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磁気水へのコメントに対する批判と回答(2003/11/25)

 磁気水の効果を主張するメールが来た・・・と思ったら後半は,中小企業の宣伝を批判することはけしからんという内容だった。まあ,そういう立場もあると思うので,私は私の立場を説明して返事を出した。普段,こういうページをやりながら考えていることもいくつか書いたので,せっかくだからやりとりを公開する。

 なお,発信者が, 「健康と環境の神戸クラブ」「吉岡事務所代表」名義なので,完全に個人でもなさそうなので匿名にはしないことにする。

 ただねぇ・・・・メールの前半で,マイナスイオン水だけで生活する人が吉岡さんの仲間だけで10万人以上で来年には20万人に達するし5年かけて疫学調査もするって主張しておきながら,メールの後半で私がコメントしたことで製品が売れなくなるって主張するのは一体どういうことなのか。売れてるじゃん,十分。それに,私の突っ込みが「売り手にとっても買い手にとってもどうでもいいところをほじくり返して」なんて言っておきながら売れ行きに影響するとそのすぐ後で書くのは,矛盾もいいところだと思う。だってユーザー20万人になろうとしてるんでしょ。水関係の製品で年間10万人以上ユーザーが増えるって,誰が見たってそりゃ売れてると思うぞ。てことで結局何をいいたいのかさっぱりわからない。書いてある内容が内部矛盾してるんで,一体どっちが本当なのかと思いつつ,個別にコメントすることにしたのだけれど。

From: 健康と環境の神戸クラブ <kenkanko@post.nifty.jp>
To: <apj@atom.phys.ocha.ac.jp>
Subject: マイナスイオン水 について
Date: Sat, 22 Nov 2003 18:02:18 +0900
X-Priority: 3

天羽優子 さま
磁力線の中を水が通ると、水はその性質を少し変えます。
これまで測定された事実としては、磁力線の中に通す前の水と比較して

1.マイナスイオンが多くカウントされる。
2.ペーハー値が少し上がっている。
3.熱伝導率が少し上がっている。
4.界面活性が少し上がっている。

という変化が起きています。
これらの結果は、あるメーカーがまじめに取り組んで測定したものです。

1.については、
その水を空気中に噴霧して、市販の大気イオン検出器で測定した結果です。
磁力線に通す前の水を噴霧したときに比べて、
2倍ほどのマイナスイオンが検出されたので、測定誤差とは考えられず、
何回か測定しても同じ結果が出たそうです。
ただし測定の絶対値は、測定器によって違うのであまり意味はなく、
相対的な変化に意味があると思われます。
マイナスイオンの化学種が特定されないうちは、そんな現象は認めたくない、
と天羽さんは言っていますが、化学種が特定されなくても、
物理現象として、こういうことが現に観測にかかっているということです。

1と2は、水の分子に生じる電気的な変化であろうと思われます。
3と4は、水の分子の運動の活発さ、いわば機械的な変化だろうと思われます。

これらの測定結果には再現性があると思われますので、
その水を入手して天羽さんご自身で確認されることをお勧めします。そして、この水を実生活で使うと、以下のようなことが起こります。

ごはんがおいしく炊ける
水がおいしい
この水につけると野菜が長持ちする
この水に容器ごとつけると中の食品の味がマイルドになる
植物の生育がよい
お風呂が気持ちよい
肌がすべすべになる
風呂場のカビが消える
お風呂が早く沸く
シワやシミが消えてくる
目がしょぼしょぼしなくなる
ペットが元気になる
ペット臭が軽くなる
トイレの臭いが消える
洗濯洗剤を半分以下に減らせる
排水口、排水溝がきれいになる
食器がぴかぴかになる
便器がきれいになる
車がぴかぴかになる

これらのことはひとつひとつ、ふーん、と驚くことではありますが、
ほとんどは、
上記の1,2,3,4の測定事実に関連して起こってくる現象として、
理解、説明できますから、不思議、ということはありません。

しかし、ひとつだけ不思議なことがあります。それは4番目の
「この水に容器ごとつけると中の食品の味がマイルドになる」という事実です。

たとえば、赤ワインを、封を切らずに瓶ごと、この水につけます。
30分ほどつけておくと、赤ワインの渋みが消えてマイルドになります。
マヨネーズやケチャップ、日本酒などでも同じことが起こります。
味の刺激的な部分、とんがった感じがまろやかになるのです。
その変化は、ふつうの味覚を持っている人なら分かります。

