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今度は行政書士

Posted on 10月 12th, 2009 in 倉庫 by apj

 過払い金返還請求で、広告を出して多数の客集めをしている弁護士とクライアントの間でトラブルが増えているという話が出ていたが、今度は行政書士が不正に手を貸していた。Yahoo経由読売新聞の記事より。

行政書士が不正代行、偽装結婚や不法就労
10月11日3時5分配信 読売新聞
 警視庁が2006年以降に摘発した外国人による偽装結婚や不法就労事件のうち、少なくとも10件で、在留資格などの不正取得の手続きを行政書士が代行していたことがわかった。

 こうした行政書士の中には外国人向けの新聞などに広告を出して依頼主を募っているケースもあり、虚偽の申請をしても罰則がない入管難民法の盲点を悪用した疑いがある。

 同庁は、捜査上の証拠から「悪質」と裏付けられた1件について、行政書士を処分する権限を持つ東京都に通報して懲戒などの処分を求めており、他の9件も悪質と判断できれば情報を提供する方針。

 同庁幹部によると、同庁が昨年5月、韓国人の女(39)の在留資格を不正に取得するため日本人の男(35)との偽装結婚をあっせんしたとして韓国人ブローカーの男(39)を逮捕した際、このブローカーが女の結婚に必要な在留資格認定証明書の申請手続きを、首都圏の行政書士に依頼したと供述した。

 偽装結婚した男女も調べに対し、この行政書士について「虚偽の申請と知っていて手続きをした」と話したため、同庁は、行政書士の刑事責任を問えないか検討した。しかし、入管難民法には虚偽の申請行為に罰則規定がなく、同法のほう助容疑や犯人隠避容疑についても、行政書士が任意の事情聴取に対して「偽装とは知らなかった」と否定したため、立件を見送らざるを得なかったという。

 ほかにも今年7月、通訳と偽って中国の農民の在留資格を不正取得させたとして、同庁が日中のブローカー計6人を逮捕した事件で、在留資格の申請書を作成した別の行政書士事務所から、偽造の雇用契約書が見つかるなど、06年以降、計10の事件で行政書士が申請手続きを代行したことが確認された。不法滞在の外国人本人だけでなく、ブローカーからも申請を依頼されていた。

 10件にかかわった行政書士の多くが、新宿・歌舞伎町などで売られている中国人向けの新聞や韓国語のフリーペーパーに、「不法滞在者用特別在留手続き」「密入国者の結婚手続き」という広告を出していたことも判明。同庁は、こうした行政書士の宣伝行為も、不法就労や偽装結婚を助長しているとみている。

 このため同庁では、刑事責任を問えないケースでも、懲戒処分を求めるなど強い姿勢で臨む必要があると判断。東京都や東京入国管理局と合同で「偽装滞在に関与する行政書士対策連絡会議」を設置して都に情報を提供する一方、行政書士による不正行為の監視を強めている。

 警視庁の対応について、東京都行政書士会の幹部は「新聞やネットの疑わしい広告は問題視している。活動実態の把握に努め、不正を行った行政書士は会として厳しく対処したい」と話し、上部組織の日本行政書士会連合会も「講習会などで注意喚起するなど、信頼を維持できる取り組みに力を入れたい」としている。

 法律家をさがすのに、広告がまったくないとどうしていいかわからなくて不便だと思っていたのだけど、弁護士が広告を出しまくるのと同期して過払い金請求のトラブルが増え、行政書士の広告でも不法滞在と偽装結婚助長という方向に行くとは……。
 広告を出したから悪い奴が増えたわけではないのだろうけど、法律家が信用できなくなると普通の市民が困る。

 と思っていたら今度はJ-CASTニュースでこれだし。

ロースクールの志願者減 法相「大変大きな課題」
10月11日16時35分配信 J-CASTニュース
 多大な学費と時間をかけても合格率は3割以下――。新司法試験の門が年々狭くなっているのにあわせて、法科大学院の志願者も減少し、定員割れする大学が続出している。千葉景子法相も「大変大きな課題だ」と深刻さを認識しているようだ。

■募集40人に対して「志願者」36人

 2009年の新司法試験の合格者は9月10日に発表され、合格率が27.6%と初めて3割を切ったことが話題になった。それと前後して、各法科大学院では来年度新入生の選抜試験が行われたが、志願者が定員に満たない大学も出るなど「法科大学院離れ」が鮮明になっている。

