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株式会社プロホームアドバンス様とのクラスターの話(2001/12/06)

 先日、コメント変更の依頼のあったプロホームアドバンス様より、今度はクラスターの話について連絡があった。

From: "Mineral" <mineral@mx51.tiki.ne.jp>
To: "apj" <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: クラスターに関するご質問
Date: Thu, 1 Nov 2001 17:34:36 +0900

天羽 優子様

株式会社プロホームアドバンス
担当:■■■■

今回は水のクラスターの件について質問させて頂きます。

水のクラスターの経緯についてはご承知のことと思いますが、一般にクラスターの小
さいものが良い水の条件であるとされており、当社でも測定したところ良い結果が得
られたのでカタログに使用しています。水のクラスターの話はイメージ的に分かりや
すく、水の話としても面白いと思います。
今回のようにクラスターのことのみを大きく取り上げて批判されるのは、ちょっとと
まどいを感じます。

さて、クラスターの話について読ませて頂きましたが、内容が専門的すぎて正しいの
か正しくないのか判断することが出来ませんでした。仮に「賛成派」「反対派」としま
すと、「賛成派」の専門家の人達はこれに対してどのようなコメントを述べられている
のでしょうか?

当社にある書籍では下記のものがあります。
「命にいい水悪い水」松下和弘著 JICC出版局(1993年2月5日発行)
p.22「水の分子運動は、ペーハーが中性付近の時にもっとも遅く、酸性側かアルカリ
性側に傾くほど早くなります。17O−NMRのデータでも、酸性側かアルカリ性側に傾く
ほど信号の線幅が狭くなっていきます。私たち流の表現をすれば、中性付近の水は分
子集団が大きく、酸性側かアルカリ性側に傾くほど分子集団は小さくなるということ
です。」

「わかりやすい浄水・整水・活水の基礎知識」久保田昌治/野原一子著 オーム社
(平成7年10月25日発行)
p.70「クラスターの大きさがNMRにおける半値幅によって評価できるとしたのが松下
和弘氏です。ところが半値幅の大きさは、pHの変化で説明できるといっているのが法
政大学の大河内正一氏ほかです。確かに理論と実験値がよく一致するので、pHのすべ
てで説明できそうに見えますが、現時点ではまだ一つの説明と見ておいた方がよさそ
うです。」

二つ目の書籍の著者は、批判の文章を読んだ上で「中立派」となっているようです。
現在専門家の間では、このような水クラスターについて充分議論がなされ結論が出て
いるのでしょうか?

話が少し変わりますが、当社の浄水器の場合、多種類の微量ミネラルを添加すること
を特徴としていますが、このときミネラルイオンが水分子と水和しクラスターが小さ
くなっているという説明なら間違いではないといえるのでしょうか?

時間がございましたら、ご回答頂きますようよろしくお願い致します。

Subject:Re: クラスターに関するご質問
Date: 6:47 PM 01.11.1 +0900
From:apj

■■様
At 17:34 +0900 01.11.1, Mineral wrote:
>られたのでカタログに使用しています。水のクラスターの話はイメージ的に分かりや
>すく、水の話としても面白いと思います。

 だからこそ問題なのです。
まともな水の本や研究論文にあたっていれば、出てくるはずのない話です。
本については、当方のウェブページの本の紹介のところにおすすめの
ものを取り上げています。ぜひ入手して読んでみて下さい。

>さて、クラスターの話について読ませて頂きましたが、内容が専門的すぎて正しいの
>か正しくないのか判断することが出来ませんでした。仮に「賛成派」「反対派」としま
>すと、「賛成派」の専門家の人達はこれに対してどのようなコメントを述べられている
>のでしょうか?

 まず、「専門家」が何の専門家なのかが問題です。賛成派がどの程度の
範囲に広がっているかはわかりませんが、反対派の方は比較的はっきりして
います。普通の分析化学者、物理化学および化学物理の研究者は全て
反対派と考えていいと思います。少なくとも、今、巷でいわれている
クラスターの話を認めている人は一人もいません。この中には、分子線
クラスターの実験をしている人たちも含まれます。イオン化クラスターの
先生とも会って話をしましたが、液体構造の話には直接結びつかないという
ことでした。
 今年の6月には、若手研究者が集まって、「分子科学から見た21世紀の
溶液科学」という会が岡崎の分子科学研究所で行われました。このときも
最後のディスカッションで、液体状態でのクラスターについては今のところ
曖昧さのない定義をする方法も調べる方法もないということが話しあわれ
ました。
 専門家の現状について調べるつもりがあるなら、毎年秋に行われる
「溶液化学シンポジウム」に来て、質問をぶつけてみるといいと思います。
国内の溶液、液体の主だった研究者の集まる会です。来年は、日本化学会と
ジョイントで行われます。大阪大学豊中キャンパスです。
 また、17O-NMRで水のクラスターの大きさをきめたという内容の論文は
見たことがありません。ここでいう論文とは、たとえばJ. Chem. Phys.,
J. Phys. Chem, J. Am. Chem. Soc., などの主だった物理化学や化学物理の
雑誌で、専門家による査読が必要とされるものです。

 賛成派ですが、当方のウェブページで大学の研究者が連名になっている
日本語の報文をリストアップしています。農学部の人がそういう実験を
しているので、しいていうなら農学部の一部が賛成派なのかなあ、とも
思います。しかし、どこまでNMRを理解してやってうるかが謎なので、
なんともいえません。健康関係に担ぎ出される医学博士については何とも
いえませんね。

