Archive for 9月, 2021

postheadericon 弁論終結後の覚え書き(その3)まあ確かに面倒臭いわな

弁論終結後の覚え書き(その2)原告は大竹氏(自然人)の方が争いやすかったのでは、の続き。訴訟資料はこちら

裁判所が決まらない

原告が訴額を間違えたままさいたま簡裁越谷支部に訴状を出したため、さいたま地裁越谷支部に移送されたのだが、その後が妙に長かった。そのまま越谷支部で始まるのかと思ったら、待てど暮らせど期日指定の呼び出しが来ない。見落としていて初回欠席だとまずいよなあ、と思って何回か裁判所に電話していたのだが、回答が貰えず、結局、越谷支部ではなくて、浦和のさいたま地裁(本部?本庁?)に回付された。著作権法の争いなんかありふれてるし、金額もしょぼいし、なんでまた大きい裁判所に回付されたのだろうと思ったのだが、本人訴訟でめちゃくちゃめんどくさくなりそうだと思われたのではないかと気づいた。問い合わせややりとりの度に、本人です、と原告被告双方が名乗って書記官に連絡していたわけで、そりゃ、プロが間に入ってさくっとまとまるという展開は期待できないわな。

合議だったので驚く

結局、さいたま地裁第4民事部で審理してもらえることになった。本人訴訟なので法廷に出向いたところ、裁判官が3人揃っていた。……え、合議なの?、とびっくり。たとえば、渋川満「裁判所あれこれ —合議などを中心として—」(白鴎法学 第15号(2000))によると、

 したがって、より慎重な審理、判断が要請される事件(例えば、上訴審)、事実認定が微妙ないし難しい事件(例えば、薬害、大気汚染などの公害事件)、内容が膨大(名古屋局裁では、事件記録が約四〇〇冊で一八万余頁(ロッカー八個)の損害賠償事件を担当しました)又は当事者多数(札幌高裁では、当事者約四千人の懲戒処分取消請求事件を担当しました)のため手続上困難が伴う事件(法廷の秩序維持のため、法廷等の秩序維持に関する法律又は裁判所法で、監置とか退廷命令を発することも余義なくされることがあります。わたくしも、何回も、退廷命令を発し、執行したことがあります)、難しい法律判断(裁判実務においてはしばしばあります)又は違憲判断(当事者からの違憲の主張は極めて沢山ありますが、実のあるものはそれほど多くはないといってよいように思います)を伴う事件などは、通常合議体によって審理判決されています。
 裁判所法によれば、原則的に、(1)簡易裁判所と家庭裁判所が単独制によっており、(2)上訴審は合議制によっていますが、(3)地方裁判所は単独制を原則とし、法律が特に定めている事件、又は裁判所が特に合議体で審理することに決めた事件(これを「裁定合議事件」と称しています)などを合議制で処理することとしています(裁判所法一八条、二六条、三一条の四、三五条参照)。

とある。

本件訴訟は、短いメールを7通ばかり無断で公開したといって著作権法違反で訴訟になったものであり、原告被告は一人ずつしかおらず、賠償金の額も100万円としょぼい金額である。知財を扱うには裁判官の側にも専門知識が必要といっても、ある程度技術的な専門知識を要求される特許紛争と違って、著作権はそこまで技術に踏み込んだりはしないはす。条文の適用もシンプルだし、どう頑張っても事件記録がファイル1冊を超えるとは思えないし、法律判断が難しくなるとも思えないし、こんなの単独制で十分なんじゃ……。

さては、ウルフさんがメールの通りにさいたま簡裁越谷支部で騒ぎを起こしまくっていたので、法廷秩序の維持のために合議になったのか。あるいは、技術的理由ではなく素人同士の本人訴訟で主張がぐだぐだになることが原因で事実認定が微妙ないし難しくなると思われたのか。一体何が原因なんだろうと想像が膨らんでくる。