 大阪府吹田市にキャンパスを構える大阪学院大。秋期入学試験で40人を募集したところ、志願者は36人しかいなかった。願書提出段階ですでに定員割れという惨憺たる状況だ。だからといって全員を合格させるわけにもいかず、募集の半分の20人を合格とした。

 神奈川大(神奈川県横浜市)も、30人の募集に対して志願者は59人。2倍を切る少なさだ。駒沢大(東京都世田谷区)は2010年度前期入試で40人を募集したが、志願者数は定員を1人だけ上回る41人で、合格者24人の定員割れとなった。

 これら志願者減少の背景には、司法試験での合格率の低迷がある。大学全体の合格率も27.6%と高くないのだが、大阪学院大5.6%、神奈川大6.7%、駒沢大10.0%と、不人気校は平均を大きく下回っている。

 早稲田大(東京都新宿区)の法科大学院(司法試験合格率32.6%)の2009年秋入試に合格した早稲田大法学部生は

  「早慶レベル以下のロースクールに行くことはまったく考えていなかった。司法試験の合格率の問題もあるが、合格後の就職でも実績のない大学は不利になるので」

と語る。

■「ロースクールは少子化対策にすぎなかった」

 「下位ロー」。法科大学院の学生やその受験生の間では、司法試験の実績がない大学をこう呼ぶ。下位のロースクール(法科大学院)という意味だ。合格率が5割を超す一橋大や東京大などのトップ校と、1割にも満たない大学の「人気格差」は歴然としている。このような事態に対して、ある不人気校の関係者は

  「法科大学院受験の前提となる適性試験の受験者数が年々減っていることからわかるように、全体の志願者のパイ自体が小さくなっている。当初は新司法試験で7、8割の合格者を出すという話だったのに、当初の設計と随分ずれてきてしまっている」

と試験の運用に問題があると指摘する。だが、東京都内の法科大学院を卒業した30代男性は、安易に法科大学院を設置した大学にも責任があると批判する。

  「下位ローのほとんどは少子化時代の新たな収益源としてロースクールを作った。新司法試験ではどんなに成績が悪くても合格させてもらえると思っていたのだろうが、現実はそんなに甘くない。私立だと数百万近い学費を取っている大学もあるが、新しい制度を使って金儲けをしたかっただけではないか」

 このような状況を受け、民主党内では法科大学院の総定員を削減するため、設置認可基準の見直しをすべきだという声も出ている。弁護士出身の千葉景子法相も10月9日の会見で「ロースクールの現状については承知している」としながら、次のように話した。

 「いますぐロースクールの方向性を転換するという段階ではないが、大変大きな課題なので、各ロースクールに教育内容を充実させるようお願いする必要があると認識している。ロースクールで学んでいる方にとっては切実な問題であることも十分承知している。そういうことを念頭におきながら、文科省のみなさんといろいろと相談させていただきたい」

 数がかぎられていてステイタスになっていた職業に対して、「人数増やせ、競争でよりよいサービス」とやった結果、その道を目指す学校に進んでも職につけない人の方がずっと多く、職についた後も過当競争でろくな未来がない、という状況を作ってしまい、「割に合わなくてあほらしいので行く人が減る」結果、業界全体がレベルダウンの方向に進んで、社会全体が損をする、というのと繰り返しているだけのような。大学院重点化とロースクルールが両方ともこのパターンをたどっている。
 その分野の人達に競争させればサービスが良くなる、というのは幻想で、競争の結果それが割に合わない商売になれば、その商売自体が他の商売との人材獲得競争に負けてしまい、その分野全体でサービス低下がもたらされる。この場合のサービスは顧客相手の意味だけじゃなくて、もっとひろく仕事の質といったものも含むのだけど。

 義務教育の発想で専門職業訓練をするからおかしなことになっているように見える。来た人に可能な限り知識なり技術なりを身に付けさせようという義務教育的発想と、適性が無ければ早々にふるい落とさないと逆に本人が不幸になる職業訓練はそもそも両立しないのではないか。博士課程もロースクールも本来の性質は専門職業の訓練学校であって、適性がなければ途中でどんどんふるい落とす運用をしないと成り立たなかったのに、定員の充足だの学位取得人数を確保せよだのという縛りをかけたことが問題なのでは。


ここからは旧ブログのコメントです。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-48 17:32:48
法務局の現状認識が甘すぎです。

