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「擬似科学」と似ているところと違っているところ

ニセ科学判定ガイドライン試案との関連

 ニセ科学判定ガイドライン試案は、以下に示すチェックリスト事例集のようなことを個別にチェックして言説の中身に立ち入らずに済ませる形にしている。中身を全く考えずに済ませられるというわけではないが、最初に主張の中身そのものを検討するところから入らなくても済むようになっている。なぜなら、チェックリスト事例集にひっかかるような内容のものは「客観的に立証」を満たさないことがほとんどであるから、いろんな人が出したチェックリストを順番に当たるよりも、現状で証拠があるかを見る方がおそらく手っ取り早い。この方法は、科学の発展の過程での相互チェックのしくみがそこそこ働いていれば、うまく使える。

 まともな科学の特徴として、客観性とか再現性といったものは、誰でもすぐに思いつくに違いない。問題となった言説がこういった特徴を備えているかどうか、そのことを誰かに説明するにはどうするか、となった場合には、「どんな証拠を出せばよいのか?」ということになる。ニセ科学判定ガイドライン試案は、このための手順を示したものである。つまり、通常の疑似科学か科学かの判定とは、入り口の場所が違っていることになる。

 

 

 

チェックリスト事例集

カール・ポッパーの反証可能性

  • 本当によい科学理論はどれでも、禁止則になっている。すなわち、ある種の事象が起きるのを禁じている。禁じる事象が多ければ多いほど,よい理論である。
  • 想像可能などんな出来事によっても反駁できない理論は非科学的である。反駁不可能であることは,理論の長所ではなく欠点である。
  • 理論に対する真正のテストはどれも,それが誤りであることを立証しようとするか,あるいはそれを否定しようとする試みである。検証可能ということは誤りであると立証できるということで……
  • まとめると、理論が科学のなかで占める地位の基準は,それが誤りであると立証できること,それを否定できること,それを検証できることにあると要約できる。

「きわどい科学」マイケル・W・フリードランダー著、田中&久保田訳、白揚社、99ページ

 

ラングミュアによる「病的科学」の特徴

  • 観測される最大の効果は,ほとんど検出できないくらいの強さの原因から生まれ,その効果の大きさは本質的に原因の強さには依存しない。
  • その効果の大きさは検出限界ぎりぎりのところにとどまる。あるいは,得られた結果が統計的にはほとんど意味を持たないために,数多くの測定が必要になる。
  • きわめて精度が高いと主張する。
  • 経験と矛盾する夢のような理論である。
  • 批判すると,とっさに思いついたその場限りの言い逃れをする。
  • 反対者に対する支持者の割合は50%近くまで上がるが,その後は次第に下がっていってやがて忘れ去られてしまう。

「きわどい科学」マイケル・W・フリードランダー著、田中&久保田訳、白揚社、323ページ

 

マリオ・ブンゲによるチェックリスト

  • 新しい理論は融通性に乏しく,一般に新たな研究の妨げになる。
  • 一般に,支持者は研究していない信奉者からなっている。
  • 疑似科学の現象のほとんどは信奉者にしか証明できず,その多くが超自然的効果をほのめかしている。
  • 拠り所とする議論の多くは時代遅れだったり信頼できない文献から引かれるか,証明不可能である。そうした理論には明確さと首尾一貫性が欠けている。
  • 数学が使われることはめったになく,論理的な議論も欠けていることが多い。
  • 主張される現象の多くは非常に古くからあるものだが,そのアイデアにはほとんど,あるいはまったく進展が見られない(これと対照的に,科学の本流では知識が累積されていく)。
  • 新たな仮説を歓迎したがらない。
  • 好ましくないデータを隠したり歪曲したりする。

「きわどい科学」マイケル・W・フリードランダー著、田中&久保田訳、白揚社、323ページ

 

マーティン・ガードナーによる「まぎれもない疑似科学の連中の偏執的傾向が現れる五つの特徴」

  • 自分を天才だと考えている。
  • 仲間たちを例外なく無知な大ばか者と考えている。
  • 自分は不当にも迫害され差別されていると考えている。
  • もっとも偉大な科学者やもっとも確立されている理論に攻撃の的を絞りたいという脅迫観念がある。
  • 複雑な専門用語を使って書く傾向がよく見られ,多くの場合,自分が勝手に作った用語や表現を駆使している。

「きわどい科学」マイケル・W・フリードランダー著、田中&久保田訳、白揚社、324ページ

O.ウィルソンによる条件

  • 実験を再現し,検証することができるか?
  • それによって,以前より万物の予測がたつようになるか?

このふたつの問いに対する答えが,どちらか一方でもノーであったら,それは科学ではない。

「わたしたちはなぜ科学にだまされるのか」ロバート・L・パーク著、栗木訳、主婦の友社、87ページ