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服装と素材を記録に残せ

Posted on 7月 18th, 2009 in 倉庫 by apj

 大雪山・トムラウシのツアーの遭難事故について。
 亡くなられた方と生還された方の、服装とその素材がどうであったかに興味がある。

 疲労凍死の調査で、亡くなった人は木綿の下着であったのに対し生きて戻った方は羊毛の下着で、濡れた場合の保温性の違いが生死を分けた、という話を読んだ記憶がある。今は新素材のシャツなどが出ているので、昔よりはずっと条件は良くなっているだろう。それでも、天候にくらべて軽装だったという報道も出ている。

 生死を分けた要素が何であったのか、調べて記録に残し、今後の事故防止に活かすことが、亡くなられた方への供養だと思う。
 世の中、家政学部とか被服学科とかもたくさんあるわけで、そっちの人達のテーマかなぁ。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2009-07-06 18:52:06
凍死についての情報

山歩きとかまるで知識がないので、この情報がどこまでアテになるのか分からないのですが、作家の大石英司氏がこんなことを書いています。

http://eiji.txt-nifty.com/diary/2009/07/post-b49f.html

    >深部体温がいったん下がり始めると、
    >外的刺激なくそれを復調させるのはもの凄く難しいんですよね。
    >テントの中からコンロとか発見されたらしいけれど、
    >そんなのでは全く間に合わないですよ。
    >フィールドでの基本は、深部体温が下がり始める前の対策しか無いんです。
    >映像を見ると、所々木道みたいな部分もありましたが、
    >私ならあれ剥がしちゃいます。それ剥がしてシェルターを作って
    >その場で風を凌ぎます。命には代えられないですよ。
    >
    >ベア・グリルスは、極寒のシベリアで凍った川に飛び込むとか、
    >アホなことしでかすんですが、
    >彼はパーピー運動で深部体温の低下を防ぐんですよ。
    >そういう状況に陥りそうな場合は、ただ歩き続けるだけじゃ駄目なんですね。
    >ここでの遭難事故は、2002年の時はガイドが実刑判決を食らっています。
    >恐らくこれが、旅の後半日程ではなく、最初の方だったら、
    >かなり救命率を上げたのでしょうが、
    >後半のラストだったことも災いしましたね。

いろいろな組合せで、大人数の遭難となったようで、装備と判断と対応策のバランスが取れていなかった、とは言えるようです。


by 山遊び人 at 2009-07-33 03:48:33
問題はそこではないと考えます。

apj様

初めてコメントします。

近年の登山衣料の進歩とその普及には目覚ましいものがあり、今日においては、「素材」という部分では僅かな差しかありません。まず今回のような健脚向けツアーであれば、問題のない素材を用いた衣料を使用していると考えて間違いないでしょう。

また、服装という部分においては「天候にくらべて軽装だったという報道」というのは、それのみでは、意味をなしません。
同じ衣料・装備を持っていても、その使い方(ちょっとしたフードの使い方、できるだけ濡さない工夫、適切な調節)において大きく差が出るからです。特に雨、強風といった条件ではその差は大きくなります。

まだまだ情報が少ない状況ではありますが、以下の点から「行動」に焦点を当てるべきだということは明白です。
1:中高年のガイドツアーであったということ
2:メンバーがバラバラになったということ

1については命をかけた大冒険ではないという意味と、商業的に成り立つレベルのリスクマネージメントが当然要求されるということであり、2については、ガイドツアーとかいう以前の基本的な行動原則に反しているということです。

商業目的のガイドツアーにおいて、これだけ派手な遭難事故を起こしたわけですから今後、「行動」についてしっかりとした検証が行われるはずです。このことこそが、今後の事故防止に活き、亡くなられた方への供養となるはずです。

最後に余談ですが・・・・・
少なくともこの件について大石氏の情報は参考になさらない方が良いと思います。
たとえば、天候のチェックに関するコメントや、「ガイドが3人も付くくらいなら、衛星携帯なりハムなり携帯すべき」といった発言からして、残念ながらどうみても素人のレベルです。


by apj at 2009-07-00 07:04:00
個人でできるリスクマネジメント

山遊び人さん、

 おっしゃることはわかるのですが、個人でできるリスクマネジメントという部分を切り分けた方がいいと思います。

>近年の登山衣料の進歩とその普及には目覚ましいものがあり、今日においては、「素材」という部分では僅かな差しかありません。まず今回のような健脚向けツアーであれば、問題のない素材を用いた衣料を使用していると考えて間違いないでしょう。

