(関連?)やまもといちろう氏の開示請求訴訟勝訴

最終変更 2026年05月12日

はじめに

 NMRパイプテクターに投資家・評論家等で活躍している山本一郎氏が言及した(「謎水事件」日本システム企画のNMRパイプテクターに「効果はない」とする意見書が削除される「謎水事件」日本システム企画社のNMRパイプテクター事案が熱い!)ところ,「真実おもしろ話」というブログで中傷されたため,山本氏が発信者情報開示請求訴訟を提起したところ,開示せよとの判決が出た(山本氏代理人は神田知宏弁護士,被告は被告 ㈱DTI 細川日色、令和2年ワ31023)。この件については,「山本一郎氏勝訴。判決文要旨」(証券非行被害者救済ボランティアのブログ)に詳しくまとめられている。コロナのせいで気軽に判決を閲覧しにいくこともできないので,証券非行被害者救済ボランティアのブログから孫引きさせていただきつつ,私のところでもまとめておくことにする。

 

事件概要

 問題となった書き込みは,

令和2年8月24日 10時49分
お金のために誹謗中傷 威力業務妨害にいそしむ「科学者」たち
https://cost-save.fc2.net/blog-entry-2.html
東京高裁公認の総会屋、ブラックジャーナリストであるところの山本一郎氏もまた、パイプテクターの誹謗中傷に加担しています。
(加担というか、もはやリードしています。さすがプロ)

 という部分である(現在は当該ページは削除済み)。

 これについて,次のような理由で,開示せよとの判断がなされた。

第3 当裁判所の判断
1 略
2 争点➀(権利侵害の明白性)について
(1) 認定事実(1)によれば、本件記事は、山田太郎と称する人物のブログであるものの、山田太郎氏が氏・名ともによくあるものであること、その自己紹介にも個人を特定するような具体的な要素の記載はないことからすると、匿名ブログと同様のものと認められる。
 そして、本件記事の内容は、本件記事部分を含めて一体であるところ、一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準とすると、本件製品の有用性を説明し、これを誹謗中傷する人物の主張について根拠がないと主張しているものと理解することができ、その中で、「東京高裁公認の総会屋・ブラックジャーナリストであるところの」原告も誹謗中傷に加担していると読むことができる。
(2) 当該記事が事実の摘示か論評かの区別については、証拠等をもってその内容を決することが可能な他人に関する特定の事項であるどうかで判断されるべきところ、その前後の記載も含めて当該記事を一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準に判断すべきである。
 本件記事は、前記のとおり、原告が本件製品ないし販売業者の業務を妨害する立場で業務妨害のために記事を執筆しているから、同人の記事も信用できない旨主張する内容と読むことができ、そうすると、本件記事部分は、原告の属性・性格を示すものとして、「東京高裁公認の総会屋・ブラックジャーナリスト」と記載していると理解できる。確かに、「総会屋」や「ブラックジャーナリスト」という単語自体は、明確な定義があるわけではないものの、株主総会で発言するなどして不当な要求をしたり、取材や発信の対象者から金品を得る目的で報道したりする者という意味合いを有していることは明白であるし、本件記事の文脈からすると、原告もかかる立場で本件製品ないし販売業者を誹謗中傷しており、かかる原告の属性・性格であることを、高等裁判所がその判決において認定したという記載と理解できる。  そうすると、東京高等裁判所の判決で、上記の趣旨の事実を摘示したどうかは明確に判定できるというべきであり、本件記事部分の「東京高裁公認の総会屋・ブラックジャーナリスト」とは、原告の属性・性格を示すものとして当該事実を摘示しているものと理解することができる。
(3) 原告の社会的評価か低下したか
 そして、本件記事部分では、原告が総会屋・ブラックジャーナリストである旨指摘するものであって、上記で認められる言葉の意味に照らすと、原告の社会的評価か低下することは明白である。被告は、東京高等裁判所の判決によって上記がインターネット上に多げ書き込まれていたから原告の社会的評価は低下しないか、低下してもわずかであると主張するが、仮にそうだとしても、あらたに投稿された投稿記事により原告の社会的評価が低下したものといえるから、上記の結論を左右するものではない。
(4) 違法性阻却事由が窺われるか
本件記事部分の原告が総会屋・ブラックジャーナリストと東京高等裁判所の判決において認定されたか否かについては、公共の利害に関する事実ではあるが、本件記事全体は、匿名記事ではあるものの、本件製品の効用が真実であり、原告を含めてこれを批判する者の主張が虚偽であり、結局、本件製品を開発・製造している本件会社に相談することを勧める内容であることからすると、原告の社会的評価を低下させるものともいえる。当該記載内容に照らすと、原告が自ら投稿した記事で同社又は本件製品を批判する趣旨の投稿をしたかどうかによって左右されるものではない。
また、認定事実(2)のとおり、前記東京高裁判決が、原告を総会屋又はブラックジャーナリストであるとまで認定した事実も認められないから、真実ではないし、また、インターネット上にかかる記載がされている投稿記事が存することは認められるが、他方で、当該判決が東京高等裁判所の判決であり、上記のとおり前記判決にかかる記載があるか否かは容易に確認できるこどあるから、違法性阻却事由の存在も窺われない。
3 争点②(正当な理由の有無)について
以上によれば、原告が、本件投稿者に対して損害賠償請求をする必要性があるので、開示を求めるについて正当な理由がある。

