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今度は行政書士

Posted on 10月 12th, 2009 in 倉庫 by apj

 過払い金返還請求で、広告を出して多数の客集めをしている弁護士とクライアントの間でトラブルが増えているという話が出ていたが、今度は行政書士が不正に手を貸していた。Yahoo経由読売新聞の記事より。

行政書士が不正代行、偽装結婚や不法就労
10月11日3時5分配信 読売新聞
 警視庁が2006年以降に摘発した外国人による偽装結婚や不法就労事件のうち、少なくとも10件で、在留資格などの不正取得の手続きを行政書士が代行していたことがわかった。

 こうした行政書士の中には外国人向けの新聞などに広告を出して依頼主を募っているケースもあり、虚偽の申請をしても罰則がない入管難民法の盲点を悪用した疑いがある。

 同庁は、捜査上の証拠から「悪質」と裏付けられた1件について、行政書士を処分する権限を持つ東京都に通報して懲戒などの処分を求めており、他の9件も悪質と判断できれば情報を提供する方針。

 同庁幹部によると、同庁が昨年5月、韓国人の女(39)の在留資格を不正に取得するため日本人の男(35)との偽装結婚をあっせんしたとして韓国人ブローカーの男(39)を逮捕した際、このブローカーが女の結婚に必要な在留資格認定証明書の申請手続きを、首都圏の行政書士に依頼したと供述した。

 偽装結婚した男女も調べに対し、この行政書士について「虚偽の申請と知っていて手続きをした」と話したため、同庁は、行政書士の刑事責任を問えないか検討した。しかし、入管難民法には虚偽の申請行為に罰則規定がなく、同法のほう助容疑や犯人隠避容疑についても、行政書士が任意の事情聴取に対して「偽装とは知らなかった」と否定したため、立件を見送らざるを得なかったという。

 ほかにも今年7月、通訳と偽って中国の農民の在留資格を不正取得させたとして、同庁が日中のブローカー計6人を逮捕した事件で、在留資格の申請書を作成した別の行政書士事務所から、偽造の雇用契約書が見つかるなど、06年以降、計10の事件で行政書士が申請手続きを代行したことが確認された。不法滞在の外国人本人だけでなく、ブローカーからも申請を依頼されていた。

 10件にかかわった行政書士の多くが、新宿・歌舞伎町などで売られている中国人向けの新聞や韓国語のフリーペーパーに、「不法滞在者用特別在留手続き」「密入国者の結婚手続き」という広告を出していたことも判明。同庁は、こうした行政書士の宣伝行為も、不法就労や偽装結婚を助長しているとみている。

 このため同庁では、刑事責任を問えないケースでも、懲戒処分を求めるなど強い姿勢で臨む必要があると判断。東京都や東京入国管理局と合同で「偽装滞在に関与する行政書士対策連絡会議」を設置して都に情報を提供する一方、行政書士による不正行為の監視を強めている。

 警視庁の対応について、東京都行政書士会の幹部は「新聞やネットの疑わしい広告は問題視している。活動実態の把握に努め、不正を行った行政書士は会として厳しく対処したい」と話し、上部組織の日本行政書士会連合会も「講習会などで注意喚起するなど、信頼を維持できる取り組みに力を入れたい」としている。

 法律家をさがすのに、広告がまったくないとどうしていいかわからなくて不便だと思っていたのだけど、弁護士が広告を出しまくるのと同期して過払い金請求のトラブルが増え、行政書士の広告でも不法滞在と偽装結婚助長という方向に行くとは……。
 広告を出したから悪い奴が増えたわけではないのだろうけど、法律家が信用できなくなると普通の市民が困る。

 と思っていたら今度はJ-CASTニュースでこれだし。

ロースクールの志願者減 法相「大変大きな課題」
10月11日16時35分配信 J-CASTニュース
 多大な学費と時間をかけても合格率は3割以下――。新司法試験の門が年々狭くなっているのにあわせて、法科大学院の志願者も減少し、定員割れする大学が続出している。千葉景子法相も「大変大きな課題だ」と深刻さを認識しているようだ。

■募集40人に対して「志願者」36人

 2009年の新司法試験の合格者は9月10日に発表され、合格率が27.6%と初めて3割を切ったことが話題になった。それと前後して、各法科大学院では来年度新入生の選抜試験が行われたが、志願者が定員に満たない大学も出るなど「法科大学院離れ」が鮮明になっている。

