資料:強磁場新機能ニュースレター
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資料:強磁場新機能ニュースレター
公開中
2012年10月04日
,
最終変更
2026年05月12日
文献を利用するときは必ず原典にあたること。ここに書いてある要約を一人歩きさせないように!
| カテゴリ |
報告書 |
| 資料名 |
強磁場新機能ニュースレター No.5, July 9,2004
第2回研究会
文部科学省科学研究費特定領域研究 「強磁場新機能野開発」総括班
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| 要約 |
【口頭発表】
- 水の分光学 (お茶の水大院人間文化 冨永靖徳)
当サイトでも公開しているラマン散乱の話など。
- 水の磁化率 (城西大理 末岡一生)
水の反磁性磁化率を精密に測定する話。溶存酸素を取り除かないと数%の誤差になる。1.9T以下の磁場では,粘度や密度の変化は認められない。
- 水の近赤外スペクトルに対する磁場効果 (東大院医 岩坂正和・上野照剛)
14Tで測定。1900nm付近のスペクトルの形状変化と900nm付近のピークの赤方変移を観測。D2OとH2Oを混合した溶液では磁場効果は観測されず。石英セル界面の水の影響,水蒸発促進の影響などが重畳されて観測される可能性もあり,10T前後の磁場が水の分子集団構造に影響を及ぼすかどうかまだはっきりしない。コメント:混合物ではなくpure
D2Oで対応するピークを観測したらどうなるのか?
- 水の屈折率と水素結合への磁場効果 (埼玉大理 中林誠一郎)
磁束密度に伴い水の屈折率は増加,10TでSPRセンサーで0.14%の増加,PSDで0.09%の増加。1M以上の電解質水溶液では逆に減少する。D2Oの変化量は水より小さい。金表面に束縛された水の屈折率変化はバルクの水より顕著。
- 水の融点への磁場効果 (千葉大理 稲葉秀明)
6Tでの測定。白金抵抗温度計の温度校正(5Tで19.1mK高温側にシフト)済み。H2Oで5.6±0.7mK,D2Oで21.9±0.7mKの融点上昇。いずれも磁束密度の2乗に比例して増加。クラペイロンの式から予想されるより1000倍程度大きい。強磁場化での相転移時に反磁性磁化率やエントロピー変化量が変わる可能性と,反磁性磁化率に対する分子運動の寄与が大きい可能性とが考えられる。
- 水溶液の融点への磁場効果 (神奈川大理 西本右子)
KClやNaCl水溶液の凍結でできる,塩と水の共晶の酸素付加体の融解温度と融解熱量を測定した。磁石(3mT)存在下で,融解温度が0.3℃程度上昇した。凍結時に磁場を加えた(ESR用の電磁石使用)場合は,磁場強度とともに共晶野融解ピークが低温側に移行した。
- 水吸着への磁場効果 (信州大理 尾関寿美男)
固体粉末を乾燥して温度設定後水蒸気を導入し,吸着平衡となってから磁場を加え,磁気吸着・脱着を圧力測定で求めた。親水性表面の第一層の水は磁場応答しないが,疎水姓表面に弱く吸着した第一層の水は磁場に応答する。細孔中(1nm程度)の水は磁気応答するが,バルク水に磁気応答はみられれなかった。表面に吸着した水分子の磁気的性質が変わっている可能性有り。
- 磁化水のコロイド系への効果 (京大院工 東谷公)
コロイド分散系と電解質水溶液に磁場を照射し,両液を混合。凝集速度,ゼータ電位測定,拡散係数を測定した。業終速度が15%低下,ゼータ電位が8%低下,効果は10分以上の照射で一定,磁場0.3T以上で一定値となる(6日程度のメモリー効果あり)。シリカ粒子を使った場合,AFMによる級しゃくそう暑さは磁場照射により15%増加した。炭酸カルシウム析出(8e-3mol/LのCaCl2とNa2CO3水溶液に磁場照射後混合)では,磁束密度の増加(0.3T以上)でアラゴナイト結晶が析出した。疎水鎖を持つ蛍光プローブで磁場照射後蛍光強度が約15%増加した。コメント:会場でうかがったところ,ゼータ電位の実験の再現性は8割程度で残る2割は逆の結果になるが,平均すると論文掲載の結果となり,実験は十分多数回行っているとのこと。また,炭酸カルシウム析出では,水の純度によって結果が敏感に変わる(精製済みの実験用純水に含まれるppbオーダーの不純物に依存して再現しなくなったりする)のだそうで,もともと多成分系として考えないといけないのかもしれない。コロイドも結晶成長も表面状態に敏感に依存する現象であることを考えると,水系に対する磁場影響は,バルクの水について考えるよりも,表面の効果をまず調べ,次に微量不純物の効き方を調べるといった方向に進んだ方が実りがあるのかもしれない。本気で東谷先生の結果について理論的説明を構築するつもりがあるならデータは出すとおっしゃってたので,腕に覚えのある(特に表面・界面関係の)理論家はチャレンジしてみてはどうだろうか。
