postheadericon 弁論終結後の覚え書き(その3)まあ確かに面倒臭いわな

弁論終結後の覚え書き(その2)原告は大竹氏(自然人)の方が争いやすかったのでは、の続き。訴訟資料はこちら

裁判所が決まらない

原告が訴額を間違えたままさいたま簡裁越谷支部に訴状を出したため、さいたま地裁越谷支部に移送されたのだが、その後が妙に長かった。そのまま越谷支部で始まるのかと思ったら、待てど暮らせど期日指定の呼び出しが来ない。見落としていて初回欠席だとまずいよなあ、と思って何回か裁判所に電話していたのだが、回答が貰えず、結局、越谷支部ではなくて、浦和のさいたま地裁(本部?本庁?)に回付された。著作権法の争いなんかありふれてるし、金額もしょぼいし、なんでまた大きい裁判所に回付されたのだろうと思ったのだが、本人訴訟でめちゃくちゃめんどくさくなりそうだと思われたのではないかと気づいた。問い合わせややりとりの度に、本人です、と原告被告双方が名乗って書記官に連絡していたわけで、そりゃ、プロが間に入ってさくっとまとまるという展開は期待できないわな。

合議だったので驚く

結局、さいたま地裁第4民事部で審理してもらえることになった。本人訴訟なので法廷に出向いたところ、裁判官が3人揃っていた。……え、合議なの?、とびっくり。たとえば、渋川満「裁判所あれこれ —合議などを中心として—」(白鴎法学 第15号(2000))によると、

 したがって、より慎重な審理、判断が要請される事件(例えば、上訴審)、事実認定が微妙ないし難しい事件(例えば、薬害、大気汚染などの公害事件)、内容が膨大(名古屋局裁では、事件記録が約四〇〇冊で一八万余頁(ロッカー八個)の損害賠償事件を担当しました)又は当事者多数(札幌高裁では、当事者約四千人の懲戒処分取消請求事件を担当しました)のため手続上困難が伴う事件(法廷の秩序維持のため、法廷等の秩序維持に関する法律又は裁判所法で、監置とか退廷命令を発することも余義なくされることがあります。わたくしも、何回も、退廷命令を発し、執行したことがあります)、難しい法律判断(裁判実務においてはしばしばあります)又は違憲判断(当事者からの違憲の主張は極めて沢山ありますが、実のあるものはそれほど多くはないといってよいように思います)を伴う事件などは、通常合議体によって審理判決されています。
 裁判所法によれば、原則的に、(1)簡易裁判所と家庭裁判所が単独制によっており、(2)上訴審は合議制によっていますが、(3)地方裁判所は単独制を原則とし、法律が特に定めている事件、又は裁判所が特に合議体で審理することに決めた事件(これを「裁定合議事件」と称しています)などを合議制で処理することとしています(裁判所法一八条、二六条、三一条の四、三五条参照)。

とある。

本件訴訟は、短いメールを7通ばかり無断で公開したといって著作権法違反で訴訟になったものであり、原告被告は一人ずつしかおらず、賠償金の額も100万円としょぼい金額である。知財を扱うには裁判官の側にも専門知識が必要といっても、ある程度技術的な専門知識を要求される特許紛争と違って、著作権はそこまで技術に踏み込んだりはしないはす。条文の適用もシンプルだし、どう頑張っても事件記録がファイル1冊を超えるとは思えないし、法律判断が難しくなるとも思えないし、こんなの単独制で十分なんじゃ……。

さては、ウルフさんがメールの通りにさいたま簡裁越谷支部で騒ぎを起こしまくっていたので、法廷秩序の維持のために合議になったのか。あるいは、技術的理由ではなく素人同士の本人訴訟で主張がぐだぐだになることが原因で事実認定が微妙ないし難しくなると思われたのか。一体何が原因なんだろうと想像が膨らんでくる。

ところで、始める前に、進行意見書というのを裁判所に出すように求められるのだけど、こんなふうに書いて出した。

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答弁書を書いた時点では、ウルフアンドカンパニーが手を変え品を変えとことん争ってくるだろうと予想していた。だから、訴えが著作権だけで済むとも思っていなかった。著作権で争って思ったような結果が出なかったから次は名誉毀損な、などと、訴訟が続くのはかなり面倒だし、コロナ禍のまっただ中に何回もさいたま地裁に出向きたくない。だから、当初の計画では、著作権以外で削除理由になりそうなものも全部審理してもらってカタをつけたかったので、早急に反訴して請求原因になりそうなものは全部潰したい、と書いて出した。まさかこれが原因で合議になったんじゃないよな……。

ひょっとしたら、素人同士のぐちゃぐちゃの弁論の相手なんかうんざりするし消耗するだけなので、裁判官の精神の安定のために、合議を口実にして愚痴の聞き役として左右に一人ずつ配置されたのかもしれない。私の中では、今のところ、合議になった理由としてはこれが最有力である。真実が明らかになることはないだろうが。