ところで、始める前に、進行意見書というのを裁判所に出すように求められるのだけど、こんなふうに書いて出した。

Screenshot 01

答弁書を書いた時点では、ウルフアンドカンパニーが手を変え品を変えとことん争ってくるだろうと予想していた。だから、訴えが著作権だけで済むとも思っていなかった。著作権で争って思ったような結果が出なかったから次は名誉毀損な、などと、訴訟が続くのはかなり面倒だし、コロナ禍のまっただ中に何回もさいたま地裁に出向きたくない。だから、当初の計画では、著作権以外で削除理由になりそうなものも全部審理してもらってカタをつけたかったので、早急に反訴して請求原因になりそうなものは全部潰したい、と書いて出した。まさかこれが原因で合議になったんじゃないよな……。

ひょっとしたら、素人同士のぐちゃぐちゃの弁論の相手なんかうんざりするし消耗するだけなので、裁判官の精神の安定のために、合議を口実にして愚痴の聞き役として左右に一人ずつ配置されたのかもしれない。私の中では、今のところ、合議になった理由としてはこれが最有力である。真実が明らかになることはないだろうが。

原告、手抜きしすぎ

著作権侵害で訴えられているのに、著作権法の何条で争うのか、原告から全く提示されないという状態で訴訟が始まった。仕方が無いので、こちらで条文を示してあてはめを行い、侵害していないという主張を書くことになった。どの条文の適用を求めるかを示すのは原告の仕事なのに、手抜きにも程がある。

また、裁判所はウルフアンドカンパニーと私の争いなんかそもそも知らない。そもそも知らないところに話を持っていって判断を求めるのだから、本筋に関係なくても、何がどうしてこの提訴になったのかを簡単に説明ぐらいはしておくべきだろう。しかし大竹氏はそれもしなかった。結局、事情の説明も私の作業になった。

著作権法についの反論はオーソドックスに書いたつもりである。

訴えてやる、というありがちな脅し文句が主だったので、まず、著作権法2条1項1号の著作物に該当しない、という主張をした。メールが短いし定型の文句でしかないので、創作性が無いし作者の個性が表れているともいえない、という指摘を行った。

次に、著作物であると認められた場合、32条1項の適用、つまり、公開した情報の引用にあたるから許諾無しに使って良いだろう、という主張をした。これは、ウルフアンドカンパニーがYouTubeのコメント欄に、メールで送ったのと大体同じ内容を書き込んで公開していたからである。公開済みの内容がたまたまメールの形に纏められて送られただけなので、引用しても問題ない、ということである。また、掲示板の場合はその場のやりとりで記述の順番が入れ替わったり表現がぶれたりすることがあるので、大体同じ内容であれば一致とみなすべきだという主張もしておいた。これが面倒臭い作業だった。ブラウザ上で折りたたまれているYouTubeのコメント欄を全部展開したものを証拠として出さなければならず、印刷したら46ページになった。この中から、ウルフアンドカンパニーを名乗って書き込んだものを抜き出して、メールの内容と照合するという作業をしていた。こんなの裁判官だって読むのがイヤになるだろうと思ったので、抜き書き部分はマーカーで囲み、抜き書きしたページには付箋紙を貼り、さらに抜き書き部分の一覧表を作って添付することにした。

最後に、41条が適用されるべきという主張を書いた。これは、報道目的の無許諾利用を認める条文である。法律の先生方からは難しいだろうと言われていたのだけど、法的主張が無いのに専ら脅し目的で訴えてやるを連呼したこと、企業活動で訴訟で脅したり訴訟を実行したりするのはスラップ訴訟として社会問題になっていて、金額が大きいものは新聞が取り上げていることを示し、規模が小さいと大手メディアは扱わないが、社会問題として報道する意味はある、と主張しておいた。実のところ、41条の適用が認められると助かる人が結構居るはずである。インフルエンサーや政治家を批判し、訴えてやるのメールをもらい、それを公開したら著作権をタテに止められたというケースが出てきているので、報道目的が認められるとこのパターンの脅しへの歯止めになるからである。

それにしても、書面を書いている間、ずっと、これって原告が条文示すところだよな、とか、原告が先に訴状で説明する内容だよな、ということばかり気になった。本来なら原告がかけるべき手間までこっちに回ってきてる感しかなく、釈然としなかった。弁護士さんなら、もっとスマートに、入り口で撥ねる方向で労力をかけずに書類を作るかもしれないが、なにぶん素人なので、力の抜き方が全く分からないのだった。

