関係である。

 最後の「細胞への浸透効果」だが、生物には恒常性の維持という機能があって、水の輸送もきちんと制御されている。勝手に水が細胞内に浸透してくるようなことが起きれば、細胞にとって負担になるだけで、何もいいことはない。

磁石が作る強力な磁場を水が流れると電流が発生し、電子が水に入ります。

の電流発生も、水そのものの性質によって起きることではない。電磁流量計というのがあって、磁場環境かにイオンを含んだ水を流して、2点間の起電力の差を測定して流量を求めることができる。ローレンツ力による電荷の偏りで起電力が生じるとされている。これが起きたとしても、水の中に電子が流れ込むことはない。起電力の解消は、金属部分を電子が流れることや、金属管表面での電気化学反応による電子のやりとり(つまり電気化学反応)によって水の中の不純物が変わるとことが考えられる。水の中に電子が出てくることは、通常の電気化学反応でも起きない。さらに、このページに書かれている、水に電子が入った図は全くの誤りである。水分子は水素結合ネットワークの中に存在し、OH-イオンはそのネットワークに埋め込まれた形で拡散していくと考えられている。

 「理論とメカニズム」も同様である。

磁界を導電性の物体が動く時、電磁誘導作用によって起電流が発生します。(フレミングの左手の法則)

は、いいとしても、

磁場を通った水はどうなるのか?
水の最小単位である分子(H2O)の水素(H)原子の対極に電子(e−)が入ります。

は、どうしてこんな話が出てきたのかが謎である。水が磁場を通過することで起電力が生じるとしても、それは、水に溶けている不純物のうちの電解質によるものである。起電力が生じた場合、電子のやりとりは、電解質と金属表面との間で起きて、水分子に電子が入ることはない。第一、水分子の分子軌道であるsp3混成軌道の図を見ると、水分子の酸素側には酸素の電子軌道が出た形になっていて、そこに余分な電子が入る形はしていない。

 「科学的定義」に書かれている酸化と還元の定義はいいが、

従って、電子(e−)の入った還元力のある水は、それと接触するすべてのものの酸化を防ぎ、また、積極的に活性化させる働きをします。

の、酸化防止作用と活性化は別の話ではないか。もし、水に電子をたたき込むようなことをしたら、当然そのためにはエネルギーが必要で、その分だけ水は不安定になるから、反応性が高くなることは予想される。ラジカルだってできるかもしれない。しかし、そういう水はさっさと別の何かと反応して安定な状態になろうとするだろう。相手かまわず反応するようなものは、劇物の類で,安全とは言いがたい。

 「水がマイナス電荷を持つ」、というのも変な話で、水分子自身には電荷の偏りはあっても中性に保たれている。分子全体の電荷を足すと0になる。酸や塩基を溶かしても、水全体としては電気的に中性である。そういう溶液をミクロに見ても、水分子1個1個は電気的に中性で、電荷を持ったイオンが水の中に存在し、水が回りを取り囲むような形になっている。ブラウン運動の話がどこからきたのかはっきりしないが、拡散係数の測定結果から出てきた話だとすると、ブラウン運動の変化と考えるよりも、不純物の化学的組成の変化によって粘性が変わったという理解で足りるのではないか。

 「透過水の確認」では、ESR測定結果が掲載されている。説明には、

この活性酸素を測定したグラフは、磁界を通過した水が活性酸素や活性水素を発生させることが出来た貴重なグラフです。

 と書いてあるのに、グラフ中には、活性酸素も活性水素(って何?)も示されてなくて、OHラジカルしか示されていない。

電解水が活性酸素や活性水素を作ることは知られておりますが、永久磁石の力で活性酸素や活性水素を発生させることは不可能でした。

ってちょっと待て。電解で水素ガスと酸素ガスはできることはよく知られているし、活性酸素の発生もある(ただしこれは水の電気分解から直接できるのではなく、水の中の溶存酸素由来)、活性水素の発生の確認はまだなのではないか。活性水素については、電解還元水のテレビでの宣伝だけが先行しているが、その影響が磁気活水器にまで及んだらしい。

