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大学教員もテラヤバスな件

Posted on 10月 30th, 2006 in 倉庫 by apj

 高校の履修漏れ発覚の件。
 公立学校が調査書にウソを書いて出したら、虚偽公文書作成・同行使(刑156、158)に引っ掛かる。有印で1年以上10年以下の懲役、そうでない場合は3年以下の懲役または20万円以下の罰金。有印だと罰金刑が無いので、起訴されたら最後、執行猶予がついたとしても、公務員の欠格事項に該当する。と、まあここまでは、(現実に起訴されるかどうかはともかく)条文との対応はOKだろう。私学の場合も、「事実証明に関する文書」の偽造(刑159)には引っ掛かる。

 虚偽公文書であるという事情を知って受け取った*だけ*なら、故意犯成立となるかどうかがすぐには私にも判断できない(このへんはプロの意見を知りたいところ)。しかし、それを使って合否判定した場合は、事実を証明する文書に故意に虚偽の内容を入れたことになるので、(国立大学法人の作る文書が仮に私文書と判定されたとしても)「事実証明に関する文書」の偽造で、今度は合否判定に関わった大学の教員が軒並み刑159に引っ掛かるのではないか。なお、私立大学の入学試験の答案が刑159のいうところの「事実証明に関する文書」認定された判例は既にある。この部分訂正。私文書偽造の場合は名義を偽った場合に成立するから、そのまま虚偽公文書を使って合否判定資料を作っても該当はしない。該当はしないが、虚偽公文書の効力を発揮させることを手助けすることになるわけで、社会規範には明白に反してしまう。(答案用紙が私文書とされたケースは、替え玉受験の時つまり違う人が名前を騙って作った文書であった。)(こういう超基本的なところでコケるとはテラナサケナスorz。精進します。Lさんご指摘ありがとうございました。)

 いずれにしても、文科省あたりの対策が示されない限り、大学としても動けなさそうである。ほんでもって、推薦入試の願書締め切りは多分年内、早いところでは推薦入試そのものがあと一ヶ月程度で始まったりするわけで、一体どうするのかと……。募集要項に「調査書考慮します」って文言が入ってたら、逃げようがないし。【以下訂正のため削除】

【以下追加】
 http://www.yts.co.jp/news/news_20061030162011.htmlより。医学部は判断を決めた模様。以下引用する。

未履修問題は大学入試に影響
2006 / 10 / 30
 山大医学部ではあさってから推薦入試の願書受付が始まるが、きょうの記者会見で履修不足があった場合高校の調査書には科目の評価や修得単位を何も書かないこと、偽りの記述が明らかになれば入学決定後でも合格を取り消すことなどを強調した。また医学科では数学と理科の指定された科目を必ず履修する、あるいは履修見込みであることとしていて履修しなかったら調査書が大きな比重を占める推薦入試の合否への影響は避けられないとの見方を示した。山大では他の5つの学部でも推薦入学の願書を受け付けるが、「改めて注意事項を確認する考えはない」としている。

  こちらは別ソース

虚偽発覚なら合格取り消し
2006/10/30 21:19
 高校必修科目の未履修問題で、山形大医学部(山形市)は30日、入試出願に必要な調査書について未履修の科目を履修したと虚偽記載しないよう各高校に求めると発表した。虚偽記載が発覚した場合は合格後でも入学を取り消すとしている。
 高校側が提出する調査書には履修科目の成績を記入する欄があるが、同大医学部は未履修科目があっても、卒業する見込みであれば出願を受け付けるとしている。
 医学部は11月1日から推薦入試の受け付けを始めるが、例年生徒を推薦している高校に対して書面で正確な記載を求める。
 山形大の入試担当者は「他学部の出願についても医学部と同様の対応をする方向で検討している」と話した。

