日本トリム株式会社はSLAPP訴訟をする会社である(2020/06/03)

最終変更 2026年05月12日

水素水の研究者の太田成男氏のブログでの批判記事をめぐって,水素水の装置を製造販売している日本トリム株式会社が提訴した件が決着した。太田氏から経緯をまとめたものをいただいたので全文掲載する。掲載にあたってhtmlになおしたために,元のwordファイルの色つきや強調表示の部分がそのままではないが,文章の内容は同じである。

関連する事件番号は,

  • 大阪地方裁判所平成29年(ワ)第1447号損害賠償等請求事件
  • 大阪高等裁判所令和元年(ネ)第2221号損害賠償等請求控訴事件
  • 大阪高等裁判所令和元年(ネ)第2676号損害賠償等請求附帯控訴事件

の3つである。訴状その他の閲覧をしたいところだが,新型コロナウイルスのせいで遠出ができないのが残念。

太田氏から送られてきた裁判の経緯と顛末


日本トリムによる信用毀損・損害賠償訴訟、判決直前の一方的訴訟放棄のお知らせ

 株式会社日本トリム(森澤紳勝社長)が、2017年4月に私個人を対象として謝罪文掲載と4400万円の損害賠償を求めた訴訟について、控訴審判決直前に日本トリムは全ての請求を一方的に放棄し、2020年5月28日に不本意にも裁判自体が終了してしまったので、お知らせします。

 国民生活センターは、水素水および水素水生成器によって作製された水素水、合計19社の水素濃度を測定し、2016年12月にその結果を公表しました。その中に、(株)日本トリムの主力製品も含まれており、その水素濃度はわずか0.2 ppm(0.2 mg/L)以下でした。この水素濃度は、溶けうる最大濃度(飽和濃度)の8分の1以下であり、19社中16番目の濃度でした(図5参照)。国民生活センターは、高濃度の水素水もある一方、水素が検出できない「自称水素水」や日本トリム製品のように低濃度の水素水もあったことより、「溶存水素濃度は様々です。」と揶揄的に記載しています。

 

 

 国民生活センターの公表などに対しては、私は、水素医学の第一人者として各方面から、見解を求められましたので、様々な観点から、このブログに私の見解を6回に分けて掲載しました。第二回目のブログでは、水素濃度についての見解を述べました。日本トリムの製品だけにコメントしたわけではありませんが、日本トリム製品に対しては、以下のように、見解を述べました。

「水素水生成装置のなかでは、アルカリイオン水生成装置の2社製品は、水素水としては、不十分な結果でした。その2社は大手なのですから、アルカリイオン水を電解水素水などと言わずに、ちゃんとした水素水製造装置をつくって販売してほしいものです(2016年12月25日掲載、後削除)」。

 日本トリムは、当時テレビCMやインターネット上で「水素たっぷりの」と、くりかえし宣伝しており、あたかも高濃度の水素を含むかのような宣伝をしていました。しかし、実際は、相対的にも19社中16番目で、飽和の8分の1以下の溶存濃度であることが明らかにされました。この結果自体は、日本トリムも否定していません。私の論評は、消費者保護の観点から、公益性のあるコメントだと思います。

 このブログ公開に対して、日本トリムは、謝罪文の掲載と4400万円の損害賠償を私個人に求め、大阪地方栽培所に提訴してきました。しかし、裁判が始まって1年たっても、4400万円の根拠または証拠となる書面を全く何も一切出してきませんでした。その後も証拠と言えるようなものの提出はなく、日本トリムへの証人尋問で、当方の弁護士が問いただしましたが、「証拠や記録を提出しろとは聞いていない。」と驚くべき返答です。さすがに、裁判長からも「あなた(証人)自身が、毎回公判に出席しており、(太田側)弁護士からの要求を何度も直接聞いているはずです。」とたしなめられた始末でした。最終的にも記録や証拠と言えるものは、提出されませんでした。

 日本トリム側は、ブログのタイトルに「本物の水素水とインチキ水素水」と記載したことで、日本トリム製品がインチキ呼ばわりされたと主張していました。しかし、「インチキ」は水素が全く検出されないペットボトルの「自称水素水」であることは、明確に明らかにしていました。日本トリム製品には名指しはしませんでしたが、「不十分な結果でした」と論評しているのですから、インチキ呼ばわりしていないことは明らかです。「インチキ」と「不十分」は別の意味をもつ言葉です。