 松下氏が日本化学会でNMRの線幅で水クラスターの大きさがわかるという
話をしたときには猛反対をされたそうですが、それでも松下氏は業界誌に
その話を出して、その結果が今の状態だときいています。

>p.22「水の分子運動は、ペーハーが中性付近の時にもっとも遅く、酸性側かアルカリ
>性側に傾くほど早くなります。17O−NMRのデータでも、酸性側かアルカリ性側に傾く
>ほど信号の線幅が狭くなっていきます。私たち流の表現をすれば、中性付近の水は分
>子集団が大きく、酸性側かアルカリ性側に傾くほど分子集団は小さくなるということ
>です。」

 この書き方だと、分子運動と分子集団の大きさの関係がはっきりしません。
また、T2緩和時間はプロトン交換の指標であって、分子自身が位置を変える
運動を直接反映してはいません。分子自身の位置が変わることの指標は、拡散
係数をみないといけないです。
 また、上記のJ.Chem.Phys.などの雑誌では、OH-イオンやH+イオンを含んだ
水クラスターのシミュレーションがなされていますが、水の水素結合ネットワーク
にこれらのイオンが埋め込まれた形でHをやりとりして拡散していくという
描像で計算されています(ここでのクラスターは、現実に計算できる程度の
個数の分子で計算しているという意味です)。分子集団が大きいとか小さいという
話が出そうにないです。

>「わかりやすい浄水・整水・活水の基礎知識」久保田昌治/野原一子著 オーム社
>(平成7年10月25日発行)
>p.70「クラスターの大きさがNMRにおける半値幅によって評価できるとしたのが松下
>和弘氏です。ところが半値幅の大きさは、pHの変化で説明できるといっているのが法
>政大学の大河内正一氏ほかです。確かに理論と実験値がよく一致するので、pHのすべ
>てで説明できそうに見えますが、現時点ではまだ一つの説明と見ておいた方がよさそ
>うです。」

 これは、緩和のメカニズムが複雑なので、pH以外にも緩和に影響をおよぼす
要素がありうるという話です。
 久保田さんは「NMRの書」という、NMRの専門書も書いています。(注:これは私の
うっかりミスで、荒田洋治氏の間違い。次の返事で訂正している)
この間買ってまだちゃんと読んでないのですが、多分、緩和のメカニズムについていくつか
の可能性を書いていると思います。
pH以外にT2に影響を及ぼす要素はあり得るが、それがクラスターサイズだという
証拠は今のところない、というのが現状だと考えています。

>二つ目の書籍の著者は、批判の文章を読んだ上で「中立派」となっているようです。
>現在専門家の間では、このような水クラスターについて充分議論がなされ結論が出て
>いるのでしょうか?

 前述したように、水に限らず液体のクラスターを定義できるか、直接測定
できるか、ということについては、折にふれて研究会で議論がなされています。
そして、今に至るまで、液体や分析化学の専門家を納得させるだけのものは
出てきていません。液体でのクラスターの定義もはっきりしないし、測定する
方法もないのです。

>話が少し変わりますが、当社の浄水器の場合、多種類の微量ミネラルを添加すること
>を特徴としていますが、このときミネラルイオンが水分子と水和しクラスターが小さ
>くなっているという説明なら間違いではないといえるのでしょうか?

 クラスターの定義がはっきりしない現状では、液体の研究者は多分
納得しないのではないかと思います。
 微量ミネラル(金属イオン)については、イオンの水和というテーマで
研究がなされています。上平恒著「水の分子工学」にも出ています。
古くから、正の水和、負の水和、あるいは構造形成/構造破壊イオンという
考え方で説明されています。大瀧仁志著「イオンの水和」って本もあった
はずです。どちらを見ても、液体中でクラスターをきめる話にはなっていない
はずです。水和については、無機化学の参考書を見るのが一番確かです。

 1つ興味深い資料があります。
http://www.csicop.org/si/9801/powell.html
アメリカの疑似科学やオカルト批判団体の雑誌に出た記事です。
磁気処理水についてのレビューなんですが、クラスターの話が全くでて
きません。一方、日本の磁気活水器メーカーや販売店の宣伝では、水クラスター
の話が出てこない会社を探す方が困難なのが現状です。普通の科学者団体が
水クラスターを認知していれば、論文は世界中で読まれますから、こういう
ことにはならないと思うのです。クラスターの論文が出れば、引用する人が
出てきて迅速に広まりますし、似たようなテーマで測定する人も出てきます。
事実、分子線クラスターの実験は世界中で行われていますし、論文も出て
います。液体の水クラスターについては、化学の専門家の論文はないし、そういう
話が出ているのは日本だけのようです。

 そちらのウェブページを見つけたので、コメントを大幅になおしたものを
作っています。近日中にこちらで公開する予定です。

 そちらの水処理は、ミネラルを加えることで成分を調整し、同時に不純物を
沈澱させてとり除くという、純粋に化学的操作によるもので、非常にわかり
やすいものですよね。なぜ、ミネラルの化学的作用で効果をきちんと説明する
というのではいけないのでしょうか?なぜ、クラスターにこだわる必要がある
のでしょうか?