- 磁気水の評価 (神奈川大理・工 大石不二夫・持田由幸)
磁場に通した水をイオン化クラスター質量分析法で測定したところ,純水よりもマススペクトルが小さい方にシフトした(天然水(サントリー)はさらに小さい方に偏っている)。さらに,カイワレ大根で発芽率を求めた結果,磁気水の方が発芽率・成長の高さともに高くなった。コメント;以前から当方のウェブサイトの掲示板でも話題になったグループじゃないかと思うが,実際に発表をきいて状況がわかった。ここのグループは,メインの研究テーマ(こっちは先生がしっかり仕切ってる筈)の他に,第二テーマを学生に自由にやらせている(先生は詳細にまで立ち入っていない模様)。磁気水は第二テーマだということだ。物理化学や分析化学を十分しごいてないと,学生は「磁気水はクラスターの小さい水」をいきなり信じるのだなあ,というのが感想。なお,カイワレについては途中までしか追跡実験していない。会場では,似たような話で麦の発芽に磁化水が効果的という話が昔あって,実験したら,確かに発芽の最初は磁化水の方が成績が良かったが最終的には普通の水を使ったのと変わらない結果になったため,実用にはならなかったという指摘があった。
- 磁気水の分工学的検討 (山形大理 天羽優子)
当サイトに掲載済みの内容+Rayleigh-Brillouin散乱の結果の紹介。まだ磁場をかけてないのにこーゆーお題をもらっちゃって・・・(大汗)。
- 水の磁化率の温度依存性と熱対流 (東北大金研 茂木巌)
28Tの磁場使用。
反磁性磁化率の温度依存性と磁場勾配を組み合わせることで,熱対流を制御できる(ほとんど消すこともできる)という実験。実際に,温度によって色が変わる液晶シートを使って,温度分布を可視化した。コメント;発表の最初に,勾配磁場中に水滴を作ると,表面張力で丸くなり,水の反磁性による上向き磁気力と下向き重力がつり合って浮かんだまま上下に振れるという映像があって,なかなか刺激的だった。なお,勾配磁場中で,水に対する酸素の溶解速度が増すのは磁場による対流が拡散を促進するためで,平衡値は変わらない。魚の養殖に使いたいという話もあったそうだが,対流の速度を考えると魚が泳いだ方が撹拌の効率が良い(会場爆笑)のだそうな。
- 水の熱対流のシミュレーション (九大先導物質化学研 尾添紘之)
レイリーベナール対流を10Tの強磁場中で行う。数値解析と実験。
- 水の熱対流に対する磁場効果 (物材機構 廣田憲之)
磁気力が上,下,無しの3種類の場合に,平行板にはさまれた水の対流がどうなるかという実験。対流パターンを観測。重力場中で温度差による熱分布が発生したときに起きる熱対流に,温度が上がると反磁性が弱くなることによる水の反磁性磁化率変化が受ける磁気力とのバランスで,対流を制御できる。
- 磁気分離と組み合わせた物理化学的廃水処理法の開発(都立大院工 渡辺恒雄)
鉄電極で電気分解して磁性粒子と同時に水酸化鉄・リン酸鉄を精製(有機成分の一部が吸着する)→強力な磁石で吸い付けて分離→電解酸化反応でさらに分解,で排水やし尿処理をする方法。微生物を使った曝気処理よりは汚泥の量が少ないとのこと。コメント:「鉄電極で電気分解」「電解反応」は怪しげ業者が浄水器の訪問販売で消費者を煙に巻くため使いまくっていたわけだが,科学的に妥当かつ有効な使い方はこうだってのがよくわかったので,聞いていて楽しかった。
【ポスター発表】
- 磁場中での液体粘性率測定の試み (学習院大理 石井菊次郎・山本正継・山本俊介・仲山英之)
コメント:長ーいオストワルドの粘度計がポイントだとか。
- 磁化力作用化におけるタンパク質結晶の浮遊成長(実験)と水の対流(計算) (産総研 安宅光雄)
コメント:反磁性の力で浮かせた状態で結晶成長させると,結晶の質が良いそうな。強磁場発生させる磁石は高いし,って言ったら,無重力を求めて宇宙に打ち上げるよりずっと安いと指摘されてしまった。
- 固体中の水素結合に起因する反磁性違法性と実用的弱磁場での磁気配向特性 (阪大院理 上田千秋・高島遼一)
- 強磁場中相変態を利用した材料組織制御 (物材機構 大塚秀幸)
- 磁気電解重合ポリアニリン膜のキラル電極特性 (東北大金研 茂木巌・渡辺和雄)
- La0.6A0.3MnO3(A= Ca,Sr) and La1.36Sr1.64Mn2O7多結晶の磁気抵抗に及ぼす結晶粒界の影響 (阪大院工 寺井智之・福田隆・掛下知行)
