Archive for the ‘リテラシー’ Category

postheadericon 別の意味で役立つ試験問題集

 法学検定2級の過去問集を買ってきた。試験科目ごとに分けてあり、出題の範囲やら傾向やらも書いてあるのだが、同時に参考書リストがついていて、これが意外に役立つ。
 六法と呼ばれるものについては、大体定番の教科書がどれであるか見当がつくし、知財やら行政法やらも少し調べれば定番が何かは大体わかる。わからないのは、法哲学や法社会学や海外の法といった、法学の文化のような部分で、一体何を読めば常識的なことを知ったことになるのかわからない。検定試験問題集では、法学基礎論と呼ばれていて、各ジャンル事に参考書リストがついている。これが読書ガイドとして役立つ。試験の目的も、学部卒業でちゃんと勉強した人向けの内容ということだから、教養としての法学を身につけるには、多分、過去問集の参考書ガイドに沿って追っかけていくのが良いのだろう。

postheadericon 入門リーガルライティング(その2)

 37ページ。法律要件分類説。実定法を「権利根拠規定」「権利障害規定」「権利消滅規定」の3つに区分する。
 55ページ。「したがって」「よって」の使い方。

「したがって」「よって」というのは、最終的な結論を指示することばである。このことばが出てくる前には、結論に至る分析と事実へのルールの当てはめがすでになされていなければならない。また、このことばに後続するのは「結論」であって、しかも前段との関係が密接でなければならない。

 日常の文章でも技術系の文章でも、この部分は結構曖昧だが、法律文書は結構厳密ということらしい。
 121ページ。「破棄判決の理由を詳細に検討すると、ある法律問題についての限界が浮かび上がることがあるから、破棄判決は、伝統的に判例研究の重要な資料となってきたことも指摘しておきたい」。裁判所の判断を調べるのに、破棄判決が大事だとは意識してなかったのでちょっと目から鱗である。

 この本は、弁護士の業務が、訴訟以外に意見書やら通知書やら契約書やらを作ることであるのをふまえ、法科大学院の学生向けに、どういう注意をして文書を作ればいいかについて書かれている。ところで、弁護士の使い方については、一般に出回っている情報が少ないように思う。地方公共団体が提供している無料法律相談や、弁護士事務所での有料法律相談というものがあることは誰でも知っていて、何がしかのアドバイスが受けられるというイメージはあっても、具体的なサービスの内容までを知っている人は少ないのではないか。それ以前に、相談できる弁護士を探すという段階が、既に一般の人にとっては敷居が高かったりするわけで……。
 ということで、この本は、「弁護士から受けられるサービスには具体的にどんなものがあるか」を知るためのガイドブックとして活用するならば、一般人にとっても有用な本であるといえる。

postheadericon 入門リーガルライティング(その1)

「入門リーガルライティング ー法科大学院テキストー」坂本正光編(有信堂)4-8420-4509-4
 ちょっと気合い入れてそっち方面の文書を書かなきゃならなくなりそうなので、この際きちんと考えようということで、毎晩ちょっとずつ読んでいる。
 (自分トコの学生には「知的な科学・技術文章の徹底演習」塚本真也著(コロナ社)4339077844を、本多勝一の「日本語の作文技術」とセットで読むように薦めていたりする。)
 分野が違うとこうも文章作法まで違ってくるのかという意味で面白い。さらに、ところどころに書かれる法律に関する一般的な記述が、専門外の私には興味深い。どちらも、「学校の作文」で書かされがちな情緒的な文章とは正反対に位置する。
 弁護士事務所がクソでかくなったせいで知らないうちに事務所内で敵味方に分かれるケースが出てくる、ってな話は何だかなあ、と。アメリカじゃ巨大ローファームが珍しくないからマジで起きることがあるらしいが……。
 31ページの記述。

 民事上の紛争はすべて、権利と義務の関係として把握される。そして、権利と義務は、法律に定める一定の要件が備わった場合に、発生すると考えることになっている。情誼や主観的な感情などは、排除されなければならないというのが、わが国の法律の根底にある発想で、これは「近代法」と呼ばれているものに共通である。法律実務家は、例外なくこのような思考をしているから、権利と義務の要件と効果をペアにして、常に、考えることになる。

 学部時代の教養で受講した法学でも、最近になってはまっている民法の基本書でも、この内容を知ることができたが、あらためてこうすっきりと書かれると何となく見通しが良くなった気分である。

 「近代」とは何かということを少し考えてみたいのだが、実務に近い本よりは、法哲学の領分のようだ。手元に何冊かあるので、そのうちきちんと読み返してみる予定。高校の社会科では……習ったかもしれないが、当時はあまり意識しなかったらしく、記憶から抜けている。

 しかし、お堅い本のはずなのに、まえがきの「本テキストには類書にないことがチョーたくさん書いてあるはずで」って砕けっぷりはどうかと思うぞ^^;)。

postheadericon 法廷傍聴へ行こう

 「法廷傍聴へ行こう」[第三版]井上馨著(法学書院) 4-587-03202-6
裁判のしくみ(三審制など)を簡単に説明し、訴訟記録の閲覧の手続きの仕方と、裁判の流れを、簡単な書証の例を添えて、刑事訴訟と民事訴訟に分けて紹介している。巻末には裁判所一覧が付いている。
 やさしい本なので、高等学校の公民の副読本に使ってもよさそう。中学生が使うには、漢字の読み方や言い回しのハードルがちょっと高いかもしれない。
 出版が2002年なので、弁護士報酬に関する記述の部分などが多少古くなっている(訴訟額の何%、といった弁護士会の縛りが外れた)。

postheadericon 法学部新入生のための学ナビ

「法学部新入生のための学ナビ」竹居一正著(法律文化社) 4-589-02928-6
 タイトル通り、法学部に合格した学生が、入学式の前からせいぜい5月の連休を迎えるまでの間に読むと役立つ本で、その目的のために書かれている。
 ところが、全く専門違いの人間が読むと、学部によって随分ノートのとりかた・ゼミのこなし方・レジュメの作り方なんかが違うし、物の調べ方も違うんだなぁ、と、異文化の存在を実感することになる。ってかそれ以前に議論の仕方が根本的に違う。別解があるにしても正解がほぼ一通りに決まる学部レベルの物理(やら理学部他学科も)の演習と、諸説を比較して議論してそれでも意見の一致を見ないままになってるのを紹介する法学部のゼミじゃあ、そりゃあまるで別世界だわな。4年生くらいになって、社会に出る前に、理系学生が読んだら、こういう「育ち方」の人とも一緒に仕事をしていかなければならないと認識することになるのかもしれない。世の中、さまざまなので……。