 また、製品開発の元になる科学技術ですが、信頼できる論文があるか
どうかを調べるということは、企業では行われないのでしょうか?
査読を通った論文がないことに気付いていれば、こんなにも話が広まる
ことは無かったのではないかと思うのですが。

 NMRの測定は1検体20万円程度だときいています。大手企業では、
クラスターの話に振り回されて、数億円の分光器を買ってしまったと
いう話も出ています。企業が、実はほとんど役にたたないNMRの測定に
開発費をかけると、最終的には製品価格に上乗せされて、最終的には
消費者が払うことになります。一般消費者としても、クラスターの話が
はびこるのは不利益なことになります。それくらいなら、成分の分析に
金をかけてくれた方が、製品も安定するし開発費もいきるし、消費者の
利益にもなると思います。

From: "Mineral" <mineral@mx51.tiki.ne.jp>
To: "apj" <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: クラスターに関するご質問2
Date: Fri, 2 Nov 2001 17:31:30 +0900

天羽 優子様

株式会社プロホームアドバンス
担当:■■■■

早速のお返事ありがとうございます。
メールを読ませて頂きましたが、ますます混乱するばかりです。

>pH以外にT2に影響を及ぼす要素はあり得るが、それがクラスターサイズだという証
拠は今のところない、というのが現状だと考えています。

ということは、クラスターサイズである可能性もあるわけですね。前回の引用が言葉
足らずだったようなので、後の文章も付け足しておきます。

「わかりやすい浄水・整水・活水の基礎知識」久保田昌治/野原一子著 オーム社
(平成7年10月25日発行)
p.70「クラスターの大きさがNMRにおける半値幅によって評価できるとしたのが松下
和弘氏です。ところが半値幅の大きさは、pHの変化で説明できるといっているのが法
政大学の大河内正一氏ほかです。確かに理論と実験値がよく一致するので、pHですべ
てが説明できそうに見えますが、現時点ではまだ一つの説明と見ておいた方がよさそ
うです。」
「半値幅は緩和時間の逆数で、緩和時間は水分子が共鳴エネルギーを得て、エネル
ギーの高い状態になったものが、エネルギーを失ってエネルギーを得る前の状態に戻
るまでの時間です。ですから、相互作用の強いものほど、緩和時間が小さくなり、半
値幅は大きくなります。逆に相互作用の弱いものほど緩和時間が大きくなり、半値幅
は小さくなります。
クラスターモデルで考えると、大きいクラスターほど水分子の数が多く、その中の特
定の水分子に注目した場合、相互作用をしている水分子の数が多いためエネルギーを
失いやすく、緩和時間が小さくなります。逆にクラスターが小さいほど相互作用をし
ている水分子数が少ないため、緩和時間が大きくなるのです。
(中略)
pHでも半値幅の説明はつきますが、pHも一つの説明に過ぎないし、NMRも一つの方法
です。」

この文章を読むと、今のところ水のクラスターについて確定した理論はないが、NMR
で測定する方法は可能性があるので、今後の研究成果を待つ。というふうにとれま
す。

理論的に確立されてもいない水クラスターの話はしてはだめだということなのでしょ
うか?
大きな間違いがないのならば、現在このような話がありますという情報を提供しても
良いように思うのですが、いかがでしょうか。

さて、当社のホームページですが、出来れば年内にドメイン名を取得し、正式なホー
ムページを立ち上げようと考えております。また、「水華」は製造が終了してしまっ
た製品なのです。それで資料を提供しにくい状況にあるのです。年明けにはホーム
ページアドレスをお知らせすることが出来ると思います。

Subject:Re: クラスターに関するご質問
Date: 9:51 PM 01.11.2 +0900
From:apj

■■様

At 17:31 +0900 01.11.2, Mineral wrote:
>ということは、クラスターサイズである可能性もあるわけですね。前回の引用が言葉
>足らずだったようなので、後の文章も付け足しておきます。

 ただし、NMR測定でクラスターサイズが測定できる根拠はないです。
NMRのT2緩和時間を記述している式の中にも、クラスターに関する
パラメータはいっさい入っていません。そもそも、クラスターという空間的
な情報を得られない測定法であるとお考えください。

 もし、クラスターサイズであるというのなら、定性的なお話ではなくて、
クラスターを仮定した場合に具体的に緩和時間がどういう式であらわされる
かを示し、それに基づいて実験事実をちゃんと説明できることを示さないと、
まともな研究者は誰も認めないと思います。クラスター賛成派の人たちで、
これをやった人はいないのではないでしょうか。何か文献を御存じでしたら
お教え下さい。


>「半値幅は緩和時間の逆数で、緩和時間は水分子が共鳴エネルギーを得て、エネル
>ギーの高い状態になったものが、エネルギーを失ってエネルギーを得る前の状態に戻
>るまでの時間です。ですから、相互作用の強いものほど、緩和時間が小さくなり、半
>値幅は大きくなります。逆に相互作用の弱いものほど緩和時間が大きくなり、半値幅
>は小さくなります。

>クラスターモデルで考えると、大きいクラスターほど水分子の数が多く、その中の特
>定の水分子に注目した場合、相互作用をしている水分子の数が多いためエネルギーを
>失いやすく、緩和時間が小さくなります。逆にクラスターが小さいほど相互作用をし
>ている水分子数が少ないため、緩和時間が大きくなるのです。
>(中略)
>pHでも半値幅の説明はつきますが、pHも一つの説明に過ぎないし、NMRも一つの方法
>です。」