第4 結論
以上の次第で原告の請求には理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第43部 
      裁判官 伊藤康博  印
 

 

東京高裁公認,という表現が登場した背景

  名誉毀損の表現に「東京高裁公認の総会屋」というのはあまり見かけない。というか,「総会屋」に「東京高裁公認」という修飾語がくっついているのは初めて見た。

 このことについても,証券非行被害者救済ボランティアのブログが参考資料を出している。

 本件に先立つ平成28年,山本一郎氏が楽天GEのアドバイザーになってから楽天を擁護する発言をするようになったことについて,次のような批判が書かれることとなった。

 

平成28年週2月30日 13時8分
https://kurikindi.hatenablog.com/entry/2016/12/30/100100
【おわりに】拝啓、山本一郎様 ヤクルトファンの山本様が、好きでもない楽天GEのアドバイザーに就任した理由が、堀江氏のツイートの推測通り、三木谷社長からの要請で砲撃停止と擁護を意図したものならば、それは間接的なブラックジャーナリズム、「総会屋2・0」だと思います。

平成28年12月29日 23時42分
https://kurikindi.hatenablog.com/entry/2016/12/29/090000
2015年二月に、山本氏が東北楽天ゴールデンイーグルスの「チーム戦略アドバイザー」に就任したことが、話題になりました。 アドバイザー就任によって、楽天に関する言及が攻撃から擁護へ鮮明に態度が変わったことが確認できます。 「やまもといちろう砲」をやめさせるには、楽天のように仕事を発注する取引先になってお金を払わなければならないのか。 企業の内部に食い込んで擁護したり不祥事を探る手法は、ブラックジャーナリズムによく似ています。

 この内容について,山本一郎氏が開示請求訴訟を提起し,控訴審まで進んだが,認められなかった(平成三十年九月六日判決,,平成三十年ネ2166 第四民事部 原審 平成二十九年ワ12886),ということが先に起きていたのである。

「控訴人について、「総会屋」「ブラックジャーナリスト」であるとの意見論評を述べるものではなく、控訴人について、「ブラックジャーナリズムに似ている」「間接的なブラックジャーナリズム」「総会屋2.0」であるとの意見論評を述べるものであるから、上記各意見論評における重要な前提事実が、「批判しないことを約しての金銭授受」に限定されるとは解されない。意見論評は、その前提となっている重要な事実が真実であって、当該事実との間に推論の合理性が認められ、かつ、その内容が人身攻撃に及ぶなど不当なものではなければ、言論の自由として許容されるべきものである。
 そして、本件ブログにおける上記意見論評の前提となる重要な事実は、前記(1)のとおり、➀控訴人の楽天グループに対する態度が、東北楽天イーグルスのチーム戦略室アドバイザーに就任したことを機に、攻撃から擁護に鮮明に変わったとの事実及び②堀江氏の当該ツイートが存在する事実であるところ、上記➀の事実が認められることは、引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2(2)(補正後のもの)に認定するとおりであり、また、上記②の事実も証拠(乙1、資料22)によれば、これを認めることができる。
 そうすると、上記各意見論評は、その前提となる重要な事実が真実であるところ、上記意見論評と前提となる重要な事実との間に論理の飛躍があって推論の合理性がないとは認められないし、その内容が人身攻撃に及ぶなどして不当なものとも認められないから、正当な言論として違法性が阻却されるというべきである。」

 

判決をきちんと読むと……

匿名の判断

 「真実おもしろ話」の作者は「山田太郎」と名乗っており,実際にこの名前の参議院議員もいるので,全国にこの名前の方が実在するであろうことは確かである。しかし,訴訟を前提にした特定は,どの山田太郎氏に訴状を送達すればよいのか,がはっきりしていなければならない。また,それらしい名前が掲げてあっても,それが実名とは限らない。ペンネームであれば,やはり本人特定が必要になる。従って,発信者情報を開示せよという裁判所の判断は妥当なものといえる。

 

東京高裁は何を公認(?)したのか

  東京高裁が事実認定したのは,山本一郎氏の「楽天グループに対する態度が、東北楽天イーグルスのチーム戦略室アドバイザーに就任したことを機に、攻撃から擁護に鮮明に変わったとの事実」である。これに基づくなら,山本一郎氏について「東京高裁公認の野球評論家」ぐらいならばまあ言えるかもしれないが(それでもその修飾語はヘンだが),「東京高裁公認の総会屋」ということは出てこない。

 「ブラックジャーナリズムに似ている」「間接的なブラックジャーナリズム」「総会屋2.0」というのは,「前提となっている重要な事実が真実であって、当該事実との間に推論の合理性が認められ、かつ、その内容が人身攻撃に及ぶなど不当なものではなければ、言論の自由として許容されるべき」という理由で,許容範囲とされた言説である。つまり,東京高裁は,これらの意見は不法行為にあたらず許容すべき範囲にあると判断しただけであって,これらの意見は真実であるとか内容を保証するとは言っていないのである。

 つまり,自称山田太郎氏は,先に出ていた東京高裁の判決の日本語をまともに読む能力に欠けていたか,知っていてわざとに他人を総会屋呼ばわりしたことになる。どっちにしてもろくなもんじゃない。開示の結果誰が出てくるのかということと,引き続いて提起されるであろう損害賠償請求訴訟が実に楽しみである。