実を言うと、著作権法の何条の話なのか条文示して当てはめたのを出せ話はそれからだ、と全部突っぱねて、大竹氏が書面を書けないままなのを毎回眺めてやる、という塩対応も考えてはいた。ただ、もし41条が認められる可能性があるなら、うまくいけば下級審の裁判例でも助かる人が多いと思ったので、敢えて著作権法の中身の反論を書いて出したという面はある。それに、塩対応方式だと、裁判所に行く回数は明らかに増えそうで、旅費と時間がかかるしコロナ禍で緊急事態制限が連発されている状況ではあまり嬉しくない。なので、早急に、使えそうな条文全部について主張を出してしまう方針にしたが、これが良い方法だったかどうかは素人故に評価のしようが無い。

予定と違う内容で反訴

2021年の3月頃には、私は、大竹氏は本人訴訟が得意と思い込んでいるだけで、実際には著作権法の条文も読まずに提訴しているようにしか見えないことから、このまま本訴だけ進めて終わっても、改めて、例えば名誉毀損の訴状を書いて提訴してはこないのではないかと思い始めていた。名誉毀損訴訟の訴状をまともに書く能力があるように見えなかったからである。

ところが、同時進行していた山形の訴訟が結審した直後に、大竹氏から、山形の訴訟を取り下げたらさいたまの分も取り下げる、という内容のメールが届いた。山形の方がほぼ不戦勝になりそうだったので、取り下げるメリットが無かったから拒否した。しかし、裁判官の前で取り下げを言い出されたら面倒なことになる。口頭弁論開始後の取り下げは被告の同意が必要だから、勝手な取り下げはもはや不可能だったのだが、裁判官が血迷って本人訴訟の面倒臭いヤツだから和解させると手間が減る、と考えたりしたらまずいことになる。原告の大竹氏は、どう考えても和解の交渉で話が通じそうな相手ではないからである。

そこで、当初予定していた内容とは違うが、反訴状を出すことにした。手抜きをするにも限度がある、まともに書面を出して訴訟をするつもりが無いのに提訴していたずらに他人を紛争に巻き込むのは不当提訴だ、という内容で書いて出した。大竹氏は、「弁護士付きの被告を涙目にすると自分の法律能力答弁能力の UP になりますので,どんどんやります。」とYouTubeコメントに書いていたので、相手が法律の素人の私だからといって手抜きすんなコラ、ってことで、迷惑料的な意味で損害賠償も求めた。実のところ、不当提訴が認められるハードルはかなり高いので、あまり期待はしていない。ただ、これを出しておくと、訴えを取下げると大竹氏が敗訴することになるから取下げを持ち出して和解の主張ができなくなるし、裁判官も和解を言い出すことはまずなくなるという効果はありそうなので、出す意味はあると判断した。実際、弁論終結まで、裁判官からは、和解のわの字も出なかった。

なお反訴状を出したら、賠償金の利息の計算の起算日が違う、と指摘されて修正した。この辺は実務を知らない素人なのでどうしようもない。プロがついててくれれば、こういうところで引っかからなくて済むんだよなあ。

