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i文庫がバージョンアップ

Posted on 1月 19th, 2009 in 倉庫 by apj

 iPod Touche/iPhoneソフトのi文庫(青空文庫リーダー)がメジャーバージョンアップした。メジャーバージョンアップなのにバージョンアップ代金は無料。制作者さんに申し訳ない気分になった。
 今回は、青空文庫の作品リストデータベースのアップデートができるとか、青空文庫全内容のほぼ一括ダウンロード(実際にはファイルを10個くらいの圧縮ファイルに分割したものを自動で順次ダウンロード)ができるようになったのが大変に便利である。早速一括ダウンロードした。7000篇以上の作品を持ち歩けるようになった。
 私の環境では、バージョンアップしたら、旧バージョンで個別ダウンロードしたファイルが全部見えなくなったが、一括ダウンロード機能が追加されていたので、復旧というか元よりもファイルが多い状態にできて、特に不満はなかった。
 しかし、「法窓夜話」を読もうとすると相変わらずエラーが出て読めない。調べてみたら、このファイルはSHIFT_JISではなくてSHIFT_JISX0213で、i文庫側では第三水準の文字の表示のあたりで引っ掛かっているっぽい。第三、第四水準対応の別のリーダーだと表示できた。

レポート売買サイト

Posted on 1月 18th, 2009 in 倉庫 by apj

 最近、コメントをくださったなるさんのサイト(理系済)でも紹介されていたのだけど、レポート売買のサイトがある。

 教員側の対策としては、レポートで成績をつけるのを止めて、持ち込み不可あるいは限定した資料のみ持込可(指定許可書のみとか、指定した資料集のみとか)の試験をすればそれで済みそう。あとは、過去問と同じ問題を出さないとか、条件を振り分ける部分が微妙に違う問題を出して丸暗記でどうにかしようとするとばっちり引っ掛かるような工夫をするとか。

 法学のレポートなんかも大量に出回っている。ところで、法律系についていえば国家資格や試験(弁護士、司法書士、行政書士、弁理士、法学検定試験など)があり、試験過去問や類似問題への対策はいくつもの予備校が山ほどだしていて、受験する側だって相当勉強なり研究なりしてから試験に臨んでいても、通る人は通るし落ちる人は落ちる。過去問の答えを丸暗記して試験に臨んだって、次に出る問題で得点できるとは限らない。この事実を考えると、レポート問題を攻略されても学生の実力を測る方法はいくらでもありそうに思う。

 しかし、こういうサイトで課題を攻略された教員はいろいろ複雑な気分になるだろうなぁ。特に、攻略済みの問題を出しているにもかかわらず学生の出来が悪かった場合は。ズルして丸写しレポートを出す学生を通すのは教育機関として問題だというのは確かだけど、攻略情報にもたどり着けない(あるいはたどり着いてもその情報の活用すらできない)学生が居るという事実も同時に判明してしまうわけで、今時その程度の検索能力・情報処理能力もない学生をパスさせていいのかという別の問題も発生する。

Moon Atlas

Posted on 1月 17th, 2009 in 倉庫 by apj

 iPod touchアプリのMoon Atlasを買った。月の地図。地球儀みたいに回せる表示に切り替えると裏側も出る。拡大もできるし、主なクレーターの名前や場所が表示されて楽しい。

聖書のサイト

Posted on 1月 16th, 2009 in 倉庫 by apj

 The Unbound Bible。各国語で聖書が読めるページ。いやまあ、「読める」かどうかは語学の修得状況によるけど……。ヘブライ語とかラテン語とかもある。

健康本的作家養成本

Posted on 1月 15th, 2009 in 倉庫 by apj

 「すべてのオタクは小説家になれる!」大内明日香・若桜木虔著、(イーグルパブリッシング)を読んだ。
 一言でいって、健康本(しかもいわゆるバイブル本)的作家養成本である。しかも、健康本に例えるとするならば、最近の「壮快」という雑誌の路線に近い。なお、「壮快」は、怪しくても健康関連情報を載せるという範囲から既に逸脱し、魔方陣を付録につけるというぶっ飛び具合を見せている。本来テーマとなるべき情報そのものが怪しい上に、本筋と関係のないところが妙に詳しく書かれているあたりが、この本と「壮快」の共通点である。「健康本」を読んでも、健康について間違った知識を得るだけでちっとも健康にならないという意味で、この作家養成本は健康本的である。

 まず、「第一章 オタクは小説家に向いている」。

「オリジナリティ」は重要ではありません。

と断言している。その理由の一つ目は、

だって、オリジナリティがあると言いたいだけなのであれば、「見たこともないような奇妙キテレツな小説とも言えないような代物」を書けばいいんですから。

 それ、オリジナリティじゃなくて、単なる「読むに堪えない文」では。もう一つの理由は、オリジナリティは作家を幸せにはしないからだと書いてある。

例えば、ネットで新人賞の受賞作家を検索して、その中から「デビュー作一作しか本になっていない作家」の作品をピックアップして読むと、実は多少なりとも他の作品よりはオリジナリティがある確率が高いのです。

 デビュー作の後、次々と作品を生み出している作家の一作目が軒並み凡庸だということまで言わないと、こういう結論は出ないはずである。私にはとてもそうは思えない。サンプリングの仕方と結論の出し方が健康本的である。
 この筆者は、オリジナリティの代わりになるのは専門知識だと主張している。このことが、オタクが小説家にむいているという説とつながっている。その理由として列挙されているのが、

①「特定分野に対して専門知識がある」②「まじめでコツコツ型が多い」③「一人でなにかをすることができる」

 オタクに限った属性でも小説家に限った属性でもないと思うが……。 小説家になるために絶対に必要な才能としては、

「小説を書くことが好き」「小説を書くことが楽しい」

が必要だと……。そういう作家さんが居てもよいとは思うけど、職業ってそういうもんだっけ?むしろ、辛くても続けられるとか、苦にしないといったことの方が重要なのでは。
 と読み進んでいくと、49ページで驚愕のどんでん返しが!