原告、手抜きしすぎ

著作権侵害で訴えられているのに、著作権法の何条で争うのか、原告から全く提示されないという状態で訴訟が始まった。仕方が無いので、こちらで条文を示してあてはめを行い、侵害していないという主張を書くことになった。どの条文の適用を求めるかを示すのは原告の仕事なのに、手抜きにも程がある。

また、裁判所はウルフアンドカンパニーと私の争いなんかそもそも知らない。そもそも知らないところに話を持っていって判断を求めるのだから、本筋に関係なくても、何がどうしてこの提訴になったのかを簡単に説明ぐらいはしておくべきだろう。しかし大竹氏はそれもしなかった。結局、事情の説明も私の作業になった。

著作権法についの反論はオーソドックスに書いたつもりである。

訴えてやる、というありがちな脅し文句が主だったので、まず、著作権法2条1項1号の著作物に該当しない、という主張をした。メールが短いし定型の文句でしかないので、創作性が無いし作者の個性が表れているともいえない、という指摘を行った。

次に、著作物であると認められた場合、32条1項の適用、つまり、公開した情報の引用にあたるから許諾無しに使って良いだろう、という主張をした。これは、ウルフアンドカンパニーがYouTubeのコメント欄に、メールで送ったのと大体同じ内容を書き込んで公開していたからである。公開済みの内容がたまたまメールの形に纏められて送られただけなので、引用しても問題ない、ということである。また、掲示板の場合はその場のやりとりで記述の順番が入れ替わったり表現がぶれたりすることがあるので、大体同じ内容であれば一致とみなすべきだという主張もしておいた。これが面倒臭い作業だった。ブラウザ上で折りたたまれているYouTubeのコメント欄を全部展開したものを証拠として出さなければならず、印刷したら46ページになった。この中から、ウルフアンドカンパニーを名乗って書き込んだものを抜き出して、メールの内容と照合するという作業をしていた。こんなの裁判官だって読むのがイヤになるだろうと思ったので、抜き書き部分はマーカーで囲み、抜き書きしたページには付箋紙を貼り、さらに抜き書き部分の一覧表を作って添付することにした。

最後に、41条が適用されるべきという主張を書いた。これは、報道目的の無許諾利用を認める条文である。法律の先生方からは難しいだろうと言われていたのだけど、法的主張が無いのに専ら脅し目的で訴えてやるを連呼したこと、企業活動で訴訟で脅したり訴訟を実行したりするのはスラップ訴訟として社会問題になっていて、金額が大きいものは新聞が取り上げていることを示し、規模が小さいと大手メディアは扱わないが、社会問題として報道する意味はある、と主張しておいた。実のところ、41条の適用が認められると助かる人が結構居るはずである。インフルエンサーや政治家を批判し、訴えてやるのメールをもらい、それを公開したら著作権をタテに止められたというケースが出てきているので、報道目的が認められるとこのパターンの脅しへの歯止めになるからである。

それにしても、書面を書いている間、ずっと、これって原告が条文示すところだよな、とか、原告が先に訴状で説明する内容だよな、ということばかり気になった。本来なら原告がかけるべき手間までこっちに回ってきてる感しかなく、釈然としなかった。弁護士さんなら、もっとスマートに、入り口で撥ねる方向で労力をかけずに書類を作るかもしれないが、なにぶん素人なので、力の抜き方が全く分からないのだった。

実を言うと、著作権法の何条の話なのか条文示して当てはめたのを出せ話はそれからだ、と全部突っぱねて、大竹氏が書面を書けないままなのを毎回眺めてやる、という塩対応も考えてはいた。ただ、もし41条が認められる可能性があるなら、うまくいけば下級審の裁判例でも助かる人が多いと思ったので、敢えて著作権法の中身の反論を書いて出したという面はある。それに、塩対応方式だと、裁判所に行く回数は明らかに増えそうで、旅費と時間がかかるしコロナ禍で緊急事態制限が連発されている状況ではあまり嬉しくない。なので、早急に、使えそうな条文全部について主張を出してしまう方針にしたが、これが良い方法だったかどうかは素人故に評価のしようが無い。

予定と違う内容で反訴

2021年の3月頃には、私は、大竹氏は本人訴訟が得意と思い込んでいるだけで、実際には著作権法の条文も読まずに提訴しているようにしか見えないことから、このまま本訴だけ進めて終わっても、改めて、例えば名誉毀損の訴状を書いて提訴してはこないのではないかと思い始めていた。名誉毀損訴訟の訴状をまともに書く能力があるように見えなかったからである。

ところが、同時進行していた山形の訴訟が結審した直後に、大竹氏から、山形の訴訟を取り下げたらさいたまの分も取り下げる、という内容のメールが届いた。山形の方がほぼ不戦勝になりそうだったので、取り下げるメリットが無かったから拒否した。しかし、裁判官の前で取り下げを言い出されたら面倒なことになる。口頭弁論開始後の取り下げは被告の同意が必要だから、勝手な取り下げはもはや不可能だったのだが、裁判官が血迷って本人訴訟の面倒臭いヤツだから和解させると手間が減る、と考えたりしたらまずいことになる。原告の大竹氏は、どう考えても和解の交渉で話が通じそうな相手ではないからである。