現状の士族は人が仕事が減少しており、仕事の取り合いになってます。行政書士はあまり知りませんが。
このため、例えば、司法書士の試験なども、参加者が微減しており、ただ、合格率はあまり変わっていません。難易度は変わってない感じです。(難しくも簡単にもなっていない。)
この状況で学生が増えるとは考えにくい(元々志が高く目指している人は別として)ですし、試験も当然ながら簡単にするわけがないでしょう。
また優秀なロースクールに行きたがるのは、以降の就職を考えれば当然の事で、地元に強力なコネがなく、自己の事務所を出すあてがない学生は、絶対に一流のロースクールを目指します。その理屈&流れは、あまりに当たり前なんで、それを考えてないなら、あまりに迂闊すぎです。

なお、各書士会での懲戒者は増えていますが、それはどちらかというと変な奴が増えたわけではなく、昨今の法律改正で法律解釈が混乱した結果である方が多いです。
会社法の改正、電子認証関係の法務省のシステム混乱、弁護士関係でも、確か何かあったはずですが、要は法律やシステムを現状に合わせ切れていない。
また、法務省がシステムに関する変更の見込みがあまりに甘すぎる、という問題点があります。(個人の電子認証には、住民基本台帳カードが使用できますが、この惨状は知っての通りですし、確定申告の eTax だって、個人が使うには敷居が高すぎる。)


by Atlantis.sawamura at 2009-10-55 17:38:55
用語訂正

あ、用語が正確ではありませんでした。
法務局→法務省 です。
法務局だと、申請書を出す支局(本局、出張所含む)のことになっちゃいますので。

なお、法務局は、各支店が統廃合を行っており、小さな政府を目指した結果だと思われますが、その結果、各支局付近にいた事務所が統廃合されて、結果人数が減るという結果も生んでいるようです。

あと会社関係だと、一部業務を集中化した結果、商業登記を行わない法務局も出てます。これはどっかに一覧があった気がしたけど。


by 酔うぞ at 2009-10-34 17:59:34
文科省というか役所全体というか

    >博士課程もロースクールも本来の性質は専門職業の訓練学校であって、
    >適性がなければ途中でどんどんふるい落とす運用をしないと
    >成り立たなかったのに、定員の充足だの学位取得人数を確保せよだの
    >という縛りをかけたことが問題なのでは。

この話は、昨年の情報ネットワーク法学会・年次総会後の懇親会で法科大学院の教授と話をした時に出てきた事でした。
その時に

    >法科大学院では相対評価を義務づけられているから、
    >司法試験に全く合格する可能性がない学生も卒業させざるを得ない。

と聞いて「なんだそれは?絶対評価にすれば良いだけじゃないか。そもそも司法試験は絶対評価だろう」と聞いたら、返事は「法科大学院は文科省の管轄ですから」との事だった。

つまり、法科大学院の教授らは弁護士資格のある人ばかりで、法務省を向いているわけであるが、教員としては文科省管轄の職員として教育に当たっているわけで、そこにある種のジレンマがあるのだそうです。

こんな予備知識をもって、J-CASTニュースの記事にある「千葉法相が法科大学院に・・・・」を読むと、実は千葉法相は法科大学院に対して法務省は直接の管轄ではないということを理解していないのではないのか?という不安が出てくる。

結局、文科省は「学校のことしか考えていない」で法務省は「実務家の仕事の具合しか見ない」ということで、新人養成を無視してるわけですよ。

文科省が法科大学院でも相対評価を義務づけているというのには、ビックリしたが要するに文科省は卒業生の法曹人として質なんてのは「相対的である」としているわけですよ。
これが、パイロットの養成なんかだったら恐ろしい話です。

じゃあ医者はどうなんだ?というと、幸か不幸か医学は分野が広いから手術の技量が身につかない医者も許させるわけですが、その結果は「外科医の養成が追いつかない」のだそうです、医学部の入学者に手先が不器用なのが増えてしまって「針に糸を通す練習から始める」のだそうです。
座学の成績で切るから適性が無い学生も医学部に入ってくる、ということですね。

これらは、大げさに言うと「供給者の論理」でしか動かない日本の現状の反映でありましょう。
消費者庁がようやくできるわけですが、わたしは1998年頃から「消費者・需要家」という言い方をしています。「プロダクトアウト」vs「マーケットイン」という方が分かりやすいかと思いますが、民間企業ではかなりの部分が消費動向の直接反映で商売するようになっています。代表はコンビニです。