 この本ではいわゆる「小説の書き方」は説明しません。
 なぜなら、そういう本は、私達が説明するまでもなく、世の中にたくさんあるからです。
 たくさんある小説作法署の中から、あなたが気に入った本を選んで、その記述に従って、まずは一本、小説を書いてみてください。

 この本の狙っているターゲットって、オタクであるという自覚があり、かつ、自分も作家になれるかも、と淡い期待を抱いている層じゃないのか?しかしこの本で小説の技術を教えるつもりは全く無いらしい。つまり、題名通り「すべてのオタクは小説家になれる」と読者をただ単に煽るだけの本だったのである。
 次に、読者を

「善意の読者」とは、「あなたの作品が良くても悪くても、最後まで読んでくれる読者」のことです。
(中略)
「悪意の読者」とは、「おもしろくなかったら途中で読むのをやめてしまう読者」のことです。

 と二分している。で、「悪意の読者」対策をするとプロ小説家になれる、というのが筆者の主張である。その対策の一つとして、「出し惜しみをするな」というのだが、

言い換えれば「竜頭蛇尾はOK!」ということになります。
(中略)
もっと極端な話をすれば、物語は完成しなくてもいいのです。
竜頭でありさえすればいい。

 最初の見かけが悪いと小説を手にとってもらえないが、最初が良ければとりあえず読んでもらえるというという話である。「竜頭で最後が不明な小説」を間違って買わされた読者は絶対に次からその作家の本は買わなくなると思う。1回だけカモをひっかけて金を巻き上げてドロンするつもりならこの方針でも良いかもしれないが……。というか、ぱっと見よく見せかけて実は品質が大変悪いものを売りつけるって、普通に悪徳商法の典型的な手口ではないかと。
 驚愕する主張はまだまだ出てくる。

読者は複雑なことは「絶対に」理解できません。(中略)さて、それを防ぐために、「わかりやすく書くためのコツ」をお教えします。それは、「対象読者を『虫』に設定する」
ということです。

 小説の書き方ではなくて、インチキ健康法を書くときの姿勢に見える。
 さらに、ゴシック体で強調されているのが、

「リアリティは計算して作り上げるもの」「取材は、必ずしも必要ではない」

 体験談が全部捏造だった健康本を思い出した。 小説を書くための技術を教えるつもりは全く無い本だが、「第四章 小説家になるための「弟子入り」大作戦!」が、妙に具体的である。
 たた漫然と読んでも面白くないので、私がオタクで(これは事実)作家志望(これは仮定)だとして、作家の誰かに弟子入りを試みるというシチュエーションを想像しながら読んでみる。作家は……具体的な誰かを想像する方がイメージが湧くのだが、面識があるのがと学会会長の山本弘氏なので、SF作家を志望する私が山本会長に弟子入りを試みる、という妄想でとりあえずはOKだな。

 師匠を持つからには、師匠の知識と人脈を根こそぎいただくくらいの気概で接しましょう。そして、師匠とのふれあいを、あなたの作品がより素晴らしくなるための栄養にしましょう。

 ……いきなり濃い目標だが、最後の文、「あなたの作品をより素晴らしくするための」が日本語として正しい気がする。

 見ず知らずの人に「弟子にしてください」と頼むのですから、生半可な気持ちでは、相手も迷惑なのです。

 本気で押しかけたらもっと迷惑をかけそうな気がするが……今回、相手は妻子持ちだ。

 けれど、あなたがもし、やる気と向上心と社会的常識をちゃんと持つ人なら、師匠の方でも大歓迎です。

 えーと、私が今の准教授の職を蹴飛ばして大阪の山本会長のところに転がり込んだ時点で、ほぼ全ての人が私の「社会的常識」を疑うに違いない。

 「特定の一人に気に入られるように工夫すること」は、「読者全員に気に入られるよう工夫すること」と、なんら変わりはないのです。

 山本会長の好みって、同人誌の「チャリス・イン・ハザード」の主人公みたいなのだよな……。私ゃ、歳取りすぎてるし、かわいくないし、一体どうすりゃいいんだか……。ダイエットとエステから始めたってごまかすには無理がありすぎる。  で、弟子にしてもらえなくても恨むなとか、相性があるとかごちゃごちゃ書いてあって、いよいよ具体的な方法が示される。

 まず、「この人の弟子になりたい」「この人に指導していただきたい」というターゲットを複数決めましょう。

 いきなり複数かよ!断られることも前提にするのだから予備を考えるのはわかるけど、芸の師匠を決めるってこんな安易な話だっけ? ターゲットに接近する方法は、難易度順に示されている。このご時世、いきなり押しかけると通報されかねないので、まずは、

「ターゲットのブログ」あるいは「掲示板」「ミクシィ日記」にコメントをつける「はじめまして。いつも先生の作品を拝見している者です。こちらもときどきのぞかせていただいております。(日記や作品の感想)。以後、よろしくお願いいたします」とでも書いておけば、ファースト・コンタクトはOKです。

(中略)