 さて、このESRの測定結果だが、なぜこれが宣伝になるのかがさっぱりわからない【注2】。

 もし、OHラジカルができているのが本当だとしても、OHラジカルや水素原子の室温での寿命は70ナノ秒-200マイクロ秒である。磁気活水器をどこにとりつけたとしても、取水するころには無くなってしまう。だから、OHラジカルが観測されたことと、その後の水が良いかどうかとは、直接の関係はないのではないか。温度を下げれば観測も楽になるのだが、どうやって試料調整をしたのか知りたいと思う。

 OHラジカルの効果が長期にわたって及ぶとするならば、OHラジカルが別のものと反応して別種の長寿命のラジカルを作ったり、別の化学種をつくったりして、その効果が後に及んでいることを言わなければならないだろう。まずは、できたOHラジカルが主に何と反応してどうなっていくのかがわからないと、単にESRの測定結果を示されても、何とも判断のしようがない。

 そもそも、ラジカルは反応性が高いので劇物である。装置で劇物が作れるということを示すなら、最終的にそれがどうなるかまで言ってくれないと、消費者としては不安を感じるだけではないか。

 以上の理由によって、ESRの測定結果をことさらに示している理由が私にはわからない。

 さらに、水の評価を、水の結晶写真を掲載することで行っている。その説明として、

浄水器や磁石を使用した製品は、多数販売されていますが、製品を通過した水道水の結晶写真を掲載出来たメーカーは当社だけです。
 普通の水道水の結晶写真との違いが歴然とお解りいただけると思います。

って言われても、比較のための普通の水道水の結晶写真がそもそも載っていない。

 また、水の結晶写真と水質は無関係である。写真のような6角形の結晶は、水蒸気から結晶成長させるとできる。水蒸気がもとだから、水に溶けている成分が何であるかとは無関係である。結晶の形が飽和水蒸気圧と気温で決まるということは、中谷宇吉郎が実験で確認し、ナカヤダイヤグラムという世界的に有名な図にまとめられている。

 それに、「当社だけです」って言われても・・・。単に他社が結晶写真を撮らなかっただけなんじゃ・・・。

 装置の効果については、赤錆対策や洗浄効果が挙がっている。この効果を説明するのであれば、まずは、水中の不純物が磁場によって受ける影響や、不純物が電解質であった場合に起こりうる管表面での電気化学反応について、きちんと調べるべきではないだろうか。この会社が提案している理論をもとにして調べたのでは、間違った方向に進んでしまうのではないかと思う。それよりも何よりも、高校の化学の教科書をちゃんと理解することが先ではないだろうか。

【注1】

 電子の入った水であるが,放射線や高エネルギーの粒子線をを照射することによって,短時間だけ水和電子を作ることができる(原子力百科事典)。吸収が715nm付近にあるので,青く見えるはずだ。ただし,半減期は210μsだから,できたとしてもすぐになくなってしまう。装置取り付け部分でもし水和電子ができたとしても,その水を使う頃にはなくなってしまうはずだ。この水和電子(より一般的には溶媒和電子)は,1つの電子を複数の溶媒分子が取り囲むものである。しかし,HRDの図では,電子が2個,1つの水分子の水素の反対側に入るという図になっており,これは水分子の構造からいって明らかに間違いである。
 いずれにしても,普通の浄水器や活水器だと,放射線源が入っていない限り(高エネルギー粒子線発生装置が組み込まれているとは通常考えられないので),水和電子ができることはない。
(掲示板[6885][6887][6888][6891]を参考にしました)

【注2】

 ESRの測定だが, 両端の二本は Mn^{2+}のマーカーで中央の4本がヒドロキシルラジカル由来の信号だろうと思われる。が,このスペクトルはスピントラップ剤にヒドロキシルラジカルが結合してできた安定な化学種のものである。スピントラップ剤とは,通常では測定できないほど不安定で単寿命のラジカルを,別の化学物質と結合させることで,安定で長寿命のものに変えて観測するために使われるものである。従って,この測定データが出ているということは,ヒドロキシルラジカルは非常に単寿命で,もし水処理装置内部で発生してもすぐに消失してしまうため,実際に使用する水には入っているはずがないということを意味している。
(掲示板 [6891][6892]を参考にしました)