お役所は、元々「供給側をコントロールする方が手間が少ない」とやってきたから、ようやく消費者庁の設置にたどり着いたわけで、こういった俯瞰した図で考えると、法科大学院の仕組みをどうこうする、といったことではなかなか抜本的な解決にはならないでしょうなあ~。


by 酔うぞ at 2009-10-39 18:20:39
と思っていたら

本職の法科大学院教授の記事です。

http://www.tiresearch.info/dolus/2009/10/post-223.html


by Atlantis.sawamura at 2009-10-38 18:33:38
あらら。削除したつもりなのに。

あれ、最初のコメント。冒頭のところ「人が仕事が」になってる。
「仕事が」の間違いですね。
実は、人も減ってるけど。文脈的には「人が」が余分。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-28 18:37:28
文部省…

あ。法務省って直轄じゃないんですね。
それは知りませんでした。
すみません。実務畑なんで。(^^;)
でも、実務無視しちゃ嫌です…。


by 酔うぞ at 2009-10-46 20:51:46
法科大学院校

にすれば、法務省管轄なるわけですよ。

航空大学校とかと同じですね。
文科省が「教育だから任せろ」的にやっているところがどうにもならない原因でしょう。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-41 21:21:41
訴訟件数の統計が見つからなかったので、弁護士収入なんぞを

ちなみに、こんな話(弁護士って実は余ってる)とかもあります。
訴訟件数とか統計情報が見つからなかったので、リンクだけしておきますが、もう少し信頼できる情報があったら、そっちがいいかも。R25の記事なんで。

http://r25.jp/b/wp/a/wp/n/%95%D9%8C%EC%8Em/i/%95%D9%8C%EC%8Em%82%CC%8E%FB%93%FC


by Atlantis.sawamura at 2009-10-59 21:30:59
Re:今度は行政書士

ついでに言っておくと、弁護士は地方にいないのよ。
それが問題であって、数じゃないと思うし、じゃあ地方に行かせたら、貧乏弁護士が増えるだけじゃん、というのも弁護士本人たちは言ってる話な訳ですよね。
そういう実態を政府は把握していってるのかな?

ちなみに、これは医療(特に産科と小児科)でも、怨嗟の声が満ちている傾向で、政府は実態を無視して命令をしている、という言葉は、インフルエンザの関係の情報を確認しているときに、死ぬほど目にしました。

インフルエンザって、子供関係の医療問題も関係するので。
妊婦はハイリスクグループだし。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-12 23:00:12
弁護士をフォローしようにも簡裁代理権限では…

さらに補足しとくと、地方弁護士不足に街の法律家として、司法書士をあてようとしたが、法律改正がなったのは、簡裁代理権限のみ。

なお、この簡裁代理権限、司法書士法を読むと書いてあるが、多分、実務的に債務管理以外に使えんのじゃないだろうか。(つまり話題の広告が目立つ債務超過の顧客が対象)

と思ったら、ちょっと、関係するリンクを見つけたので、貼っておきます。
司法書士事務所のコラムのようだ。
http://homepage2.nifty.com/akamatsu/delve/06.html


by apj at 2009-10-01 00:51:01
他人の競争へのフリーライディング

たくさんコメントをいただいたので、できるところから。

Atlantis.sawamuraさん、

>それが問題であって、数じゃないと思うし、じゃあ地方に行かせたら、貧乏弁護士が増えるだけじゃん、というのも弁護士本人たちは言ってる話な訳ですよね。

 何て言うか、他人の競争でサービスが向上することをアテこんでフリーライドしようとするからおかしなことになるような気がするんですよ。

 競争で物事を解決するのなら、競争でサービスが良くなるという面だけ期待するんじゃなくて、いいサービスが欲しければ競争で金を出さないと他との競争に負けて人材は奪われる、という面もしっかり自覚しないとダメなんじゃないでしょうか。数が増えたのを買いたたく側だと思っていたら、実はオークションみたいなもんで、金を出さないと競り落とせない側だったというオチ。
 医者が怨嗟の声に満ちていながらでも多少は何とかなっているのは、保健でまかなってお金の分布を調整しているからで、それが乏しい法律家の場合は、剥き出しの競争になるだけだと。

 みんながいろいろ依頼しまくって、弁護士事務所が成り立つだけの金を出せば、商売になるから弁護士が来てくれるでしょうよ。


by 杉山真大 at 2009-10-28 03:59:28
そう言っている中で

保育所も何だか怪しくなっている様なんですよね。
http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2009/10/1012-959d.html