しかし、あんまり頻繁に書き込むと気持ち悪いと思われてしまうので、週に一、二回くらいがいいかと思います。

 これくらいなら、まあ目立たずできそうだ。
 次に、自分のブログのURLをコメントに書いたりしてターゲットを誘導する。このときの心構えは、ブログを面白くしておいてターゲットに好感を持ってもらうことが大事だそうで。
 次の方法は、ターゲットの知人に紹介してもらう、というものだが、

どうやったらターゲットの知人がゲットできるか。その方法は千差万別で、ひとくちに説明はできません。このやり方を試す人は、自分でいろいろ工夫して考えてみてください。

 と、アドバイスする気ナッシングな記述が。 で、知人が居なければターゲットに直接声をかけることになる。この方法は、

ターゲットに「直接声をかける」ためにはまず、ターゲットのスケジュールを調べます。(中略)
講演会やイベントのスケジュールの日程を調べればよいのです。

(中略)
「スーツ」を着ていくことをおすすめします。

(中略)
弟子入りもまずはお友達、知人から。
考え抜いて、なにか「用件」をでっち上げてください。

(中略)
ひとつめは、「大学で教えている人には、『あなたの講義を聴きにきました』と言う」方法。
もうひとつは、「あなたの所属するナントカに入れてください、と言う」方法。

(中略)
また、そもそも「ターゲットと接触するために、ターゲットの入っているグループに別ルートから入る」という手もあります。
(中略)
また、ターゲットの「よく行く店」が判明している際には、その店に通って、ターゲットが来るのを待つ、という手も非常に有効です。
(中略)
どんな有名なターゲットでも、「本業とは関係ないところ」から入ると、意外に簡単に接触できるものなのです。

 相手の行動パターンを読んで、好みを調べ、待ち伏せしろということか。つまり、東京のと学会例会の後、大阪に戻る山本会長の後をつけて新幹線に乗り、どこの店に立ち寄るかとかをしつこく調べてそこで待て、ってことだな。で、会長の好みを下調べした上で、バーかどっかでくつろいでいる会長に、楽しい話でアプローチせよ、と。
 直接接触が大変な場合は、ターゲットにメールを書くといことが薦められているが、

ここで、「ターゲットがどういうふうにこの手紙を読んで、どう感じるか」ということを徹底的に考え抜いてメールを書かなくてはなりません。(中略)
つまり、一通のメールには、あなたのすべてが投影されている」と言っても過言ではありません。
(中略)
いかに私があなたに好意を抱いていて、真剣な気持ちで、お遊びでなく、あなたの指導をうけたいと思っているか。その気持ちを考えに考えて、それこそ丸一日考えるぐらいの気持ちで書いてください。
(中略)
師匠捜し、ターゲットに接触するためには、「使える手は(犯罪以外なら)なんでも使う」「楽をしようとしない」。この二つは非常に大事です。

 用件が無いと書けないので難易度が最も高いとされている手紙については、

「手紙の場合のみ、『押しの一手」というのが、効く可能性がある」(中略)
「手紙は必ず、手書きにする」

(中略)
文字を見れば、真剣に書いたのかそうでないのか、その人の性格はどうなのか、また便せんや筆記具の選び方、宛名の書き方(もちろん手書きにしましょう)、果ては切手選びのセンスまで、ありとあらゆることが問われることになります。

 どう見てもラブレターの書き方である。つまり、山本会長が好みそうな絵柄の便せんと封筒のセットを買い、知る限りの文句を並べてアプローチせよ、と。
 無事に弟子入りできたとして、その後の注意は、

つまり、師匠と弟子の関係は「生きた関係」でなくてはならず、そのためには弟子の方から、何らかのアプローチをしつづけなくてはならないのです。

 読めば読むほど、SF作家になるため山本会長の元で修行している姿ではなく、ストーカーまがいのモーションをかけた挙げ句に不倫をしている姿しか思い浮かばないのは何故だろう……。 とにかくこの本、オタクが、コミケあたりに出しそうな二次創作を気軽に書こうとか、そこから一歩踏みだして作家になろうということを目指すための解説本だと思ったら大違いである。
 最初の3章は、健康バイブル本のフォーマットで書かれた、インチキ健康本を書くときに参考になる情報。第4章は、彼氏か彼女を見つけてアプローチし、無事ゴールインする(相手が未婚の場合)か不倫する(相手が既婚の場合)ための方法にしか見えない。
 その上、肝心の小説作法は別の本を見ろといってスルーされており、やたらこまかく具体的で情景が思い浮かぶのは「弟子入り大作戦」の部分だけである。
 真面目に作家を志望するとか、プロにならないまでも小説を書くことを楽しむために技術を身に付けたいという人は、別の本を読むべきである。

水素水の状況

Posted on 1月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 日本医科大学の太田教授からメールをもらったので、全文掲載する。このエントリーへのコメントとして書かれた内容である。だいぶ状況が見えてきた。

From: 太田 成男Date: Tue, 13 Jan 2009 19:08:21謹賀新年
天羽さんへ

 ニセ科学へのただ乗りという逆の状況、あるいは紛らわしくしたことの責任(2009/01/07)を拝見しました。

 かなり好意的に書いてくださったと感謝しております。私が直接インターネット上にのせても本人かどうか判別がつかないでしょうから、メールで私の意見をお送りします。天羽さんからwebにのせていただければ幸甚です。

