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有機農法と波動

Posted on 8月 3rd, 2009 in 倉庫 by apj

 Yahoo経由時事ドットコムの記事より。

「有機」に健康効果なし=一般食品と栄養変わらず-英調査
 【ロンドン時事】農薬や化学肥料の使用を減らして作られた有機食品の栄養は、一般的な食品とほぼ変わらず、取り立てて健康に好ましい効果をもたらすわけではない-。英食品基準庁が委託した調査報告が29日公表され、消費者が抱く有機食品の効能とは反する意外な結果が明らかになった。
 委託を受けたロンドン大学衛生熱帯医学大学院が、過去50年間に発表された文献を精査した。13の栄養素のうち、ビタミンCやカルシウムなど主要10栄養素では栽培方法によって大きな違いは出ないとの結果が得られたという。
 食品基準庁は調査結果について、「有機食品を食べるなという意味ではなく、食べたからといって健康面でより優れた効果が得られる証拠はないことを示している」と指摘している。(2009/07/30-05:33)

 有機農法で作った野菜と、一般農法で作った野菜の栄養の分析をしても、有機農法をアピールできるほどの目立った差が無い、ということは、10年以上前から知っている人は知っていたはずである。今回、イギリスであらためて調査をしてはっきりしたということなのかな。
 有機農法を支持する人達は、それでも何とか「違いのわかる」評価方法が無いものかと探していて、そこに「波動測定」がつけ込んだらしい。農家に設備として波動測定装置を売りつけるということが行われることになった。しかし、インチキはインチキなので、そのうちバレて、農家を相手に商売できなくなった(農水省の役人まで騒動に巻き込まれた、という話もあったが、具体的に何があったかは不明)。波動の人達が次に目をつけたのが水だから気を付けろ——
 水商売ウォッチングを作り始めて間もなく、農業コンサルタントの方から教えていただいた話である。有機農法の農家に波動が入り込んでいたのは、多分、1990年代だろう。それから間もなく、「水からの伝言」が出版され、水に健康な波動を転写する云々な装置を商材にした悪徳商法が行われ、摘発され……そして今に至る。

 これまでの使用例を見た限りでは、本当は違いが無いのだけどその人にとって都合の良い違いを出したい、というニーズにつけ込む形で「波動測定装置」が使われている。何を測定しても意味の全く無い数値が出て、測定方法の微妙な違いで数値が変わる(操作する人によって変えられる)のだから、測定しているものは、「波動」ではなくて、多分、その人の「願望」なのだろう。

【追記】
 食品安全衛生情報blogの「[FSA]オーガニックについてのレビュー発表」より。

●有機農産物には残留農薬が少ないから健康への悪影響が少ないという主張は残留農薬モニタリング結果によって既に何度も何度も否定されている
有機農産物からも残留農薬は検出される。頻度は多少通常農薬より少ない。しかし基準違反という尺度を用いれば圧倒的に有機農産物の基準違反の方が多い。有機では認められていないはずの農薬がしばしば検出されるから。健康影響に関してはどっちもほぼ影響なし。
ただし英国やヨーロッパの話。日本で怪しげな「資材」を使って「無農薬」と称している人たちの作るものについてはデータがないのでなんとも言えない。
うちの研究所に電話してきた人は農薬として認可されているもの以外を使えば「無農薬」だと主張していた。その人が害虫を殺すために使っていたのは毒性の強いストリキニーネ。使わないでくれと言っても無農薬ではそれが常識みたいなこと言ってた。
少なくとも有機JASですらない「無農薬」と勝手に主張しているモノについては信頼できない。
●通常農産物が有機より有害ではないと言われて有機推進団体が持ち出してきたのが栄養価が高いとか健康に良いとかいう主張。Soil Associationなどがここ数年それを宣伝文句にしてきた。

 つまり、無農薬と称して単なる劇毒物を使っていた、ということである。確かに農薬じゃないが……人をなめとんのか。

【追記】
 「無農薬野菜です」と言われたら、普通の人は「農薬を使っていない、他の化学薬品とも無関係な”自然な”方法で作られた野菜」と思うだろう(”自然な”はこの手のものを好みそうな人がイメージする自然)。「リストに指定されている農薬を使っていないだけで、他の劇物や毒物はしっかり使っています」とは、思わないんじゃないか。
 「農薬以外に他のものを使ってませんよね」といちいち確認しなければならないというのでは、詐欺すれすれのように思うのだけど。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 多分役立たず(HNです) at 2009-08-36 00:45:36
Re:有機農法と波動