 報道だけじゃよくわからない。
 最初の方は未履修があれば調査書には何も記載せず空白にせよと読めるが、後の方は未履修分についてのみ記載しなければよく、履修した分は記載してもかまわないと読める。いくら未履修が発覚したからって、世界史とか芸術とかなら、空欄になるのは調査書に書かれる科目のせいぜい1割程度では。すると、後の方だった場合、調査書に重きを置いて採点したとして、未履修があっても履修した人とさほどの大差は付かなさそうだし、さらに面接点が加わるわけだから、この基準でペナルティになるのか?
 そうすると、むしろ、きちんと卒業要件を満たしてくれるかどうかが問題となりそうだ。大学としては、高校の授業の実態を実地調査する権限も力もないわけで、高校側が「追加授業しました」って言ったらそれを受け容れるしかないのでは。しかし、既に受験対策を理由に違反の前科のある高校が、受験の妨げになるから今さら追加授業なんかやめてくれという声多数の状況で、「追加授業しました」と言ったとして、どこまでそんなものを信じたらいいのだ?
 本当に間に合わせるように履修させてくれるなら、卒業までに帳尻が合えば無問題なのだけど、この場合それをきちんとやってくれるかどうかが一番信用出来ない気が……。
【追記】使い方の具体例としては、ここ(2000年)だと、調査書は評定平均を使い、学業以外の活動を項目別に加算、さらに各種資格取得状況を加算して100点にスケーリングしている。こちらは推薦で、評定平均をそのまま出願資格にしているケース。評定平均のところがネットでいくつかひっかかるが、分母が未履修を含んだとしても、大差にはならなさそう。

語学の教材購入

Posted on 10月 28th, 2006 in 倉庫 by apj

 東京に出向いていたので、帰りに池袋のジュンク堂に寄った。語学コーナーに行ったんだけど、ホントに充実してるなぁ……。特に、CD付きの本を安く出せるようになったというのが大きい。
 昔は苦労した。大学の無い田舎の町に住んでいたからかもしれないが、英語以外の外国語はほぼ壊滅、英語のテキストも受験参考書以外はそんなに充実していなかった。がんばってドイツ語のリーディングのテキストをやっと買ったんだけど、音声はテープで別売りで馬鹿高かった。
 今だと好きなところから好きなだけ手軽に聴ける。ものすごく便利だ。ということで、イタリア語の単語集と、昔やって記憶から抜けたドイツ語会話&単語集やら、フランス語のCD付きテキストを買った。山形じゃ揃ってないんだよなぁ。最近気に入ってるのが東進ブックスの「今すぐ話せる」シリーズ。CDがネイティブのスピードで録音されているので、繰り返し聴いて耳を慣らすのにいい。会話の定番はNHKのラジオとテレビだろうけど、テレビは見ないし、決まった時間にラジオを聴くのは、ずぼらな私には無理だし。

高校の必修科目履修漏れ問題

Posted on 10月 26th, 2006 in 倉庫 by apj

 Yahooでの特集ページ。受験対策のために確信的にやった、成績証明書にも虚偽の記載をしていたということだが、やった人達は、刑事責任を問われる可能性があることをわかっているのだろうか。現三年生をどう卒業させるかという対応で手一杯なのはわかるが、校長の出しているおわびや説明は、報道されたものを見る限り、したことが犯罪であると自覚しているように見えないのだが……。

(公文書偽造等)
第百五十五条  行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2  公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3  前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

(虚偽公文書作成等)
第百五十六条  公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

(偽造公文書行使等)
第百五十八条  第百五十四条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
2  前項の罪の未遂は、罰する。

 公文書偽造虚偽公文書作成・同行使、刑法に抵触する行為である。
なお、偽造した卒業証書を生徒の父に満足させる目的で提示する行為が偽造公文書行使罪に該当するという判例もある(最判昭42.3.30)。でもって、公訴時効は刑事訴訟法によると

第二百五十条  時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一  死刑に当たる罪については二十五年
二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七  拘留又は科料に当たる罪については一年

第二百五十一条  二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。

第二百五十三条  時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
○2  共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

 数年前からやっていたらしいが、組織ぐるみ共犯ということになると、まだ時効にはなっていない。今回の対応が、もし行政的な処分だけで終わるとしたらやはりおかしい。刑事手続きによる処理を進めるべきではないか。

組合の問題なのか?

