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「効果の確認がしっかりできているなら」の意味

 水商売ウォッチングの案内で、私は「理由は不明だが効果がある、という製品は、効果の確認がしっかりできているなら販売することには何の問題もありません。現段階で科学的説明が無いことを理由に、有用な水処理方法を捨ててしまうことは、やはり科学の誤用になるでしょう。」と書いた。この文を最初に書いたのは、2002年の6月以前である。その頃は、まだ景品表示法の改正前であった。現在では、景品表示法4条2項が定められたため、「効果の確認」とはどのようなものを意味するかについて、ガイドラインが出ている。そこで、そのガイドラインを引用し、「効果の確認がしっかりできているなら」が今では具体的に何を意味するかを書いておくことにする。

 公正取引委員会の景品表示法のページに、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針 ー不実証広告規制に関する指針」が公開されている。まず、「はじめに」では、

 近年,健康,痩身,環境等に対する消費者の関心が高まる中,ダイエット効果を標ぼうする商品や器具,視力回復効果を標ぼうする器具,焼却時にダイオキシンを発生させないと標ぼうする商品等,商品・サービスの有する「性能」やその結果消費者が期待できる「効果」に関する優良性を強調した表示が多くみられるようになってきている。
 これまで,商品・サービスの効果,性能に関する表示について,公正取引委員会が不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に基づき,不当表示として規制するためには,公正取引委員会が専門機関を利用して調査・鑑定等を行い,表示どおりの効果,性能がないことを立証する必要があったため,事業者が当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を全く有していない場合でも,行政処分を行うまでに多大な時間を要し,その間に不当表示の疑いのある商品・サービスが販売され続け,その結果として,消費者被害が拡大するおそれがあった
 このような状況を踏まえ,商品・サービスの内容に関する合理的な根拠のない表示を効果的に規制することを可能とする景品表示法第4条第2項の新設を含む,「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成15年法律第45号)」が平成15年5月23日に制定・公布され,景品表示法第4条第2項については平成15年11月23日に施行される。
 本指針は,公正取引委員会の景品表示法第4条第2項の運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保するため,同項の運用について一定の指針を示すことを目的としている。
 なお,本指針は,景品表示法第4条第2項の適用がなされる場合のあらゆる場面を網羅しているわけではなく,事業者が行った表示が同項の適用の対象となるのか,また,事業者から提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められるかどうかについては,本指針において例示されていないものを含め,個別事案ごとに判断されることに留意する必要がある。

とある。新しく追加された景表法4条2項は、事業者に対し、公正取引委員会が、宣伝の合理的な根拠を出すように求め、一定期間内に出されなかった場合は、優良誤認とみなすことが可能であることが決められた。つまり、事業者に対して効果の立証責任を課したのである。

 自然科学では、新規なことを立証する側が証明する責任を負うのが通常であるから、法が自然科学のルールを取り入れたことになっている。

 ここで問題になるのは、「合理的な根拠」の具体的な中身である。これについては、運用指針が出ており、詳細に決められている。特に重要な部分を赤字にしてみた。

1 基本的な考え方

 商品・サービスの効果,性能の著しい優良性を示す表示は,一般消費者に対して強い訴求力を有し,顧客誘引効果が高いものであることから,そのような表示を行う事業者は,当該表示内容を裏付ける合理的な根拠をあらかじめ有しているべきである。
 このような観点から,公正取引委員会が事業者に対し,商品・サービスの効果,性能に関する表示について,景品表示法第4条第1項第1号違反に該当する表示か否か判断するために必要があると認めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた場合に,当該事業者から提出された資料(以下「提出資料」という。)が当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには,次の二つの要件を満たす必要がある。

(1) 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
(2) 表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
 なお,商品の効果,性能に関する表示は,当該商品の製造業者から得た,商品について効果,性能があるとの情報を基に販売カタログや店舗内表示などにより,販売業者が自ら行うこともある。この場合,販売業者が自ら実証試験・調査等を行うことが常に求められるものではなく,製造業者等が行った実証試験・調査等に係るデータ等が存在するかどうか及びその試験方法・結果の客観性等の確認を販売業者が自ら行ったことを示す書面等を当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である。