オーガニックを否定した英政府論文に自然派が猛反発――ニュースな英語(gooニュース・ニュースな英語) – goo ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/newsengm/life/newsengm-20090803-01.html

という記事が出ていました。

あちらの国では、なにやら、大騒ぎになっているのでしょうかね?

よくわからないのですが、googleニュースの検索結果

http://www.google.co.jp/search?hl=ja&safe=off&client=firefox-a&rls=org.mozilla%3Aja%3Aofficial&hs=GtW&num=50&q=http%3A%2F%2Fnews.bbc.co.uk%2F2%2Fhi%2Fhealth%2F8174482.stm&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=


by 多分役立たず(HNです) at 2009-08-02 00:47:02
リンクを間違えた(汗)

正しくは下記です。

http://www.google.co.uk/news?ned=uk&hl=en&q=Organic+food+is+no+healthier+than+ordinary+food+FSA


by hir at 2009-08-54 06:27:54
Re:有機農法と波動

研究としては面白くないと思いますが、木酢液の毒性について評価が欲しいなと思うことはあります。家庭菜園とかの定番なので。


by いろものさんの近所 at 2009-08-34 07:24:34
Re:有機農法と波動

有機農法:科学的に合成された肥料を使わないという意味なのでしょうか.
堆肥を作るってのは結構大変で時間もかかるのですが…
もちろん,それができる環境があるなら堆肥を作るのが良いでしょうが,
今は難しいのではないでしょうが.(においの対策とか…)
(祖父が中国に出征したとき,冬場は馬小屋の馬糞の中で寝たという話には,農民の知恵に感動した.)

無農薬:通常の農業地帯であるなら,害虫や病気の発生は,隣(他人)の畑に
迷惑をかけますから,これを押さえるにはとんでもない手間がかかります.
へたをすると自分の畑だけ収穫なしになったりして…

無農薬有機栽培が良いなんてのは,幻想でしょう.

そーいえば最近子供の国語の教科書を読んだら,日高敏隆の文章が載ってて,「里山というのはむき出しの自然ではない」という事が書いてあって,認識を新たにしました.「自然が良い」という単純な発想は,どこからでてくるのでしょう.


by nomad at 2009-08-44 11:10:44
Re:有機農法と波動

> 冬場は馬小屋の馬糞の中

糞が発酵するとき熱が出るんであったかいんですよね。
発酵すれば臭いも気にならないですし。
堆肥として藁も加えているならなおさらOK


by apj at 2009-08-34 11:24:34
Re:有機農法と波動

hirさん、

>木酢液の毒性について評価が欲しい

 あんなに流行っているのに毒性評価がまだ無いんですか。

いろものさんの近所さん、

>無農薬:通常の農業地帯であるなら,害虫や病気の発生は,隣(他人)の畑に
>迷惑をかけますから,これを押さえるにはとんでもない手間がかかります.
>へたをすると自分の畑だけ収穫なしになったりして…

 子供の頃、実家の近くで猫の額ほどの畑を借りてまして、親が家庭菜園に熱中していました。当然、無農薬を狙うわけで、そりゃもう毎日虫取りの日々が。ちょっと油断すると葉っぱが丸はげ状態になるわけで。自分トコが趣味でやってる分だけだから何とかなるけど、営業でやったら、力一杯虫取りしても利益でないだろうなあ、と思ったり。
 ゴマを作っていた時は、でっかいガの幼虫だかに食い荒らされるもんで、油断して人差し指くらいに育った奴をせっせと引っぺがして近くの川に捨ててました。ツノを出すと悪臭がひどくて、手を洗ってもなかなかとれなかったのを覚えています。

nomadさん、

 元が糞でも凍死するよりゃなんぼかマシですわな。


by tamtam at 2009-08-26 17:51:26
Re:有機農法と波動

平成15年に食品衛生法が改正され農薬に関してはポジティブリスト制がとられる事になりました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/060516-1.pdf