 まず事実誤認があります。

>太田教授の製品化するという判断が拙速だったのではなくて、もともと、製品化したくて仕方のない企業から持ちかけられた研究だったということのようである。

 事実は、 

 製品化したくて仕方のない企業から研究をもちかけられたのではなく、すでに水素水を製品化していた企業が水素の研究を太田へ依頼したというのか経過です。企業設立は2002年、製品化は2004年1月(厚生労働省の認可)、研究の依頼は2004年8月、研究開始は2005年1月、顧問就任は2006月2月、最初の論文発表は2007年5月。順序は(1)研究の依頼(2)製品化ではなく、(1)製品化(2)研究の依頼の順です。

 この経過をみれば、「まぎらわしい顧問関係」ではなく、ごく普通の顧問関係であることがおわかりになるでしょう。

>nature medicineの成果発表と同時に「効果効能を謳う活性水素とは無関係だし水素水とも結びつかない」という情報を発信し、商売側とは距離を置く、くらいのことをすれば何とかなったかもしれない。

 論文発表は、水素ガスの効果(2007年5月、続いて2007年7月)を先行していますが、その時点で、すでに水素水の飲用効果も動物実験で明らかにしていました。ただし、水素ガスと水素水の論文発表の時期はずらしています。水素水の論文は通りにくいでしょうから、水素ガスの論文を先行させ、水素分子の効果を浸透させてから、水素水の動物実験結果発表は1年遅らせて、2008年6月(認知機能低下抑制効果)、12月(動脈硬化抑制)、2009年1月(抗がん剤の副作用軽減効果)に発表しました。「効果効能を謳う活性水素とは無関係」ではありますが、「水素水とは結びつかない」どころか、「水素水の飲用効果」はすでに明らかにしていたので、「水素水とは結びつかないという情報」を発信しないのは当然です。

>私としては、こんな紛らわしいことを始めた太田教授にはとことん責任を取ってもらいたいと思っている。この場合の責任をとる、とは、効果効能を謳えるところまで研究を全うし、厚労省が認める程度の「水素水製造規格」でも定めることに一役買って、業界団体の指導をして、インチキ宣伝をする業者は居るにしてもそれは団体にも入ってないモグリ、という状況を作り出すといったことを意味する。

 もちろん、とことん責任をとる覚悟でおります。

(1)少なくとも、本格的臨床試験により効果効能を明確に言えるようにする。現在、多くの研究者と医師と幅広く大規模臨床試験を開始しようと計画しています。

(2)効果効能の基本原理を分子レベルで明確にする。

(3)インチキ業者を根絶するように努力する。水素研究会では、企業会員を非常に厳しく選別しており、水素分子がはいっていない不良品を販売したり、インチキ宣伝をしたり、販売方法に問題がある企業は、企業会員にはなれないようにしています。

(4)活性水素、マイナス水素イオンとバナ天然水素水(水素分子はまったく入っていない)に対しては、公然と排撃するよう努力する。過去に「活性水素」や「マイナス水素イオン」の言葉を使っていた業者は基本的には水素研究会会員にはなれません。

 「ニセ科学のただ乗り」というのは事実を反映しているようには思いません。いかに「活性水素」や「マイナス水素イオン」からは被害を受けたかは筆舌につきません。

>最初に出回っていた怪しい話を撃墜しながらまともな商売が主流になるように振る舞う、というのが可能な立場だと思うんですが・・・

 努力していますが、まだまだ力不足です。しかし、「トリム」は「活性水素」を使わなくなったし、「活性水素」を使う業者は以前より非常に少なくなっています。「マイナス水素イオン」の勢力拡大スピードも遅くなったようです。2009年には大手の参入により「いかがわしい」小さな会社は生き残れなくなるでしょう。

 「紛らわしいことをやっている」と自覚しているかについてですが、普通の順序でないことは十分自覚しています。なぜ普通と違う順序になるのかという理由は明確で「物質特許がとれない」からです。「効果効能があるが物質特許はとれない物質を公共のために利用できるようにするにはどうしたらよいか?」がテーマであり、壮大な実験です。

太田成男

 太田教授が出している水素水の効果効能(動物実験)は、「何に対するものか」が絞り込まれているということに注目。実験をすればこうなるのは当然で、「健康にいい」「老化防止」「慢性病に効く」といったあやふやな話にはならない。
 この流れでいけば、研究が進んでヒトでの試験が行われて結果が出たとしても、やはり、「何に」「どれくらい」使うかが特定されたものになるはず。今後も、太田教授の論文を勝手に引用して「健康にいい水です」などといって売るのは、はっきり言って間違いで、治療法としてどう使うかに絞って考えなければならない。
 「健康にいい水」を売りつけたい人や、活性水素から水素に無節操に乗り換えようとする人にとって、太田教授の仕事はかなり魅力的だろう。買わされる側としては、「権威」が無関係なところで使われていないかどうかに要注意である。「動物実験したら効果があった」を、実験無しに「ヒトに効く」にすり替えたりするのもダメ。焦らず実験を見守ろう。

 このメールを受け取ったので、掲載するという連絡と共に「動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思うのですがこの点についてはどうお考えでしょうか。」と質問してみた。返事をもらえればもっと状況がわかるかもしれない。

 太田教授からすれば、活性水素(イオン)などに被害を受けたということなのだろうが、当事者でない身から一歩引いてみれば、ヒトに対する結果が出てから何に対してどう使うかを絞って販売すればいいのに、と思うので、このあたりには温度差がある。

【追記】
 私の質問について、太田教授から次のような返事をもらった。

天羽さま
水素水の飲用効果の動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思われる点についての私の考えですが、