 17Oの緩和機構は主に4極子相互作用ですよね。一般にT1には分子の運動の影響
が入っていて、T2にはT1とそれ以外の相互作用の影響が入っています。
 上記の説明の緩和時間は、T1緩和時間の方ではないでしょうか。
(一方、水クラスターの話で使われるのは線幅だけで、T2緩和時間と関係
する量です)

 T1とT2は一致することもあるが異なる場合もあって、水の17Oでは、一致しな
かった場合、T1とT2の差に主に効いているのがプロトン交換だというふうに
理解されているはずです。

 上記の議論に基づいて、線幅から何かをいうには、T1とT2の両方を測定して
緩和時間に差があるかどうかをまず確認する必要があります。いろんな水を測定
してT1に差が出た場合は分子の回転相関時間や拡散係数に違いがあるという話が
できるでしょう。T1の違い以上の違いがT2に出ていれば、その差について、
プロトン交換で説明できるか、あるいはもっと他の要因を考えるということになる
でしょう。
 線幅だけを測定しても、線幅を変える要因が決まらないので、ほとんど
意味がないと思います。

 なぜ、クラスターを提唱する人たちは、T1の実験結果を示して、従来の
T2の解釈を踏まえたうえで新しいモデルを提案しないのでしょうか?

 クラスターという考え方が面白いと■■様は書いておられましたが、
それならなぜT1を測定して、T1とT2が一致するのかどうか、T1の中に、水和
による変化以上のもの(=クラスターの違い)があらわれているかどうか、
T2とT1で差があるのかどうか、差があったとすると、現状の理解では
どこまで差を説明できているのか、説明できない部分があったとすると
それがクラスターとどう関わるのか、ということを宣伝で示さないので
しょうか?もしくは、クラスター賛成派の研究者にこういうことをして
ほしいと頼まないのでしょうか?


>この文章を読むと、今のところ水のクラスターについて確定した理論はないが、NMR
>で測定する方法は可能性があるので、今後の研究成果を待つ。というふうにとれま
>す。

NMRの結果を「クラスターというモデル」で説明しうる可能性はありますが、
クラスターを測定する方法はおそらくないでしょう。固定した分子構造を
決める多次元測定は別として、NMRから空間配置の情報はとれないのです。特に、
17Oだけを見ている場合には空間情報は入ってきません。

 仮に、NMRのT2緩和時間を、水の場合についてクラスターサイズというもの
を入れた形で定式化できたとします。その次にすることは、そのモデルで
NMR以外の実験結果もうまく説明できるかというチェックです。
もし、NMRの特定の結果以外を説明できないのであれば、そのモデルは捨てられる
ことになり、より一般性のあるモデルにとってかわられることになります。
他の実験も説明するなら、もっとより良いモデルが提案されるまでは、その
モデルが生き残ることになります。

 水が少数の分子集団の寄せ集めであるというモデル(これが、巷のクラスター
の話にもっとも近いでしょう)は、誘電率や光散乱の実験結果を説明しないという
理由でずっと昔に捨てられました。ですから、NMRの実験結果を説明したいので
あれば、既に捨てられたモデルを使うよりは、他の実験結果も同時に説明できる
もっと別のモデルを採用するべきだということになります。


>理論的に確立されてもいない水クラスターの話はしてはだめだということなのでしょ
>うか?

 理論的に、というよりクラスター推進派がみんなを納得させるだけの証拠を
提示してからでも遅くはないと思います。
 別に、クラスターの話を禁止するつもりはないですが、書き方によっては
誤解を招くと思います。

 水が、室温1気圧の液体の状態で数個ごとにまとまった小分子集団を
とりうるという考え方は、完璧な誤りといっていいでしょう。これ以外に
もう少し緻密に「クラスター」モデルを作りうるのであれば、モデルごとに
議論する必要が出てきます。
 ただ、一般の会社の提唱するクラスターの説明を見る限り、小分子集団
であるという説明ばかりが目について、会社によるモデルの違いまでは
読み取ることができないでおります。

>大きな間違いがないのならば、現在このような話がありますという情報を提供しても
>良いように思うのですが、いかがでしょうか。

 情報を提供する相手が、その情報の確かさや裏付けについてまともに判断
できる人たちであれば問題は起きないでしょう。学会でクラスターのモデル
を使って何かを解析したなら、批判や議論はあっても、他の問題は起きません。
 一般社会では、残念ながら現在は、そうではないと思います。
水関係の製品を開発している企業でさえ、クラスターの話に根拠がないこと
を見抜けずに、既に確立した話として取り扱ってしまっています。
同業他社の宣伝を御覧になればわかると思います。当方でも他の
水関係の宣伝についてコメントしています。

 このような状況でクラスターの話を出すと、却って誤解を広めるだけで
弊害の方が大きいと思います。そう考えたから、クラスターの話に対する
批判を書いて公開しているのです。
 

>さて、当社のホームページですが、出来れば年内にドメイン名を取得し、正式なホー
>ムページを立ち上げようと考えております。また、「水華」は製造が終了してしまっ
>た製品なのです。それで資料を提供しにくい状況にあるのです。年明けにはホーム
>ページアドレスをお知らせすることが出来ると思います。

http://ww51.tiki.ne.jp/~mineral/prohome/home.htm

は暫定的ということでしょうか?「水華」の製造終了についても、情報が
ありました。

 殺菌効果については金属イオンの効果で説明できると考えたので、そういう
コメントを書いています(まだ公開していません)。

From: "Mineral" <mineral@mx51.tiki.ne.jp>
To: "apj" <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: クラスターの件について
Date: Thu, 15 Nov 2001 12:34:10 +0900

