パーソナルツール
現在位置: 科学とニセ科学 / 個別の議論 / EM(菌) / EM汚染
 

EM汚染

 まるでナンセンスな話が出てきたのでツッコミを入れておく。

元ネタは大阪日日新聞の記事より。

河川浄化 主婦の目線で

EMボカシネットワーク大阪代表

岸 隆美さん

2012年6月13日

有用微生物を活用環境教育にも一役

 

 水質浄化に働く“EM菌”。酵母菌、糸状菌、光合成細菌など自然界に存在する有用微生物群(Effective Micro-organisms)の総称で、淀川や道頓堀をはじめ全国的にも太田川(広島)や阿瀬知川(三重)など菌を用いた河川浄化の事例が報告されている。

 

 「EMボカシネットワーク大阪」代表の岸隆美さん(69)=東大阪市=は、EM菌にサトウキビから作った糖蜜とぬかを混ぜた通称“元気玉”を河川に投入し、啓発活動などを行っている。トイレに散布すれば汚れが分解され、生ごみは堆肥に変わる。そんな身近な効果をきっかけに、主婦の目線で取り組んできた。小中学校での環境教育にも一役買っており「みんなが力を出し合って川を守ろうという風潮になれば」と前を向く。

 

■出合いは20年前

 EM菌の存在を知ったのは、余命6カ月を告げられた義妹を看病していた20年ほど前だ。ブタの飲み水にEMを混ぜたところブタが元気になり、小屋の悪臭も消えたという話を耳にした。そして、療法の一つとしてその尿を飲んだがん患者が快方に向かったと聞いた。

 以来、企業や大学教授の講演を訪ね歩き、情報を求めた。看病の傍らで素材を食事に混ぜ続けたところ、義妹の食欲が戻ったという出来事が今も心に残っている。

 そして、活動を広げるべく1998年に団体を立ち上げた。

 地元・東大阪市内の河川を皮切りに、2004年からは大阪市漁協と力を合わせて2年間で道頓堀に20万個の元気玉、淀川でも06年以降にEM菌とその活性液などを継続して散布している。当時の組合長は「川底のヘドロが砂に変わった」と感激し、川べりの店舗からは「窓を開けていても臭わなくなった」などの声が聞かれたそうだ。

 

■地産地消を

 淀川で採取されるブランド“鼈甲(べっこう)シジミ”がかつては百貨店でも販売され、散布後一時は漁獲量が例年の2・5倍に相当する100トンまで戻った。「淀川、大阪湾をきれいにしたい」という漁協の思い入れにも触発され「楽しみながらやってこれた」と十数年の活動を振り返る。

 「地産地消を真剣に考え、市民や行政、企業をもっと巻き込まないと」と岸さん。「せめて一つでも気づいたことから変えてほしい。それが子どもの健康にもつながるのでは」と将来を思う。

 

 ○…「地球上で最初に生まれた生物が光合成細菌。2000度でも死にません」。図解に子どもたちが真剣なまなざしを向ける。子どもたちが授業でこしらえた元気玉を学校周辺に投入し、その下流の水質が改善されたというデータが胸を躍らせる。東大阪では、10年来の環境教育が好評で「子どもたちが遊べる川に」という地域の願いに後押しされ「次から次へといい人にめぐり合えた。運がいい」と笑顔を見せる。

 17日には、今年で9回目を迎える大阪湾再生市民プロジェクト「淀川で『しじみ』獲り」が行われ、たこ飯、しじみ汁も振る舞われる。参加費は大人1500円など。問い合わせは電話06(6782)6518、同団体へ。

 環境教育に一役かいたいという気持ちはわかるけど、インチキを広めてはいけない。2000℃で死なない菌など存在しない。それどころか、大抵の有機物は分解されて低分子量のガスになる温度だし、無機材料でもこの温度で保つものは少ない。

 ところで、ここを見に来た方は、最近、レトルト食品や缶詰や瓶詰めを食べただろうか。密封した保存食を作るには、適切に調理した材料を容器に入れて封をした後加熱して内部を滅菌している。だから、長期保存しても中で菌が繁殖したりせず、安全に食べられる。2000℃というのは、このての保存食品の容器が焦げて炭になったり溶けたり壊れたりする温度である(鉄の融点が1535℃、アルミニウムの融点が660℃くらい、ガラスの転移温度が350℃〜950℃)。そんな温度にしなくても雑菌が死滅してくれるから、私達はレトルトや缶詰を安全に利用できている。

 さて、彼らが本当に「2000℃で死なないEM菌」を手にしていたとしよう。環境浄化と称してそれを川にばらまくといっている。川にばらまいたものがそこにそのまま留まっているはずがない。環境中に広がり、水の利用とともに、人間の指先だけじゃなく、野菜果物肉魚にも「2000℃で死なないEM菌」が付着するだろう。一旦そうなってしまったら、レトルトや缶詰を作っても、内部に潜り込んだEM菌の滅菌は不可能である。何せ「2000℃で死なない」のだから、これまで行ってきた加熱滅菌のプロセスは全て無効だ。EM菌が生きていれば、これは人間用の食べ物だからと増殖を控えてくれる筈もなく……世の中のレトルトや缶詰が全滅する結果になる。これは、とんでもないバイオテロである。ただちに逮捕してでもやめさせなければいけないレベルである。

 「EM菌は悪さをしません」と強弁された場合についても考えておこう。悪さをしなかったとしても、代謝はするわけで、レトルトの中身は元のままでは無い。最大限善意に解釈して「発酵」したものということになる。しかし私たちがレトルトのカレーを買ってくる時は普通にカレーが食べたいのであって、「わけわからん菌で発酵したカレー」を食べたいわけではない。これは供給側だって同じ。ということで、食品を、供給側と消費者の意図に反したものにしてしまうという意味で、人を病気にするといった意味での悪さをしなかったとしても、やっぱり食品に対するテロだよね。

 実際にはそんな菌は存在しないから、食品会社は今日もしっかり製造と品質管理に成功していることだろう。

 もうちょっと生物学っぽいツッコミとしては、2000℃で生きていられる菌にとっては室温前後は低すぎるので増殖できないだろうという議論もできる。この場合は、川に撒いたところで温度が低すぎて何の働きもできないから意味がない、という結論が導かれる。どっちにしたってダメなのである。