(1)効果効能を謳う製品の販売は現段階ではよくない。
(2)効果効能を謳わない製品は、安全性の基準を満たしていれば水素水を公に販売することがすでに承認されているのだから、良い悪い以前に製造・販売を誰も禁止することはできない。
(3)高価な水素水の販売は望ましくない。
(4)効果効能を謳えるように人を対象とした調査研究を進めたい。
(5)水素水が「活性水素」や「マイナス水素イオン」とは全く別ものであることを周知させたい。

ということでしょうか。

太田成男

裁判所まで行くとはっきりすることがある

Posted on 1月 13th, 2009 in 倉庫 by apj

 『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』武藤春光・弘中惇一郎編著(現代人文社)978-4-87798-386-4を購入。
 刑事事件で一審判決無罪となり、控訴審の途中で安部医師は亡くなった。この本は、当時のマスコミの大バッシング報道が、いかに事実とかけ離れていたかを示すものである。
 一審判決の全文が付録CD-ROMに収録されている。たくさんあるのでこれからゆっくり読むことにする。

 買ったばかりなので1章を拾い読みしてみた。マスコミがいかにウソをつくかという興味深いケースが多数出ている。情報の意図的な隠蔽、正反対の印象を与えるための操作を連発している。いくつか引用する。

 しかし、血液製剤によるエイズウイルス感染は世界中で同時に起こったのであり、しかも、日本はその時期においても他国と変わりなく、また感染者の数においてもむしろ少ない方でした。(中略)そして、血友病の臨床医が、この問題で刑事責任を問われた国など、日本以外に、一カ国もなかったのです。 仮に、メディアがこの事実を報道していれば、安部医師攻撃などできるはずもありませんでした。しかし、わが国のメディアは意図的にこのことを隠蔽しました。弁護人の一人がS新聞のO記者に、「なぜ、メディアはこのような海外の状況を報道しないのか?」と尋ねたことがありました。O記者はこう答えました。「先生のおっしゃるとおりで、そのことはわかっています。しかし、現在はそのようなことを書くわけにはいかないのです」と。

 検察官が、この手法を用いて、メディアがそれに踊らされたものとして、エイズ研究班における安部医師の「毒発言」があります。これは、研究班で、塩川医師が「血液製剤におけるエイズなんてほっとけば収まる問題ではないか」との超楽観論を述べたので、安部医師が「自分は、臨床医として、使っている薬が毒かもしれないという危機感を抱きながらやらざるを得ないのだ。そんな楽観論で片付けられては困る」とたしなめたものです。 これを、検察官は、法廷で、わざと塩川医師の発言を省略し、「安部医師は、非加熱製剤を毒かもしれないと知りつつ投与した」というふうに朗読したので、傍聴したメディアが翌日の朝刊で一斉に「毒と知りつつ投与」と報じたものです。

 エイズ研究班の第1回の会議をネタにNHKがやったこと。

NHKは、これについて、その研究班の会議から10年以上も経った時点で、郡司氏にインタビューして、「その席でそのことを報告したかどうかについて記憶がない」と言わせた上で、委員の一人の塩川医師にインタビューして「それが当時わかっていれば研究班の血尾論も皮っていただろう」と言わせただけで、番組を作成し報道してしまったのです。 ところが、後日、研究班の会議を録音したテープが出てきて、「それにより、郡司氏がロット回収のことを研究班第1回会議で報告していたことが明確に示されたのです。 本来であれば、NHKとしては、全く間違った内容の番組報道をしたことについて、全面的に反省し訂正すべきでしたが、それすらされませんでした。

 次は騙しのテクニック。うかつにメディアのインタビューに応じるとろくなことがないという見本。

 安部医師が、メディアバッシングに苦しみ、ホテルを転々としていた頃、NHKは、「活字メディアは好きなことを書く。うちは、安部さんの言葉をそのまま報じるから是非インタビューを受けてくれ」と甘い言葉をかけてきました。これにだまされた安部医師は、用意されたホテルの一室で、血液製剤エイズの問題についてのインタビューに応じて,時間をかけて説明しました。ところが、NHKは、とりあえず一部をニュースで使わせてもらいますとして、文脈を無視して切り出した1~2分の言葉をニュース番組に使用しただけで、ついに、安部医師の言葉を報じることはなかったのです。

 まあ、労力空振りなだけだから、騙されたと言ってもまだ許せる範囲かもしれない。しかし、次は酷い。

 この顛末を知ったTBSは、「NHKのように録画ではそのような利用をされてしまう。うちは、生番組で安部さんの言い分をそのまま報じるから是非出演してほしい」とささやいてきました。「ニュース23」はTBSの看板番組であり、キャスターの筑紫哲也氏は最も良心的なジャーナリストと考えられていました。そこで、安部医師は、弁護士とも相談の上、これに応じることとしました。確かに、(かなり意地の悪い質問があっても)安部医師が反したことはそのままオンエアされました。ところが、安部医師とのやりとりの前後に、従来から安部医師攻撃の先頭にたってきたメンバーの安部医師非難の話が録画として盛り込まれ、TBS的に言えば、「バランスをとった」ものになり、安部医師の話の印象が大幅に薄められる形となっていました。このことはもちろん安部医師には伏せられていました。それだけではありませんでした。翌日、TBSは、翌日の同じ番組で、そのメンバーをゲストとして出演させ、前の晩の安部医師の言葉を録画したものを材料として、安部医師の言葉をこっぴどく反論非難するものをオンエアしたのです。今度は、前後に安部医師側の反論は用意されていませんでしたから、TBS的バランスもとられていませんでした。このようなやりかたが非礼であり、異例で異常なことは言うまでもありません。安部医師側の抗議に対して、TBSの担当者は平謝りに謝りましたが、そこまでしても、TBSは安部医師バッシング報道をする以外に念頭になかったのです。