Posted on 10月 26th, 2006 in 倉庫 by apj

半世紀も道徳教育を無視し続けた山梨県教組」あたりへのコメント。他にも教育再生を扱ったエントリがある。
 基本的な論調は日教組を叩くというもので、キーワードは公教育における規範意識だとか「まっとうさ」だという。それはわからないでもないが、日教組に文句を言ってつぶせば教育が再生するかというと、どうもそういう問題ではないのではないか。
 上記のサイトでは道徳教育について、組合が道徳教育を無視したという論調で批判しているのだが、見当外れにの批判に見える。というのは、現実には、道徳教育を熱心にやった結果、広まったのが「水からの伝言」だったりするからだ。水に「ありがとう」というときれいな結晶になるから、人にも「ありがとう」と言おう、というロジックによる道徳の教育は、全国で行われた。これをやっているのは、思想的理由で道徳教育を拒否した教師ではなく、むしろ道徳教育に熱心で、自発的に教材研究を行い、自分の授業に工夫をこらす先生達だろう。実際、水伝道徳の実践は、授業参観や研究授業でも行われており、教員の「自信作」だったりする。この授業を広めたのはTOSSという教育ポータルの団体だが、ネットに実践例を公開することで、より効果的に広まったと思われる。
 他にも、いじめをなくそうという授業で根拠もない「ヘビの脳」が持ち出されたり、「脳からよい物質が出るからいじめをしない」といったものがある。
 思想的な背景によって道徳教育を無視するのはけしからん、と主張している人達はたくさんいるらしい。しかし、その認識は古いか、「思想的背景によって望ましい姿を考えているのだから、それにそぐわない現状なのは別の思想を持った人が何かやってるからだ」という幻想を抱いているか、どちらかのように思える。現実には、「思想的な背景も哲学も皆無、かつ間違った自然科学によって安易に道徳を根拠づける授業」が後を絶たない。そうすることが創意工夫であり、しっかり道徳を教えることだと教える側は思いこんでいるらしい。この状態では、仮に日教組がつぶれたとしても、道徳がまともに教えられるようになるとは思えない。思想的理由で道徳教育を拒否し、そのことを語れるのなら、多分それはまだましな方だろう。現実には道徳とは何かというこを、そもそも認識すらできない状態が出てきているわけで、こっちの方が実は深刻な問題ではないかと思う。
 
 今日の別のエントリでも書いたが、高校の履修単位偽装問題が話題になっている。やってない授業をやったことにし、成績証明書に虚偽記載をした学校が続出している。受験対策だの生徒の要望だのと、教育問題*だけ*しか無いかのような報道のされかたをしているが、実際に行われたことは文書偽造・同行使、刑法に抵触する行為で、場合によっては懲役刑もあり得る、明白な犯罪である。生徒に規範を教えるはずの教師が、「自分がやっていることが刑法にひっかかるかもしれない」ということを考えもせずに学校ぐるみで偽造をやっていたことになる。学校がこんな状態で、「道徳教育」ができるとは思えない。「規範意識」「まっとうさ」というのは、社会とのつながりをきちんと考えることで出てくるものである。文書が信用できなくなると、社会活動に支障をきたすわけで、それ故、文書の公共的信用性が保護すべき法益だということになっている。このことをまったく想像もしないか、軽んじる人達が教師をやっているのだとすると、規範意識やまっとうさを筋道立てて教えるのは無理なんじゃないか。(それでも根拠づけようとすると、また、安易なニセ科学をくっつけかねない)
 一方、日教組は政策提言からわかるように、昔から「競争で学力は伸びない」「学校間格差解消」と主張している。このことの自体の是非はともかく、この考え方からは「受験で有利になるためには指導要領も無視する、そのためには文書偽造もいとわない」は出てこないだろう。そんなのは、彼等は思想的に受け入れられないはずだ。

 私は日教組を支持するものではないが、日教組を叩いても問題は解決しないだろうと予想している。どうにかしなければならない相手は、「日教組の思想」ではなくて、「安易にオカルトに頼る非合理な精神」「社会の成り立ちに立ち戻って物を考えようとしない姿勢」だと思うからである。