天羽 優子様

株式会社プロホームアドバンス
担当:■■■■

クラスターの件について何度かメールでやり取りさせて頂きましたが、やはり納得す
ることが出来ません。
理論的な部分では、NMRの専門家の間でも意見が分かれているようなので、私共では
その是非を確かめることは出来ません。
また、天羽様はこれまでいただいたメールを読むかぎりでは、非常に偏った考え方を
されているように思います。

> >「わかりやすい浄水・整水・活水の基礎知識」久保田昌治/野原一子著 オーム社
> >(平成7年10月25日発行)
> >p.70「クラスターの大きさがNMRにおける半値幅によって評価できるとしたのが松下
> >和弘氏です。ところが半値幅の大きさは、pHの変化で説明できるといっているのが法
> >政大学の大河内正一氏ほかです。確かに理論と実験値がよく一致するので、pHのすべ
> >てで説明できそうに見えますが、現時点ではまだ一つの説明と見ておいた方がよさそ
> >うです。」
>
>  これは、緩和のメカニズムが複雑なので、pH以外にも緩和に影響をおよぼす
> 要素がありうるという話です。
>  久保田さんは「NMRの書」という、NMRの専門書も書いています。この間買って
> まだちゃんと読んでないのですが、多分、緩和のメカニズムについていくつか
> の可能性を書いていると思います。


> >「半値幅は緩和時間の逆数で、緩和時間は水分子が共鳴エネルギーを得て、エネル
> >ギーの高い状態になったものが、エネルギーを失ってエネルギーを得る前の状態に戻
> >るまでの時間です。ですから、相互作用の強いものほど、緩和時間が小さくなり、半
> >値幅は大きくなります。逆に相互作用の弱いものほど緩和時間が大きくなり、半値幅
> >は小さくなります。
>
> >クラスターモデルで考えると、大きいクラスターほど水分子の数が多く、その中の特
> >定の水分子に注目した場合、相互作用をしている水分子の数が多いためエネルギーを
> >失いやすく、緩和時間が小さくなります。逆にクラスターが小さいほど相互作用をし
> >ている水分子数が少ないため、緩和時間が大きくなるのです。
> >(中略)
> >pHでも半値幅の説明はつきますが、pHも一つの説明に過ぎないし、NMRも一つの方法
> >です。」
>
>  17Oの緩和機構は主に4極子相互作用ですよね。一般にT1には分子の運動の影響
> が入っていて、T2にはT1とそれ以外の相互作用の影響が入っています。
>  上記の説明の緩和時間は、T1緩和時間の方ではないでしょうか。
> (一方、水クラスターの話で使われるのは線幅だけで、T2緩和時間と関係
> する量です)
>
>  T1とT2は一致することもあるが異なる場合もあって、水の17Oでは、一致しな
> かった場合、T1とT2の差に主に効いているのがプロトン交換だというふうに
> 理解されているはずです。

著者の久保田氏は松下説に対し、ある程度肯定的であるように読めるのですが、それ
に対する天羽様のコメントはあまりにも自説に都合の良いように曲解しているとしか
思えません。文意から久保田氏はむしろ大河内氏に対して批判的であると考えられる
のですが。

> >大きな間違いがないのならば、現在このような話がありますという情報を提供しても
> >良いように思うのですが、いかがでしょうか。
>
>  情報を提供する相手が、その情報の確かさや裏付けについてまともに判断
> できる人たちであれば問題は起きないでしょう。学会でクラスターのモデル
> を使って何かを解析したなら、批判や議論はあっても、他の問題は起きません。
>  一般社会では、残念ながら現在は、そうではないと思います。

このようなことはあまりにも現実離れした話だと思います。一般的な商品説明として
は、わかりやすくすることが第一で、議論の場ではないですから詳細なデータよりも
見やすくすることが求められているのです。例えばこれは中学や高校で習う土星型原
子モデルにも言えることではないでしょうか。

最後に、メールのやり取りをしていて認識の違いがあるように感じるのでそのことを
書かせていただきます。
今回のように良い水の条件といった基礎的な研究分野の専門家から出てきたものは、
我々企業の人間としては提案されたものを利用させてもらおうという感覚であると思
います。ですからその内容について異論が出た場合は専門家同士の議論を見て、決着
がついたらそれに従うと思います。しかし今回は、研究者間の議論が充分でないまま
に反対派の矛先が直接企業に向けられたため、企業側では困惑しているのが現状では
ないでしょうか。
当社としては、まず専門家同士での決着をつけて欲しいと思うのですが、これは他の
メーカーでも同じように考えておられるのではないかと思います。

 

 

Subject:Re: クラスターに関するご質問
Date: 9:51 PM 01.11.2 +0900
From:apj

■■ 様
At 12:34 PM +0900 01.11.15, Mineral wrote:
すみません、一カ所訂正です。
私>  久保田さんは「NMRの書」という、NMRの専門書も書いています。この間買って
私> まだちゃんと読んでないのですが、多分、緩和のメカニズムについていくつか
私> の可能性を書いていると思います。