釈迦に説法もここに極まれり

1つ前の記事で書いたように、法人に精神的苦痛は想定できんだろ、と書面に書いて出したら、大竹氏の反論

株式会社ウルフアンドカンパニー社員全員が原告のメールで会社が被害を受けているのだから株式会社ウルフアンドカンパニー全社員が精神的苦痛を受けたことは明らかです。

待てやオイ。法人って何かわかってんのか。

会社と社長の区別がついてないとは思っていたが、そもそも法人とは何かすらわかってないとは思わなかった。

それはそうと、どう反論したものか迷った。法人とは何か、ってのは、民法の教科書のどれを見ても書いてある。民事訴訟では、裁判所にとって顕著な事実は立証を要しないことになっているが、これはたとえば大きな事件が起きたこと(たとえば東日本大震災などが起きたこと)自体を立証しなくていいという意味である。法人とは何か、というのは、法学部生にとっても裁判官にとっても常識の範囲の話だが、裁判所にとって顕著な事実といえるのかどうか、私は素人なので判断がつかなかった。判断がつかないなら立証しておくのが安全ということになる。手持ちの参考書を確認したら、少し古い有斐閣叢書の民法に、法人の定義やら法人の精神的苦痛を認めなかった裁判例が出ていた。そこで、民法と会社法の教科書の該当部分を書証につけて、そもそも法人とは、から準備書面で説明した。パンキョーの法学の小テストかよ、と思いながら……。

裁判官は、文系資格試験最難関の司法試験に受かった人の中でも成績優秀な人が主に就く職業である。原告のトンチキな主張が原因で、法律のプロ中のプロに向かって、ド素人の私が、法人の何たるかを説く羽目になった。考えようによってはある意味非常に失礼な行為である(が、弁論の場だから仕方がない)。こんな準備書面を見たら、裁判官は「……うん、知ってた」ってなるに決まっている。

かくして、私は本件訴訟において、自分の人生で一、二を争う「釈迦に説法」を実行する結果となったのである。

最大の謎

「提訴します」は口先だけ?ウルフアンドカンパニーが裁判所でまともに反論しなかった件、で、ウルフアンドカンパニーの大竹氏がいかに本人訴訟が得意で場数を踏んでることを自慢していたかをまとめた。

ところが、実際に訴訟をやって書面をやりとりしてみた結果わかった実態は次の通りだった。

  • 訴状がまともに書けない、内容はさておくとしても書式すら満たしていない。
  • 著作権侵害で訴えると言いつつ著作権法を読んでない。
  • 民法の基本、自然人と法人の区別がついてない。
  • そもそも法人とは何かがわかってない。
  • 書面でどの条文の適用で争うのか具体的な指摘が何もない。どの条文にあてはまるかの主張すらできない。
  • 証拠もまともに出せない。
  • それ以前に文法的におかしな日本語が短い書面の中に頻発

……あのさあ、一体なにをどうすれば、こんな状態で本人訴訟が得意という自己認識になるわけ?なお、YouTubeコメントの方では、(自演かそうでないかは不明だが)ウルフアンドカンパニーの営業部や従業員らしき人が、社長が訴訟上手であると書き込んでいた。今回、やりとりした書面は全部公開しているので、従業員におかれては、中身を確認して、社長がまともな法律文書どころか文法的にまともな日本語を書くのも怪しい人だってことにさっさと気づいた方が良いのでは。

postheadericon 弁論終結後の覚え書き(その2)原告は大竹氏(自然人)の方が争いやすかったのでは

弁論終結後の覚え書き(その1)原告と権利者は結局誰?、の続き。訴訟資料はこちら

実務の知識は大事

大竹氏は,さいたま簡易裁判所越谷支部での訴訟にこだわっていた。会社があるのが越谷なので,近場でやりたいというのはわかるのだけど,なぜ地裁でなく簡裁なのかは今もって理由がよくわからない。経緯にもまとめたが,大竹氏は,2020年09月22日に,さいたま簡裁越谷支部に訴状を提出した。

ところが,訴状には,私がメールを引用したウェブページを削除し,100万円の賠償金を払え,と書いてあった。削除要求の訴額が160万円となるため,訴額合計が260万円となり,簡易裁判所で扱える140万円を超えてしまっていた。簡裁は職権でさいたま地裁越支部に事件を移送し,私のところには訴状と,移送したぞ,という書類が9月25日か26日に届いた。

私の方は,大竹氏から届いた「訴えてやる」メールの内容について,債務不存在確認訴訟をやる準備(訴状原稿や証拠書類など)は済ませていた。また,最初に訴訟で脅されたときに,こいつ一体どういう会社だよ,って思って登記簿簿謄本を取り寄せていたのだが,それがもうすぐ取り寄せてから3ヶ月になろうとしていた。会社を訴える場合の資格証明書は,取り寄せてからの使用期限が3ヶ月で,あと2,3日で期限が来てしまう。そうすると再度取り寄せになって何日か遅れることになる。