FireFox拡張機能

Posted on 10月 25th, 2006 in 倉庫 by apj

 ちょっと前のバージョン(正確には把握していない)のFireFoxやMozillaでは、ページの情報→メディア、で表示される埋め込みオブジェクトをローカルに保存できたが、最近のバージョンではできない。保存しようとしてもファイル名が空白になり、ファイル名を入れても何も保存されない。いろいろ調べたら、FireFoxだと拡張機能を使ってやることになったらしい。Download Embeddedという機能拡張をインストールすると、埋め込みオブジェクトを手元のディスクに保存できるので、後からゆっくり見直すことができる。

spamフィルターw

Posted on 10月 24th, 2006 in 倉庫 by apj

 スパムフが増えたので、理学部のメールサーバにスパムフィルタを設置することになり、試験運用するという連絡があった。

・スパムと判定されたメールの件名には、
  [Spam?]
  [spam?]
  [SPAM?]
 等のタグが付くことがあります。

 とあり、フムなるほどと思っていたら、その直後に届いたメールのヘッダが

Subject: [SPAM?] [SPAM?] 共同利用公募(No16~17)

事務から理学部教員宛の定型事務連絡が見事にspam判定を喰らっていたorz。

控訴審判決本文が届いた

Posted on 10月 24th, 2006 in 倉庫 by apj

 私が着任する前に学内で「学寮問題」というのがあったらしい。ビラについてコメントを書いておいたら、元学寮性を名乗る人達がさっきやってきて、控訴審判決文のコピーを持ってきた。今時のことだから、判決全文ネットに上げておいたら?とは言ったのだが……。で、事件番号判明。「平成16年(ネ)第300号 損害賠償請求事件(原審・山形地方裁判所平成12年(ワ)第310号」仙台高等裁判所第3民事部。これで見たい人は誰でも仙台高裁に行けば判決文にたどり着ける。
 内容については、今ちょっと忙しいので後でじっくり読むことにする。双方の代理人の主張がまとめられているので、弁護士が何をどうやったか考えながら読むには面白そうである。
 なお、大学側が、「被控訴人 国訴訟承継人 国立大学法人山形大学」となっている。代表者は学長である。これは、法人化前の提訴だったから、まず国が応訴(法務省に回されて訟務検事が応訴)したが、法人化によって法人格を取得(=訴え、訴えられることができる権利を取得)したので、訴訟承継が行われたということだろう。

(義務承継人の訴訟引受け)
第五十条  訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。
2  裁判所は、前項の決定をする場合には、当事者及び第三者を審尋しなければならない。
3  第四十一条第一項及び第三項並びに前二条の規定は、第一項の規定により訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用する。

 法人化で一番変わったところは、訴訟の当事者能力を得たということなのだなあということが実感できる書類だった。母校を訴えたとき、国立大学が訴訟の当事者になれないということを知ったのが一番びっくりしたことだったので……。

今日買った本

Posted on 10月 23rd, 2006 in 倉庫 by apj

 ウチの学科では、今年から1年生に、基礎化学I.II/基礎化学演習I, II、という授業をすることになった。ゆとり教育対策と、早めに専門化学の内容に触れてもらうことを目的としている。基礎化学演習IIは後期で、実験の仕方の基礎(ポピュラーな器具の取り扱い、1コマで終わる実験、データ処理の基礎)などをやることになっている。
 で、本日生協で見つけて衝動買いしたのが「教科書にない実験マニュアルよくある失敗・役だつNG集」。初歩的な操作ミスによる事故とか実験失敗とか器具の破損について書いてある。1,2年生あたりが寝転がって読むにはいい本だと思う。学科の図書室に入れたいよなぁ……。

 もう一冊は「搾取される若者たち」。バイク便ライダーの世界からみて、どうやって不安定雇用の労働者が自分で自分の首を絞めていくかについて書いている。趣味を仕事にすることの危険性が指摘されているところは面白いと思った。
「苦になる仕事」→向いてないから止めとけ
「趣味、やりたいことが仕事」→不安定雇用な職だったら逆に未来が無くなる(本より)
「苦にならない仕事」→これがちょうどよいのでは?(これは私の以前からの意見)
などと考えたりしている。

