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「教育的配慮」を叩き潰せ

Posted on 4月 29th, 2009 in 倉庫 by apj

 ちょっと参考になる記事が出てきたので。

教育現場の指導に指針 体罰めぐる最高裁判決
4月28日11時59分配信 産経新聞
 男子児童の胸元をつかんで叱る行為を体罰にあたらないとした28日の最高裁判決は、教員が萎縮(いしゅく)するあまり、厳しい生徒指導をためらう傾向がある教育現場の実情に配慮した判断といえ、影響を与えそうだ。

 授業中に騒いだ児童を廊下に立たせるといった指導は体罰や人権侵害だと批判され、授業中にメールをしていた生徒から携帯電話を取り上げただけで保護者らから抗議を受けることもあるという。こうした状況から、“モンスターペアレント”という言葉すら生まれた。

 学校教育法11条には「児童に懲戒を加えることはできる。ただし、体罰を加えることはできない」とある。しかし、「ただし書き」の「体罰」の基準は不明確だった。基本的な考え方は、昭和23年の法務庁長官回答にさかのぼる。体罰を「懲戒の内容が身体的性質のものである場合」と定義。「身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、けるの類)が該当することはいうまでもないが、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒もまたこれに該当する」としていた。

 政府の教育再生会議は平成19年1月、体罰の基準見直しを求め、これに呼応して文部科学省は同年2月、肉体的苦痛を与えるものでない限り放課後の居残り指導や授業中の教室内での起立命令を体罰としない、と全国の都道府県教委などに通知した。しかし、基本的には昭和23年の枠を出ていない。

 もちろん最高裁判決は「殴る、ける」や「肉体的苦痛」を容認したものではなく、体罰の定義も示していない。しかし、許される行為を明示し、体罰か否かを判断する要素として「目的、態様、継続時間」を挙げたことは、指導に戸惑う教育現場にひとつの指針を与えるものになりそうだ。

 生徒側が教育現場で実社会並の権利主張をするのなら、ペナルティの与え方も実社会並にしないとバランスが取れない。大人の社会で同じことをすれば、民事なり刑事なりの事件になるようなことでも、これまでは、教育的配慮の名の下に教師が叱って済ませてきたのではないか。生徒側が権利主張でもって教師の与える罰を排除するなら、あとは、問題を起こした生徒をどんどん通報して警察の手に委ねるしかなくなる。教育的配慮を理由に甘い措置をせよと言うのは、学校を無法地帯にせよと言っているのと同じことになるだろう。実社会並、つまり学外の基準を適用することにしても、家庭裁判所があったり少年法があったりするので、社会の側の配慮は既に存在する。

 体罰に関する回答があったのが昭和23年で、最近になって体罰を法的問題とするようになってきたということは、法に現場を合わせようとし始めたということではないか。それならば、他の部分も全部合わせないと一貫性を欠く。

 最高裁が教師の叱り方を決める時代になったのだから、ペナルティを与える場合に「教育的配慮」で教師を縛るのはもはや時代後れではないか。教師が従うのは「法」のみでいいし、そうでなければ身を守れない。教育現場での徹底的な権利主張は、教育現場を徹底的に法で規律せよという主張に他ならないのだから。

※いじめの問題にしても、学校側が口頭で注意するとか当事者を引き離す(可能なら)という措置をした後は、どんどん当事者に証拠開示して、後は当事者で損害賠償請求でも何でもやってくれ(学校側は知っていることを全部述べる)、とした方が、学校も余計な責任を問われなくてすっきりするかもしれない。これまでは、その手の事件を不祥事と考えて隠したがっているように見えるが、隠すと却って危険だろう。また、下手に調査をしたら、今度は生徒に対する配慮を欠いたと苦情を言われかねない。

【追記】
 酔うぞさんのコメントによると、今回のケースは、
(1)学校の業務が停滞する、猛烈なクレーム
(2)教師に対する刑事告発
とセットだったという話である。コメント欄にも書いたが、私の主張は、(1)については業務妨害を理由に刑事や民事の手続を親に対してとれ、ということで、(2)については誣告を理由に逆告訴してついでに民事で損害賠償もとれ、ということ。こういうことをためらわずにやらなければならない時代になっているし、また、そうすることに対して教育現場だからという理由で横やりを入れるのはまずい、ということも同時に主張していかなければならないんだろうなぁ、と考えている。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2009-04-18 20:25:18
今回の事件は参考にならないようです

今回の事件は報道によると、
  学校の業務が停滞する、猛烈なクレーム
  教師に対する刑事告発
とセットらしいです。

その結果の、最高裁判決だとすると、地裁・高裁・最高裁と賠償が大きく(最後は無し)に変化したのかも理解できない。

というわけで「参考にしない方が良いのでは無いかな?」であります。


by apj at 2009-04-06 22:14:06
apj

酔うぞさん、

 私のコメントを書いた趣旨は

>  学校の業務が停滞する、猛烈なクレーム
 この時点で、業務妨害で刑事&民事でその保護者に対処すべき。

>  教師に対する刑事告発
 教師は誣告を理由に逆告訴して、ついでに損害賠償も請求すべき。

ということの方を言いたかったわけで。教育的配慮を潰せというのはこういう意味です。新聞記事が参考になるのは、時代背景が変わったという話の資料としてだけであって、法的手段をとることをためらうなという内容で教師を励まさなければならない必要はまだまだある、というか始まったばかりというか。


by 摂津国人 at 2009-05-47 11:01:47
「法的手段をとることをためらうな」は同感です。

 apjさんの論旨とずれているかもしれませんが、戦前(大正・昭和初期)からでも日本においては生徒側(親?)が学校を訴えるのはそれほど珍しくは無いという説もあるようです。

 ”少年犯罪データベース”より「戦前の親を見習おう」
http://blog.livedoor.jp/kangaeru2001/archives/51444894.html

 これによると体罰禁止も“モンスターペアレント”?も教育関係者の法律音痴も戦後始まった事ではないという話です。