 大阪府吹田市にキャンパスを構える大阪学院大。秋期入学試験で40人を募集したところ、志願者は36人しかいなかった。願書提出段階ですでに定員割れという惨憺たる状況だ。だからといって全員を合格させるわけにもいかず、募集の半分の20人を合格とした。

 神奈川大(神奈川県横浜市)も、30人の募集に対して志願者は59人。2倍を切る少なさだ。駒沢大(東京都世田谷区)は2010年度前期入試で40人を募集したが、志願者数は定員を1人だけ上回る41人で、合格者24人の定員割れとなった。

 これら志願者減少の背景には、司法試験での合格率の低迷がある。大学全体の合格率も27.6%と高くないのだが、大阪学院大5.6%、神奈川大6.7%、駒沢大10.0%と、不人気校は平均を大きく下回っている。

 早稲田大(東京都新宿区)の法科大学院(司法試験合格率32.6%)の2009年秋入試に合格した早稲田大法学部生は

  「早慶レベル以下のロースクールに行くことはまったく考えていなかった。司法試験の合格率の問題もあるが、合格後の就職でも実績のない大学は不利になるので」

と語る。

■「ロースクールは少子化対策にすぎなかった」

 「下位ロー」。法科大学院の学生やその受験生の間では、司法試験の実績がない大学をこう呼ぶ。下位のロースクール(法科大学院)という意味だ。合格率が5割を超す一橋大や東京大などのトップ校と、1割にも満たない大学の「人気格差」は歴然としている。このような事態に対して、ある不人気校の関係者は

  「法科大学院受験の前提となる適性試験の受験者数が年々減っていることからわかるように、全体の志願者のパイ自体が小さくなっている。当初は新司法試験で7、8割の合格者を出すという話だったのに、当初の設計と随分ずれてきてしまっている」

と試験の運用に問題があると指摘する。だが、東京都内の法科大学院を卒業した30代男性は、安易に法科大学院を設置した大学にも責任があると批判する。

  「下位ローのほとんどは少子化時代の新たな収益源としてロースクールを作った。新司法試験ではどんなに成績が悪くても合格させてもらえると思っていたのだろうが、現実はそんなに甘くない。私立だと数百万近い学費を取っている大学もあるが、新しい制度を使って金儲けをしたかっただけではないか」

 このような状況を受け、民主党内では法科大学院の総定員を削減するため、設置認可基準の見直しをすべきだという声も出ている。弁護士出身の千葉景子法相も10月9日の会見で「ロースクールの現状については承知している」としながら、次のように話した。

 「いますぐロースクールの方向性を転換するという段階ではないが、大変大きな課題なので、各ロースクールに教育内容を充実させるようお願いする必要があると認識している。ロースクールで学んでいる方にとっては切実な問題であることも十分承知している。そういうことを念頭におきながら、文科省のみなさんといろいろと相談させていただきたい」

 数がかぎられていてステイタスになっていた職業に対して、「人数増やせ、競争でよりよいサービス」とやった結果、その道を目指す学校に進んでも職につけない人の方がずっと多く、職についた後も過当競争でろくな未来がない、という状況を作ってしまい、「割に合わなくてあほらしいので行く人が減る」結果、業界全体がレベルダウンの方向に進んで、社会全体が損をする、というのと繰り返しているだけのような。大学院重点化とロースクルールが両方ともこのパターンをたどっている。
 その分野の人達に競争させればサービスが良くなる、というのは幻想で、競争の結果それが割に合わない商売になれば、その商売自体が他の商売との人材獲得競争に負けてしまい、その分野全体でサービス低下がもたらされる。この場合のサービスは顧客相手の意味だけじゃなくて、もっとひろく仕事の質といったものも含むのだけど。

 義務教育の発想で専門職業訓練をするからおかしなことになっているように見える。来た人に可能な限り知識なり技術なりを身に付けさせようという義務教育的発想と、適性が無ければ早々にふるい落とさないと逆に本人が不幸になる職業訓練はそもそも両立しないのではないか。博士課程もロースクールも本来の性質は専門職業の訓練学校であって、適性がなければ途中でどんどんふるい落とす運用をしないと成り立たなかったのに、定員の充足だの学位取得人数を確保せよだのという縛りをかけたことが問題なのでは。