それで,さいたま地裁の手続きが始まる前に,山形で,削除の義務が無いということも入れた請求をぶつけてみる,ということを思いついた。二重起訴はまずいのだけど,移送に時間をとられて地裁の手続きでは山形の方で先行できそうだったので,こちらで先に始めればコロナ禍の中を埼玉まで行かなくていいんじゃないか,と思ったのである。資格証明書の使用期限が間近だったので,十分調べる余裕もなく,とりあえず訴状にメール引用部分の削除義務なしも追加して,ほぼ即日,山形地裁に訴状一式を提出した。

出してから,さいたま地裁越谷支部と簡裁越谷支部の両方に,「一部請求がぶつかる内容で提訴したのだけどそちらの日程はどうなってますか,これ二重起訴になりますか」と問い合わせてみた。しかし,手続きが始まって裁判官が書面を見るまで回答ができないと言われてしまった。

こうなると,頼りになるのは実務を熟知している弁護士さん,ということになる。普段お世話になっている先生に,状況を説明し,日付で先行できる可能性があるか,と訊いたら,移送があっても日付の方は最初に簡裁に出された日付になり,地裁が受け取った日とか事件番号が振られた日ではない,と教えてくれた。そうであるなら,反対の請求をぶつけている部分を残しておくと余計な手間が発生する上,混乱のもとになる。そこで,山形地裁に行き,事情を説明して,訴状の訂正の手続きをして,削除義務なしの確認の部分を削除した。

送達前に訂正できたので,大竹氏の方には,該当部分削除済みの訴状が届くことになった。ところが,大竹氏が何を勘違いしたのか,山形でもさいたまと同じ訴えを起こしていると言い出した。そこで,訂正後の訴状を書証として提出し,請求に重複が無いことをさいたま地裁で説明することとなった。

素人判断で小細工を思いついた挙げ句,書記官の手間を増やしてしまったので,反省している部分である。

原告は法人でええんかほんまに?

無断公開が著作権法違反だと言われたメールの著作者の表示が代表取締役の大竹氏個人で、法人の著作物だという立証も無いに等しい(=著作権法の条文への当てはめが全く出て来ない)のに、大竹氏はどういう訳か原告は法人だといって譲らなかった。確かYouTubeのコメントだか、どなたかに訴訟予告をした時に、これまでは個人が原告の訴訟をやってたけど次は会社が原告だ、って宣言してたので、有言実行したつもりなのだろう。ただ、著作権法違反の訴訟でやるのは筋が悪かったのではないか。

実は、原告が法人になって私も困った。訴訟を始めるにあたって、著作物の中身に踏み込んだ判断が出たらいいなあ、と思っていたのだが、14条の推認で大竹氏個人が著作者だということになってしまうと、法人の原告が主張できることがほぼ全て無くなってしまうからである。だから、わざわざ、原告が自然人である大竹氏であると思われる部分が多々あるので、一応そちらを前提にして著作権法の中身の部分の主張を出しときますね、って書いたのが準備書面1で、法廷でもしつこく、本当に自然人じゃないんですか、と訊いたのだけど、原告は法人です、で全ツッパされてしまったのである。

ウルフさんは太っ腹?

さて,原告が法人である,となった場合,法人が争えるのは,著作権の部分(ただし著作権が法人にあることを示す必要あり)と,メールの公開が原因で「何億円規模の損害」と主張している部分である。ところが,損害が何億円規模なのに賠償金がたったの100万円とは一体どういうことか説明しろ,などとやっていたら,ウルフさんが,販売の方で生じた損害については何も主張しないことにしてしまった。100万円の積算の根拠を出せ,と求めてみたら,出してきた内訳には販売で生じた損害の分が含まれていなかったのである。その結果,著作権のみを争うことになった。億単位の損害が出てると訴状に書いておきながら,請求しないことにしたのだから,実はウルフアンドカンパニーはものすごく太っ腹なのではなかろうか。