打ち合わせで宇都宮へ

Posted on 10月 20th, 2006 in 倉庫 by apj

 急遽受託研究関連の打ち合わせが入ったので宇都宮へ。事実上ウチの研究室の最大のスポンサー(校費<受託研究費)なのでそりゃもう優先順位が一番高かったりする^^;)。午後後半から打ち合わせは順調に進み、帰りに宇都宮駅のギョウザの店でしっかり食べた。「宇都宮の餃子」と書いた店が数年前に、私が時々通る板橋区大山にできていて、どうして餃子なのかがよくわからなかった。今回、宇都宮の特産品はニラで、ニラを使った製品開発ということで餃子に力をを入れたということが店の説明に出ていて納得した。味は良かった。
 週末なので、東京に泊まって買い物などしてから山形に戻る予定。

ますます物理が嫌われそうな……

Posted on 10月 18th, 2006 in 倉庫 by apj

 教室会議で出た話題。
 一般教育科目で、物理がいくつか開講されているのだが、講義の敷居が高いのか、学生には不人気で受講者数は化学の約半分という状態である。不人気なら、開講コマ数を減らすか、もっと初心者向けの敷居の低い内容にして客寄せするのが普通の対応だろう。ところが、出てきた案は少人数しか希望者の居ない講義の「セミナー化」orz。
 実は教養セミナーはウチの一般教育の目玉で、少人数で丁寧かつ細やかに指導するということになっている。学生アンケートでセミナーを受講しない理由のトップ2が、プレゼンテーションするのが苦手だとか、興味の持てそうなセミナーが開講されていない、というものだったりする。まあ、これは受講しなかった人の理由だから、受講してハッピーだったという人がもっとたくさん居ればそれでいい。
 さて、物理不人気の理由が、「今の指導が丁寧ではないから」「マスプロ教育だから」というのならセミナー化が解決策だろうが、前者であるという根拠はどこにも示されず(つか、前者なら今のままでまずは丁寧に教えろという話になる罠)、マスプロ云々は受講者が少なすぎるという問題とはまさに正反対だから当てはまらない。誰がこんな無理矢理な解決策を考えたんだか。
 ところで、私は高校の時、物理が苦手だった。公式を覚えて当てはめて解くというのができなくて、3年の半ばまでさんざんんな点数しかとれなかった。まあ、「自然科学はもっときっちりした体系があるはずだ」と思ったので、駿台文庫の物理入門(山本義隆)やら、小出昭一郎の物理概論やらを自力で読んで、そっちにはまって物理学科に行ったわけだが、こういうことをするのはごく小数で、大抵の人は高校の物理の点がさんざんだった時点で物理の習得はあきらめて、後に苦手意識だけが残ることになるに違いない。多分、ウチの大学で教養の物理に難色を示しているのは、今後物理を専門にするわけでもない、高校で点数が取れずに悩んだ人達、あるいは中学校理科の力の釣り合いあたりでワケがわからなくなって、その後理科苦手意識を引きずった文系学生等ではないかと思う。物理を敬遠したがる気持ちはとてもよく分かる。だって、自分ができるともわかるとも思えず、何が楽しいのかもわからなかった高校の時の物理の前半は、授業に出るのが本当にうんざりだったもんなぁ……。
 それでだ、只でさえ苦手意識のある物理で、非専門家向けに敷居を低くするという話も無く、「今現在敬遠したくなる内容をセミナー形式でしつこく丁寧に指導する」なんてことをされたら、それに付き合わされる学生にとってはむしろ悪夢じゃないか。大学に合格し「苦手科目の克服」などというプレッシャーからやっと解放されたわけでしょ。第一、もし私が学生で、高校前半の物理苦手意識を持ったままだったら受講したくないぞそんなの。苦手なもののプレゼンをやれと言われるのがほぼ確実だと、そりゃ逃げたくもなる。何だかますます物理嫌いが増えそうな予感がして、物理出身者としては鬱なわけだが。セミナー化するなら、初心者安全で敷居が低い内容を増やさないと、物理=苦行になりかねないよなぁ。