 久保田さんではなくて、荒田洋治氏です。
書き間違えました。ごめんなさい。お詫びして訂正いたします。


>著者の久保田氏は松下説に対し、ある程度肯定的であるように読めるのですが、それ
>に対する天羽様のコメントはあまりにも自説に都合の良いように曲解しているとしか
>思えません。文意から久保田氏はむしろ大河内氏に対して批判的であると考えられる
>のですが。

 強酸性水をやっていた機能水研究会(今は解散したという情報有り)の
荒田洋治氏はNMRの専門家です。一度話をききにいってみられてはどうでしょうか。


>このようなことはあまりにも現実離れした話だと思います。一般的な商品説明として
>は、わかりやすくすることが第一で、議論の場ではないですから詳細なデータよりも
>見やすくすることが求められているのです。例えばこれは中学や高校で習う土星型原
>子モデルにも言えることではないでしょうか。

 単なる説明に止まっていないことが問題であると考えています。
見やすく間違いを説明したことで、別の効果が生じているのです。
「水を説明するのにクラスターモデルがある」だけなら土星型原子モデル
と同じです。しかし、
「クラスターが17O-NMRで測定できる」
「クラスターの小さい水はいい水」
「クラスターの小さい水を作れる装置を売っている」
となると、わかりやすいモデルの範囲を超えています。
 土星型モデルの例でいくと、
「電子は原子核のまわりを回っている。」
「古典力学で考えると、速度は原子によって違う」
「運動する電子は電磁波を出すから、原子は電磁波を出し続けるはずだ」
「その電磁波の波動を測ると物質のよしあしがわかる。電子の回転速度を
変えてやると物質の性質も変わるはずだ。」
と話が展開するようなものです。


>今回のように良い水の条件といった基礎的な研究分野の専門家から出てきたものは、
>我々企業の人間としては提案されたものを利用させてもらおうという感覚であると思
>います。

 その感覚で、決着も着かずそもそも認められてもいない松下氏の
説に多くの企業がとびついたということでしょうか。
だとすると、最初が間違っていますよ。

>ですからその内容について異論が出た場合は専門家同士の議論を見て、決着
>がついたらそれに従うと思います。しかし今回は、研究者間の議論が充分でないまま
>に反対派の矛先が直接企業に向けられたため、企業側では困惑しているのが現状では
>ないでしょうか。

 専門家の間ではとっくに間違いが明らかである話が一般企業で広く流通
したあげく、私などのところにまで「クラスターの小さい水はいい水ですか」
って問い合わせが来るようになったので、私は非常に困惑して「水のクラスター
 伝搬する誤解」を書いて公開したのです。

 異論以前に間違いが明らかで、他の専門家の人たちは研究も忙しいし、
ウェブという手段も無かったから、単に相手にしなかっただけでは。
 私はたまたま、理学部なりの社会貢献のつもりでウェブ上で企画を立てて
取り上げただけですし。


>当社としては、まず専門家同士での決着をつけて欲しいと思うのですが、これは他の
>メーカーでも同じように考えておられるのではないかと思います。

 決着はとっくについていますよ。
 最初から、分析化学でちゃんとNMRをやってる人たちは、17O-NMRが
水クラスターサイズの指標になるとは全く考えていなかったし、今も
そうですから。そして、17O-NMRで水クラスターを評価できるという人
たちは、分析屋さんたちを説得できるだけの証拠を提出できていません。


 それが一般企業に情報として伝わっていないのが現状であると認識
したから、直接企業を例に取り上げただけです。


 まあ、■■様が私の主張に偏りがあって信じられないというので
あれば、それは別にかまいません。当方のウェブページの本の案内の
ところで、水に関するまともな文献を紹介しています。文献中には、
さらにオリジナルの論文なども引用されています。そちらを読んでみて
ください。


 なぜ、クラスターの話がこういう拡がり方をしたのかについては、
むしろ社会学的考察が必要ではないかと思ったりもするのですが、
さすがにそっちは私の手に余ります。別の専門家の手を借りたいですね。


 ところで、他の企業の方への参考にもなると思うので、この一連の
メールのやりとりをこちらで公開してもかまいませんか?

From: "Mineral" <mineral@mx51.tiki.ne.jp>
To: "apj" <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: ホームページの件について
Date: Mon, 19 Nov 2001 18:14:12 +0900

天羽 優子様

株式会社プロホームアドバンス
担当:■■■■

 ホームページのコメント拝見しました。
最初のメールでも少し触れましたが、当社としましては、このように個別の浄水器へ
のコメントをする場合は、それがどのような浄水器であるかという説明が必要だと考
えます。その上でおかしな点を指摘していくという手法で無いと、製品名から検索し
てたどり着いた閲覧者は、一方的な情報しか得られないまま製品に対する悪い印象し
か持たないという事になってしまいます。
しかも大学のドメインを使われているわけですから、その影響力を考慮し、もっと慎
重な言動をお願いしたいのです。

また、ホームページを作成するに当って、インターネット上で得られる情報しか利用
しないという事にこだわっておられるようですが、詳細なデータなしに科学的な批判
が出来るのか疑問に思います。