>いいサービスが欲しければ競争で金を出さないと他との競争に負けて人材は奪われる、という面もしっかり自覚しないとダメなんじゃないでしょうか。

そこなんですよね。結局、質的にいいサービスを必要とするなら相応のコスト負担をしなければならない、ってのは資本主義に則っていると当たり前な筈なのに、資本主義のメリットばかり享受してコストについて考えが及ばないってのが”聖域無き構造改革”論者だったりする(苦笑
若し負担ができない層がいて機会の平等が損なわれるなら、それこそ法的に規制して資本主義的な部分を制限する必要がある筈なのに、それをバカの一つ覚えの様に大きな政府とか非難するからなぁ・・・・・


by 杉山真大 at 2009-10-41 04:12:41
菴巡叱

かの足利事件の弁護士氏についても、実は悪徳商法絡みで糾弾されているんですよね。
http://news-tag.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/sunr-7f5f.html

何と言うのか・・・・・こういう危ない商売(?)に手を出さないと、冤罪も救えないってのが遣り切れない気がしちゃうんですよね。


by apj at 2009-10-04 05:04:04
どうして刑事弁護が(経済的に)可能なのか

杉山真大さん、

>何と言うのか・・・・・こういう危ない商売(?)に手を出さないと、冤罪も救えないってのが遣り切れない気がしちゃうんですよね。

 弁護士事務所を維持するのに必要な金額って、まあ相場があるわけですよね。普通に刑事弁護をやったとして、事務所維持に見合った金をもらえるかというとそうではない。それでも刑事訴訟の制度上やらなければならないというのなら、他で稼いでくるしかないでしょう。
#ある意味「赤ひげ先生」モデルで回ってるわけで。
 悪徳商法でもマルチでも、金を出してくれる相手からたっぷり金をもらって、できた余裕で刑事弁護をするしかない。弁護士が霞喰って生きられるわけじゃないし。刑事弁護だけで事務所を維持できる収入が得られないのだから、それは仕方がない。儲けにならない刑事弁護でいい仕事をしてくれる弁護士に向かって、悪徳業者の依頼を受けるななどとやったら、刑事弁護の活動自体が不可能になりますよ。


by apj at 2009-10-09 05:13:09
田舎の準備書面

 弁護士になってから、訴訟も滅多に起きない田舎でそれなりの顧客を獲得しつつのんびり法律事務なんかやってて、そのまま何年もたって、イザ紛争になったら、訴訟代理人としては大いに疑問符がつく、というのも実際あるみたいですよ。ピンぼけな準備書面が平気で出てきたりして、都会でしょっちゅう紛争をやって鍛えている弁護士さんとは腕の差歴然だという……。
 こういうのも解消しないと、田舎で仕事をしたがる弁護士さんて出てこなさそうですよね。医者が、いろんな症例にあたれる病院で研修を受けたがるというのと一緒で。
 まあ、都会で十分稼いだし歳をとって紛争のスケジュールに追われるのもしんどくなってきたから、あとはのんびり田舎で……というような人だったら来てくれるかもしれませんが。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-41 05:47:41
医療問題のリンク、少し探しておきました。(産院と公立病院)

ちなみに産婦人科の話は、こんな現状が…。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20060830
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/08/post_d6f6_16.html
http://mamakids.weblogs.jp/baby/2006/05/post_5f13.html

公立病院の黒字化はこんな感じ…。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20091010


by apj at 2009-10-20 18:56:20
Re:今度は行政書士

酔うぞさん、

 医学部入学希望者に器用さを求めるなら、入学試験で手先の器用さを見るような実技を課せばいいんじゃないですかね。まあ、医学が広いというのはその通りで、知り合いの精神化の先生に、注射以上の手先の器用さを要求されることはできない、という人が居ました。不器用さを自覚していたから、外科に行かずに精神かを選んだそうで。
 問題は、不器用かつ優柔不断な人が外科医になるのを止めるシステムが無いということの方ではないかと。自発的に他科を選んでくれればいいのですが、そうでないと悲惨なことに……。


by apj at 2009-10-38 19:11:38
「科学技術立国」イメージの弊害

杉山真大さん、

>そこなんですよね。結局、質的にいいサービスを必要とするなら相応のコスト負担をしなければならない、ってのは資本主義に則っていると当たり前な筈なのに、資本主義のメリットばかり享受してコストについて考えが及ばないってのが”聖域無き構造改革”論者だったりする(苦笑

