postheadericon 提訴しました

 マグローブ株式会社・上森三郎・吉岡英介及び山形大学を被告として山形地方裁判所に提訴した。弁護士を探す時間も無かったのと、ある程度は自分でやれるだろうと思ったので、本件は代理人無しの本人訴訟である。
 マグローブ株式会社・上森三郎・吉岡英介に対する請求は、お茶の水大の掲示板コメントを削除させたことに対する損害賠償請求および、山形大のblog内容を削除しなくていいことの確認(債務不存在確認)を求めた。山形大学には、削除要求のあったblog内容をそのままにしておいてほしいという不作為の請求を立てた。
 訴状提出は平成19年12月5日、事件番号は平成19年(ワ)第610号、第1回口頭弁論は平成20年1月23日午前11:00。

 普通は、インターネットの掲示板等に対する削除要求が原因の紛争は、プロバイダ責任制限法にのっとって発信者情報開示→書き込んだ人を特定→提訴、といった流れになる。しかし、この流れに任せていると、書き込んだ人が表現の自由の範囲内であると考えていても、名誉毀損か何かで訴えてもらうまで、書き込んだ人には内容が正当かどうかの立証をする機会が与えられない。
 ところが、名誉毀損による提訴は、提訴された側が表現が名誉毀損にあたらないことを立証しなければならず、非常に立証の負担が大きい。これは、名誉毀損が主に力のあるマスコミによってなされた時代の判断基準がそのままになっているということによる。昔であれば、「公然と」表現するには、新聞を印刷して配るといった資本力や設備が必要であったので、公然性=金も力もあるプロのジャーナリズム、が成り立っていた。
 しかし、インターネットの時代になって、個人が誰でも簡単に公然性のある表現ができるようになってしまった。このような場合には、攻撃防御の方法も変わってしかるべきである。
 私は以前から、表現の自由を侵害するような削除要求に対しては、訴えられるのを待たず、先に、削除義務が存在しないことを確認する訴えを提起するということで抵抗できるのではないかと考えてきた。民法では、人に何かをさせる権利・義務は全て債権債務である(一方、物権は法定されている)。債務が存在しないことを確認する訴えは民事訴訟の訴えの形としては確立している。従って、削除要求に対し、債務不存在確認を書き込んだ人から提起するという手段で、表現の自由をもう少し積極的に守ることができるかもしれない。しかし、なかなかそこまでやる機会に恵まれなかった。また、削除要求に対して、要求された側が先に提訴するというケースは希で、ひょっとしたらこのケースが最初かもしれない(別にやっている当事者参加の方は、既に紛争発生後の話なので状況が違う)。裁判所の判断がどうなるかわからないが、試してみる価値はあるのではないかと考えている。

 「民事訴訟法 第四版」(上田徹一郎著、法学書院)によれば、確認の訴えの機能とは、

(1)権利・法律関係の不明確をめぐって生じている争いが悪化して給付の訴え、さらには確定給付判決の執行力に基づく強制執行によって処理せざるを得ない状態になることを防止し、(2)あるいは基本的な権利・法律関係を明確にすることによって基本的な権利から発生する種々の請求権に基づく多様な給付訴訟の続発を防止する、という「予防的機能」を営ませることを目的とする。

となっている。「確認の対象は権利・法律関係であって、かつ特定の具体的なものでなければならない」から、内容を特定した削除要求があれば、訴え提起は可能である。

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