そこで、当初予定していた内容とは違うが、反訴状を出すことにした。手抜きをするにも限度がある、まともに書面を出して訴訟をするつもりが無いのに提訴していたずらに他人を紛争に巻き込むのは不当提訴だ、という内容で書いて出した。大竹氏は、「弁護士付きの被告を涙目にすると自分の法律能力答弁能力の UP になりますので,どんどんやります。」とYouTubeコメントに書いていたので、相手が法律の素人の私だからといって手抜きすんなコラ、ってことで、迷惑料的な意味で損害賠償も求めた。実のところ、不当提訴が認められるハードルはかなり高いので、あまり期待はしていない。ただ、これを出しておくと、訴えを取下げると大竹氏が敗訴することになるから取下げを持ち出して和解の主張ができなくなるし、裁判官も和解を言い出すことはまずなくなるという効果はありそうなので、出す意味はあると判断した。実際、弁論終結まで、裁判官からは、和解のわの字も出なかった。

なお反訴状を出したら、賠償金の利息の計算の起算日が違う、と指摘されて修正した。この辺は実務を知らない素人なのでどうしようもない。プロがついててくれれば、こういうところで引っかからなくて済むんだよなあ。

釈迦に説法もここに極まれり

1つ前の記事で書いたように、法人に精神的苦痛は想定できんだろ、と書面に書いて出したら、大竹氏の反論

株式会社ウルフアンドカンパニー社員全員が原告のメールで会社が被害を受けているのだから株式会社ウルフアンドカンパニー全社員が精神的苦痛を受けたことは明らかです。

待てやオイ。法人って何かわかってんのか。

会社と社長の区別がついてないとは思っていたが、そもそも法人とは何かすらわかってないとは思わなかった。

それはそうと、どう反論したものか迷った。法人とは何か、ってのは、民法の教科書のどれを見ても書いてある。民事訴訟では、裁判所にとって顕著な事実は立証を要しないことになっているが、これはたとえば大きな事件が起きたこと(たとえば東日本大震災などが起きたこと)自体を立証しなくていいという意味である。法人とは何か、というのは、法学部生にとっても裁判官にとっても常識の範囲の話だが、裁判所にとって顕著な事実といえるのかどうか、私は素人なので判断がつかなかった。判断がつかないなら立証しておくのが安全ということになる。手持ちの参考書を確認したら、少し古い有斐閣叢書の民法に、法人の定義やら法人の精神的苦痛を認めなかった裁判例が出ていた。そこで、民法と会社法の教科書の該当部分を書証につけて、そもそも法人とは、から準備書面で説明した。パンキョーの法学の小テストかよ、と思いながら……。

裁判官は、文系資格試験最難関の司法試験に受かった人の中でも成績優秀な人が主に就く職業である。原告のトンチキな主張が原因で、法律のプロ中のプロに向かって、ド素人の私が、法人の何たるかを説く羽目になった。考えようによってはある意味非常に失礼な行為である(が、弁論の場だから仕方がない)。こんな準備書面を見たら、裁判官は「……うん、知ってた」ってなるに決まっている。

かくして、私は本件訴訟において、自分の人生で一、二を争う「釈迦に説法」を実行する結果となったのである。

最大の謎

「提訴します」は口先だけ?ウルフアンドカンパニーが裁判所でまともに反論しなかった件、で、ウルフアンドカンパニーの大竹氏がいかに本人訴訟が得意で場数を踏んでることを自慢していたかをまとめた。

ところが、実際に訴訟をやって書面をやりとりしてみた結果わかった実態は次の通りだった。

  • 訴状がまともに書けない、内容はさておくとしても書式すら満たしていない。
  • 著作権侵害で訴えると言いつつ著作権法を読んでない。
  • 民法の基本、自然人と法人の区別がついてない。
  • そもそも法人とは何かがわかってない。
  • 書面でどの条文の適用で争うのか具体的な指摘が何もない。どの条文にあてはまるかの主張すらできない。
  • 証拠もまともに出せない。
  • それ以前に文法的におかしな日本語が短い書面の中に頻発

……あのさあ、一体なにをどうすれば、こんな状態で本人訴訟が得意という自己認識になるわけ?なお、YouTubeコメントの方では、(自演かそうでないかは不明だが)ウルフアンドカンパニーの営業部や従業員らしき人が、社長が訴訟上手であると書き込んでいた。今回、やりとりした書面は全部公開しているので、従業員におかれては、中身を確認して、社長がまともな法律文書どころか文法的にまともな日本語を書くのも怪しい人だってことにさっさと気づいた方が良いのでは。

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