 このへんが「科学技術立国」という先入観の弊害のような。工業製品だと、競争によって値段が下がって質が良くなるし、そういうのを目にしているから何でもそうだと思っちゃってるけど、この性質は工業製品に特有のもので、他もそうではないということは認識してないと、逆に費用がかかることになりかねませんよね。世の中、工業製品だけで成り立ってるわけじゃないので。

 一点物はオークションで値段が決まることの方が多いし、一点物までいかなくてもオーダーメードのもの(弁護士に依頼なんてのはこちらに近い)は、競争があってもそうそう値段が下がったりしないし、そもそも大量生産不可能だから、大量生産によって生じるメリットは出てこない。


by 酔うぞ at 2009-10-29 00:38:29
Re:今度は行政書士

apj さん

>医学部入学希望者に器用さを求めるなら、入学試験で手先の器用さを見るような実技を課せばいいんじゃないですかね。

多分、文科省の管轄ではそれは出来ないことの一つなのだと思います。

文科省は手っ取り早く言えば偏差値しか見てないわけです。
だから、入学も卒業も偏差値で測っているのでしょう。

しかし、実務の世界では適性とか身体能力も条件に入ってくるわけで、文科省=学校でそれが出来るのか?が問題なのでしょうね。

法科大学院を弁護士を作る事を目的にした、と考えるとそもそも文科省が仕切るのが問題なわけで、法務省や弁護士会も関わるべきでしょうし、法学部は文科省、法科大学院は法務省で良かったのではないかと思います。

しかし、文科省が出てき、やったことは「法科大学院の卒業生を増やすこと」でした。
それが今の危機になっていると思います。

最近の10~20年は、文科省が勝手に大学とか大学院を増やしてきた、ことの弊害というべきなのではないでしょうか?

幾ら学校を増やしても「専門家の職場が比例して増えるわけではない」という当たり前の話になっているだけだと思います。

今必要なのは、大学自体を減らし、大学進学率を減らしてでも、質を高めることだと思いますよ。


by apj at 2009-10-39 06:35:39
実技試験

酔うぞさん、

>多分、文科省の管轄ではそれは出来ないことの一つなのだと思います。

 音楽大学も美術大学も実技ありです。体育大学なども実技試験があります。
医学部でできない、とする理由がわかりません。

>最近の10~20年は、文科省が勝手に大学とか大学院を増やしてきた、ことの弊害というべきなのではないでしょうか?

 これは私も同意です。かりに、20年前の数に戻したとしても、少子化で進学率は20年前よりは上がる条件になるはずですし。

>今必要なのは、大学自体を減らし、大学進学率を減らしてでも、質を高めることだと思いますよ。

 私は以前、ディプロマ・ミルについて話題にしたとき、文部省の許認可行政が行き届いていたせいで、アメリカのようなディプロマ・ミルが日本では出てこなかった、と、文部省を評価しました。しかし、あまりにもユルユルの基準で大学を存続させるならば、事実上の官製ディプロマ・ミルが出現することになりそうです。いくらカリキュラムを用意したところで、他の国とも比較して標準的な知識を身に付けていない人に学位を出すようになったりしたら、学位商法との差がなくなってしまいます。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-07 10:17:07
人数とか紛らわしい数値で見ると、官製DMに…

そうなんですよ。
これ、体のいい官製ディプロマ・ミルじゃん。
とか思ったりしました。> 法科大学院の卒業生を無意味に増加…

まあ、司法試験(簡裁代理権限の方は、司法書士試験と簡裁代理の試験、および講習)があるので、資格の方は質が保証されるわけですが。

あ、でも日本は民間資格に怪しいのが多数(苦笑)…。
もちろん、しっかりした民間資格もあるんだけど、こういうのって、やはりどっかで格付けみたいなのをしないとだめですよね。第三者機関である必要まであるかは不明ですが。

法務系の資格は国家系しかないので、懲戒までセットで存在し、追放される書士もまれですが、いますね。(弁護士は不明ですが、他の書士では、**書士法人解散ってのもあったはず…。)

ちなみに、実務との乖離という意味で言えば、試験受かったから腕がいいかというと、それはまた違いますし、医療過誤とか人権系とか刑事事件とか、分野によって多分全然必要とされる法務知識が違うと思われます。
もちろん会社法系も。あ、特許もだろうけど、こっちは弁理士かな。弁理士って、実態をあまり知らない…。
あとは商標系か。ロゴが類似だとか、これは屋号(慣習で許される部分)だからOKだとか。