 軽装だったという報道もあるので、足りなかった部分はあるだろうと見ています。もちろん、この報道だけでは具体性がないので、何とも言えません。警察が、聞き取り調査をして、具体的にどうであったか調べているという報道もあったで、そのうちはっきりするでしょう。

>また、服装という部分においては「天候にくらべて軽装だったという報道」というのは、それのみでは、意味をなしません。
>同じ衣料・装備を持っていても、その使い方(ちょっとしたフードの使い方、できるだけ濡さない工夫、適切な調節)において大きく差が出るからです。特に雨、強風といった条件ではその差は大きくなります。

 だから、対策は具体的でないとダメです。何をどれだけ着ていて、濡れた人は何をしくじったのかといったことまで細かくみていかないとまずいです。

 多分、行動を問題にする議論は、ツアー会社への責任追及も含めてこの先山ほど出てくるでしょうけど、それに目を奪われてしまうと、教訓を十分に活かせないだろうと考えたので、敢えて、行動については書きませんでした。

> まだまだ情報が少ない状況ではありますが、以下の点から「行動」に焦点を当てるべきだということは明白です。
>1:中高年のガイドツアーであったということ
>2:メンバーがバラバラになったということ

 バラバラになった理由は動けない人が増えたからで、動けない人が増えたのは寒さによるものなら、寒さに対する防御ができていれば、最低現生き延びられたんじゃないですかね。
 出発したのが無謀、という意見もあるでしょうけど、人間は判断を間違えることもあるので、危険を避けるための防護は多重にしておくしかないでしょう。出発しないで待つのがベストだったとしても、出発して寒い思いをしても死なずに済む程度の防寒対策があれば、何とかなったかもしれあません。

 遭難が起きた時に、行動に焦点を当てて議論するというのは、これまでも行われてきました。でも、それだけじゃ不十分でしょう。最低でも、動けなくならずに済む防寒対策は、(ガイドが出発前にチェックするにしても)個人で事前に準備できる部分です。行動が悪かったという部分が強調されすぎると、この部分が軽視されるのではないかと思ったので、このエントリーを書きました。


by e10go at 2009-07-41 08:32:41
Re:服装と素材を記録に残せ

集団登山による遭難事故のニュースを見る度に、映画「聖職の碑」を思い出します。

登山で凍死する場合は、服装が問題になる事はありますね。
登山に合った服装を選ぶのは大事です。登山の快適さ、また、生命の危険にも繋がりますから。
登山場所と日程とどれくらい寒くなるかで、用意する衣類の種類と量が変わります。
一番寒い状態でも耐えられるように用意しますが、実際は登山中常つねに寒いわけじゃなく気温の高い時もあり、登山中に汗をかきますから、着替えも必要になってくるでしょう。

登山中、途中まで暖かく汗をかいた後に急に気温が下がると、汗で体が冷えますが、肌着の水分吸収性が高ければ体温の低下は少ないです。
しかし、吸収しきれないほど汗をかいたら、体温の低下は上に着る防寒着の保温性能で決まります。
最近の登山用防寒着は保温性は優れていますが、保温性能が高くても体温低下は起こります。
その低下がどれくらい押さえられるかで防寒着の良し悪しが決まります。

今回の遭難では遭難者がどのような服装で参加したか判りませんが、服装の違いと同時に体力も関係するるでしょうね。
もっとも、服装の違いによる体温の低下で、体力に差が出ることもあります。これが途中リタイヤに繋がる事もあります。

しかし、防寒着以外で体を温める方法はなかったんだろうか、という疑問もあります。

現地の気温と天候に合った服装を身につけていた(または用意していた)か、気になるところですが、ツアーガイドの判断ミスが今回の遭難を招いたんでしょう。
「聖職の碑」のように想定外の事が多すぎるなら別ですが、今回の場合は避難小屋を出発する時点で遭難の可能性が充分想定できたでしょう。
避難小屋を出発する時に、天候の悪化、それも最悪の状況になるのは充分想定できた筈です。
登山客がそれに耐えられるか、途中で落伍者が出ないか、ツアーガイドがあの場で判断できると思えないです。
そういう時はさっさと撤退する事を優先するべきでしょう。
ガイドとしては、撤退を決めるのは難しいと思うけど、登山のベテランなら少なくとも出発は見合わすケースですね。

所で、アマチュア無線の装備とか下界のツアー会社のバックアップ体制はどうなっていたんでしょうかね。
ツアー旅行中はツアー会社が休みで連絡取れない、なんてことはよくありますから。

追記;
>バラバラになった理由は動けない人が増えたからで、動けない人が増えたのは寒さによるものなら、寒さに対する防御ができていれば、最低現生き延びられたんじゃないですかね。

