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ココログニュースの水素水の記事

Posted on 6月 8th, 2009 in 倉庫 by apj

 ココログニュースに水素水の記事が出た。

水素水がトレンドに!?
– 2009.06.08 11:00 コメント(3)
とあるウェブサイトに水素を添加した水やサプリメントがトレンドになっているという記事が掲載された。しかし、ネット上には水素水の健康効果に否定的な情報が多数存在しており、ブームになるとすれば社会的な影響が広がりそうだ。

記事が掲載されたのは『COBS ONLINE』。6月2日付けで同サイトに掲載された「酸素の次は水素?–水&サプリメントの新トレンド」という記事には、「一部の医療現場では水素を添加した水やサプリメントが活用されている」「アスリートの疲労回復にも、水素が注目されてきている」とあり、「『酸素』に次ぐ新しいトレンドが、『水素』となるかもしれない」といっている。

しかし、Googleで「水素水」を検索すると、他のキーワード欄(検索数の多い複合ワード)には「インチキ」「詐欺」「ニセ科学」の文字。多くのネットユーザーが水素水の効果に疑問をもっていることは間違いなさそうだ。

また、ウェブサイト『水商売ウォッチング』では水素ガスを使った実験について「細胞培養と消化管経由の物質の吸収は別の話である。従って、細胞培養の結果から『水素水を飲んだら云々』という結論を導き出すことはできない。」などといい、いわゆる“水素水”を飲むことによる健康効果に疑問を示している。

同サイトを運営するY.Amoさんによれば、このような商品に出くわしたときには「血中水素ガス濃度の値がどうなっているかまず確認」したほうがよいとのこと。闇雲に水素水の健康効果を信じることのないように気をつけてもらいたい。

(秋井貴彦)

 このあたりの情報はまだ錯綜しているので、考え方の指針をまとめておく。

 まず、水素水の飲用については、太田教授の話では『水素水の動物実験結果発表は1年遅らせて、2008年6月(認知機能低下抑制効果)、12月(動脈硬化抑制)、2009年1月(抗がん剤の副作用軽減効果)に発表しました。』とあり、動物実験では、一定の効果が見つかっているらしい。これらについては、論文の有無の確認が必要である(「発表」だけだと、学会発表なのか論文なのかがよくわからない)。

 次に、動物実験でみられた効果がヒトでみられるかどうかは別問題である。

 動物実験だと、特定の病気を発症するように遺伝子操作したマウスやラットを使っていたりする。つまり、最初から病気の動物で効果を調べる。すると、既に認知機能に障害があるとか、動脈硬化を起こしているとか、抗がん剤を使っているという状態で効果があるということと、健康な動物に対して水素水を与えることに意味があるかどうかとは別ということになる。このあたりは、ヒトの場合でも同じである。だから、仮に、動物実験通りのことがヒトで確認された場合でも、それは、あくまでも「病気の人に治療法として使うと意味がある」のであって、健康な人が水素水を摂取しても何の意味もないかもしれない。

 健康な人も何らかの健康法の一環として水素水を摂取すべし、という結論を出すためには、水素水を飲み始めの時点で健康な人が、その後どのような病気になるか、対照群と比べてどうか、といったことを長期にわたって追跡調査し、病気の発生に違いがあることを見つけなければならない。そういった調査の結果が無い間は、何とも言えない。病気の人に効果があっても、健康な人のその後の病気の予防等に影響しないのであれば、治療法として使うならともかく、普通の人(医療関係者でもなければ、水素水治療対象でもない人)がわざわざ金を出して使う必要は無いことになる。
 調査のエンドポイントが何であるかを問題にしなければならない。

 いずれにしても、前向きコホート調査というのは、数年とか十年とかかかる調査なので、特定の病気の治療法として使えるなら先にそちらを確立してもらい、健康な人にとっても必要かどうかはゆっくり調査して結論が出てから、消費者が動けば良いという話である。慌てて飛びつく必要は無い。