# そういえば、有限って本当はもう新規では存在しないんですよね…。会社法改正されちゃったから。でも、みんな株式会社ってのも、何か不思議。基本、株券不発行(名簿登録方式)だし。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-19 10:19:19
横道:株券不発行

…私、実は株持ってたりするんですが、証券会社の口座、面倒で、まだ設置してないんですよね。定期的に株主総会の案内が委任状とセットで届くので、ちゃんと登録は有効なんだけど。
何か名簿改ざんとか、どっかに穴がないか、たまに心配になったりする…。


by いろものさんの近所 at 2009-10-08 19:41:08
Re:今度は行政書士

これは, 私の観測と伝聞なのですが…

医学科の教育はそれなりにうまく行っているのではないでしょうか。それは、入学者の高い学力にささえられているのだろうし、理想を追い求めようとすると、それこそ、それにみあう経済的な (社会への)見返りの問題が出て来るでしょう。

外科に進むか否かは、解剖実習の手裁きで大体決まると言うのをどこかで見た事があります。手先の器用さは外科にとっては重要かと思いますが、人の命を扱う職業と言う意味では、基礎学力の無い人を医学科に入れないという事もとても重要だと思います。また、年齢を理由に入学を拒否した群馬大の例もありますし、それなりにまともな選抜をしていると思います。

# もっと進めて年齢に応じた授業料制度ってのがあっても良いと思う今日この頃…

法科大学院は、ちょうど作るころに既成緩和の流れがあって、とりあえず作った後でダメな所を潰せば良いという発想だったようです。それに対して、制度的に破綻するからということで、申請を調整する事をしなかったわけです。

これから潰れる所が出て来るのは、発足当時から折り込み済みなはずで、いまさら問題視する方がおかしいのです。

ディプロマミル的な事でこれから問題になるのは、教員養成過程ではないかと。こっちは、法律家や医者と違って、最後の段階での資格試験がありませんから、かなり悲惨な状況がうまれそう。


by 杉山真大 at 2009-10-08 04:42:08
「科学技術立国」という先入観の弊害

>このへんが「科学技術立国」という先入観の弊害のような。工業製品だと、競争によって値段が下がって質が良くなるし、そういうのを目にしているから何でもそうだと思っちゃってるけど、この性質は工業製品に特有のもので、他もそうではないということは認識してないと、逆に費用がかかることになりかねませんよね。

そうそう。技術とかの付加価値を高めて製品競争力を高め、サービスとかは殆どオマケってのが「科学技術立国」の発想だったりしますし。

以前にj-castでも議論になったのですけど、同じ専門知識でも理科系と文科系・・・というより、科学技術ならコストを負担してもサービスやソフトには真っ平御免ってのが、結構目立っていましたね。こういう発想が当たり前だと思ってるからこそ、福井某(そう言えば工学博士でした)の「弁護士はボンクラ」なんて考えが出てくるって気がしちゃいます。
http://www.j-cast.com/2008/08/30025916.html?ly=cm&p=1


by apj at 2009-10-59 05:45:59
Re:今度は行政書士

いろものさんの近所さん、

>ディプロマミル的な事でこれから問題になるのは、教員養成過程ではないかと。こっちは、法律家や医者と違って、最後の段階での資格試験がありませんから、かなり悲惨な状況がうまれそう。

 そのかわり、採用枠が決まっていて採用試験で落とされますよね。
少子化で今後は縮小する一方だから、一定数はこの職でたべていけても、養成した人の大分部を養える状態ではない。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-33 06:58:33
Re:今度は行政書士

サービスにお金払わない関係で、悲惨なのが、IT系じゃないでしょうか。
実際にはすばらしい才能で、すごい人たちが、お金払ってもらえずに、去っていってしまっているような印象があります。> IT産業の、特にアプリケーション系


by いろものさんの近所 at 2009-10-58 07:12:58
Re:今度は行政書士

apj さん

> そのかわり、採用枠が決まっていて採用試験で落とされますよね

教壇に立っているのは採用試験を通った人ばかりではありません.また,財政難により,非常勤の教員が増えているという話も聞きます.ディプロマミルみたいに教員免許を取って教壇に立つと言う事もおこっているのではないでしょうか.