他社製品のコメントは読んでおりませんが、当社の製品に対するコメントに関しまし
ては、無理に言いがかりをつけようとしているとしか思えません。
例えば、水の汚れが取れるという説明も、一般的な説明としては写真があれば充分で
あると思います。前のメールにも書きましたが、製品の説明は分かり易くしようとし
ているのであって、研究発表の場ではないのですから。
「具体的にはどういう不純物に効果的なのか、写真だけではよくわからない。」この
様な書き方をされれば、読み手は「本当に効果があるかどうか写真だけではあやし
い」ととられるのではないでしょうか。疑問に思うのならなぜホームページを作成す
る時にメーカーに問い合わせないのですか?ちなみに、ビーカーの中身と(その前の
部分で問題にされていた)使用量については製品説明のページにはのっています。
 次の制菌効果の部分も、別製品の説明であり(グラフ上に製品名ものせてありま
す)コメントがどのような意図でなされたのか分かりません。この説明は浄水器の
ページにはのせていないのでそちらの勘違いであると思われます。

以上、何度も繰り返すようですが限られた情報をもとに科学的な解釈をしようという
のは無理なのではないですか?またその限られた情報でさえ充分検討されていないよ
うに見うけられます。
個々の製品について充分な検討が出来ないのであれば、わざわざこの様なコメントを
載せるページは作らず、リストにとどめておくべきだと思うのですが。

最後に、酸化還元電位の件ですが、そちらの参考文献「おいしい水安全な水」の中
で、法政大学の大河内正一氏らの説として、飲料や食品加工の水として最適なのは
「pHは酸性から弱アルカリ性でORPは還元系の水」とされています。クラスターの反
対意見はこの方の説を基にしておられるようですが、酸化還元に関しては意見が分か
れたということなのでしょうか?

P.S.メールの公開につきましては、そちらの判断にお任せします。

Subject:Re: クラスターに関するご質問
Date: 9:55 AM 01.11.20 +0900
From:apj


株式会社プロホームアドバンス
■■■■ 様

At 6:14 PM +0900 01.11.19, Mineral wrote:
>また、ホームページを作成するに当って、インターネット上で得られる情報しか利用
>しないという事にこだわっておられるようですが、詳細なデータなしに科学的な批判
>が出来るのか疑問に思います。

 これは、むしろ科学的以前の疑似科学を堂々とうたっているページが
非常に多いことを考えると十分ではないかと思っています。
 具体的には、水に情報を記憶する効果があるとか、そういったものです。

 後にも書きますように、私がしていることは「宣伝の内容の科学的批判」で
あって、「浄水器そのものに対する批判」ではないのです。このことは
ウェブページにも明記しています。

>例えば、水の汚れが取れるという説明も、一般的な説明としては写真があれば充分で
>あると思います。前のメールにも書きましたが、製品の説明は分かり易くしようとし
>ているのであって、研究発表の場ではないのですから。

 しかし、「写真だけ」を見せられると、「水の中に入っているものは何だろう?」
という疑問が残って、却ってなんだかよくわからないということになりませんか?
小さなフォントでもいいですから、一言何が入っているのか書いてくださると
読者に疑問を残さないと思います。

 わかりやすさとは、単にビジュアルにすることではないです。
謎を残さないというわかりやすさだってあります。私はむしろこちらを
基準にしていろんなコメントを書いています。

 他の企業に対するコメントを見てもらえればわかるように、意味不明の
実験と数値だけで一見科学的裏付けがあるような説明をしているページが
結構あるのが現状です。

>「具体的にはどういう不純物に効果的なのか、写真だけではよくわからない。」この
>様な書き方をされれば、読み手は「本当に効果があるかどうか写真だけではあやし
>い」ととられるのではないでしょうか。疑問に思うのならなぜホームページを作成す
>る時にメーカーに問い合わせないのですか?

 このコメントを読んだ購入希望者がが私とおなじ疑問を持ったなら
「何に効果がありますか?」とメーカーに問い合わせをすると思います。
「効果がない」という判断にはならないと思います。

 また、私が書いたコメントについて、「こちらに詳しい情報があった」
という読者からの連絡がくることもあります。そういう場合は追加情報と
して、同じページに載せていくようにしています。

>ちなみに、ビーカーの中身と(その前の
>部分で問題にされていた)使用量については製品説明のページにはのっています。

 これから探して、「ここにありました」っていうリンクを貼ります。
ただ、今日は外でイベントをやらなければならないので外出しますから、改訂は
明日以降になります。もしよろしければ念のため、urlをお教えください。

>次の制菌効果の部分も、別製品の説明であり(グラフ上に製品名ものせてありま
>す)コメントがどのような意図でなされたのか分かりません。この説明は浄水器の
>ページにはのせていないのでそちらの勘違いであると思われます。

 浄水器に通す前に水に加える原液の説明だと理解しました。
再度確認します。

>以上、何度も繰り返すようですが限られた情報をもとに科学的な解釈をしようという
>のは無理なのではないですか?またその限られた情報でさえ充分検討されていないよ
>うに見うけられます。

 「浄水器の性能評価」であれば無理でしょう。ただし、私がやっているのは
「浄水器の宣伝文句に対するコメント」なので、書いてあるものから判断する
のでかまわないと思います。普通に宣伝されている情報を眺めたときに、液体の
物性の立場からどう見えるか、ということを示すものに過ぎません。


>個々の製品について充分な検討が出来ないのであれば、わざわざこの様なコメントを
>載せるページは作らず、リストにとどめておくべきだと思うのですが。

 トップページやそれ以外のページにも書いてあるように、こちらの企画は
「製品そのものを検討する」ものではなくて「製品の宣伝をどう読むか」なので、
宣伝のみを資料とするので十分だと考えています。逆に、宣伝以外の資料は
それと断って提示しないとウソになってしまいます。
 
>最後に、酸化還元電位の件ですが、そちらの参考文献「おいしい水安全な水」の中
>で、法政大学の大河内正一氏らの説として、飲料や食品加工の水として最適なのは
>「pHは酸性から弱アルカリ性でORPは還元系の水」とされています。クラスターの反
>対意見はこの方の説を基にしておられるようですが、酸化還元に関しては意見が分か
>れたということなのでしょうか?