門前払いルートが発生

著作権のみを争うことになった上,メールの著作者の表示が大竹氏個人の名義なのに原告が法人、となったため、新たに門前払いルートが2つ発生した。選択でシナリオが分岐するノベルゲームのような状態である。分岐をスルーするわけにもいかないので、準備書面2で指摘することにした。なお,ノベルゲーの攻略では,分岐を全部たどって既読100%にする趣味があるw。

もっとも手続きの入り口で終わってしまうルートは、メールの著作権が法人ではなく推認通り大竹氏個人に帰属するため法人が主張できる権利がそもそも存在しなかった、となって、著作権の中身の審理に入らず終わってしまうというルートである。

その次まで進めるルートは、法人の著作物であると認められた上で,賠償すべき損害が無い,とされるルートである。このルートが発生したのは100万円の損害賠償の内訳が原因である。

法人の精神的苦痛 is 何?

原告が主張した100万円の内訳は,

財産権である複製権の侵害が20万円
財産権である公衆送信権の損害が20万円
著作者人格権である公表権の侵害が20万円
インターネット上で無断掲載された精神的苦痛の慰謝料が40万円

というものであった。最初の3つは著作権法が根拠,最後のものは一般不法行為という主張なのかなと思ったが,本人訴訟が得意なはずの原告が根拠となる条文を全く示さないため,推測にすぎないのだけど。ともかく,訴訟慣れしてるはずの大竹氏は,財産権と人格権が別の訴訟物なので請求も分けなければいけないということすら知らずに訴状をかいて,私が答弁書で指摘し裁判官からも分けろといわれて初めて内訳を出してくる始末だった。

原告はどの条文で訴えるか選べるが,被告にその選択の余地はない。普段勉強していない著作権法を使うことになったので,訴えられてから本屋に走る羽目になった。

Screenshot 01

とりあえず定番とされる教科書を2冊買ってきて,関連しそうなところをざっと読んで条文がどう運用されているかを確認した。中山先生の本はじっくり読むのに適していて,岡村先生の本は図が多く初心者がめあての情報を検索するのに便利であった。法学部やロースクールで使われている定番の教科書だそうなので,素人としては,とりあえずこの教科書の内容に基づいて書面を作るしかないのであった。なお,訴訟の途中で岡村本の改訂版が出たので,そちらも買うことになって出費が倍増した。

岡村本の8.6.3節に損害についてわかりやすい表が出ていた。それによると,著作権・著作隣接権・出版権については,積極損害,消極損害(逸失利益)が認められ,慰謝料が認められることは例外的な場合であり,著作者人格権・実演家人格権については積極損害と慰謝料が認められる,となっていた。

積極損害というのは,侵害によって生じた不必要な出費で,侵害者特定に要した費用などが該当する。今回は,送達先をさっさと指定してしまったし,双方とも本人訴訟なので,訴訟費用と郵券と印刷代紙代以外に積極損害と呼べそうなものは存在しない。

すると,財産権侵害で認められるのは逸失利益ということになる。が,常識的に考えて,私に対して提訴してやると脅しているメールの内容を他で販売して得る利益があるというのは想定しがたい。だから,逸失利益も存在しそうにない。

慰謝料の方は精神的苦痛による被害ということになる。著作権法にもとづく慰謝料20万円と,同じ内容となる精神的苦痛40万円をわざわざわけた理由がさっぱりわからないのだが,さらに問題なのは,原告が自然人ではなく法人なので,そもそも精神的苦痛が想定できず,慰謝料を請求する根拠が無いということである。

このルートに入った場合,逸失利益が無いので財産権侵害の賠償金を請求する根拠がなくなり,精神的苦痛が存在しないので慰謝料請求の根拠もなくなる。削除要求だけは残るが,財産的にも精神的にも被害が無いのに一体何を根拠に削除を求めることが正当化されるのか?ということになってしまう。第一、訴えてやるとか本人訴訟が現在進行形で得意だという主張は、原告自身が自分からYouTubeコメントに書き込んで公表済みなのだ。

門前払いルートは,大竹氏(自然人)が原告であれば発生しなかったルートである。どう考えても,大竹氏(自然人)が原告になったほうが,より望みの結果が得られる可能性が残っていたんじゃないか。なぜ原告が法人であることにこだわったのかさっぱり分からない。そういえばどっかで、大竹氏は、これまでの訴訟は個人が原告だったけど次は会社が原告で、みたいなことを書いてたっけ。とすると、単なる趣味の問題だったのだろうか。

postheadericon 弁論終結後の覚え書き(その1)原告と権利者は結局誰?

