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(1999/02/18)

ご注意:このページは、元ネタとなったウェブサイトが閉鎖され、また元ネタとなったウェブページの内容に誤りがあるという指摘をいただいたので、実態に合わなくなったという理由で商品名を消去し、若干の修正を加えて掲載しています。似たような宣伝文句をどこか他で見かけたときにでも活用してください。(2001/10/22)

ミネラルウォーターを手軽に作る装置の販売。それはともかく、この浄水器の売り文句が矛盾しまくっているのがこのページの見所である。

 まず試薬を水道水や井戸水に添加すると、不純物が凝集するらしい。その不純物を活性炭やセラミックフィルターでフィルターで取り除いた後、ミネラルを調整する。この最後の処理に関して次のように説明されている。

STEP4ろ過されたミネラルウォーター
わたくしたち人間の体液のミネラルバランスに限りなく近い水、
イコール真の生命水が出来上がります。
良い水の条件として次の7項目を全てクリアーにしています。
■ミネラルバランス良く含む
■有害なものを含まない。
■塩素と炭素ガスが十分溶け込んでいる。
■水の硬度が高すぎない。
■ペーハーが弱アルカリ
■上記の条件を満たした上、水のクラスターが小さいこと
■活性酸素除去能力が高いこと

「塩素と炭素ガスが十分溶け込んでいる」って、この浄水器のふれこみでは、活性炭を使って塩素は取り除くんじゃなかったっけ?塩素が十分含まれているようじゃ、NaClのような陽イオンと共に存在しない限り有害だから、この条件の1つ前の「有害なものを含まない」と矛盾している。
 さらに、「塩素と炭酸ガスが十分とけ込んでいる」なら水のペーハーは酸性になるはずだ。たとえ塩素がNaClのような形で含まれていたとしても、炭酸ガスだけでも弱酸性になる。
 Na2CO3(炭酸ナトリウム)のようなものを考えれば、溶液が弱アルカリになるけど、炭酸ナトリウムの水溶液中にCO3イオンが存在することを指して、「炭酸ガスがとけ込んでいる」とはいわない。

 上記リストの、「水のクラスター」にはリンクがあって、クリックすると水のクラスターに関する説明が出る。一応それらしい図が書いてあるのだが、液体の水のクラスターサイズを一体どうやって測定したのだろう。そんなに簡単にクラスターサイズが測れるなら、ぜひその方法を私も知りたい。
 水のクラスターの絵の下に、作った水と水道水の水のクラスター比較として、O-NMR測定のグラフが出ている。水道水はピークの幅が太くて半値幅147.2 Hz、作った水はピークが鋭くて55.3Hzとなっている。一見もっともらしいのだが、17Oのスペクトルの半値幅と水のクラスターには直接の関係はないもしクラスターサイズが変化したのなら、水分子の熱運動そのものが違ってくるはずなので、スピン−格子緩和時間T1に変化がでるはずである。それでも、クラスターの大きさが測定できるわけではないのである。NMRという測定手段で得られるのは、あくまでも核スピンのダイナミクスであって、クラスターといった空間的な情報を得ることはできない。

 さらに、NMRで測定した水の17Oのスペクトルの半値幅は、pHによって敏感に変わる。pH7付近が最も半値幅が大きく、pHが大きくなっても小さくなっても半値幅は小さくなる。このことは、水に微量のNaOHやHClを加えてpHを変化させた実験結果によって示されている。同じ試料の測定で、NMRのスピン−格子緩和時間T1は変化せず、加えた電解質の量が少ないため水分子の熱運動はほとんど変わらないことが示されている。
 せっかくグラフをのせてくれているのだが、このグラフから読みとれることは、水道水に比べて作った水のpHは7からより外れたものらしい(酸性側かアルカリ側かは不明)ということだけである。

 もし、この水でT1をちゃんと測定しようとするなら、まず水に溶けている酸素を脱気する必要がある。普通はアルゴンで置換する。そうしないと酸素の常磁性の影響でまともな緩和時間が出てこない。でもその結果、リスト中で良い水の条件とされている「塩素や炭酸ガス」もアルゴン置換で追い出されてしまうことになる。測定試料は望ましい状態ではなくなってしまうだろう。さあどうする。

 クラスターの説明に続いて、以下のような説明と植物(さつき)の写真が載っている。

■クラスターが小さくなると(写真参照)
毛根よりミネラルを吸い上げ易く、葉の先端まで運び易くなるので、植物が活き活き
と育つようになります。処理した水は一切腐りません。
生命が生まれた源には、ミネラルが大きく関係しています。

 植物が活き活き育つのは本当なのだろう。植物の生理と人間の生理を一緒にしていいかどうかがちょっと謎だが、ともかく生物(と一括りにできたとして)に有用なミネラルを含んでいる水が作れるらしい。しかし、「一切腐りません」というのはちょっと恐い。腐らないということは微生物が繁殖できないということで、それって毒物じゃないのか?飲んでもいいのか?大丈夫か?私は飲む気がしないぞ....。体にいい水を作る話のはずなのに。

 いかに体に良いミネラルを含んだおいしい水を作れるか、という説明に徹した方がいいと思う。「水のクラスター」で科学的に怪しい話になって、「腐らない」で消毒薬か毒物を作る話になってしまっている。