 ORPについては、どの程度水の指標になるかはっきりしない状態だと理解
しています。ただ、飲料水のpHは水質検査の基準でpH7付近となっている
ので、極端な酸性やアルカリ性のものが不適だというのはごく普通の基準だと
考えています。また、飲料水の成分としても、いろんな不純物が一定濃度以下
であることが決められていますから、中の不純物によって酸化還元電位がたま
たまある値をとったとしても、何か別のものが少し混じって、当量反応すれば
変わってしまう程度のものだと理解しています。また、水道水のORPを毎日測る
と結構変動したという話もあるので、そんなに厳密にこの値以下でないとまずい
というものでもないと思います。
 また、食品加工の場合は酸化防止剤を添加することが多いですし、還元性の水
を使ったから酸化防止剤が不要になったということも今のところなさそうですから
基準として特に重要なものではないと判断しています。

 酸化還元で最近の話題は、電解還元水というものです。活性酸素消去効果が
あるとうたわれおり、そのもとになっているのは原子状の水素だという説が
九州大学白畑教授によってなされています。これは、化学の常識を覆す話です
から、化学者を納得させるだけの決定的証拠が必要です。しかし、その証拠の
提示が十分でないために、化学分野ではまだ受け入れられていません。
にも関わらず、テレビ報道などの宣伝が一人歩きしている状態で、危うさを
覚えています。これについては、私は日本化学会が出している「化学と教育」
誌に、ラジカルの研究者を納得させるだけの直接証拠が出るまで受け入れられ
ないだろう、今の現状は一時期の常温核融合を連想させるというコメントを
書きました。

 クラスターに対する反対意見は、まとめますと以下の理由に基づいています。

・NMRの17Oの線幅はpHの指標であり、また溶けている電解質にも依存する。
NMRの17Oの線幅の測定結果に、pHや不純物以上の効果があることが示されて
いないから、NMRによる評価は不可能である。
・もし水素結合が切れた状態が安定に存在したら、水の沸点と融点が数十℃下
がるはずであるが、そういう観測事実はない。
・もし水素結合が切れた状態が実現したら、水の体積が目に見えて変わるはず
だがそういう報告もない。
・水素結合が切れた水では、水の静的誘電率が小さな値になるはずだが、実際
にはそうなっていない。
・水素結合が切れると水分子のO-H伸縮振動モードが変わるはずだが、これに
ついても報告がない。

 つまり、クラスターが小さくなれば他の水の物性に影響が確実に出るはず
なのに、そういう話がちっとも出てこないし、巷で言われているように磁場
をかけたり超音波をかけたりして水の誘電率や光散乱を測定しても、予想さ
れるような変化がまったくない、ということなのです。実際に磁場をかけな
がら水を測定したこともありますし、アルコール水溶液に超音波をかけたも
のを測定して比較したこともありますが、クラスター細分化の証拠は見あた
りませんでした。ただし、上記の物理量は不純物濃度と種類でも変わること
に注意が必要です。
 検出限界以下じゃないかというツッコミは当然あり得るのですが、もし
そうだとしても、巷で絵に描かれているようなことは起きていないでしょう。


>P.S.メールの公開につきましては、そちらの判断にお任せします。
 近日中に、一連のやりとりを掲載します。メーカーの主張もあった方が、
より読者の判断に役立つと思います。私のところでは掲示板を作っておらず、
私のコメントに対する直接の反論を書き込める場所もないことですし。

 ちょっと一旦こちらに出していた経過説明を伏せます。交渉している最中なんですが、プロホームアドバンス側がメールを送ったタイミングとこちらがウェブで対応した時間がヘンにずれたり、大学やBeyond@悪徳商法マニアックス宛にクレームや質問を送ったりして関係者の数が増えたのと、増えた段階でやりとりしたメールも、私の行動を反映してなかったりと、かなり混乱して、何がなんだかわけがわからなくなってきているので、もう一回最初から論点を整理してやりなおすことにしました。

その後の経緯(2002/01/21)
 実は、プロホームアドバンス側との交渉は完全にストップしています。まず、プロホームアドバンスからお茶大宛にクレームがあったことについて、ホームページ運営委員会の処理にまかせなかったのか運営委員会だけで処理できなかったのか定かではないのですが、全学の執行部である評議会に話が出ました。このため、広報委員会が2001年12月19日に開かれ、冨永教授が呼ばれて状況説明をすることになりました。このとき、私の方からも、当サイトの運営状況に関する報告書を作成し、会議資料として配付していただきました。その結果、最初は年内に大学としてどうするかという返事をいただけるはずだったのが、意見の統一ができないということで年明けになり、年明けにも2回ほど冨永教授経由で催促したのですが、やはり意見統一ができていないということで、ずっと待たされています。プロホームアドバンス様からは、これに対応すべしという文書を年末にいただいていますが、一旦会議に載った以上、会議の結果が公開可能な書類で出るまでは、勝手に動くことができず、結局すべての対応がストップしている状態となっています。