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「1分でできる!!『女の冷え性対策サイト』」へのコメント(2003/01/16)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 健康管理アドバイザー相川優氏が冷え性対策について解説しているページ。対策方法はいたってシンプルで,

『トルマリンという石をお風呂に入れるだけ』

だそうな(目から鱗のコンセプト)。理由の説明は,電気石の効果に書いてあるが,久保哲次郎氏の固体物理の内容を踏襲したものと思われる。

まず,冷え性が改善される理由として,

トルマリンは微弱な電流を常に発しているからなのです。

と説明される。久保哲次郎氏の文献から始めると,簡単にトルマリンが永久機関になるから困る。

次に,

ただの石が電流を発している??な〜んて疑心暗鬼になりそうですが、科学の世界ではキューリー兄弟が発見した電流を発する唯一の石としてつとに有名なのです。

 これも間違っている。トルマリンは自発分極は持つし,圧電性や焦電性は示すけど,電流を発する石では断じてない。その次の説明は,電流->電気分解->アルカリイオン整水器->水のクラスター微小化,という連想に基づくらしい。

 

これは水道水に電気を流すことによって、身体に吸収されやすい水に替えるということです。そうした水を飲んでいると新陳代謝が活発になり、身体が健康になるということです。
(中略)
これと同じことが、トルマリンを水に入れるだけでできてしまうのです。

 

 前提となっている,水道水に電気を流すと水が身体に吸収されやすくなるという話に根拠はない。体内の水分量は,恒常性の維持によって一定になるように調節されているので,普通に暮らしている状態では,水によって新陳代謝が変わることもない。トルマリン自体には電流を流す効果はないので,結局,文章全部ことごとく間違っていることになる。そもそも,飲まなきゃ効果がないアルカリイオン水の話を,お風呂の説明にくっつけるのも無理がある。風呂の水は飲まないと思うぞ,普通は。

 

このお湯に浸かると、敏感な人はすぐに水がなめらかになったことに気付くはずです。
やわらかい水分が皮膚からスッと吸収されて身体を芯まで暖めてくれます。

 

 水が皮膚から吸収される話になっている。これが事実なら,風呂に入るたびに普段より水ぶくれになりそうだが・・・。当然,皮膚から体内に水が吸収されると困るから,風呂に入った程度では体内の水分量が変わらないようにヒトの体はできている。

 

トルマリンを水に入れると”界面活性効果”のある物質が作られます。

 

 界面活性効果については,元文献で久保氏ですら,モデルに検討の余地があると書いているのに,ここの解説では断言している。もっとも,トルマリンからナトリウムやカリウムが溶け出すことはあるから,水のpHが変わるので,肌触りが変わったと感じても不思議はない。が,これはミラクルな効果ではなくて塩基の濃度が変わった効果である。

 「実際にどのように化学反応しているのか知りたい方はこちらをClick!」と書かれているところを見ると,小さなウィンドウが開いて,化学反応を説明してくれる。が,出てくるのは壮絶な化学反応(なのか?)である。

 水に鉄を加えて生じるものが「He3O4」(マグネタイト)というのはそりゃいくら何でも違うだろうという・・・。鉄がヘリウムには化けないはず。これをtypoとしてまあ見逃すとしても,水に鉄を入れておくと生じるのは酸化水酸化鉄FeO(OH)である。不動体を作って反応しなくなるのは鉄を濃硝酸に入れたときである。ついでにいうと,Fe3O4は,鉄の燃焼によってできる。また,反応式の下の方では,水酸イオンOH-と水を組みにしてH3O2-と書いてヒドロキシルイオンと呼んでるけど,普通はこんなことは書かない。水酸イオンは水酸イオンのままである。H+イオンのときはH3O+と書くけど,これは,H+イオンとは陽子1個だけなので,これが裸では存在できないという特殊事情がある。OH-は普通の多原子のイオンである。

 ともかくこんな化学式を書いておいて「 ’ピン’と来ましたか?」などと念を押されたら,もう笑うしかない。

 久保氏の総説にはなかった,お約束の遠赤外線効果は,こんな風に説明されている。

 

トルマリンにはさらに、遠赤外線を出しているという特徴もあるのです。
(中略)
感じやすい人ですと、トルマリンを数分手に持っているとジワァ〜っと暖かくなってくるのがわかります。

 

 そりゃ,手の温かさでトルマリンが暖まったんでしょうよ。ある温度の物体は,トルマリンに限らず赤外も遠赤外も出しているけど,周りの温度と同じなら,周り以上にトルマリンが勝手に赤外や遠赤外を出すことはない。この説明だと,トルマリンをその辺に置いておくだけで遠赤外線を放射しているように見える。ここでも,トルマリンが永久機関になってしまっている。

 トルマリン入浴が快適ならやればいいんですが,スーパーで売ってる入浴剤と比較して選ぶ程度のことはしてもいいんじゃないかな。ただ,快適さの理由としては,このサイトの説明には間違いが多すぎる。これを信じる人が続出しているとしたら,冷え性以前に背筋が寒くなるのは私だけじゃないと思う。

 

トップページがどこかはっきりしないのだが,ここからたどれる。