本の紹介と書評など

タイトル 高校化学とっておき勉強法 (講談社ブルーバックス)
著者/訳者 大川貴史
出版社 講談社
出版年 2002年
定価 1060円+税
ISBN 4-06-257356-3

 高校化学の内容を解説した本。多くの高校化学の参考書が、受験勉強を意識したものになっているのと対称的に、物質の性質を理解するということに重点をおいて、一歩踏み込んだ記述がなされている。

 原子・分子とは何か、結合の種類と性質、化学平衡、酸・塩基、酸化還元、結晶と分子の構造について、一通りのことが解説してある。

 例えば、水やアンモニアやメタン分子の立体構造を予測するのに、

原子内の電子の広がりは、電子対の反発によってある決まった方向性を持ち、その方向の上に共有結合が生じるからである。(71ページ)

という説明をしている。この前後数ページにわたって、3次元的に反発すると、配置が4面体的になり、いろんな分子の構造をうまく予測することができることが書かれている。大学の化学では、混成軌道の話が出てくるのだが、この本の内容だけでも、分子(と電子)の性質で結合角が決まるということがわかる。従って、「結合角の違う水を作った」というのはまずあり得ないというか、それは水ではないという結論を出すことができる。

 酸化還元電位については、177ページに、標準電極電位(酸化還元電位)の表が出ている。金属リチウムの酸化還元電位が最も小さく(-3.05V)、次いでナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、の順である。酸化還元電位の大きい方は、フッ素、オゾン、過酸化水素、などとなっている。酸化還元電位とは、イオン化列(イオンになりやすさ)に大体一致して並ぶ、物質固有の量である。ということは、どういう化学物質が水の中にあるかがまずちゃんとわからないと、酸化還元電位だけ取り出して議論しても、得られる情報は少ないことがわかる。標準電極電位の表には、スズ(-0.14V)、鉛(-0.13V)、水銀(+0.79V)なども出ているから、酸化還元電位を測定しても、それだけでは、その水が体にいいかどうかを判断するには役立たないこともわかるはずだ。



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Y.Amo /
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