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磁気活水器や波動に毒されてしまった人のための物質科学入門(案)・その2

Posted on 7月 14th, 2008 in 倉庫 by apj

 引き続き、項目を列挙。

○水の中のイオンって何?
 金属が溶けるときの存在の仕方。かならず対イオンがあるから、全体として電気的には中性。水素イオン濃度(pH)が酸性と塩基性の指標になっている。
○イオンに何かすごい作用があるの?
 物質としての通常の性質以上のものはない。代表的なものは高校化学の教科書に出ている(飲料水やミネラルウォーターの成分については列挙)。
○マイナスイオンって何?水にも含まれているの?
 空気の中に漂っている、負の電荷を持った微粒子や分子の総称。水は関係ない。水の場合は、きちんと元素分析して不純物組成を決めればよい。水が何か性質を持つとしても、それは水溶液としての性質であって、不純物の効果以上のものではない。空気の場合は、分析が難しい(∵他の分子と衝突してどんどん別の物質に変わったりする)から、negative air ionという括りでとりあえず呼んでるだけ。
○遠赤外線は水に効果を及ぼすか?植物の成長には効果があるが……。
 水の吸収スペクトルからいって、遠赤外線を吸収しても速やかに温度が上がるだけ。水の振動緩和は早いから、そんなにエネルギーを持ったままいられない。植物の場合は、直接遠赤外線を吸収しそうな分子をたくさん持っていて、吸収の相手が水とは限らないので別の話。
○水の浸透圧が変わるから植物がよく育つという話があるが?
 まず、浸透圧が変わったことをきちんと示した実験が出てこないあたりがそもそも怪しい。希薄溶液の浸透圧は、理想気体の状態方程式のような形になるから、水の浸透圧が変わったとしたら、最初に疑うべきは不純物濃度と組成の変化だろう。
 植物も動物も、水に一定量の不純物が混じった時に決まる浸透圧を前提にして生きている。浸透圧が変わって植物の成長が違うというのなら、浸透圧変化のもとになった水以外の成分の効果で説明できるはず。
○水の表面張力の測定
 実は、試料調整に敏感。チューブ類を不用意に使うとそれだけで変わる。磁場じゃ変わりそうにない。巷の実験結果は、エラーが相当数含まれていると思われる。
○水の変化を見るのに動物実験は適切か?
 水の「物理的変化」を想定しているのなら、まずは物理化学的な測定が必要で、それで全くでないのなら、物理的変化を仮定したことが間違っている。確かに、動物の方が分析装置より感度が良いことがあるが、それは、「特定の物質を認識する」場合に限られる(ホルモンとか)。
○磁気活水器の効果と磁気の効果は別
 活水器の防錆用の亜鉛板が溶け出して水道管の錆を防いだ例や、アースによって同様のことが起きた例、活水器とセットで設置することになっていたフィルターの効果の例もある。効果があった例がことごとく磁気以外の原因だったり。
○エネルギーの豊富な水はあり得るか?
 無い。酸素と水素から水ができる反応は発熱反応。水は物質としては、エネルギーを失った安定な状態。水のエネルギーとは、ΔGのことで、それ以上でも以下でもない。また、水のエネルギー云々で、kJ/molで数値を出しているのを見たことがない。比喩的表現と、物理量を混同すべきではない。
○原因を考える順番
 物質の出入り以上の効果があるかどうかを十分検討すべき。これまでのところ、水単独で物理変化した例はない。懐疑的に実験を検討すると、水分子以外の物質の効果を見落としていたことがわかってきている。

微妙な予告

Posted on 7月 14th, 2008 in 倉庫 by apj

 YahooJapanの記事より

存在しない駅で「殺しまくる」 予告の男逮捕 「犯罪ではないと…」
7月14日16時52分配信 産経新聞

 インターネット掲示板「2ちゃんねる」に「埼京線の上野駅で人を殺しまくります」と書き込んで警察官に警戒を強化させたとして、警視庁上野署は14日、偽計業務妨害の疑いで、板橋区成増の無職、崎山裕介容疑者(32)を逮捕した。上野駅に埼京線は乗り入れておらず、「存在しないから犯罪にはならないと思った」などと供述している。

 調べでは、崎山容疑者は6月28日午後7時半ごろ、掲示板に殺害予告を書き込み、2日間で延べ50人の署員を警備に当たらせるなどして業務を妨害した疑い。自宅のパソコンから書き込んでおり、すぐに浮上したという。

 存在はしないが、実在の地名を使って地理的に微妙だと逮捕になるらしい。
 これがもし、地下鉄御堂筋線の東京駅、とか、誰がどう見ても遠く隔たっていたらどうなるのだろう。実在の駅名を使うとその周辺を警戒しなければならなくなるから、「雛見沢駅で」とやったらどうなるか(雛見沢は、「ひぐらしのなく頃に」の舞台となった架空の地名)。あるいは、「パリで……」といった、海外だったらどうか。

 こうなると、一体どこまでなら逮捕されるのかという境界を知りたくなってくる。実験するにはちょっとずつ内容を変えて、徐々に架空度・非現実度が増えていくような予告を並べてするしかなさそうだが……。さじ加減を間違えて逮捕の方に含まれてしまうと、現実に迷惑をかけるし予告した人もリスクを負う。気軽に実験、というわけにはいかないよなぁ……。