それによると、指定農薬、指定外農薬、対象外物質、の3種類に分類されます。
指定外農薬の残留基準は0.01ppmと定められています。
実質的には対象外物質を除く全ての物質がこの精度の対象になります。
合鴨が農薬にあたるというので一時話題になりました。
ストリキニーネは対象外物質に含まれないので規制の対象となります。


by LRLR at 2009-08-54 18:48:54
木酢液の毒性評価

初めて書き込みします。
食品系の研究者をしております。
木酢液の毒性評価ですが、農林水産省が実施しています。

http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/seisan/tokuteinoyaku_iinkai/6/itiran.html

一言で「木酢液」と言っても中身にかなりばらつきがあり、この結果を元に個人が作ったような木酢液まで評価するのは難しいと思います。
業界としては統一的な品質基準を作る方向で動いているようです。 


by Isshocking at 2009-08-02 22:24:02
Re:有機農法と波動

apjさん:
>あんなに流行っているのに毒性評価がまだ無いんですか

木酢液は原材料も製造条件もさまざまなので、標準品というものが存在しません。同じ人が同じ窯(炭焼き窯を使って炭焼きのおまけに作られることが多い)を使ってさえ、一回ごとに成分のばらつきが非常に大きい。
樹種や乾燥度合い、皮つきか皮なしかで違います。また、工業用の大型窯でないかぎり、一回ごとに窯の温度プロファイルが違ってきますから、成分も違ってきます。
極端に言えば、昨日販売したものと今日販売したものが同一成分である保証はありません。
つまり、入手して毒性評価したとしても、それは「ある人がある日につくった特定ロットの木酢液」の評価にすぎず、あまり有用な情報にはならないわけですね。
製造時にフェノールやホルムアルデヒドといった毒性のある成分の混入が避けられない(必ずはいるわけではないが)ので、農産物に使用することは法律で禁止されています。


by Isshocking at 2009-08-45 23:32:45
Re:有機農法と波動

有機栽培と言っても、植物は有機物を直接吸収して栄養源にできるわけではありませんから、技術的には作型の違いということになります。
有機栽培というのは元肥過剰ぎみで追肥の少ないやりかたですね。
これで作物がおいしくなることがあるのかというと、実はあるのです。
葉菜類(ホプレンソウや小松菜など)に堆肥をがんがんつっこみますと、葉は黒いほどの濃緑色で肉厚、かつ柔らかになり、非常に甘みが強くなります。これは窒素過剰により亜硝酸塩が植物体に蓄積されるためですが、これにだまされる人が多いです。
すこし多めに食べると亜硝酸中毒になります。牛などだと死んでしまうこともままあります。
有機栽培で葉の色が濃いことを自慢しているようだと、その人はど素人という判断をしてかまいません。

ジャガイモや大根などの根菜類、カボチャなどの果菜類、米や小麦などの穀類は収穫前には肥切れさせないと完熟しませんので(いつまでもだらだらと成長を続ける)、元肥の量をよほどうまく管理しないと、普通の栽培より不味くなります。多量に堆肥を使えばいいというものではないのです。
ちなみに、キク科の野菜、レタスとかサンチュは何もしなくてもほとんど虫がつかないし、完熟させることもないので、本来、有機栽培と通常栽培でコストの違いはほとんどないはずです。


by やまたろう at 2009-08-16 19:30:16
Re:有機農法と波動

by Isshocking さん>

>葉菜類(ホプレンソウや小松菜など)に堆肥をがんがんつっこみますと、葉は黒いほどの濃緑色で肉厚、かつ柔らかになり、非常に甘みが強くなります。これは窒素過剰により亜硝酸塩が植物体に蓄積されるためですが、これにだまされる人が多いです。

不勉強かもしれませんが、窒素過剰の葉菜類は葉色が濃くなり、柔らかくもなりますが、葉厚はむしろ薄くなるものと認識しております。
また、肉厚で甘くなるというのは、冬越ししたほうれん草などの特徴(氷点下近くの気温で植物体が凍るのを防ぐため、ソルビトールなどの糖分を蓄積する結果)で、窒素過剰の野菜は、甘いというよりもむしろ味気ないものになると認識しております。これは有機栽培であれ慣行栽培であれ違いはないものと思います。