これも簡単に実験できますから、天羽さんも一度試されたらよいと思います。

ガラスやポリの容器の壁を透過して、水から何らかのエネルギーが伝わって、
容器内の有機物の化学結合のどこかが切れるのだと思われます。
非常に不思議なことです。
この事実の奥に、
磁場による、水の変化の物理的本質が隠されているのでしょう。

1234の測定事実の背景にあるものは、おそらく、磁力の影響を受けて、
水が、その「分子のレベル」で少し変形している、ということだと思われます。
その変形は、E=BxVという電磁誘導の原理によって生じているようです。

電解質(イオン)がなければ電気は起きない、というのがこれまでの考えですが、
電解質があってもなくても、水分子には電子があり、
水分子が磁場の中を動けば、
BxVという作用はその電子に対して出現してくるでしょうから、
その作用が、水分子の軌道電子になんらかの変化を及ぼすことが、
あり得ないと否定することは、そう簡単ではありません。
むしろ、あるだろう、と考えるほうが自然です。

電解質(自由なイオン)がない時は、
その変化は電流という形では取り出せないので、
これまで、何か変化が起きるとは認識されていなかったのですが、
それが、その水を噴霧したときに、
空気中におけるマイナスイオンの増加という、
意外な、新しい形で検知できることが分かった、ということではないかと考えます。

そしてまた、
その、分子レベルでの変化はどうやらかなり持続的なものであるようで、
一時的な励起状態というものでは、どうやら、なさそうです。
たとえば、
東北のある農場でその水で稲作をしたところ、昨年も好成績だったのですが、
今年は周囲の田圃が冷害で軒並み大凶作であったのに、
その田圃だけ平年作を維持したという結果が出ています。
稲作には半年かかりますから、水分子の変形は持続的であると思われます。
ほかにも、養鶏場、養豚場、かまぼこ工場、砂糖精製プラント、天然塩田、
羊羹屋、うどん屋、美術館、こうのとりの里、などでたくさんの結果が出ています。

分子レベルでのその変形がどのようなものであるかを検証することは、
実験的にも理論的にもかなり難しい作業になると思われますが、
変形したあとの結果だけを測定することは、
既存の測定手法でできることですから、難しいことではありません。
上記のような変化だけでなく、
その水の、比熱、比重、沸点、融点、蒸発潜熱、融解潜熱、粘度、などの
物性値に変化が起きている可能性があります。
(なかなか、メーカーだけでは測定できないようですが)
むろん、そこらにある類似の道具でこういうことが起こるのではなく、
そのメーカーには特許の特殊な工夫があるので、こういうことが起こるようです。

これらのことは、これまでの人類の知見にはなかった、
新しい発見だと思われます。さて、天羽さんは昨年の学会発表の「まとめ」のサイトで、
「マイナスイオン水」なるものはそもそも存在しない、単なる迷信である
と結論しておられます。

しかしそれは、考え方しだい、定義しだいです。

存在が確認されていないものについて、
それが存在することを想定して名前を付ければ、
いくら定義しても、それは、存在していない可能性があります。
しかし、存在が確認されているものについて、
それに「マイナスイオン水」と名前を付けたならば、
その命名にみんなが合意するかどうかはともかく、
そのような「マイナスイオン水」そのものは存在することになります。

たとえば、
「フランスのルルドで湧く水をマイナスイオン水と命名する」
とフランス政府が宣言して、
それでみんなが納得すれば、「マイナスイオン水」というものは
少なくとも社会的には存在することになるわけです。

私は独自に、
「その水を噴霧したとき、マイナスイオンがたくさん検出される水」を
「マイナスイオン水」と定義して、自著にもそう記述しています。
どこでとれたか、作り方はどうか、pHはどうか、などは関係ありません。
「たくさん」とはどのくらいかは、業界などで協議すればよいでしょう。
ほかの名前で呼んでもよいのですが、
大気中のマイナスイオンと関連づけて、
こう定義し、こう命名することに、特に不合理、不都合はないと思います。

そして、これまで述べたように、
実際にそういう水は存在するし、そういう水を、
田圃に入れられるほど、大量に、安いコストで作ることができるのです。
この合理的な名称(定義)は、やがて一般に定着してゆくでしょう。

そして、このように定義された「マイナスイオン水」が、
環境や健康にどのような好影響をもたらすか、
先述のように、それはすでに、多くの例で確認されつつあります。

そこに経済的なメリットがある場合は、
企業などに比較的受け入れられやすくなってきていますし、
環境面でメリットがある場合は、自治体などにも受け入れられつつあります。