寒さに対する防御ができていれば良かったんですけどね。
しかし、バラバラにならなければ犠牲者は減っていたでしょう。(逆のケースも考えられますが)
歩いて降りられる人は体力があるので、その場に残っても犠牲者になりにくいです。
救助を待っている間、体力のある人が体力のない人を介助(体をさすって温める等)する事で、犠牲者を減らせる可能性があります。
しかし、バラバラになったらその可能性を減らす事になります。
なお、登山では、体力のある人が体力のない人を介助する事は、暗黙の原則です。
このケースでは、救助を求める人1人か2人が下山し、残った人が動けなくなった人を介助するべきだったでしょうね。
少なくとも、動けなくなった人ばかりを残すのは論外です。

このケースでは、普通ならバラバラに行動しないです。
バラバラになったのは、ツアーガイドのミスか、登山客がツアーガイドに不信感を持ったからじゃないか、と思います。


by ごんべえ at 2009-07-08 09:01:08
Re:服装と素材を記録に残せ

「バラバラになった理由は動けない人が増えたからで」って動けない人がでたからって簡単にバラバラになることを肯定してはいけないでしょう。一番遅い人のペースに全体をあわせるのが原則でしょうし、歩けない人が出た時点で救助要請をするべきということになるでしょう。

「生死を分けた要素が何であったのか」の候補に装備を入れておくのはいいと思いますが、実際はベースの体力差が支配的かもしれません。

「人間は判断を間違えることもあるので、危険を避けるための防護は多重にしておくしかないでしょう。出発しないで待つのがベストだったとしても、出発して寒い思いをしても死なずに済む程度の防寒対策があれば、何とかなったかもしれあません。」
判断というのは難しいもので、防寒対策の結果として、歩ききれていれば、判断を誤ったとはいえなくなるので、やっぱり判断をひとつ間違うと危険なわけです。だから余裕のある選択をしなきゃいけないわけです。
おそらく、出発しないで待つか引き返すかの判断をしなきゃいけなかったのでしょう。

「行動に焦点を当てて議論するというのは、これまでも行われてきました。でも、それだけじゃ不十分でしょう。」
行動は装備を踏まえて決定されるべきでしょうし、装備を用意することも行動に含まれるから、装備をぬきに行動だけを議論することはありますまい。


by 酔うぞ at 2009-07-30 20:31:30
ノウハウの問題でもあるわけで

    >亡くなられた方と生還された方の、
    >服装とその素材がどうであったかに興味がある。
    >
    >疲労凍死の調査で、亡くなった人は木綿の下着であったのに対し
    >生きて戻った方は羊毛の下着で、濡れた場合の保温性の違いが生死を分けた、
    >という話を読んだ記憶がある。
    >今は新素材のシャツなどが出ているので、
    >昔よりはずっと条件は良くなっているだろう。
    >それでも、天候にくらべて軽装だったという報道も出ている。
    >
    >生死を分けた要素が何であったのか、調べて記録に残し、
    >今後の事故防止に活かすことが、亡くなられた方への供養だと思う。

服と言っても、使いこなしとしてのノウハウあるわけで、その中には「ビバークしろ」も出てきそうだから、素材も問題だし、ノウハウも問題ではあるでしょうが、遭難の回避という言う点では救助要請が遅れたという話が出てきたから、どこまでに話を限定するのかが難しいですな。

しかし、考えてみると南極探検とかイヌイットなど極冠の地の住人は下手すると凍死しちゃうようなところで普通に生活しています。
これは素材がというよりもノウハウの問題だとなりそうです。

一方で、悪天候の中で行動せざるを得ない都合とか、気象状況に合わない服装とかも場合によっては致し方ない、ということもあるでしょうね。

警察が服装の調査を始めたとのことですが、こうなると全体的な判断力の問題になってしまうような気がするな。


by ym at 2009-07-54 23:38:54
Re: 服装と素材を記録に残せ

軟弱中高年登山者でもある者です。今回亡くなった方(ガイドの方も含めて)のご冥福を祈ります。

ガイドツアーのあり方自体の問題も相当あるようで、左巻さんのブログ記事

http://d.hatena.ne.jp/samakita/20090718/1247908099

から2002年にあった遭難についてガイドの立場からの意見と関連の体験の記事がリンクされています。パーティーの中でひとりでも悪天候対応の装備に不備がありやりくりできなければ、悪天候時の撤退はガイドの判断としては当然である一方、真っ当に準備してきたツアー客が納得できないというのも理解できなくはないです。(クレームしてしまったツアー客はどうにかしていると思いすが。)