窒素過剰による亜硝酸塩の蓄積とその害についてはおっしゃるとおりと思います。


by やまたろう at 2009-08-25 19:44:25
Re:有機農法と波動

apjさん>

本題の「波動」の方ですが、

>水商売ウォッチングを作り始めて間もなく、農業コンサルタントの方から教えていただいた話である。有機農法の農家に波動が入り込んでいたのは、多分、1990年代だろう。

「波動」をうたう商品が入り込んだのは、有機農法に限りません。慣行栽培の親戚の家でも一時「波動」をうたう資材を使った「波動米」の栽培に巻き込まれていました(今ではきれいさっぱり手を引いていますが)。

「波動」は話題としては農家の心をくすぐるものではあるのですが、高い資材を買わされても商品(農作物)が高く売れるわけではないので、経営上ペイしない農家がほとんどだったと思います。なので、現在はごく一部の信奉者(消費者を含む)のみの間で細々と生き残っている感じです。


by やまたろう at 2009-08-19 19:57:19
Re:有機農法と波動

連投すみません。

by いろものさんの近所 さん>

>有機農法:科学的に合成された肥料を使わないという意味なのでしょうか.
日本においては、下記ガイドラインに従ってつくられたものを「有機農産物」と言います。(実は、「有機農法」と言うのは明確な定義がありません)。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/yuuki_kikaku_a.pdf

ガイドライン上、使用して良い資材はポジティブリスト的に明示されています。もちろん「化学的に合成」された農薬及び肥料は使用が認められていません。また、堆肥は栽培上必須というわけでもありません。

なので、apjさんおっしゃる
>「リストに指定されている農薬を使っていないだけで、他の劇物や毒物はしっかり使っています」とは、思わないんじゃないか。
>「農薬以外に他のものを使ってませんよね」といちいち確認しなければならないというのでは、詐欺すれすれのように思うのだけど。
は、一般人の認識としてはありえることですが、有機農産物の定義上、本来的にはあってはならないことです。
もっとも、ガイドラインに従ってきちんと認証を受けた「有機農産物」ですら、残留農薬が検出されたりしますから、認証を受けていない「自称有機農産物」については、その信頼性は著しく低いと見るべきです。


by apj at 2009-08-09 21:50:09
言葉遊びの抜け道探し

やまたろうさん、

>ガイドライン上、使用して良い資材はポジティブリスト的に明示されています。もちろん「化学的に合成」された農薬及び肥料は使用が認められていません。

 ということであれば「有機農法」だと、リストに従わなければならない。
 しかし、「無農薬」については、ガイドラインは無いんですよね?だとすると、「無農薬であって有機農法ではないからリストをに従わなくてもよくて、農薬以外なら何つかってもいい」と、ほとんど抜け道探しのような解釈をして、「自称無農薬、ストリキニーネ使用」という事態になったと考えられないでしょうか。


by やまたろう at 2009-08-03 23:21:03
re:言葉遊びの抜け道探し

apjさん>

>「無農薬」については、ガイドラインは無いんですよね?だとすると、「無農薬であって有機農法ではないからリストをに従わなくてもよくて、農薬以外なら何つかってもいい」

そもそも「無農薬」と表示して販売することは、改正JAS法と景品表示法の両方に抵触する恐れがあります。
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/hyoji/info/041215ihan.pdf
また、事後的にポジティブリストで規制される残留物質(登録農薬に限らない)が検出されれば、農薬取締法または食品衛生法により回収・廃棄処分、ひどい場合は行政処分や刑事罰の対象となります。