しかし、健康問題については、無数の好結果が出ているのですが、
いくらそれを言っても、それはメーカーの宣伝に過ぎないと思われてしまい、
なかなか「科学の世界」や「薬事法の世界」を納得させることはできません。

そこで私が考えている方法は、つべこべ言う人は後回しにして、
自分たちだけで勝手にどんどん先に進む、という方法です。

具体的には、日常生活を「マイナスイオン水」だけで暮らす人々が、
すでに全国で10万人以上に達し、来年には20万人以上になりますから、
そして、その全員が私たちの仲間ですから、
それらの仲間の間で、疫学的な統計調査を実施します。

たとえば、そのマイナスイオン水で暮らすようになってから、
クモ膜下出血で倒れた人は何人いるか、
新しく生まれた子でアトピーになった子は何人いるか、という調査です。

そして、その結果をいきなり発表するのではなく、
(発表しても宣伝と思われるだけですから)
仲間のあいだで「マイナスイオン水共済組合」を作って、
入院保険や死亡保険を作るのです。
すると、その保険料は既成の保険に比べて半分以下になるでしょう。
疾病や死亡が激減するからです。

そのとき天羽さんは、「水で健康になることはあり得ない」という持論が、
格別には根拠のなかった憶測であったことに、ようやく気づくことになります。
5年後です。


さて、天羽さんの水商売ウォッチングの主張は、
その水で何が起こっているか、現象にはいちいち興味がなく、
したがって製品の是非について述べるつもりはない、ということで、
カタログの表現を検証して、いい加減な、あるいはインチキな表現に
「つっこみを入れる」のが、科学者としての天羽さんの仕事だということです。
(現象には興味がないというのは、科学者として相当な発言ですが)

しかしそもそも、
中小メーカーには物理学や化学や生物学の学術的専門家はいませんから、
まじめなメーカーであっても、カタログはどうせ、いい加減なものしかできません。
まあ、格好のよさそうな文章を書いておけばいいだろう、くらいのものです。
そのことは、天羽さんご自身がそう認識し、サイトに書かれていることです。
ですから、そんなことに目くじらを立ててみても、実際には何も改善されません。

それに、消費者は、
カタログのそんな細かいところまで読んで購入を決めているわけではありません。
消費者にとっては、その製品によって何が起こるのか what が大切で、
そこに虚偽があればそれは詐欺ですから消費者は怒りますが、
なぜそうなるのか、why,how の部分は、まあどうでもいいわけです。
だから、カタログを作る側も、その部分は
細部まで読まれることを想定していないフシがあります。
(その証拠に、何年間も印刷ミスが気づかれずに放置されていたりします)

ですから、天羽さんは、現実の商取引において、
売り手にとっても買い手にとってもどうでもいいところをほじくり返して
さかんに「つっこみ」を入れていることになります。

しかしながら、そうは言っても、逆は真ならずで、
消費者は、権威筋から誹謗中傷されるような製品は、買いません。
わけのわからない議論ではあっても、
とにかく権威筋がダメと言うものは買わないのです。

たとえば、あるメーカーのカタログの表現に対して天羽さんは、
「それよりも何よりも、
高校の化学の教科書をちゃんと理解することが先ではないだろうか」
という居丈高な「つっこみ」を入れています。
天羽さんは、国立大学の化学の教官の肩書きを見せながら、
その会社の技術陣の化学の知識は高校生以下である、というご託宣を
インターネットという「マスメディア」で天下に告知しているわけです。

そこまで言ってなお、
「私は、製品の是非については何も言っていないのだ」
という主張は、社会常識として通るものではないでしょう。
それを読んだ消費者が、その製品を買い控えるのは当然です。

あるいは、あるメーカーが、
「水分子のブラウン運動が大きくなっている」と述べていることに対して、
天羽さんは、
「ブラウン運動とは、要するに熱によるランダムな分子運動である。
ブラウン運動を大きくするには、温度を上げれば良いだけである。
湯は水よりもブラウン運動が大きい。これも磁場とは無関係である」
と断じています。

しかし、この主張は奇妙な論理になっています。

まず、メーカーが「ブラウン運動が大きくなっている」と主張する前提には、
当然のことながら、同じ温度で比較すれば、とか、外部から熱を加えることなしに、
という条件があるに決まっています。
そのくらいのことは、いくら中小メーカーでも分かっています。
しかし、メーカーのカタログは科学論文ではありませんから、
そこまでは書きません。カタログとはそういうものです。
そのくらいは、分かってやってもいいのではないでしょうか。

次に
「湯は水よりもブラウン運動が大きい」という事実によって、
「磁場によってブラウン運動が大きくなる可能性がある」
ことを否定しようとしていますが、そんなことはできません。

