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日本システム企画株式会社、RikaTan検索避けをしたせいでめでたくいつでも提訴される立場にw

Posted on 5月 21st, 2022 in 法律,疑似科学・ニセ科学 by apj

RikaTanに掲載された、「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々(小南秀雄)は、RikaTanサイトhttp://www.rikatan.com/NMR.pdfと、小波氏のサイトhttp://konamih.sakura.ne.jp/Documents/PipeTec_Rikatan2019.pdfの両方で公開されている。この2つのサイトが、名誉毀損を理由に、Googleの検索結果から除外された。

除外されていることの確認をするには、まず、Google検索に上記2つのURLのどちらかを入力する。すると、検索結果の一番下に、

Google 宛に送られた法的要請に応じ、このページから 1 件の検索結果を除外しました。
ご希望の場合は、LumenDatabase.org にてこの要請について確認できます。

と表示される。「この要請について確認」の部分がリンクになっているので、クリックする。そうすると、Lumenのサイトが表示され、次のような画像が出る。

Defamation

NOTICE TYPEがDefamationとなっていることから、名誉毀損の申し出によって検索から除外されたことがわかる。

日本システム企画株式会社は、スラップ訴訟を仕掛けてこないどころか、従業員が社長に向かって我々を訴えろと言ってもちっとも訴えてこないことがわかっている(退職した従業員がこっそり教えてくれた)。この会社、どういうわけか訴訟を嫌がっているとしか思えないのだ。例外的に、日本システム企画株式会社を反社呼ばわりした某氏は告訴された。これは、企業が反社と関わっているとなると、銀行の取引が不可能になり、経済活動からほぼ完全に排除されることになるので、敏感に反応するのは当たり前ではある。しかし、それ以外の、ニセ科学だという批判に対しては、クレームは出すもののこの二十年以上、全く法的措置をとろうとしてこなかったという「実績」がある。

しかし、この検索避けが実現したせいで、日本システム企画株式会社は、小波氏、左巻氏の両名からいつでも提訴される立場を獲得した。その理由を説明しておく。私も最近YouTubeにゆっくり解説「NMRパイプテクターを分解してみた」NMRパイプテクターの分解を公開したので、他人事ではないのだが……。

名誉毀損とは、ネガティブな情報を「公然」と広めたら、それが真実であっても原則として成立する。これだと何も言えなくなるので、免責要件が確立している。細かいことは法律の専門書を見てもらうとして、およそ、(1)公共の利害に関する(2)公益目的(3)内容が真実、の3つを示せば免責される。(1)と(2)は大抵セットで認められることがほとんどである。従って、名誉毀損の争いというのは、人違いを除いては、免責要件を満たすかどうかの争いになる。

これをRikaTanの記事にあてはめてみよう。企業が広く商品を販売している状態であれば、大勢の人に影響が及ぶので、その営業活動は公共の利害に関することになる。その営業実態、宣伝の内容に科学的根拠があるかどうかなどを明らかにすることは、公益にかなっているといえる。企業の活動について言及するときは、(1)(2)を満たしていると判断されやすい。また、内容に嘘がなければ(3)も満たすことになる。裁判に100%は無いが、RikaTanの記事は名誉毀損については免責されることがほぼ確実と私は予想している。

さて、今回、名誉毀損を理由に小波氏・左巻氏のサイトの文書が検索から除外された。このことによって両氏は不利益を被っている。特に左巻氏は出版業もしているので、商品である本の宣伝が妨害されている状態であるといえる。ここで、免責要件を満たすということをGoogleに向かって主張しても、Googleは裁判所ではなくただの企業なので、認めてくれる保証は無い。しかし、判決があれば話は別だ。日本の裁判所が、もし、RikaTanの記事は名誉毀損の免責要件を満たす、という判決を出してくれれば、Googleはそれに従うだろう。小波氏も左巻氏も、当該記事が名誉毀損ではない、という判決を得ることによって利益を得られるという立場となった。

訴訟というと、損害賠償請求とか金返せとかを思い浮かべる人が多いのだろうけど、債務不存在確認訴訟、というものもある(最近ちょっと知名度があがりつつある)。民法では、債権債務は、契約で生じるもの以外に、不法行為・不当利得・事務管理でも生じる。名誉毀損は不法行為にあたるので、契約とは関係なく債権債務が発生する。債務不存在確認訴訟というのは、名前の通り、債務が存在しないことを確定させる訴訟である。記事を公開した側は、名誉毀損という不法行為で生じる債務が存在しないことを確定させるための提訴ができるのである。

とはいえ、まったく揉めていない記事について債務不存在確認訴訟を提起しても、訴えの利益が無いとされてしまう。しかし、名誉毀損を理由とする検索結果からの除外という結果が既に生じているのであれば、除外された記事の著者らに訴えの利益がある(判決をもらうことで検索の除外を解除してもらえるから)ことになる。この検索避けが続く限り、小波氏も左巻氏も、日本システム企画に対し、当該記事が名誉毀損ではない(不法行為ではない)という内容で、日本システム企画株式会社に対して債務不存在確認訴訟をいつでも提起できる立場となった。

債務不存在確認だけなら、敗訴しても賠償金をとられることはないから経済的ダメージは少ない。しかし、応訴の手間はしっかりかかる上、日本システム企画株式会社がこれまで避けまくってきた訴訟に突入することになり、内容の真実性が裁判所でまで認められる結果になれば、今後の宣伝で不利にはなるだろう。

重要なことは、検索からの除外をもたらしたのが誰の通報によるものであっても、訴訟は両氏と日本システム企画株式会社の間でやるしかない、ということである。名誉毀損の免責要件を満たすかどうかの争いは、記事を出した側と記事で言及された側の間で確定させるしかなく、そこに他人の入る余地はない。

つまり、ユーザーや従業員の誰かが、日本システム企画株式会社を応援するつもりで、当該記事が名誉毀損だと通報し、検索からの除外という結果を発生させた場合、会社からの指示が何もなかった場合でも、会社を被告にしてしまう可能性がある、ということである。通報する時には、通報によって日本システム企画株式会社を被告にしてしまう可能性があることは認識すべきだし、訴訟に巻き込まれるリスクのある立場に会社をおく以上、通報前に一言会社に断っておいた方が良いのではないだろうか。

今回のRikaTanの検索避けがどういう経緯で生じたものかはわからない。もし、社長の指示なら、避けまくっていたはずの訴訟のリスクを自分で上げにきたわけで自業自得である。IT担当の従業員も居るようだが、もし、担当者の判断でGoogleに通報したのなら、訴訟リスクを発生させたことについて今から社長に説明しておいた方がいいと思う。また、もし、社長からGoogleの検索をどうにかしろと指示されたのであれば、担当者は、訴訟のリスクが生じることを説明すべきだっただろう。通報したのがシンパなら……見事に日本システム企画が望んでいない結果をもたらしたことになる。

私としては、自分がこのパターンで検索避けされたら、是非とも提訴してみたい。現状、この手の通報の本人確認がどの程度厳格かはわからないが、権利侵害された当事者だという確認が甘かった場合、「愉快犯」の通報で、通報者とは別人の間で確認の訴えが行われるという結果になる。シンパのふりをした誰かのせいで訴訟リスクが上がるというのは、あまり健全とは言えない状態だ。ただ、そういう訴訟が増えれば、Googleなども、権利侵害を申し出ている人が本当に侵害された当事者か、という確認を厳格に行うようになるだろう。こちらは望ましいあり方だと言える。