 ちょうど、「共通教育の講義で、報道は何かを調べるためのとっかかりとしては使えるが、情報が歪められる場合も多々あるので、そのまま信じるのはあぶない」という話をしてきたところだった。 これと似たような形で展開しつつあるのが、福岡のいじめ教師の事件。こちらは、裁判してみたらマスコミのバッシングとは相当違う展開になりそうだという事実が全く違っていたという(修正:本の方は口頭弁論が始まったちょっと後で終わっているので)話が「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」という本に書かれている。判決が出る前(本の方はそもそも口頭弁論2回目くらいまでの話)だったので、その後を追い切れていない(追補版を出してくれることを希望する)。自殺強要や暴力で児童を長期入院に追い込んだ教師→事件そのものが児童両親によるでっちあげ、というものすごい展開である(というのは本の内容で、これがどういう弁論を経て事実認定されるかは訴訟記録を見るまで不明である)。感情を煽る情報の出し方をして被害者面すればマスコミは踊るけど、そんな程度じゃ裁判所は欺せないという、まあそういうことらしい。
【追記】判決についての報道があったが(コメント欄でひろのぶさんが指摘)、その報道では判決は市に対してしか出ていない。バッシングされた教師は裁判ではどういう扱いになったのかが不明である。そもそも訴えられなかったのか、まだ続いているのか、単に報道されてないだけなのか。
 報道の方を元にするなら、いじめと認定される行為はあったが「殺人教師」呼ばわりされるもとになった「自殺強要」は認められていないことになる。
【さらに追記】国賠法の適用があれば、個人の責任は表に出てこなくなるから、そっちで争ったのかもしれない。だとすると、公務員個人が当事者として攻撃防御をする機会はそもそも無いわけで、当事者になれない公務員個人に対して名指しでバッシング報道するのは、反撃できないことを承知の上で行うリンチと変わらないのではないか。そういうマスコミの行動に対しては「卑怯」という評価しかできない。

 この手のマスコミによるバッシングを狙って、提訴と同時にプレスリリースまで出したのに見事に空振りしたのが、「環境ホルモン濫訴事件」だったのではないかと。こちらは、私が、被告となってしまった中西準子氏の応援団をネット上でやっていたので、訴訟情報をそのまま今も公開し続けている(結果は原告の請求棄却、つまり被告の中西氏の勝訴で終わった)。
 その中西氏は、雑感でいちはやくこの本を取り上げていた(雑感459)

 マスコミの捏造歪曲報道に対抗するには、やっぱり、自らが情報発信するしかないのだろう。それも、できるだけ客観的な一次資料を付けて。

 安部医師の起訴は1996年だった。この時期はまだネットが普及していなかったから、情報を伝えるにはマスコミ経由以外のルートが確立しておらず、捏造歪曲自由自在な状態だった。もし、10年後に事件が起きていたら、一次資料をネット上に出す人が出てきて、マスコミによる一方的なバッシングはできなかったかもしれない。
 福岡の教師の事件は、元々、教師の人柄が良かったのか、一次資料を出して相手が児童と親であっても容赦せず真実のために闘うという展開にはなっていない。情報開示の初動がうまくいけば、あそこまで一方的な展開にはならなかったのではないか。これは、一旦本気で揉めると後に響くといった、学校や教育委員会のムラ社会的な部分が効いているのかもしれない。
 環境ホルモンの時は、そもそもマスコミが踊らなかった上、ネットに一次資料(つまり裁判資料)を出す方が先だった。それでも口頭弁論3回目くらいからで、かなり出遅れた感はあったが……。

 環境ホルモンの時の中西氏の代理人が、本の著者の一人である弘中惇一郎弁護士である。環境ホルモンの時は、一次情報を出しつつ、中西氏による訴訟への言及のネット公開も継続しつつ、弁論が進んだ。訴訟の間は書くのをやめろ、とは、惇一郎弁護士は言わなかった。むしろ、書き続けるようにと助言していた。

 私の方は、神戸の当事者参加申出と東京の損害賠償請求訴訟で、弘中絵里弁護士に代理人を願いしたが、弘中惇一郎弁護士も入って下さっている。まあ、社会の隅っこの方の事件なのでマスコミには注目されず静かにやっているが、情報開示はひっそり継続中である(年度末が近付いて滞ってはいるけど)。

 マスコミによるバッシングが起こりうるような事件でも、悪役を振られた当事者が自ら情報発信しながら法的手続に臨む、というスタイルを、一つのパターンとして確立することを考えてはどうだろう。情報開示が風評を断つという効果は確かにあるだろうし、いいようにバッシングされるよりは、相当ましな結果になるんじゃないかと思うのだけど。

着信音作成ソフト

Posted on 1月 10th, 2009 in 倉庫 by apj

 iToner2というのがあるそうで。
 自分で持ってきた音源を着信音にしようにも、他の携帯電話では、いろいろ変換したりしないとうまくいかず。せっかく作っても転送して使ってみるとまともに再生されなかったり。iPhoneでこれが改善するなら、次に買い換える時はiPhoneにしたい。好きな音源を自由に着信音に設定できるだけでも、私にとっては買う価値がある。