 第一審では、訴訟費用負担99:1で(99が日本トリム、1が私)で、謝罪なし、有形損害賠償なし、ただし、無形の信用毀損は一部ありの判決となりました。
 この判決に対しては、高等裁判所へ控訴しました。控訴審では、大阪高等裁判所の裁判官が心証を述べられ、99%ではなく100%勝訴となる判決となることを確信していました。私としては、判決に日本トリム側の訴訟提起自体が問題であるとの指摘をしていただくことを期待していました。つまり、言論を阻害するための「嫌がらせ訴訟(=SLAPP訴訟)」であることを認めて欲しいと期待していました。しかし、一方的な放棄によって、3年間にわたる訴訟が判決もなく終了してしまいました。

 日本の司法制度では、訴訟の提起も、その訴訟の請求の放棄も自由で、訴えられた側は訴訟の放棄を拒否できないことになっており、全く不条理な制度です。

 日本トリムは、テレビCMやインターネットでは「水素たっぷり」と宣伝しながら、水素は、わずか0.2 ppm以下しかなかったのですから、消費者保護の観点から論評を伝えなくてはならないのが専門家の役割です。自社に都合が悪い言論に対して、経済的に圧倒する企業が経済的に不利な個人を訴え、裁判を長々と引き延ばし、都合が悪くなると放棄するやり方がまかり通れば、正当な言論を萎縮させてしまい、消費者に不利益をもたらすことになってしまいます。

 なお、日本トリムは、国民生活センターには、提訴していません。

 長い裁判に関して、多くの方にご心配をおかけしました。御礼申し上げます。


 本件訴訟をSLAPP訴訟であると判断した理由

 日本トリム株式会社は,直接名指しもされていないのに4400万円という高額を請求していること,自分から訴訟しておいて再三求められても損害についての証拠を出さなかったこと,控訴審になって勝手に取り下げたことである。つまり,真面目に損害を示して賠償金をとるというつもりがなく,旗色が悪くなったら控訴審で取り下げるという,ほとんど嫌がらせ目的にしか見えない行動をとっている。

 名誉毀損の場合は免責要件を示すのが被告の役割なので,生じた損害の立証を細かくやるということに原告が積極的ではないのはわからない。しかし,信用毀損を提訴の理由に入れているのなら,信用毀損の分の損害額を示すのは原告の仕事だろう(被告は原告の営業の実態や状況を詳しく知りようがないので損害額も見積もりようがない)。そこの立証が無かったというのなら,いたずらに賠償額だけ増やして被告に負担を与える一方,きちんと訴訟をやって決着をつけるつもりがないのに提訴したということがうかがえるわけで,悪質なやり方といえる。

 この評価は,一方の当事者の太田氏からの情報に基づいて書いている。もし,日本トリム株式会社が,実は違う,と主張するのであれば,関連の訴訟資料とともにまずは,連絡をください。内容検討後,コメントを書き直します。なお,この記事に対して4400万円を請求する訴訟を提起するのならご自由にどうぞ。

 

 手続上よくわからないところ

 本件訴訟が提起されたとき,私は太田氏に連絡をとって,訴訟資料を公開して応援するサイトを作ってもよいがどうでしょうか,と打診し。結果は断られてしまって,ちょっと残念なわけだが……。

 いただいた文書によると,「 日本の司法制度では、訴訟の提起も、その訴訟の請求の放棄も自由で、訴えられた側は訴訟の放棄を拒否できないことになっており、全く不条理な制度です。」となっていて,勝てそうなのに取り下げられてしまったことにご不満の様子である。本件がほとんどSLAPP訴訟に違いない,という話は,弁護士と打ち合わせていても多分出たんじゃないかと思う。一審で反訴した様子が無いのが不思議だ(太田氏が説明から省略しただけかもしれないが)。例えば,不当提訴だ,という理由で,同額の損害賠償を請求しておく,など。

 実際のところ,不当提訴を広く認めてしまうと,救済の間口が狭くなるので,裁判所はなかなか認めたがらない。全く事実無根の訴訟を起こしたとか証拠を捏造してまで訴えたとかならともかく,主観的に気に触った内容があって提訴した場合は,不当とまではいえない,と判断されることがほとんどだろう。それでも,賠償金が認められないとしても,裁判所からなにがしかの言及はあったかもしれない。