服装についていえば、今回の初期報道でヤッケ姿というものも聞きました。寄せ集めということもあり相当バラツキがあったのではないでしょうか。また健脚向け指定だったとはいえ、この時期の西日本からのいわば観光客がGW期の北アルプスあたりを想定した装備を全員が準備できていたかどうか、という話のような印象を今のところ持っています。

ガイドツアー自体の問題に戻って。しかし、2泊3日で合計40Kmの行程というだけで、中高年対象となるのがわかっている寄せ集めツアーの設定としてはリスクを低く見すぎ(天候だけでなく、体調不良発生率も)という印象ですが、予備日2日、山中ではガイドひとりあたりの上限数名とかすると売れる価格にならないんだろうなあ。単独行とか仲間で登るとかいうのに比べて倍以上のコストがかかりかねないわけで。


by のぎ at 2009-07-41 21:51:41
Re:服装と素材を記録に残せ

複数人のパーティーで明暗が分かれた事故について
遭難報告を作成するのであれば、
服装、素材等は当然検討される事項だと思います。

山岳会や大学のクラブ等であれば、
御世話になった方々への報告や、今後に生かすために
そのような遭難報告書が作成され、他団体へも配布されるのが普通ですが、コマーシャルツアーではどうなのでしょうね。

これから民事でも責任を問われるであろう営利企業が、
自ら率直な事故調査をして公開するとは考えにくいので、
第三者的なガイド協会あたりが、
コマーシャルツアーの
遭難報告を作成するような仕組みがあればな~と妄想してしまいます。


by apj at 2009-07-56 03:55:56
他の事故調査と同じ状況ですね

のぎさん、

>これから民事でも責任を問われるであろう営利企業が、
>自ら率直な事故調査をして公開するとは考えにくいので、
>第三者的なガイド協会あたりが、
>コマーシャルツアーの
>遭難報告を作成するような仕組みがあればな~と妄想してしまいます。

 責任追及のために原因究明が進まないというのは、他の事故と同じ状況ですね。
 航空機事故の場合のような調査委員会があると、ノウハウの共有に役立ちそうです。


by e10go at 2009-07-52 04:01:52
Re:服装と素材を記録に残せ

ツアーガイドの方を含め、遭難事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
前の書き込みで最初に書くべきでしたが、失礼しました。

それにしても、10人の犠牲者とは、今回の遭難事故は登山史上まれに見る惨事ですね。
登山計画や判断・引率指導全てに問題ありますが、apjさんの指摘する通り服装も問題するべきでしょうね。
実際、問題になりそうです。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2009071990092218.html
>遭難当日の16日、野首さんは宿泊したヒサゴ沼避難小屋から出発した18人の隊列の後ろから3番目にいた。出発時から雨。半袖に長袖、その上にフリースと雨がっぱを羽織ったり、登山服にかっぱ姿だったり、服装はそれぞれだった。

半袖はまずいでしょう。
北アルプス・南アルプスの3千メートル級の夏山登山経験がありますが、天気が良くても風が少し強く吹けば半そででは耐えられないくらい寒くなります。
北海道の山は経験ないけど、北海道の2千山メートル級の山の登山経験者の話では、それと同等かそれ以上に寒いと言っています。
まして今回は天候が悪いですから、防寒には気を使うべきだったでしょう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090718-00000000-maip-soci
>一方、ヘリで遭難者の救助にあたった陸上自衛隊の2等陸尉(32)によると、死亡した人の中には、薄い雨ガッパに長袖シャツ、スラックス姿や、持ってきた予備の服を体に巻き付けたまま倒れている人もいたという。

どうも天候と気温に合わない服装の様ですね。
薄い雨ガッパではシトシト降りの雨なら雨水を通さないですが、大雨や横殴りの雨になると内側に雨水が浸透する事があります。
それに、薄い雨ガッパでは体全体を覆えない物もあります。

スラックスは普通の長ズボンの事でしょう。これでは寒さは凌げないですね。

警察も、服装を含めた防寒対策に問題あり、と睨んでいるようです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090719-00000044-jij-soci
>また、道警は遺族から衣類の任意提出を受け、防寒対策にも問題がなかったか調べている。


