本の紹介と書評など

タイトル 科学哲学のすすめ
著者/訳者 高橋昌一郎
出版社 丸善
出版年 2002年
定価 1700円+税
ISBN 4-621-04965-8

 題名からわかるように、科学の意味を読み解くための本なのだが、「科学と疑似科学」のような章があるので、疑似科学批判にも使える話題が提供されている。私がこの本をここで取り上げたのは、32-33ページに掲載された「科学と疑似科学の判定基準」という表を紹介したかったからである。以下に引用しておく。

「科学と疑似科学の判定基準」
要因 科学 疑似科学
人間 ・自己の無知を認めることから、さらなる研究の必要性を感じる
・高度な専門知識を有する
・社会的に認知された大学・研究機関・学会などの公的組織に所属する
・自説を信じることから、その流布の必要性を感じる
・専門知識の欠如あるいは偏重が見られる
・社会的に認知された公的組織よりも、自ら私的組織を設立する傾向がある
知識 ・過去・現在・未来にわたって、恒常的に観測可能な「現実的存在」を対象とする
・自然現象と自然法則に起因するすべての問題が対象になる。
・知識の更新や進歩がみられる
・テレパシー・透視・念力といった、」恒常的には観測不可能な「非現実的存在」を対象とする
・いかにして他者の心を読むか、未来の運命を知るかといった、超自然に起因する問題が対象になる
・知識の更新や進歩がみられない
社会 ・技術革新や産業開発など、長期的な理由によって社会から支援される
・理論の応用によって産出される製品は、一般大衆の生活環境に多大な影響をもたらす
・軍事開発や遺伝子工学など、人類の存亡に関与する可能性がある。
・マスコミ性や収益性など、短期的な理由によって許容または黙認される
・一般大衆の生活環境に影響を与えるような製品には応用されない
・カルト宗教や詐欺事件など、公序良俗に関与する可能性がある
誠意 ・自己理論が完全ではなく、多くの欠陥を抱えていることを認める
・自己理論を検証あるいは修正するため、新たな仮説や方法を優先する
・自己を完全だと信じ、断定的に固執する傾向が強い
・自説に反する仮説や方法よりも、いかにして衆目を集めるかといった実利を優先する
理論 ・反証可能かつテスト可能な理論・用語を厳密に定義し、論理と数学に基づいて理論を体系化する
・研究対象および関連分野の理論と実験結果によって集積されたデータ全体から構成される
・反証不可能またはテスト不可能な理論・用語の厳密性に欠け、自説を高度に見せかけるために、論理と数学を用いる傾向がある
・研究対象および関連分野の理論と実験結果から孤立し、偏ったデータ全体から構成される
学会 ・科学全体の統一性や関連分野との整合性を重視する
・情報を公開して、共有する
・自由に議論できる環境を重視する
・科学全体の統一性や関連分野との整合性を欠くことが多い
・情報を閉鎖して独占する傾向がみられる
・自由な議論よりも、個別の信念を重視する
実験 ・二重盲検法など、不確定要因を排除する客観的実験手続きに基づく
・再現可能な実験において、他の研究者による追試を求める
・反例を優先的に探す
・特定の状況下あるいは被験者の主観的裁量で実験が行われる傾向がある
・再現不可能な実験が多く、他の研究者による追試は認められない
・反例よりも、合致例を優先的に探す
論争 ・他者からの分析批判を積極的に求める
・理論および事件と、その検証手続きに関する論争を歓迎する
・自説に対する分析批判は受け入れない
・理論や実験よりも、体制や人格に関する論争を歓迎する
権威 ・実験により検証された基本理論が権威となる
・権威そのものが覆される場合もある
・理論よりも人間が権威となる傾向がある
・権威そのものが覆されることはない
出版 ・専門研究者を対象に、専門言語によって書かれた学術論文を学会誌などに出版する
・査読やピア・レビュー制度を重視する
・一般大衆を対象に、日常言語によって書かれた文章を大量に出版する
・査読やピア・レビュー制度は用いない

 私は、当サイトの「水商売ウォッチング」を書きながら、科学はどういうふうに行われているのかという情報が一般に広まっていないことが、変な科学っぽい理論を流通させてしまう要因の1つではないかと思い始めている。個別の細かい知識については、その都度専門家にきいてもらえばいいが、科学ってどんなもんなのか、ということについては、専門じゃない人たちにも知ってもらいたいのだが、私ではなかなかわかってもらうように書くのは難しい。この点、この本は非常にとっつきやすくて、科学に馴染みのない人にも推薦できる本である。

 ところで、巷の「水商売」ですが、どっちがどれだけ当てはまるでしょうね?特に水療法関係などは。



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Y.Amo /
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