本件の弁論が2021年9月15日に終結した。今後は,特段の必要が生じて再開の申立をしない限り弁論が開かれることはない。つまり,双方主張が出尽くしたので判決を待っている状態である。一区切りついたので,進行中は書けなかったことも含めて書いておきたい。訴訟資料はこちら

原告の特定まで

酷い訴状で提訴された」に書いたように,本件訴訟はそもそも訴状の出来が法律文書としてぐだぐだで酷いものだった。このため、まず、答弁書で、原告は会社(法人)と大竹氏(自然人)のどちらであるか明らかにせよ、と書くことになった。

法人は、代表者の名前で訴え、訴えられることができる。だから、代表者代表取締役の表示があって名前が書いてあれば、普通は原告は法人ということになる。ところが、提訴されるまでのメールのやりとりの内容が、大竹氏個人とのやりとりに見えるものだったり、自然人しか主張できない権利が混じっていたりしたため、会社と社長個人のどちらを原告にしたいのかがはっきりしないという状態になってしまったのである。

ところが、原告は誰でメールの著作者は誰、という問いに対し、大竹氏は、原告準備書面2で、

著作権者は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表取締役社長 大竹誠一です。

と、

原告は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表取締役社長 大竹誠一です。

という見事なボケをかましてくれた。

私がこのとき期待していた答えは、「株式会社ウルフアンドカンパニーです」(法人の場合)か「大竹誠一です」(自然人の場合)のいずれかだったのに、またもや、書面を読んでも一体どちらかわからないように書かれていたのである。

本人訴訟が得意だと吹聴していた大竹氏は、代表者の名前で訴訟できるということの意味すら全くわかっていなかったとしか思えない。代表者の名前を使った場合、法人も、代表者個人のいずれもが訴訟はできるわけで、代表者であるという肩書きと名前が書いてあるだけでは一体どちらかわからず曖昧だから訊いていたのに、そのことが全く伝わっていなかった。

結局、法廷で口頭で「原告は会社で間違いないか」と改めて問いただし、「会社である」という回答をもらって、やっと確定したのだった。

後に書いたように、民事訴訟法では法人代表者が法人を代理できるが、著作権法では表示された名前の人が著作者と推定されるので、この書き方だと著作者は大竹氏個人になってしまう。法人の著作物であることの立証は改めて再度求める必要も生じた。条文の内容が違うんだから、こんなところでコピペすんな>大竹氏。

他人の権利は主張できない

民事訴訟で主張できるのは本人(法人、自然人とも)の権利のみであって、他人の権利を主張することはできない。法人は代表者の名前で訴訟できるし、代表者自ら法廷にきて本人訴訟の形で法人が訴訟することもできるのだけど、法人と代表者自身は別人格である。だから、法人が原告の時に代表者個人の権利を混ぜて主張することはできないし、代表者個人が原告の時に法人の権利を主張して争うこともできない。民事訴訟が得意なら、このことは常識以前の前提なのだが、大竹氏はこれすら理解していなかったことが訴状からわかった。

弁論している間は、相手に答えを教える結果になりそうだったので黙っていたのだが、私が、具体的に訴状の請求原因をどう振り分けていたか書いておく。訴状の2ページと照らし合わせて見て欲しい。

  1. 法人、自然人どちらでも可。ただし法人が原告となって権利主張するには、法人著作物の要件を満たすことの立証を行う必要がある。
  2. 会社に発生した損害なので法人しか主張できない。
  3. 「当社の個人情報」が意味不明。個人情報の保護に反するという主張ができるのは大竹氏(自然人)のみ。
  4. そもそも法的主張でないので請求原因たり得ない。
  5. 1と重複。この項目の方が詳しいので、法人著作物なら法人のみが、自然人の著作物なら大竹氏個人のみが主張可。
  6. 権利義務と無関係な記述なので請求原因たり得ない。
  7. サイト内の文書全ての削除というのは明らかに過大な請求なので、法人、自然人どちらが主張しても不適切。