by angie at 2009-07-32 10:35:32
服装はそれなりに大事

 登山において死に直面するような状況では、ほかに頼るものが無いという点で、服装、というよりも装備ですが、これはそれなりに重要です。
 低体温症というのは、そうなってしまうような現実のもとでは体力の差などほとんど意味をなさないものでして、なにせ、震えがおさまっちまうくらいの低体温症になればどんな人でも1時間はもちませんから、いえ、それで心肺停止して蘇生した人もいるってんですが、そりゃまた稀なことみたいですし、とどのつまり、低体温症にならないのが肝心だってことです。
 低体温症にならないには、まず濡れてしまわないこと。人間、10℃の水に30分も浸かれば大事だ、夏でも高山で雨に打たれてぬれねずみなんてのは、それと大して変わらない。冷たい水は体に触れ続けると体温を容赦なく奪うんです。だから、中着や肌着に水を浸入させてはいけないのです。
 次に大事なのは、風を防ぐこと。硬い鎧で冷たい風を最外装で遮断する。濡れた体に風が当たるのはとても応えますぜ。
 外来の水から体を濡れないようにするのと風を防ぐのは上着の役目です。目の詰んだ固めの布に細孔質のメンブレンを数層ライニングしたやつがいい。汗などの内部の水分を排出できるから。撥水も重要。シェルが水を通さなくても、濡れてしまうのは不都合が多いもんです。
 三が保温性。これは中着でつくりだすもの。対流を起こしづらい空間を形成し、体温で温まった空気の層を保持する。
 肌着の役目は快適性だと思う。生き残るか否かの最後の砦を肌着に任ずるのは荷が勝ちすぎる。せいぜい多くを望めば、少々の汗でびちゃびちゃにならない吸湿性があればいいんじゃないか。

 以上、登山装備に関する私見ですが。
 


by 山遊び人 at 2009-07-52 20:16:52
原因究明が進まない

生死が別れるようなハイリスクな行動をする人にとっては装備が明暗を分ける場合が多々あるので、重要な部分となるでしょう。
しかし今回の場合、なぜ、そのようなハイリスクな行動をとらなければならなかったのか?という部分が一番引っかかるのです。
そのような選択をする必要のあるグループでなかったことは明白なわけですから。

例えは悪いかもしれませんが、車に乗車するということを例にとりましょう。レーサーは当然ハイリスクな走りをしますので、しっかりした安全装備が整えられています(ヘルメット、ゴツイシートベルト、ロールバー等)。で、その対極にあるのがバスの乗客でしょう。ヘルメットはかぶりませんし、シートベルトもしません。そして事故でバスの乗客が死亡した場合にヘルメットを被っていれば・・・というような議論は普通はしないですよね。

>おっしゃることはわかるのですが、個人でできるリスクマネジメントという部分を切り分けた方がいいと思います。

おっしゃることはわかりますし、有益であるとは思いますけど、今後の事故防止のための検証の上で中心とはなりえないでしょう。ここでapjさんがおっしゃる「個人でできるリスクマネジメント」というのは、バスやタクシーの事故防止において「シートベルトを着けましょう」というような部分になると思います。もしくはタイタニック号の事故で生死を分けた服装の違いは?というような感じでしょうか。

>天候に比べて軽装だった
タイタニックの乗客も置かれた状況にくらべて軽装だったということは間違いないんですが、もともとそのような状況に置かれる予定ではなかったわけなんですよね。

今回のグループがバスやタイタニック号の乗客というのは語弊があるとは思いますが、レーサーとバスの乗客の間で、バスの乗客に近い位置にあるとはいえそうです。

>責任追及のために原因究明が進まないというのは、他の事故と同じ状況ですね。
>航空機事故の場合のような調査委員会があると、ノウハウの共有に役立ちそうです。

とapjさんがおっしゃるような状況にあると私も思いますので、「服装が悪かったという部分が強調されすぎると、この行動の部分が軽視されるのではないかと思った」のでコメントした次第です。

最後に参考になりそうなブログを紹介します。
http://snowmania7.blog38.fc2.com/
今後の事故防止のための検証の在り方について理性的に述べられています。


by トレペ at 2009-07-41 11:15:41
給食状況も知りたいのですが

一応大学時代はワンゲルなる所で現役5年、在学OB5年してました(^^;
今回の大量遭難で服装・装備を問題視する意見は多いですけど、その前にこの無茶な行程で何を
食べてたかも気になります。
前日も雨降りの実働10時間、某掲示板情報では参加者は食料持参、お湯だけはツアー側が供給
まともに食べてない気がします。


by apj at 2009-07-08 07:28:08
着衣についての報道

asahi.comで着衣についての報道が出てますね。
http://www.asahi.com/national/update/0723/TKY200907220485.html

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凍死の7人は軽装、生存者は防寒上着 大雪山系遭難

2009年7月23日3時4分
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 北海道大雪山系トムラウシ山(2141メートル)の遭難事故をめぐり、凍死したツアー客7人全員が、防寒、防水機能が低いウインドブレーカーなどの軽装だったことが道警への取材でわかった。他方、助かった10人は全員が、強い雨に長時間打たれても雨を通しにくく、防寒機能もある上着を着ていたという。