【2003/12/25追加情報】

 タレコミで,研究会での発表予稿らしいものについて情報をもらった。なんでも,友達に報文付きで装置を進められたのだが,科学的記述がわからんということで,直接私宛てに質問メールが届いた。マイナスイオン応用学会の論文紹介ページにリンクされてるらしく,本文はpdfファイルでここにある。まず,一般の方々に注意していただきたいことは,このpdf文書は,いわゆる学術論文ではないということだ。特に前半の説明に間違いが多すぎる。もし,私のところの学生がこんな内容をレポートに書いてきたら,間違いなく再提出させることになるだろう。

 本文pdfファイルから順番に見ていく。「1.はじめに」で注目すべきポイントは,

駆動させるための動力等も必要としない

という部分である。これを忘れずに説明を読み進んでいただきたい。

ある一定以上の速度で水を通過させることによって水を活性化させることを、磁気処理するといい、このような操作で作られた水を磁力活性水といいます。

というのは,会社独自の用語の定義だろう。ただ,「活性化」の実体が曖昧でちっとも科学的ではないのだが。

 2ページの図3を良く見るとびっくり,マイナスイオンと書いて有るのに記号は電子e-,その上,金属材料を突き抜けるかのような赤色矢印が示されている。磁性材料の組み合わせによって効率良く水に磁場をかけることを実現したのは認めるとしても,電子が(薄膜じゃない)金属材料を突き抜けてる図はあまりにも無茶である。一体どんなエネルギーの電子ビームを発生しとるのかと突っ込みたくもなる。

 水中の水分子や水中の溶存酸素が、上記のような強烈な磁場の影響を受けると、図4のように酸素原子の最外核の電子がエネルギーを受け、水そのものが働く水となります。我々はこの水をマイナスイオン水と呼んでいます。

 定義するのは勝手だが,「水そのものが働く水」が意味不明である。また,「エネルギーを受け」といかにももっともらしいことを書くのなら,エネルギーの大きさを記載すべきである。kcal/molでもeVでも対応する電磁波の波長でもいいから,適当な単位をつけて,電子が受け取るエネルギーのおよその値を数値で示してもらいたい。図4の酸素原子の図も,ここでこんなものを出したら却って誤解を招くだけだ。水の酸素は水素と結合してるし,溶存酸素は酸素原子が2個くっついた酸素分子であり,いずれも原子1個のときと電子状態が異なる。なお,水分子は反磁性体,酸素分子は常磁性体で,磁石(?)としての性質は全く違う。

 なお,この「論文」に限らず,「エネルギー」という言葉は濫用されがちであることをついでに指摘しておく。何でもエネルギーと言えばいいと思っている人は以外に多いのかもしれない。見分けるコツは,エネルギーだと主張するからには,何が何に対してどれくらいのエネルギーを与えているのか,数値で示せと追及し,示された値が現実的なものかどうかを検討するとよい。

 それはさておき,3ページ目の説明もおかしい。

電子そのものはスピンしているため、永久磁石になっています。電子受容体である酸素原子の最外核の電子もスピンしています。

 電子がスピン(=回転?)しているわけじゃないんですが。スピンという「自由度」まで考えないと電子の状態を完全に記述できないというだけのことである。この場合の「スピン」は,「軌道」というのと同じ名詞であって,「する」ものではない。電子の軌道(この場合の軌道は量子力学で扱うやつね),電子のスピン,とは言うけど,「軌道する」と言わないのと同じで「スピンする」とは言わない。この記述の直後のゼーマン分裂の図が正しいだけに【注3】,余計にまぎらわしい。

この電子を永久磁石のN 極とS 極の間のギャップに置いた場合、電子は磁気双極子を持っているため相互作用し、磁気双極子のZ 成分と外部磁場とが平行になる場合と反平行になる場合では、電子のエネルギー値が異なるため、エネルギー値が2つに分岐します。
これを「電子スピン共鳴現象」といって、低エネルギーレベルを占めていた電子がエネルギーを獲得して、高いエネルギーレベルを占める現象を言うのですが、電子のスピンの回転方向が左回転から右回転に移ったのと同じことになります。この現象を「スピン反転」といいます。