改正JAS法、ポジティブリストの施行の際には、国・自治体が各地で説明・普及活動を行ったと記憶していますが、実態として、特にネット販売の宣伝文句には(有機JAS認証食品ですら)「無農薬」と銘打っている商品が溢れています。
少なくとも販売者は「知らなかった」では済まないのですが、売る側も買う側もそれほど無知・無頓着だという証左かもしれません。


by LRLR at 2009-08-03 23:53:03
Re:言葉遊びの抜け道探し

 やまたろうさんがお書きになったとおり、「有機」の表示は法的規制があります(JAS法)。
 ですが、「無農薬」については農林水産省のガイドライン

http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/tokusai_a.html

の中で禁止されているだけで、法的拘束力はありません。
法令に基づいて遵守義務を課すものでないことは、農水省自身も認めています。

http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/0404/12.html

 ですから、apjさんの

> しかし、「無農薬」については、ガイドラインは無いんですよね?だとすると、「無農薬であって有機農法ではないからリストをに従わなくてもよくて、農薬以外なら何つかってもいい」と、ほとんど抜け道探しのような解釈をして、「自称無農薬、ストリキニーネ使用」という事態になったと考えられないでしょうか。

はおそらく当を得ています。
 ただし、tamtamさんが書かれているように、ポジティブリスト制の導入によりストリキニーネは指定外農薬として扱われると思いますので、法的には景品表示法(優良誤認)でアウトという解釈でいいはずです。


by 杉山真大 at 2009-08-13 06:11:13
「毒菜」の問題を思い出すよね

この問題聞いていると、数年前の中国産「毒菜」の騒ぎは何だったのでしょうかね?基準に合わない残留農薬が検出されて尚且つ中国で加工されてしまった云々という話だったけど、そのために仮に有機農業なんてやって下手に病原菌で汚染された野菜が市場に流通した、となれば同様にバッシングになるんじゃないかしらね?

そう言えば、日本で化学肥料と農薬が普及した切っ掛けと言うのも、伝染病の予防だったりしますよね。農薬の毒と病原菌の感染のどっちを選ぶ?と言われると・・・・・う~ん[:困り:]


by apj at 2009-08-06 06:41:06
寄生虫が減ったのでは

杉山真大さん、

>そう言えば、日本で化学肥料と農薬が普及した切っ掛けと言うのも、伝染病の予防だったりしますよね。

 伝染病だけではなくて、繁殖のサイクルが断ち切られることで、寄生虫も減ったでしょうね。


by やまたろう at 2009-08-14 21:48:14
re:感染症、寄生虫

杉山真大さん>

>(前略)仮に有機農業なんてやって下手に病原菌で汚染された野菜が市場に流通した、となれば同様にバッシングになるんじゃないかしらね?

>そう言えば、日本で化学肥料と農薬が普及した切っ掛けと言うのも、伝染病の予防だったりしますよね。農薬の毒と病原菌の感染のどっちを選ぶ?と言われると・・・・・う~ん

多分おっしゃりたいのは、次のようなことかと思います。
・人糞(下肥)を肥料として利用していた頃、収穫物に大腸菌や寄生虫、病原菌が付着し、それを食べることによって感染症が発生した。
・下肥の代替として化学肥料が普及した結果、感染症が減少した。

ただ、現在においては、有機農業といっても有機質肥料(排泄物由来の堆肥を含む)の使用は必須ではなく、逆に慣行農業でも有機質肥料を使う事例はあります。この場合、排泄物由来の堆肥とは、「下肥」ではなく、発酵処理したものがほとんどで、感染症の原因になるような病害虫の存在するケースは少ないです。

また、農薬に関して言えば、過去の農薬は殺菌・殺虫スペクトラムが広く(つまり何にでも(量によっては人体にも)効く)ものが多かったです。(現在でも、WHOがDDTをマラリアの特効薬として再度評価するなど、伝染病予防として使用される一面もあります)

しかし、現在の農薬は人体や生態系への影響をなるべく少なくするため、対象病害虫及びその作用機序を絞り込んでいます。この場合の「対象病害虫」とは、「農作物を害する病害虫」という意味ですから、「人間の健康を損なう」寄生虫や病原菌がその「農薬」で必ずしも死滅するわけではありません。

従って、現在においては「有機農業」と「病原菌で汚染」は、直ちには結びつかないというか、有機農業と慣行農業という括りでは差異は見い出せないと思います。

ちなみに、農作物由来の感染症が起きるとして、その原因は土壌中の菌や虫に由来することが多いので、農法とは関係なしに、洗って土や泥を落とすのは必須です。