 事故は23日で1週間を迎えるが、道警は装備の差が生死を分けたとみて、死亡者の着衣を詳しく鑑定する方針だ。旅行社側が必要な防寒着の準備を客に求めていたか、ガイドらが客の服装に注意を払っていたかも調べる。

 ツアーは2泊3日で四十数キロを縦走するコースで、遭難時は55~69歳の15人に男性ガイド3人という構成だった。このうちツアー客7人、ガイド1人の8人が亡くなった。

 道警幹部によると、一行は登山中、ひんぱんに風雨に打たれ、遭難した最終日の16日も強い風雨にさらされた。北海道の2千メートル級の山は、夏でも風雨に見舞われれば体感温度は零下になるとされる。

 18人はみなフリース素材の服の上からカッパやウインドブレーカーなどの上着を着ていたが、死亡した客7人の上着は夏用とみられる生地で、発見時、雨がしみ込み、中がぬれていたという。

 体温低下を防ぐにはニット帽やフードなどで頭部から首筋を冷やさないようにする必要もあるが、死亡した7人は機能性が低いフードしかかぶっておらず、雨が首筋などを冷やし、短時間で低体温症に陥った可能性があるという。

 ただし、死亡したガイド1人は防寒機能がある上着だったという。

ツアーを主催したアミューズトラベル(東京)の松下政市社長は19日の記者会見で、服装について「(客に配布した)装備リストに必要なものを書いている。基本的には参加者ご本人が責任を持って、それを持参していただくのが通常」と話している。

     ◇

 道警は22日、これとは別に、6人が遭難、1人が死亡した大雪山系美瑛岳(2052メートル)での事故についても、主催したオフィスコンパス(茨城県つくば市)の事務所兼社長宅などを業務上過失致死容疑で家宅捜索した。
——————————————–


by トレペ at 2009-07-17 11:29:17
Re:着衣についての報道

>凍死したツアー客7人全員が、防寒、防水機能が低いウインドブレーカーなどの軽装だったことが道警への取材でわかった。

「ウインドブレーカー」…懐かしい商品名(笑)
山道具屋では20年前に絶滅してます。
前日も雨の中10時間近く行動してるのでこの記事が正しければ遭難は1日早まる気がします。


by chainsaw at 2009-07-17 21:11:17
ウインドブレーカー

トレペさん>山道具屋では20年前に絶滅してます。

 それが、そうでもありませんで、撥水加工が進歩したことが根本にあるのでしょうが、トレールランニングや、ウルトラライトウエイト志向の流行などから、まっとうな雨具なみの性能は持たないけれども、ソコソコの雨なら結構撥水してくれて凌げる、といったウインドブレーカー的なウェアが多数登場しています。

 雨具の性能についてあまり意識が無かった場合、より軽くて安い方に惹かれてしまうのかもしれません。


by ym at 2009-07-14 18:38:14
Re: ウインドブレーカー

撥水性すらないウインドブレーカーも大きな山道具屋へ行くとけっこうあります。国内で名の通った登山用品メーカーも出しています。超軽量・コンパクト収納のやつをひとつ持っています(フードがないので雨具と勘違いする可能性はゼロ)が、早朝の行動時とかけっこう便利です。

もちろん目的は風を通さない層を作ることですが、素材がナイロン・ポリエステルのたぐいなので取扱説明書を読むか、実際に濡れてみなければ防水・撥水機能があるかどうかなんてわからないかもしれません。(こういう衣類の場合、取扱説明書は商品タグといっしょになっているので読まれず捨てられる可能性が大ですが)

今どき、ある程度山道具にお金をかける気になった登山愛好家であれば、山の雨具といえばゴアテックスかその代替品というのがほぼ定着していると思うので、装備チェックのときには「雨具と防寒具持ってますか?」「持ってまーす」で、雨に降られてみてガイドさん唖然という状態だったのかもしれないですね。


by トレペ at 2009-07-12 13:37:12
Re: ウインドブレーカーでもやっぱり給食状況を知りたい~

反応遅くてすみません
chainsawさん、ymさん>「ウインドブレーカー」をはじめてググッてみました(笑)
わはは、確かに現役ですねぇ…目から鱗今でも近所で見てますーでもこれってジョギングやスポーツ観戦・待機時が目的の防寒具ですよね
確かにQ&Aなんか見てたら台風時の通勤非常用にどうか?なんて質問も有りましたが
でもこれをカッパと認識する山行経験者は居ないだろうし「カッパくれ」と素人に言われてこれを売りつける山道具屋も無いだろうと思いたい…