 部分的には正しいが全体としては完璧に間違っている。まず,前半は正しいのだが,エネルギー値が2つに分裂する現象,もっと正確にいうなら,磁場をかけた結果,その時の温度によって上向きスピンと下向きスピンがある割合で存在する状態になるのだが,これは単なるゼーマン分裂であって,共鳴でも何でもない。したがって,前半と後半の説明がが結びついていないところが問題である。電子スピン共鳴(ESR)を起こさせるためには,電子スピンのエネルギー準位の分裂の幅(図5の横に2本線が引いてあるその間)に相当するエネルギーの電磁波を照射しなければならない。この電磁波の周波数はマイクロ波領域のものを使う。外から電磁波をあたえて初めて,エネルギーの低いスピンが電磁波のエネルギーを吸収することでエネルギーの高い状態になり,全体として,エネルギーの高いスピンの数が増えるということが起きる。

 ところが,この装置は,最初に書かれているように動力を必要としないのである。ということは,電子スピン共鳴を起こさせるためのマイクロ波のエネルギーが一体どこから湧いてきたのかが問題となる。外からの電磁波照射なしにNMRが起きると主張したのは(株)日本システム企画だったが,続くHRDはESRが起きると主張するつもりのようだ。難しい言葉を並べて説明していても,その実体は「この装置は永久機関です」というのと変わらないことになる。

 つまり高密度磁束活性水装置を通過したとき、水分子の電子が上記のようにエネルギーを受けた状態(励起状態)になっています。このようにエネルギーを受けた水は、岩清水と同じような水本来の力のある状態になります。

 「水本来の力のある状態」など存在しない。水はH2Oである限り水でしかない。水に水分子が持つ以上の何かの作用があるとしたら,それは不純物の効果によるものである。さらに,直前の説明からして,電子スピン共鳴は起きないので,水が励起状態であるという説明も成り立たない。もっと言うと,「励起状態=本来の状態」という発想がどこから出て来たのかが謎で,自然の理解としては勘違いも甚だしいと思う。大体,自然は放っておくとエネルギーを失って安定な状態になるものだ。励起状態というのは不安定な状態で,他にエネルギーを与えて(最後は熱エネルギーとなって散逸するが),エネルギーの低い基底状態に戻っていくものである。

 もっと言うなら,ゼーマン分裂が起きるのは磁場がかかっている間だけである。だから,装置を水が通過してしまえば,電子のエネルギー準位は元の状態に戻ってしまう。装置通過後も水に何らかの効果が残ることを説明するために,ESRを持ち出すのは,理由付けとして破綻している。

 この結果を裏付けるように、水の色は本来水色なのですが水道水は透明に見えます。水道水がこの高密度な磁場を通過すると、透明な水道水が水色に変わっていきます。水を電気分解しているわけではありませんので、pHは大きく変わるわけでもありませんし、酸化還元電位が極端に落ちるわけでもありません。水の測定装置で測定できる変化が、顕著に変わることもないのです。しかし、この水は力のある水に変化しています。

 つまり,測定したって水の性質の違いはわからないが,使ってみれば結果はなぜか出る,ということが言いたいらしい。それはともかく,実験用の蒸留水はわずかに水色だ。水のOH伸縮振動の倍音が赤色のところになって,赤色の光を吸収するので青色に見える。測定したって差がない,と宣言しているくせに,色の違いだけはあるとはっきり断言している。ということは,この色の違いが,唯一,実施例のような応用ではなく,測定によって直接確認できる違いだということになる。にもかかわらず,測定結果がどこにも出ていないのはどうしてだろう。

 「5.マイナスイオンが起こす現象」のおかしな点はは,以前からあちこちで指摘している通りである。念のためもう一度さらっと書いておくと,ブラウン運動が激しいとか,分子運動が大きい水というのは,温度が高い水とどう違うのか?ということである。また,水分子は電気的に中性なので,「マイナスの電荷を持つ」という記述はおかしい。電子スピン共鳴の実験(本物)をやっても,水分子がマイナスの電荷を持つことはない。