著作権については、法人著作物と認められるかどうかに依存するので、この段階では何とも言えなかったが、2と3は原告を法人と自然人のどちらにするかによって、一方しか選べない。

答弁書を書いていた時は、法人著作物であるという要件を示した上で1,2,5のみ主張するか、著作者が大竹氏(自然人)であるとして1,3,5を主張するかのどちらかになるだろうと予想していた。

最後まで法人と自然人を混同

まあともかく、最後は裁判官の前で口頭で答えてもらうという流れで、原告は法人ということになった。すると、著作物性やら何やらを争う前に、そもそも著作者は誰、ということが問題になる。

法人が訴訟する時に代表者の名前で行うというのは、民事訴訟法37条が根拠で、代表者を法定代理人と同じに扱うことにするという建て付けになっている。一方、著作権法は、14条で「著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。」と定めている。一連のメールは、所属する会社と肩書きが付されているものの、大竹氏個人の名前が表示されているので、14条から、著作者は法人ではなく自然人である大竹氏と推定されることになる。さらに15条では、法人が著作者になる要件として、法人の発意(代表者個人の発意と常に一致するわけではない)、職務上作成、公表名義が法人(つまり代表者の名前ではないという意味)、と定めている。

どちらの場合も法人と代表者は別人格として扱われていて(当たり前だ)、民事訴訟で代表者が出て来て法人が当事者の訴訟ができるのは代理人扱いだから、という理由である。しかし、大竹氏はこのことを全く理解していなかったようである。著作権法から、著作者は法人ではなく自然人となるので法人が原告として権利主張できないぞ、と指摘したら、準備書面4に次のように書いてきた。

原告が書いた文章は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表者 代表取締役 大竹誠一であるから、会社名が入って居てもでも法人・個人の両方に認められてる。

著作権法の14条、15条をまるごと無視することに決めたらしい。というか、著作権法を根拠として訴えてきたのに、大竹氏、そもそも著作権法の条文を全く読んで無いだろ。本人訴訟が得意かどうか以前の問題じゃないのか。なお、大竹氏から提出された書面で、著作権法の条文を具体的に示した箇所が1つも無かった。

一連のメールについて、法人と自然人が共同して作った著作物なので権利も両方が持ってる、となったとしても、本件訴訟の原告は法人なので、法人の持っている権利についてしか主張できない。つまり、自然人である大竹氏にも権利があるという主張をここでしたって全く意味が無い。

こんなふうに、最後まで、法人と自然人である代表者は別人格、ということがあやふやなままとなった。なお、大竹氏の会社は、法人と代表者の区別がぐだぐだになっている可能性があるので関わる時には用心してほしい。今回、私は、送達場所を就業先にしていたのだが、何と大竹氏は書面の提出を職場にfaxしてきた。本件訴訟は職務としてやっているわけではないので、職場のリソースを使って書面をやりとりする筋のものではない。郵便であれば、ダイレクトメールなどと同じ扱いなので、事実上職場のリソースは使わないに等しい。にもかかわらず大竹氏は私の職場に電話してfax番号を聞き出して総務にfaxを送るということをやらかしてくれた。おそらく、大竹氏の会社が普段からこの手の混同を平気でやっているから、外に対しても同じことをしたのではないだろうか。残念ながら国立大学法人というところは、所属している個人と法人は別、というのが徹底していて、こちらからこの手の公私混同をすることはない。なお、今回、就業先に送達してもらったのは、郵便物受け取りが便利(自宅だと勤務が終わってから再配達や、深夜に郵便局まで行く必要があり、コロナで営業時間が短縮されているので受け取りが大変不便になる可能性があった)ことと、大竹氏が裁判所での暴力を暗示したので自宅住所を知られることに身の危険を感じたからである。