しかし私の場合衣類・装備は報道されてるけどまったく報道されてない給食関係にも引っ掛かっている訳でして、この部分に興味持つ人少ないんで少し長く書く(笑)
今回のツアーのパンフを見ると(pdf)↓
http://www.death-note.biz/up/f/894.pdf
名古屋からでは¥152,000のコースのようです。その概要の補足項目で食糧に関するのが以下
>補泊目は寝袋と食料が必要になります。
>準備及び運搬は各自にてお願い致します。
>お湯は弊社スタッフがご用意致します。

つまり入山後の食料は自前、お湯=熱源は会社で準備→各自に鍋は無いので各個には煮炊きできない→準備する食料はフリーズドライorレトルト?
そしてこのツアーのメンバーは18人の大所帯。(山岳縦走の場合は慣れてるメンバーでも6人程度=テント一張りが楽)
一回の給湯量をカップヌードルで換算すると、300cc×18(ガイド含む)で5.4リットル。
これを鍋一で沸かすなら無風で最低30分以上、しかもその水は誰が運ぶの?携帯したコンロは何台?(報道で出てきたコンロは1台)、等々疑問が湧きあがり。
避難小屋ではともかくちょっと風が吹けば行動中には湯すら出せなかったと思うのです。
そんな状態では本末転倒ですが「多少着込んでも死ぬわ」というのが感想なのです。


by apj at 2009-07-54 21:36:54
ありそうな展開

トレペさん、

>でもこれをカッパと認識する山行経験者は居ないだろうし「カッパくれ」と素人に言われてこれを売りつける山道具屋も無いだろうと思いたい…

素人「カッパください」
道具屋「最近はいいのが出てますよ、これんなんかどうですか。防寒にもなりますよ」
 (ゴアテックスの、防水透湿素材のものを差し出す)
素人「えー、でも雨具にこんな値段は。山でしか使わないのに高いですよ。カッパってコンビニとかだと数百円ですよね」
道具屋「(内心呆れつつ)じゃあ、これなんかどうですかね。一応防水機能があって、ジョギングとかでも使えますし(と、撥水加工とかしてあるウィンドブレーカーを差し出す)」
素人「じゃあそれにします」
…………
山にて。
ガイド「雨具と防寒具持ってますかー?」
素人「持ってまーす!」


by 酔うぞ at 2009-07-47 08:24:47
山屋で買い物しなくても

>「カッパくれ」と素人に言われてこれを売りつける山道具屋も無いだろうと思いたい…

わたしは山に行く気も全く無いのですが、ゴアテックスの上と帽子と、トレッキング用の靴を日常的に使っています。

でこれを、わたしは近所の東急のスポーツ用品店で買ってます。
どこまで行っても、テニス・ゴルフ・ウォーキングの店です。
テントなんて無いみたい。

どう見ても山屋ではないのだけど、それなりに揃う。
ということは、「なんちゃって、登山用品もどき」をこういう店で買う方が主力なんじゃないでしょうか?

少なくとも人数は圧倒的に多いでしょう。
山に行かないで、あたしのように雨の中の都会を歩き回る、ぐらいなら十分以上であるわけです。
そのまま山に行ってしまったから遭難した、というのは大いにあり得る事でしょう。


by トレペ at 2009-07-28 12:29:28
Re:ありそうな展開が山屋で買い物しなくても

>道具屋「(内心呆れつつ)じゃあ、これなんかどうですかね。一応防水機能があって、ジョギングとかでも使えますし(と、撥水加工とかしてあるウィンドブレーカーを差し出す)」
素人「えー、でも雨具にこんな値段は。山でしか使わないのに高いですよ。カッパってコンビニとかだと数百円ですよね」

いやあapjさん、コンビニの数百円もので何とかなると思ってる素人は山道具屋に行かないでコンビニで買うでしょ
それに安くないんですよ~この手のウインドブレーカー、ゴアのカッパと遜色ない。
考えてみれば当たり前で防水透湿の透湿側の要求性能はランニング用の方が求められる訳で、サウナスーツとは違うんですね。
しかも今回の遭難者って登山歴10数年なんて方が半数以上です…ただし皆50歳以降に始めた人ばっかりなのがなんとも
だからこの人たちが何食ってたかって言うか大人数に対する温食の供給具合が気になる訳です。
低体温に片足突っ込んでる状態でも早めに気付けば、お湯を沸かして紅茶3に練乳1の濃厚ミルクティーを200ccも飲めば彼岸から帰ってこれます。

酔うぞさん
>わたしは山に行く気も全く無いのですが、ゴアテックスの上と帽子と、トレッキング用の靴を日常的に使っています。

山に行かない酔うぞさんでもゴア製品を選んでます、その理由は?
上にも書きましたが今回遭難された方は初心者ではないんですね(ツアー募集要項でも過去に同社ツアー参加が前提)

>ということは、「なんちゃって、登山用品もどき」をこういう店で買う方が主力なんじゃないでしょうか?

