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総員、マスク着用!

Posted on 11月 29th, 2006 in 倉庫 by apj

 「教科書にない実験マニュアル」の「ピコリン」を読んで。
 昔、ビニルピリジンを使っていたので、ピリジンの仲間が臭いのは経験済みなのだが、それよりももっと凄いにおいをさせる実験が、私が博士課程の頃、同じ部屋で行われていた。「においセンサー」が開発されていたのである。水晶振動子にいろんな膜などを付けて、におい物質を流し、吸着のパターンを調べるというもので、いろんなにおいの元を薄めてセンサー部分に窒素ガスと共に導入する。試薬測りとりは専用ドラフトでやるとしても、薄めたってにおい物質はにおい物質だからどうしても部屋に漂うことになる。実験担当者は吸収缶付きの立派なガスマスクで武装して実験していた。なぜか、いい香りが漂うことはほとんどなく、カビ臭の元だとか、香水の成分(調合して薄めるといい香りになるが、1種類だけ濃いととんでもない臭い)とか、納豆の腐ったような臭いとか真夏に一週間風呂に入ってない時の足の臭いとかウンコの臭いとか、まあそんなのばっかり嗅がされることになった。
 実験担当者を責めても問題は解決しないし、かといって普通に他の実験をしていてそんなにおいを嗅ぐのも嫌だ……となると、マスクを着用して自衛するしかない。幸い、においの発生源から少しは離れているから、安いマスクでも何とかなる。ということで、使い捨ての活性炭入りマスクを実験室の他のメンバーにも配り、自分も手元に置いて、備えることになった。
 強烈なにおい物質を出す前に、実験担当者はまず「これからにおい物質使います」と叫んでガスマスクを着用。それを合図に、部屋のあちこちで他のメンバーが一斉に活性炭入りマスクを着用、という手はずで、においセンサーの実験と、特にブーイングもなく共存していた。別の部屋のメンバーがその光景を見て爆笑していたが、住民にとっては深刻な問題なのだった。