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反応の方は正常なのではないか?

Posted on 8月 11th, 2005 in 倉庫 by apj

 掲示板の書き込みに触発されて、遅まきながら「カルト資本主義」を入手して読んだ。書かれた時代がバブル崩壊直後なのだが、ソニーの超能力研究や永久機関商法、京セラの稲盛和夫氏の経営塾がほとんど新興宗教じみているとか、科技庁が気の研究に研究費をつけたとか、EM菌、脳内革命の船井幸雄、ヤマギシ、アムウェイといったものが取り上げられている。これらの流れに共通しているのが、オカルティズムと精神論で他人を思考停止に追い込み忠誠心を企業に向けさせて搾取したいという考え方であると、著者の斉藤貴雄は指摘している。
 その一方で、文科省の調査が発表された。

大卒6人に1人「ニート予備軍」 文科省調査

 今年三月に四年制の大学を卒業した五十五万人のうち、フリーターを含めて就職をせず、大学院や留学など進学もしない大卒者が九万八千人に達していることが、文部科学省がまとめた学校基本調査速報で十日、分かった。文科省は九万八千人すべてをニートと結びつけることは否定しつつも「相当数がニートである」としており、大卒者の六人に一人 (17・8%)が「ニート予備軍」にあたるといえそうだ。
  調査結果によると、今春の大卒者は五十五万千十六人。このうち(1)「就職者」三十二万九千四十五人(2)「大学院等への進学者」六万六千百八人、(3)フリーターなど「一時的な仕事に就いた者」一万九千五百七人‐など六つの区分に分け、区分外の「進学も就職もしていない」層を全体の17・8%となる九万八千一人と算出。大卒者全体の五・六人に一人が就職も進学もしない結果となった。
 ニートは一般的には「就職も進学もしない若者」との定義が広く浸透し、「若年無業者」と 置き換えられたり、無気力な若者の代名詞ともなっている。しかし、もともとは「Not in Education, Employment or Training」の略で「就職、進学、求職活動をしていない人」との意味。厚生労働省が「若者の人間力を高める国民会議」に示した資料には「年齢十五‐三十四歳で求職活動、通学、家事をしていない者」として六十四万人(十五年)と推計している。ところが、同省がまとめた労働経済白書ではさらに、「卒業者かつ未婚」と限定して五十二万人と発表するなど定義と把握数がまちまちの状況だ。
 文科省は今回の九万八千人について、「家事手伝いや求職活動をしても仕事に就いていない層、例えば就職浪人も含まれており、すべてがニートとはいえない」と強調しながら、「ニートが含まれているのは間違いない」と分析している。

 斉藤貴雄の主張がある程度の真実をついているとすれば、洗脳されて搾取されることに抵抗するのは、人間が人間らしく生きていくために必要な、自然な行動ではないかという気がしてくる。力のない人間の抵抗としては、就職自体を拒否する位しか手段がないということではないか。経済政策の失敗の責任を誰も負わずに、精神論とオカルトで(本当は年功序列と終身雇用の見返りがあって生じていた)高い職業意識だけを求めようとする社会に対して、ニートという手段を取る人が増えるのは、実は人としてまったく正常な反応なのではないかという気がして仕方がない。