2 提出資料が客観的に実証された内容のものであること

 提出資料は,表示された具体的な効果,性能が事実であることを説明できるものでなければならず,そのためには,客観的に実証された内容のものである必要がある。
 客観的に実証された内容のものとは,次のいずれかに該当するものである

(1) 試験・調査によって得られた結果
(2) 専門家,専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

(1) 試験・調査によって得られた結果
 ア 試験・調査によって得られた結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合,当該試験・調査の方法は,表示された商品・サービスの効果,性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要がある。

<例>
日用雑貨品の抗菌効果試験について,JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
自動車の燃費効率試験の実施方法について,10・15モード法によって実施したもの。
繊維製品の防炎性能試験について,消防法に基づき指定を受けた検査機関によって実施したもの。
 イ 学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合には,当該試験・調査は,社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要がある。
社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法が具体的にどのようなものかについては,表示の内容,商品・サービスの特性,関連分野の専門家が妥当と判断するか否か等を総合的に勘案して判断する。
 ウ 試験・調査を行った機関が商品・サービスの効果,性能に関する表示を行った事業者とは関係のない第三者(例えば,国公立の試験研究機関等の公的機関,中立的な立場で調査,研究を行う民間機関等)である場合には,一般的に,その試験・調査は,客観的なものであると考えられるが,上記ア又はイの方法で実施されている限り,当該事業者(その関係機関を含む。)が行った試験・調査であっても,当該表示の裏付けとなる根拠として提出することも可能である。
 エ なお,一部の商品・サービスの効果,性能に関する表示には,消費者の体験談やモニターの意見等を表示の裏付けとなる根拠にしているとみられるものもあるが,これら消費者の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には,無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し,作為が生じないように考慮して行うなど,統計的に客観性が十分に確保されている必要がある

<例>
自社の従業員又はその家族等,販売する商品・サービスに利害関係を有するものの体験談を収集して行う調査は,サンプルの抽出過程において作為的な要素を含んでおり,自社に都合の良い結果となりがちであることから,統計的に客観性が確保されたものとはいえず,客観的に実証されたものとは認められない。
積極的に体験談を送付してくる利用者は,一般に,商品・サービスの効果,性能に著しく心理的な感銘を受けていることが予想され,その意見は,主観的なものとなりがちなところ,体験談を送付しなかった利用者の意見を調査することなく,一部の利用者から寄せられた体験談のみをサンプル母体とする調査は,無作為なサンプル抽出がなされた統計的に客観性が確保されたものとはいえず,客観的に実証されたものとは認められない。
広い地域で販売する商品につき,一部の地域において少数のモニターを選定して行った統計調査は,サンプル数が十分でなく,統計的に客観性が確保されたものとはいえず,客観的に実証されたものとは認められない。
※ どの程度のサンプル数であれば統計的に客観性が確保されたものといえるかについては,商品・サービス又は表示された効果,性能の特性,表示の影響の範囲及び程度によって異なるため,これらの事項を勘案して個別事案ごとに判断することとなるが,少なくとも,学問上又は表示された効果,性能に関連する専門分野において,客観的な実証に耐える程度のものである必要がある。
(2) 専門家,専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
 ア 当該商品・サービス又は表示された効果,性能に関連する分野を専門として実務,研究,調査等を行う専門家,専門家団体又は専門機関(以下「専門家等」という。)による見解又は学術文献を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合,その見解又は学術文献は,次のいずれかであれば,客観的に実証されたものと認められる。