Law school にせよ医学科にせよ教員養成課程にせよ,私立国立を問わず,それなりに税金が投入されている訳です.教育に税金を投入すべきだとは思いますが,今の状況だと医学科以外は税金の無駄遣いにつながっています.

あと,別のエントリーとも関連しますが,教員免許法の改正で,教科の科目に変えて,教職科目を多量に取るように制度が変わっています.今の教員養成課程の学生は,それこそ教師以外につぶしの効かない課程を履修するようになりました.だからこっちも法改正に伴って,定員をそれなりに調節すべきだったのです.


by Atlantis.sawamura at 2009-10-23 11:17:23
各書士会の懲戒件数

そういえば、少し遅くなりましたが、懲戒の件数の資料、見つけたので、貼っておきます。
まあ、特に過剰な増加などは無い様ですね。

各書士会の懲戒
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/dai4_berisi_paper/shiryou_3-5.pdf

日弁連の懲戒請求集計
http://www.nichibenren.or.jp/ja/autonomy/data/2008kouki_tyoukai.pdf


by Atlantis.sawamura at 2009-10-43 17:11:43
弁護士も就職難

こういうブログ記事ありましたので、リンク貼っておきます

http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-399a.html

就職難じゃん。増員かい、ということらしいです。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-38 17:35:38
朝日新聞の記事の批判

こういうのも見つけました。
朝日新聞は、大学を批判できない、なのかな。

まあ、結構笑える。

http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/51614585.html#more


by エディ at 2009-11-35 19:59:35
Re:今度は行政書士

>教壇に立っているのは採用試験を通った人ばかりではありません.
>ディプロマミルみたいに教員免許を取って教壇に立つと言う事もおこっているのではないでしょうか.

東大工学部建築学科助教のアニリール・セルカン氏に
経歴詐称疑惑が持ち上がっています。
http://www29.atwiki.jp/serkan_anilir/
http://blog.goo.ne.jp/11jigen/


by apj at 2009-11-13 23:41:13
どういう審査をしたんだか

エディさん、
 セルカンさんの件ですが、もし詐称だとすると、何でチェックできなかったかがわからないんですよ。
 大学で人事やるときって、業績一覧に記載された論文別刷りのファイルが回覧されて、少なくとも発表論文については捏造ではないという証拠物件を確認してから投票になるはずじゃないかと。国際会議とかでも、主催者が出しているプログラムとかproceedingsとかのコピーを添付するから、ゴマカシはきかない。
 履歴書の捏造は有り得ても成果一覧の捏造はあり得ないんですけどね。もしかしてリストだけ見て評価してた?


by Atlantis.sawamura at 2009-11-11 01:11:11
Re:今度は行政書士

論文読まなかったの?
つうことですよね。大学のチェック。
さすがに学術の都でそれはないだろ、と思うんだけど。

なぞだ。

でも、私の研究論文は今読むと、すごく恥ずかしい。
時間あったら、まともな奴を一つぐらい書きたいかも。


by apj at 2009-11-49 19:39:49
Re:今度は行政書士

Atlantis.sawamuraさん、

>つうことですよね。大学のチェック。
>さすがに学術の都でそれはないだろ、と思うんだけど。

 だからわけがわからないんです。

 履歴書だったら、出ている大学とか学位を得たところが実はディプロマ・ミルでした、ってことがあり得る。日本の場合はディプロマ・ミルは一応想定しがたいから、堂々と履歴書に書いてあっても、読む側がそこがディプロマ・ミルと気付かなければスルーする可能性がありそう。これはちょっと前にも問題になりましたよね。
 しかし、投稿論文一覧を見落とすというのが想定しがたいんです。検証サイトを見れば見るほどわからないんですよ。
 何だか、採用時は別の業績リストを出して大学側もチェックもしたんだけど、その後本人の趣味あるいはその手の癖で、ウェブの方で成果についてほら吹きまくったのが目に留まったとかそいういう展開なのかなぁ、と思わないでもなく。


by 杉山真大 at 2009-11-31 05:28:31
アブサルディの例もある訳で

「背信の科学者たち」って本で、エリアス=アブサルディって他人の論文を盗用しまくって不正にアカデミックのポストに潜り込んでた方の話がありますけど、
http://xurl.jp/k40b
このケースと案外似ているんじゃないですかね?アブサルディの場合は、無名誌に載ってた論文を別の無名誌に投稿しまくった訳ですけど、研究者があまり注目していなかったりするところを盗用していたりしてたって気がしちゃうのですが。