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水環境学会市民セミナー

Posted on 8月 23rd, 2007 in 倉庫 by apj

 タイトルのところで話をしてきた。

 久しぶりに安井至先生にお会いした。安井先生の講演は最初だったので、私が会場に入るのとほとんど入れ違いになってしまった。

機能水研究振興財団の堀田さんの話。 「機能水」は、安全性から科学的根拠までかなりよく調べられている。また、アルカリイオン水の臨床試験の成果は、アルカリイオン水に多少なりとも腹部愁訴に対する効果があることを実証しただけではなく、水を飲む量を増やしただけでも効果があることまで見つけてしまったことにある。教訓としては、きちんとした科学的手続きに沿って調べると、意外なことまでわかるかもしれないということか。

 学校の環境教育の教科書や副教材に、間違ったイメージを植え付けるものが含まれているという指摘など。岩手県立大学総合政策学部の山田さんによる。講演資料の引用文献が大変充実していて、資料として使える。どちらかというと左巻先生向けの話題?

どこにそんなに金があるんだ?

Posted on 8月 23rd, 2007 in 倉庫 by apj

 Yahooニュースの読売の記事より。

水増し合格、大学側にもメリット…受験料収入12億円
8月23日14時43分配信 読売新聞

 大学入試センター試験だけで合否を判定する入試方式を利用して、「関関同立」と呼ばれる近畿地区の有名私大4校(関西学院、関西、同志社、立命館)に合格した受験生のうち、実際に入学するのは10人に1人もいないことがわかった。

 私立高校が合格実績水増しのため入学意思のない生徒を多数受験させたことが一因とみられる。同方式による今春の出願者は4校で延べ7万人を超え、受験料収入は総額約12億8000万円に上っており、大学側の経営上のメリットが大きいことも明らかになった。

 読売新聞の取材に、関関同立側が2007年度入試の状況を明らかにした。

 それによると、4校の同方式の総募集人数2572人に対し、志願者総数は7万4845人。総募集人数の9倍近い計2万2827人を合格させたが、入学者は計2082人にとどまった。4校は募集人数の7~12倍の大量合格者を出しているが、定員割れが出ており、入学率(合格者のうち入学した者の割合)は9・1%だった。

最終更新:8月23日14時43分

 12億 8000万円を74845人で割ると、一人1万7000円程度。独自入試を課すならこの倍程度はかかるだろうから、まあ妥当な金額か。10人に1人しか入学しないということは、4大学分で約10億円分の受験料収入が余分にあることになる。滑り止め目的で個人受験している人もいるはずだが、受験料収入を目立って押し上げるほど高校側が水増し受験させてるとすると、半分から3割程度としても、3億円から5億円になる。一体何校がやっているのだろうか。いずれにしても、「合格枠を金を払って大学から買う」というのが実現してしまっている。疑問に思ったのは、私立高校がどの程度補助金をとっているかということで、全額を入学者から徴収してまかなっているのなら内部の意思統一さえできていれば差し支えないかもしれないが、もし、公的な補助を受けているのなら、この目的に金を使うのはまずいんじゃないか。

前期の講義でどう答えるか迷った質問

Posted on 8月 23rd, 2007 in 倉庫 by apj

 前期、「科学とニセ科学について考える」という共通教育の講義をしたのだけど、その時にどう答えたらいいか、ちょっと迷った質問がこれ。
「温泉はニセ科学ですか」
 温泉に行くと、リウマチに効果があるとか何とかちょこっと書いて貼ってあるアレがニセ科学と呼べるか?という質問である。
 もし、瓶に入れた怪しい液体にそれらしい名前を付けて効能書きを添付して売ったら、まず確実に薬事法に触れる。また、温泉の効能書きについて、どれだけ厳密な臨床試験がなされているかは疑問である。字面だけ見ると、根拠出せやゴルァ!となるが、しかし実感としては、通常の温泉の効能書きがニセ科学には見えない。よっぽど極端に科学的根拠を主張して、かつそれがインチキなら別だろうが……。

 普段使っている「ニセ科学」の定義は「科学を装うが科学でない」というものである。温泉について考えるなら、まず、温泉の効能書きのあり方が「科学を装う」にあてはまるかどうかを考えないといけない。すると、確かに、病気に対する効果や飲み方が書いてあるが、臨床試験をしているとは思えないものが多数である。
 ところで、温泉とは、ずっと昔から病気に対する効果が書いてあるものであった。その効果が言われ始めたのは、おそらく、医学が今ほど発達しておらず、医者に気軽にかかってよく効く薬をのむこともできない、体を使う作業の多かった時代からであろう。そのような時代では、数日仕事を休んで湯に浸かってのんびりするだけでも、体を休めて病気の回復を助けたり、症状を和らげたりする効果は、今よりもはっきり感じられたのではないかと思う。その後医学が発達しても、温泉が医学の領域を侵すことはなかったし、温泉の側が代替医療としての地位を確立したわけでもない。怪しい代替医療信者が温泉を取り入れてことさらに効果を喧伝することが無いとは言えないが、普通の温泉については、「風呂に入ってくつろぐと云々」というのとさほど大きな隔たりはない。温泉地は、観光の目的地として人気が高いものも多く、そのような場所で病気に対する効果が書いてあったとしても、それを通常の医学や科学で十分に根拠づけられたものであると勘違いする人もまず居ないだろう。まあ、温泉が効くのは水のクラスターが……などと余計な科学モドキをくっつければ、温泉の説明でもニセ科学になるが、単に効能だけを控えめに書いてあるなら、それはもう科学とは少し違うカテゴリーのものとして定着している。
 こう考えると、温泉の効果は、文面上は病気に効くことになっていても、科学を装うということにはあたらないと考えられる。だから、「温泉がニセ科学ならショックだ」という学生さんに対して、「科学を装う状態にはなっていないから、普通はニセ科学だと批判するような対象ではない」と答えたのだった。

 この問題の難しいところは、一部分だけ取り出すとニセ科学といえそうでも、社会におけるあり方、全体の態様を考えると科学を騙っているとは言えないものがある、というところではないかと思う。