初心者的発想としては有るかもしれませんが、山登りの場合それなりの山に初心者が単独で登る割合は低いと思うのです。(それなりの山の例外→富士山)
そのうえ単独で素人でも行きたくなる山なら貧弱な装備で辛い思いをした時には隣にそれなりの装備をした経験者を目にする事になると思います。
私も昔、5月残雪期の尾瀬で沼山峠→尾瀬沼でコースタイム1時間と言うのを真に受けて登ってきた血塗れサンダル履き女性に包帯巻いた事が有ります。
この時の私の装束はゴアのダブルヤッケにウールの目出帽、ゴーグル(笑)
そんな風景は今回のメンバーも見てると思います。
なので、今回の遭難…メンバーの装備伝伝よりツアー会社が「お湯は準備します」というチラシ文句でどこでどれだけ「お湯」を出せたのか気になってるのです。


by 酔うぞ at 2009-07-40 19:07:40
つまみ食いの可能性は大きいのでは無いだろうか?

トレペさん

    >酔うぞさん
    >>わたしは山に行く気も全く無いのですが、ゴアテックスの上と帽子と、
    >>トレッキング用の靴を日常的に使っています。
    >
    >山に行かない酔うぞさんでもゴア製品を選んでます、
    >その理由は?

一番正直な答えは「理由なんて考えていない」ですが、それではあまりにも非生産的なのでちょっと考えてみると、野次馬根性とか目立ちたがり屋とかのように思います。

山行きとの対比で考えると(わたしは若い頃にバイクに乗っていましたが)結局は「総合的な準備」が不可欠だと思うわけです。
山でもバイクでも。

しかし、わたしが今ゴアテックスを持っているのは、全く総合的には考えていない。
上着は持っているが、オバーパンツは持っていない。
これで山に行けば「ゴアテックスを着ていたが遭難」でしょうね。

結局は、ゴアテックスのつまみ食いだったから、と言えます。

そうなると、トレペさんの考える

    >上にも書きましたが今回遭難された方は初心者ではないんですね
    >(ツアー募集要項でも過去に同社ツアー参加が前提)

ここにも「つまみ食い的な総合性の欠如」はあったのではないだろうか?
失礼な言い方になりますが、トレペさんは

    初心者では無い=総合性が完璧

とされているのでしょう。しかし、それは本当か?
船は、穴が開けば浸水するのが当然で、そういう穴が開いている状態=総合的はアウトの状態は「初心者でないから担保される」と言い切れるものなのか?と考えると????と思うわけです。

で、問題は「総合性の問題」ですから、一部が良くて他の一部がダメ、となって顕れるでしょうから、中にはウインドブレーカーとは論外、というケースもあるでしょうね。
つまり、全部がダメなのではなくて、どこかに致命的な穴があったが、他の部分は問題がなかった、といった状況が一番理解しやすいかと思います。

本人は穴に気づいていないのだから「わたしは初心者じゃない」と思いこんでいたのでは無いでしょうか?


by 新井 at 2009-08-32 19:48:32
結局は無責任な神風登山者

 コメントをすべて読んでの感想を一言で言えば「無責任な神風登山」ということです。

 報道によれば今回のツアー参加者はいずれも15年ほどの経験者だそうですが、それにしては高山登山についての認識が大アマ、というよりも、東京で言えば標高600m級の高尾山ハイキングに行くと言う程度の認識しか持っていないらしいバカモンです。

 私は3000m級の登山は富士山だけ。後は2000m程度のハイキングに毛の生えた登山歴が少しあるだけですが、それでもいつも最悪の場合を想定して十分すぎるほどの装備をしていました。普通は山小屋宿泊の2泊3日程度で、自炊などもしない程度の山行ですが、食料は5日分ほど持参し、富士登山で雨に降られてひどい目にあったことがあるので雨・防寒対策は十分すぎるほどしていました。

 今度のツアー参加者は、それまでの安穏なツアー登山に慣れて甘く見ていたのでしょう。高山に登山するならそれなりの登山関連の書物などもたくさん読んで、心構えや準備をするのが当然だと思いますが、遭難した人たちはそれすらもやっていないかったようで、いずれは遭難するのが当然だったでしょう。

 そういう無謀で無責任な神風登山者がほとんど自ら招いたような遭難をしたからといって、多額の税金を支出して救助活動をする必要があるのでしょうか。救助する必要があるとしても、一件落着後に救助費用を遭難者やそれの家族に請求すべきだと考えます。