Yahooみてつい笑った……

Posted on 1月 7th, 2009 in 倉庫 by apj

 Yahooのトップページを見ていたら、つい笑ってしまった。私が見たときは、
!!$img1!!
な感じだったのだけど。記事リスト上から4つ目の『知人の顔に「バカ」と入れ墨』という記事があって、隣の写真が「顔に墨で無病息災」。事件の方はシャレになってないのはわかるんだけど、入れ墨と墨で書くのは違うというのもわかるんだけど、話題の並びを見てると何だか笑いが……。

ニセ科学へのただ乗りという逆の状況、あるいは紛らわしくしたことの責任

Posted on 1月 7th, 2009 in 倉庫 by apj

 昨年の秋に、「ニセ科学フォーラム」「水素水について」というエントリーで、日本大学の太田成男教授と直接話をしたことを書いた。その後、某会社の人から情報をいただいたり、水素水販売側が怪しくならないようにするのに困っているという話が来たりした。
 既に述べたように、太田教授のやっていることは
・科学(この場合は医学)の研究としては何も問題がないし、むしろ順調に科学としての成果を挙げている。
・水素水を販売するタイミングが早すぎる。
・太田教授が直接責任を負える顧問先企業では、水素水の販売に際して効果効能を謳わないことを守らせており、宣伝の態様は法律を遵守していて特に問題がない。
というものである。1つ1つについては何も問題がないし、法にも触れていない。
 ところが、特定の状況の下で、この3つが出そろったために、別のよろしくない効果を発生させることになりつつある。まっとうな商売をしようとしていた人達に別の圧力をかけてしまっているのである。某それなりに名の通った企業が効果効能を謳わずに水素水の販売を始めることになったり、気を付けて普通に食品として(効果効能を一切連想させず、普通のミネラルウォーター扱いで)売っていたのに健康関係のコーナーにも置けという圧力がかかったりということが起きている。
 太田教授のやっていることは、個別には問題がないので、それぞれを直接に批判するというのは難しい。そこで今回のエントリーのタイトルになる。つまり、まぎらわしいことをやった責任、という点から批判するしかないということである。

 太田教授以前に、水素(関連)水を広めたのは、九州大の白畑教授の「活性水素」説である。電気分解をしてできる弱アルカリ性の水の中に「活性水素」ができると考えて実験を説明しよう、という論文から話が始まった。この研究は日本トリムとの共同研究で、論文が出た後、日本トリムが「九州大教授によって活性水素の存在が証明された、活性水素は原子状水素である」といったことを主張したため、一気に広まった。これ以前には、水素には言及していなかった、アルカリイオン水製造装置の販売業者が「活性水素」「原子状水素」と表示して販売するようになった。もちろん、この用語の後には「体に良い」「酸化防止」といった説明が続く。もともと、白畑教授からしてが、林秀光医学博士による、抗酸化作用を持った水が健康長寿に役立つ、という主張に惹かれて研究を始めたとのことなので、主張の内容はこの手の「健康に良い水」の宣伝との相性も良かった。白畑「活性水素」説は、日田天領水の販売にも利用されることになった。一方林秀光博士は、「活性水素君」という、水に入れて使う金属マグネシウムスティックを製品として販売した。金属マグネシウムは水にゆっくり溶けて、水素ガスを発生させる。
 しかし、「活性水素」は白畑教授の論文でもその後の特許でも、化学物質としての存在が示されることはなかった。そのうち、白畑教授は、「活性水素は原子状水素ではなく、白金ナノ粒子に吸蔵された水素である」と主張を変えた。杏林大学の平岡らは、抗酸化作用を持つ水について、トリムの水や日田天領水、活性水素君の水も含めて調べた。その結果、いずれも弱い抗酸化作用はあったものの、「活性水素」のような、活性酸素と直接反応して消去効果を示す物質の存在は確認できないことがわかった。日本トリムは、1年ほど前から、全社を挙げて、今後は活性水素を出した宣伝は行わないという方針をとっている(末端に徹底させるのが大変なようだが、トップダウンでやっている)。

 何かアピールするキーワードがあると、実験で確認もしないままコピペで広がるというのが、水関連の宣伝の常である。マイナスイオンがブームになったときは「マイナスイオンが入った水」という宣伝文句が頻出したし、白畑説が出てからは、関係のない水まで「活性水素」が含まれている、抗酸化作用があって体にいい、と主張した。一旦こういうイメージが広まってしまうと、「活性水素じゃなく単なる水素分子」「弱い抗酸化作用はあるがビタミンCのような酸化防止効果はない」「健康への影響についは目下証拠無し」と言っても、受け入れられないか、さらに歪んだ形で情報が広まることになる。

 ここに出てきたのが、太田教授のnature medicineの論文であった。

 論文が、これまで「活性水素」の「酸化防止で健康にいい」効果を宣伝してきた人達に使われるのではないかということを考えて、まだそういう話ではない、と注意を喚起した。が、すぐに宣伝には使われたようである。
 私にとって予想外だったのは、太田教授が率先して、研究と並行して水素水を売る企業の活動に関わったことであった。
 水素ガスを脳梗塞後の血液再還流時の脳へのダメージを抑える治療法として使う、という話は、医学の基礎研究としてはまっとうだし、発展性も期待できる。nature medicineに出たのなら研究費だっていろいろもらえるだろうし、普通に考えて、何も慌てて太田教授が水素水を売る側になる必要など無いはずである。
 一方、水素(関連)水の方は、活性水素だ原子状水素だナノ粒子吸蔵水素だと、宣伝に登場する物質が錯綜している上、「抗酸化」「健康にいい」というイメージだけが広まっている。この状況で水素水を販売すれば、似たり寄ったりの怪しい商品と思われても仕方がない。だから、太田教授がなぜ商品化を急いだのかがわからなかった。

