Archive for 7月, 2007

postheadericon 法廷傍聴へ行こう

 「法廷傍聴へ行こう」[第三版]井上馨著(法学書院) 4-587-03202-6
裁判のしくみ(三審制など)を簡単に説明し、訴訟記録の閲覧の手続きの仕方と、裁判の流れを、簡単な書証の例を添えて、刑事訴訟と民事訴訟に分けて紹介している。巻末には裁判所一覧が付いている。
 やさしい本なので、高等学校の公民の副読本に使ってもよさそう。中学生が使うには、漢字の読み方や言い回しのハードルがちょっと高いかもしれない。
 出版が2002年なので、弁護士報酬に関する記述の部分などが多少古くなっている(訴訟額の何%、といった弁護士会の縛りが外れた)。

postheadericon 民訴95条3項

 期間の計算。基本は民法の規定に準拠だが、休日の定義が、日曜・土曜・国民の祝日に規定する休日の他、一月二日、一月三日と十二月二十九日、十二月三十日、十二月三十一日を休日としている。

 お盆休みは入らないのね……。

postheadericon メモ場所作ってみた

 主に法律関係の本やら条文やらについてのメモを残す場所を作ってみた。法律書はとにかく改訂が激しいので、下手すると同じ版を買いそうになるので、これまでに買って読んだ本の情報やその他気付いたメモを残すことにする。
 かなり個人的メモの色合いが強いので、コメントやトラックバックは承認制にしておく。

【追記2007/08/17】
 blogテストのつもりでatom11で「条文と法律書読みのメモ」というタイトルで作り始めていたのだが、スクリプトをバージョンアップしたらどうやっても動かなくなったのでこちらに手動でコンテンツを移行。

postheadericon 刑事告訴で楽する方法

 さまきさんの所のblogでもコメントしたのだが、素人が刑事告訴を楽にやる方法について。
 めいっぱい犯罪だと警察に行くだけで捜査が始まる(ってか通報で事が始まる)が、ウェブ関連の名誉毀損だと、こちらから告訴しない限り警察は動いてくれない。
 警察に持っていくのは、告訴状・証拠資料・資料説明書の3点セットで、資料には番号を振り、それぞれ何番が何を示すかの一覧表を説明書にまとめる。素人が0から作るのは大変だが、かといって弁護士に頼むと、刑事では賠償金がとれないから大赤字確実である。
 楽するには、最初の1回だけ弁護士に相談(30分5000円程度)し、この時に「3点セットのひな形下さい」、と頼んでみるとよい。書式は大抵の法律事務所が持っているはずなので、見本をもらってきて、ワープロで自分で作ると安上がりである。
 3点セットを作って警察に持っていくと、調書をとられたりして何回も直される。素直に全部対応すること。完成したら受け取ってもらえる。告訴状を受け取って放置することはないので、確実に手続きは進むだろう(不起訴ってことはあるかもしれないが)。
 ネット関連だと本人特定をしなければならないが、プロバイダのログが消されてしまうと警察だって追跡が難しくなる。私の場合は、たまたま、プロバイダ責任制限法で開示してくれ提訴のために「ログを消すな」という仮処分を地裁に突っ込んでいる状態のまま、刑事手続きを進めることになったので、ログが残っている間に警察が押さえてくれた。一定期間保存せよ、の仮処分はわりと簡単に認められるようなので、半年くらいの期間保存してくれ、と民事の方で仮処分をかけている間に刑事をやる、というのも1つの手かもしれない。

 とにかく、面倒がらずに最寄りの警察署に足を運ぶつもりがあれば、告訴はそれほど難しくない。

【追記】
 ヘタに告訴するぞなんて相手に連絡すると、強迫されたって言い出す場合があるので、告訴は不言実行あるのみ。

postheadericon アクチュアル民事の訴訟

 「アクチュアル民事の訴訟」福永有利・井上治典著(有斐閣) 4-641-13397-2
医療過誤訴訟を題材に、提訴→争点整理手続→尋問→控訴→和解、というストーリーで、民事訴訟の流れを解説した一般向けの本。巻末に簡単な演習問題付き。

(2)裁判の公開(傍聴)の意味
(略)
 本件に即していえば……尋問する代理人に答えて裁判所に向かって陳述するだけでは、拡がりがない。……互いの尋問に同席したり……、さらにこれから同種の事件について医療過誤訴訟を起こそうとしている者などが傍聴することにより、その場で互いに相手の様子を認識し、影響を与えあって、その後の訴訟内外の行動を考え、選択する材料、指針にしていくことができる。このように、公開には本来、「紛争ネットワーク活性化」という実践的な意味があることを、今改めて認識しなければならない。(p58-59)

 中西応援団はまさにこれをやっていたんだな、と改めて思ったところ。

書証の「認否」というのは、文書が作成者とされている人によって作られたかどうかであって、気開かれている内容の真否とは関係がない。また訴訟では、その文書を誰が作成したかについて特に疑いがなくても一応争っておくということがよく行われる。(p65)

 訴訟独自のやり方なのでメモ。
p.102より。「陳述書」について。訴訟法には規定無し。書証としては慣行化されている。実態は代理人弁護士の指示で作ったりするので、代理人との合作文書である。
 民訴249条3項。単独裁判官の交代あるいは合議体の過半数の交代のとき、証人尋問については当事者からの申出があればやりおさなければならないが、当事者尋問については判例ではやりなおしができない、との説明がある(p.138)。←なぜそうなったか要確認。

postheadericon 法学部新入生のための学ナビ

「法学部新入生のための学ナビ」竹居一正著(法律文化社) 4-589-02928-6
 タイトル通り、法学部に合格した学生が、入学式の前からせいぜい5月の連休を迎えるまでの間に読むと役立つ本で、その目的のために書かれている。
 ところが、全く専門違いの人間が読むと、学部によって随分ノートのとりかた・ゼミのこなし方・レジュメの作り方なんかが違うし、物の調べ方も違うんだなぁ、と、異文化の存在を実感することになる。ってかそれ以前に議論の仕方が根本的に違う。別解があるにしても正解がほぼ一通りに決まる学部レベルの物理(やら理学部他学科も)の演習と、諸説を比較して議論してそれでも意見の一致を見ないままになってるのを紹介する法学部のゼミじゃあ、そりゃあまるで別世界だわな。4年生くらいになって、社会に出る前に、理系学生が読んだら、こういう「育ち方」の人とも一緒に仕事をしていかなければならないと認識することになるのかもしれない。世の中、さまざまなので……。