- 磁場中FT-IRによるPETの磁場配向挙動の観察 (都立大院工・物材機構 鈴木亜紀・山登正文・木村恒久)
- MnをドープしたZnSナノ粒子の組織化膜の作成と発光特性に及ぼす磁場印加プロセスの影響 (九大院工 米村弘明・柳田美智子・山田淳)
- 大気中飛行型磁気質量分析法の基礎検討 (阪大院理 渡邊勝也・諏訪雅頼・渡會仁)
- L-アラニン結晶成長への磁場方向の影響について (いわて産業振興セ・岩手大工 小川薫・清水健司)
- 磁気浮上状態で加熱された物質の回転運動 (東北大金研 高橋弘紀・茂木巌・淡路智・渡辺和雄)
- 強磁場を用いたアガロースゲルの配向制御と工学的評価 (横国大院工 橘高慎治・宮下智明・山本勲・山口益弘)
- 高分子中に分散したZnOナノ粒子の磁場配向 (物材機構・都立大院工・シーアイ化学 盛岡弘幸・木村史子・木村恒久・志自岐俊・笹山広治)
- 核剤の磁場配向に誘起されたポリプロピレンの異方的結晶成長 (都立大院工・物材機構 武善郎・山登正文・木村恒久)
- 磁場を用いた細胞のマイクロパターニング (都立大院工・東大院医・物材機構 佐藤由紀子・岩坂正和・木村史子・木村恒久・上野照剛)
- 時間変動磁場を用いた微粒子懸濁系の精密磁場配向 (都立大院工・物材機構 吉野真司・木村恒久・山根努・山登正文)
- 高勾配磁場を利用した微粒子のパターン化 (都立大院工・物材機構 奈良昭浩・山登正文・木村恒久)
- 銀樹成長の”その場”観測 (信州大教・広島大理 勝木明夫・谷本能文)
- ジパルミトイルホスファチジルコリンリポソーム粒径のパルス磁場制御 (信州大理・物材機構・横国大院工 高橋泰輔・飯山拓・藤尾克彦・尾関寿美男・鈴木修・木戸義勇・山口益弘)
- Redox Reactions of Fe(CN)63- under Steady Magnetic Fields (信州大理 G.サラナバン・藤尾克彦・尾関寿美男)
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| コメント |
まず,今回発表された研究成果のほとんどは,10T級の超電導電磁石を使用した実験結果である。この程度の磁場をかけて,やっと観測できる現象が起きるということなのだ(特にバルク水)。磁場のエネルギーが磁束密度の2乗に比例することを考えると,永久磁石を使ったのでは見ることができない現象なので,いわゆる磁気活水器を使っても現象が起きるだろうという考えは捨てていただきたい。
実用的なのは,水や高分子材料等の反磁性磁化率が小さくても強磁場勾配をかければ有効な大きさの力になるというもので,材料製作や分析への利用が研究されている(本来の「強磁場新機能の開発」はこっちがメインじゃないかなあ)。対流の制御は目に見えて面白かった。
まとめのときに,「水」といっても,精製の方法やどの不純物を徹底して除くかは実験ごとに異なっているので,どういう「水」かをはっきりさせてからでないと議論にならない,という意見が出ていた。
話をきいた印象では,反磁性磁化率を使う話は技術として確立していくだろうけど,バルクの水(純水)に磁場が影響するかどうかというのは,今手にしている磁場で可能かどうかはまだはっきりしない。次に科学になるとしたら,表面・界面が絡む現象ではないか。結晶成長は表面の効果だし,コロイド粒子だって表面部分が大量にある系だ。っていうか顕著な結果が出ているのは表面・界面があるものばっかりなような・・・。吸着水の物性変化がまず問題で,同時に,多成分系として不純物の及ぼす影響も押さえることになるのではないか。いずれにしても,ミクロスコピックなモデルも理論もまだ無いので,1つ現象が見つかったからといってただちにそれが他でも起きるとか応用できるとか考えるのは無理だと思う。まだもっと先の話だ。水素結合や水の電子軌道に磁場がどう影響するか,そもそもどの程度の磁場が必要なのか,というのは,第1原理計算をやってる人たちをもっと入れて,計算化学と足並みそろえて進まないといけないと思った。
この研究会,新聞で紹介されたので,業者さんからの問い合わせが多くて大変だったらしい。会場には,水関連製品の業者さんも何人かみえていたようだったけど,水に走るよりは,ポスターセッションのネタをよく見て材料加工の方を事業化した方が堅実なんじゃないかと思ったり。
個人的には,4年ぶり位に上野先生(医博の学位論文の副査)・岩坂先生にお会いできてハッピーでした。この前お会いしたのは理博とる前だったか。ともかく在学中には本当にお世話になったので,元気に活躍中のご様子なのがうれしい。
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