5‐1ブラウン運動が激しくなります
水の分子がマイナスの電荷を持つことによって、水の分子が反発しやすくなり、ブラウン運動が大きくなります。
5‐2浸透力が上がります
水の分子運動が大きくなることによって、浸透力が上がります。
5‐3マイナスの電荷がプラスの電荷(汚れや臭いの成分)を中和し消し去ります
マイナスの電荷を持つことによって、プラスの電荷を持った汚れやアンモニアの臭い等を中和し、汚れを落としやすくなり、臭いを消す効果があります。
5‐4乳化効果があります
プラスの電荷を持った油の分子をマイナスの電荷を持った水分子が取り囲み、疎水性の油を親水性に変えて行きます。

 こういったお約束の突っ込みはまあ置いておくとしても,ここでこういう説明が出て来るのは,やはり決定的にまずいと思う。直前で,水を測定しても変化が顕著ではないと明記してあるのに,測定結果無しに主張できない事柄がマイナスイオンの起こす現象として書かれていることが,1つの報文として内部矛盾しているからである。学術論文でこういうことをしたら,レフェリーに間違いなく書き直しを命じられるだろう。ちなみに,現象の1と2が真実なら,温度以外の測定項目として,粘性や自己拡散係数を測定しても違いが出て来るはずである。3,4の直接確認は,この水を質量分析器にかけることだろう・・・・但し装置内のイオン化プロセスを止めた状態で。普通の電気的に中性の水は,イオン化しないとクラスター質量分析ができないが,電荷を持ってる水であれば,イオン化しなくても質量分析が可能(!)なはずである。

 実施例に書かれていることが真実だとしても,不思議なことはたくさんある。切り花の効果について,「切花は水を吸収するのではなく、水が持っているマイナスの電荷を吸収しているのだという結果でありました」というのはなかなかぶっ飛んだ説明であるし(植物の生理学としてどうよ!),装置を1回通した水よりも60分通した水の方が何もしない水道水に近いというのも謎である。

 ご飯の炊き上がりの評価は官能検査についての記述がどこにもない。

 野菜の鮮度保持だが,対照実験の結果も掲載してほしい。単に水道水で洗うだけでも雑菌が減って水分補給に役立つだろう。また,鮮度をどうやって評価したのかも謎のままである。

 抽出力が高いとか浸透力が高いといった記述と,廃水処理での沈降速度が上がるとか凝集効果が上がるってのは,なんか矛盾するように思うのだが。どういう物質ならよく溶かして,どういう物質なら溶けないということなのだろう?

 マイナスイオン米は,普通に説明が可能かもしれない。磁石部分に農業用水を通すことで,磁性不純物はそこでトラップされるだろう。水の組成が変わることで,何か米にいい効果がある,というのは,あってもおかしくない現象である。

 砂糖の精製への効果だが,それだけ顕著な効果があるなら,やはり,不純物の組成の変化を調べるべきではないか。測っても結果がみられないなどといってあきらめるのは早いんじゃないかと思うのだが・・・・・。

 ただ,報文としての評価は低い,というか,論文の体をなしていないと思う。一般消費者向けの宣伝ではなく,業界主体とはいえ一応は研究会報告なのだから,もっと学術的にかっちりしたものを出してもいいのではないか。前半の理論は間違いだらけ,測定で違いがないといいつつ測定しなきゃわからんようなマイナスイオンの効果を主張する内部矛盾,せっかくの実施例は追試をしようにも実験条件に関する十分な情報(どういう条件で,何サンプルやって,結果をどう統計処理したか,など)がごっそり抜けているのでは,科学技術の成果として取り扱うわけにはいかない。

【注3】

 正しいのは,エネルギー準位が2本に分かれるというところだけ。矢印が3本あるのは何だかよくわからん。

 なお,酸素の最外殻電子は,水素と共有結合して水になっている状態だと8個で不対電子はない。個々の電子のスピンはキャンセルされて全体としてスピン0,水は反磁性体となる。
(掲示板 [6885]を参考にしました)


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Y.Amo /
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