 ところが、最近になって、太田教授が水素水の研究をし始めたきっかけは、株式会社ブルーマーキュリー側からの働きかけだったということを教えてもらった。また、nature medicineの論文掲載の後、ブルーマーキュリー主宰で、東京・経団連会館で記念講演会が開かれ、NHKのニュースの動画をDVDで配ったり、新聞記事を引用して講演したりということをしていたとのことである。
 つまり、太田教授の製品化するという判断が拙速だったのではなくて、もともと、製品化したくて仕方のない企業から持ちかけられた研究だったということのようである。
 なお、この研究から発表への流れについても何ら問題はない。きっかけが企業から持ち込まれたテーマだという研究はいくらでもあるし、論文掲載という通常の科学の成果発表の手順を踏んでから一般に講演している。

 この結果、
(1)これまで活性水素を謳っていた人達(ジャンルを問わず、例えば磁気処理水まで含まれる)が、太田教授の成果を都合の良いようにくっつけて宣伝する。
(2)太田教授とは関係のないところで水素水販売が行われ、これまで通りの抗酸化云々に加えて、太田教授の成果まで勝手に継ぎ足して使われる。
(3)太田教授は効果効能を謳わずに水素水販売をさせている。そこに気付いて同様のやり方で販売する会社もある。
といったことが起きている。
 太田教授としては、「水素水」を売っているのに「活性水素」と混同されて迷惑しているらしい。しかし、既にデマが飛び交って大混乱中のところに、まだ十分な試験が終わる前から水素水を売ることを決めたのは太田教授なのだから、ある意味自業自得でもある。まあ、太田教授も、活性水素に踊った集団が、それほど無節操に使えるキーワードなら何でも使う、論文の恣意的利用もどんどんやるとは思っていなかったのかもしれない。太田教授は、論文を勝手に宣伝に使った企業に対して法的措置までとって請求を認めさせたということだが、1件や2件の紛争をやっても追いつかないだろう。そこまで成果の曲解に対する対策をやっているなら、訴訟の件も含めて情報開示したらどうかと言ってみたのだけど、太田教授にその気はないようである。この方面で防衛するつもりなら、ブルーマーキュリーと一緒じゃダメで、nature medicineの成果発表と同時に「効果効能を謳う活性水素とは無関係だし水素水とも結びつかない」という情報を発信し、商売側とは距離を置く、くらいのことをすれば何とかなったかもしれない。

 水素水の現状については、太田教授がきちんと監督しているという前提が成り立っている限りにおいて、ブルーマーキュリーの宣伝をチェックすればわかることになる。ブルーマーキュリーが効果効能を出していないということは、効果効能を謳ってよい状態まで研究が到達していないということを意味する。太田教授の研究が確かなものであっても、効果効能を主張できるような製品に結びつける道はまだ遠いと考えるのが正しい。しかし、「水素を使った治療方法の研究をきちんとしている研究者が顧問をしている会社が水素水を売っている」というのを普通の人が見れば、効果効能を謳っていなくても,水素水は確かなのだろうと思ってしまうのではないだろうか。
 ところで、他の企業まで効果効能の宣伝を一切無しに水素水を売ることにした、というのは製造ラインを作って売ってもペイするというのが企業の判断ということになる。つまり、効果効能を謳わなくても現状では水素水が売れているということである。太田教授と関係無しに売っても何とかなるということなのだろう。買う人のうち、太田教授の話を知っている人もいるかもしれないが。じゃあ、何故売れるのか、と考えると、これまでに散々出回った「活性水素」「抗酸化」「体に良い」のニセ科学宣伝が引っ掛かる。「水素」というキーワードが既に「抗酸化」「体に良い」と結びついているから、効果効能を謳わなくても商売できるということではないか。

 今回の水素水の問題は、普段目にするニセ科学とは逆のパターンである。つまり、既にニセ科学宣伝で出来上がってるイメージを利用することによって、効果効能を謳わない適法な宣伝をする業者が商売するという形になっている。違法な宣伝をする業者も同時に活動していて、イメージの強化は勝手にそっちが受け持っている。

 太田教授がしていることは、
・まっとうな研究の成果と製品の間に関連があるとついつい思ってしまうような紛らわしい顧問関係を作ったこと
・活性水素が作った健康に良いというニセのイメージに乗っかる形で、紛らわしい商売に荷担していること
である。つまり、紛らわしさを発生させている責任はある、ということである。勿論違法ではないし、研究プロセスに違反があるわけでもない。紛らわしさだけである。

 マルチ商法なら、普通の商売人はマルチのような問題のある商法と混同されるような紛らわしいことは避けるもの、という議論が既にある。しかし、今回の太田教授のしていることについて、「紛らわしいことは避けるべき」と言っていいのかが微妙である。悩ましいけど、まだ、どういう論を立てるとよいかがわからない。

 私としては、こんな紛らわしいことを始めた太田教授にはとことん責任を取ってもらいたいと思っている。この場合の責任をとる、とは、効果効能を謳えるところまで研究を全うし、厚労省が認める程度の「水素水製造規格」でも定めることに一役買って、業界団体の指導をして、インチキ宣伝をする業者は居るにしてもそれは団体にも入ってないモグリ、という状況を作り出すといったことを意味する。