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膜による水処理

Posted on 10月 11th, 2006 in 倉庫 by apj

 生協で「図解 よくわかる水処理膜」を買ってきた。海水淡水化プラントの話題を中心に、飲料水や超純水を作るために膜がどう使われているかが良くまとまっている。書いた人は、この分野の大手メーカーの栗田工業(株)の人である。
 実験室では、蒸留水製造装置ではなく、ROと電気透析を組み合わせた純水製造装置を使っているので、興味深く読んだ。飲める水の確保が大変で、海水淡水化で日本企業がずいぶん頑張っていることがわかった。

 ただ、海洋深層水に応用しているという部分の記述(131ページ)が、

(略)
逆浸透膜装置や電気透析装置で海水から塩分やミネラル成分を抜く脱塩処理が行われている。
 海洋深層水の特徴は、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル成分がバランス良く含まれるため、ミネラル不足が指摘される現代人の食生活の改善に役立ち、同時に高血圧症、糖尿病などの生活習慣病の予防にもなるといわれている。

と微妙な表現になっている。直前でミネラル成分を抜くと明記してあるのになぁ。
 実際には成分を再調整している(とボトルに書いて売ってたりする)からミネラルは入っているけど、量は少ない。安全でおいしい水にはなってるかもしれないが、効率の面では、ミネラル補給は食物からの方がいいだろう。


ここからは旧ブログのコメントです。


by ぺたのーる at 2006-10-30 09:28:30
Re:膜による水処理

海洋深層水に関しては、膜法海水淡水化をやっている企業の多くがそれなりに調査をしているようですが、内容は…と思っています。
 私の判断では、健康産業がやっている海洋深層水を売るための方便の同列もしくは延長でしかないです。

 apjさんの仰せのとおり、ミネラル供給は何も水からである必要はないわけで。
 面倒がらずバランスのよい食生活を送っていれば十分だと思います。


by apj at 2006-10-11 10:02:11
Re:膜による水処理

ぺたのーるさん、
>私の判断では、健康産業がやっている海洋深層水を売るための方便の同列もしくは延長でしかないです。

 今回の栗田工業の人達にとっては、海洋深層水で飲料水を作っているメーカーは、膜方式の水製造プラントを買ってくれる「お客様」ですから、そうそう正直なことを書くわけにもいかなかったという、大人の事情があるように見えますね。
 


by 越後屋遼 at 2006-10-13 10:23:13
Re:膜による水処理

海洋深層水を汲み上げるプラントにかかっているコストを回収するために容認している、に一票。


by 通りすがりのPD at 2006-10-17 07:55:17
Re:膜による水処理

しかし・・・大人の事情という背景を考慮せず、そして著者が栗田工業というまっとうな企業の関係者でなくて、なおかつ、まっとうな出版元でなければ、トンデモとして笑って済ませられるようなレベルなんでしょうが。

高血圧病や糖尿病を予防するには、煮炊きの水だけでなく、飲み水も全て海洋深層水にしても足りないんじゃないでしょうかね。

とはいえ、私は海洋深層水に対しては一定の評価をしています。というのも、院生時代に微生物培養をやっていたとき、微量元素を加える代わりに(戯れに)市販の海洋深層水を用いて培地を作ったのですが、増殖速度が明らかに違いました。
まぁ、海水で対照を取るべきところ、それをしなかったので、「深層」水が影響したのかどうかは分かりませんが。

全くの余談になりますが、私の行きつけのラーメン屋は、調理水だけでなくお冷の水も、「逆浸透膜で作った超純水」を使っていることを売りのひとつにしています。