(1) 専門家等が,専門的知見に基づいて当該商品・サービスの表示された効果,性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって,当該専門分野において一般的に認められているもの
(2) 専門家等が,当該商品・サービスとは関わりなく,表示された効果,性能について客観的に評価した見解又は学術文献であって,当該専門分野において一般的に認められているもの
 イ 特定の専門家等による特異な見解である場合,又は画期的な効果,性能等,新しい分野であって専門家等が存在しない場合等当該商品・サービス又は表示された効果,性能に関連する専門分野において一般的には認められていない場合には,その専門家等の見解又は学術文献は客観的に実証されたものとは認められない。
 この場合,事業者は前記(1)の試験・調査によって,表示された効果,性能を客観的に実証する必要がある。
 ウ 生薬の効果など,試験・調査によっては表示された効果,性能を客観的に実証することは困難であるが,古来からの言い伝え等,長期に亘る多数の人々の経験則によって効果,性能の存在が一般的に認められているものがあるが,このような経験則を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合においても,専門家等の見解又は学術文献によってその存在が確認されている必要がある

3 表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

 提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには,前記のように,提出資料が,それ自体として客観的に実証された内容のものであることに加え,表示された効果,性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければならない。
 したがって,次の例のとおり,提出資料自体は客観的に実証された内容のものであっても,表示された効果,性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければ,当該資料は,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。
 なお,ここで表示された効果,性能とは,文章,写真,試験結果等から引用された数値,イメージ図,消費者の体験談等を含めた表示全体から一般消費者が認識する効果,性能であることに留意する必要がある。

<例1>
家屋内の害虫を有効に駆除すると表示する家庭用害虫駆除器について,事業者から,公的機関が実施した試験結果が提出された。
 しかしながら,当該試験結果は,試験用のアクリルケース内において,当該機器によって発生した電磁波が,害虫に対して一時的に回避行動を取らせることを確認したものにすぎず,人の通常の居住環境における実用的な害虫駆除効果があることを実証するものではなかった。
 したがって,上記の表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず,当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。
<例2>
あらゆる種類のエンジンオイルに対して10%の燃費向上が期待できると表示する自動車エンジンオイル添加剤について,事業者から,民間の研究機関が実施した試験結果が提出された。
 しかしながら,その試験結果は,特定の高性能エンジンオイルについて燃費が10%向上することを確認したものにすぎず,一般的な品質のエンジンオイルについて同様の効果が得られることを実証するものではなかった。
 したがって,上記の表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず,当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。
<例3>
99%の紫外線をカットすると表示する紫外線遮断素材を使用した衣料について,事業者から,当該化学繊維の紫外線遮断効果についての学術文献が提出された。
 しかしながら,当該学術文献は,当該紫外線遮断素材が紫外線を50%遮断することを確認したものにすぎず,紫外線を99%遮断することまで実証するものではなかった。
 したがって,上記の表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず,当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。
<例4>
「食べるだけで1か月に5kg痩せます」との見出しに加え,「○○大学△△医学博士の試験で効果は実証済み」との専門家による評価があることを表示することにより,表示全体として,食べるだけで1か月に5kgの減量効果が期待できるとの認識を一般消費者に与えるダイエット食品について,事業者から,美容痩身に関する専門家の見解が提出された。
 しかしながら,当該専門家の見解は,当該食品に含まれる主成分の含有量,一般的な摂取方法及び適度の運動によって脂肪燃焼を促進する効果が期待できることについて確認したものにすぎず,食べるだけで1か月に5kgの減量効果が得られることを実証するものではなかった。
 したがって,表示全体として,食べるだけで1か月に5kgの減量効果が期待できるとの認識を一般消費者に与える表示と,提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず,当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められない。

なお、特定商取引法の第6条の2についても、ほぼ同じ内容の運用指針が経済産業省によって出されている。

 つまり、「効果の確認をしっかりする」が満たすべき基準は、ここで引用した運用指針に従うということである。水商売ウォッチングを書いた当時は、まだ、景表法の改正前であった。法が改正されたのだから、基準の方も当然そちらに準拠すべきであるので、追記しておく。