ここでの、「湯は水よりもブラウン運動が大きい」という表現は
「磁場がなくてもブラウン運動は大きくなる」と言っているわけで、
それは正しいのですが、

「磁場がなくてもブラウン運動は大きくなる」
だから、
「磁場によってブラウン運動が大きくなることはない」

というのは、まったく奇妙な論理と言わざるを得ません。

この論理は、かつて東大の安井氏が、
「マイナスイオンの多い空気を吸うと血液がさらさらになった」
という実験結果に対し、
「水を飲んだだけでも血液はさらさらになるのだ」という
関連のない事実を持ち出して
その実験結果を否定しようとした論理に似ています。

両者とも、まったく奇怪な論理であって、
我が国のケミストたちは、なるほど、あれやこれやと知識は豊富なようですが、
その内側にあるべき論理的思考能力はこの程度のものかという印象です。

それにそもそも、

ブラウン運動とは、要するに熱によるランダムな分子運動である。
ブラウン運動を大きくするには、温度を上げれば良いだけである。

という、何ともあっけらかんとした、同義語反復的な表現は、
分子運動や熱や温度、振動といった物理現象に対する、
天羽さんの理解の深さを疑わせるものです。


さて、しかし、問題は、
天羽さんの主張がこのように居丈高であってもトンチンカンであっても、
それを修正することは、
メーカー側にとって、非常に困難だということです。

第一の理由は、
国立大学の教官の権威のほうが信用が大きいので、
中小メーカーが何を言っても初めから勝負にならない、
という点にあります。

第二には、
国家から給料をもらって、めったにクビになることのない人と、
会社あってのサラリーマンで、
その日その日の売り上げで暮らしている中小メーカーの技術者とでは、
身の安全度が違いすぎて、同じ土俵では戦えない、ということです。
国立大学から、公開の場で論争をふっかけられては、
中小メーカーは対抗できないし、対抗してもめてみても、
何の得にもならない、損するだけなのです。

ですから勝負は、サンドバッグを叩くような一方的な試合展開となります。

国家から保護される立場に長くある人には、
このことがなかなか理解できないようです。
インターネットを賑わす「メーカー批判サイト」が、
二つとも国家公務員によって(一つはサイトの維持費までが国家予算で)
展開されていることは、偶然ではありません。
これらの人々は、身を安全サイドに置きながら、
自分という小さな存在が大きな敵と戦っているのだ、
という錯覚におちいっているようです。
しかしそれは勝手なヒロイズムであって、その真の姿は、
国家の権威をカサに着て、弱者をいじめているに過ぎません。

世にインチキ品は常にあるのであって、
インチキ品が出回るのもまた、人の世のひとつの姿であって、
なんでもかんでもビシビシ取り締まればいいというものでもなく、
もしそれを取り締まったり摘発するとしても、
それは政治や行政や司直の仕事であって、
頼まれもしないのに科学者がしゃしゃり出ることではありません。
科学者は、問われたときに正確で公平な意見を述べればよいのです。
科学者の仕事はほかにあります。

天羽さんとお茶の水女子大学が水商売ウォッチングでやっている行為は、
その全部とは言いませんが、少なくともその一部は、
司直から頼まれもしないのにカタログの語句を攻撃し、
さらには、相手の頭脳の程度までこき下ろして、
しかも、自分が間違っている可能性にはまったく無頓着で、
結果として、国立大学の名をもって、
法律によらずに、他者の(弱者の)生活権を妨害する行為となっています。

その行為によって、収入を減らし、職を失い、生活を脅かされる者があっても、
それはおまえが悪い、私のせいじゃない、カタログを書き直して来い、
私は科学者の正当な仕事をしているだけだ、
というのが天羽さんとお茶の水女子大学の主張であり、行動です。

天羽さんは、それを「言論の自由」と強弁していますが、
法によらないこのような独善的な行為を、
法治国家において、リンチ(私刑)と言います。

インターネットは言論によるリンチを執行するのに便利な道具ですが、
インターネットを利用して自由な言論を展開したいなら、
せめて国立大学のサイトから出て、
国家の税金を使わず、個人の費用で個人のサイトで行うべきです。
この点は安井氏のほうが常識があってフェアーです。

さらに言えば、国立大学の肩書きも外し、個人の名で行うべきです。

*************
吉岡事務所 代表 吉岡英介
eskey@yoffice.net
「アトピー解決篇」全文公開
http://www.yoffice.net
〒651-0056
神戸市中央区熊内町1-8-12-107
TEL 078-241-7090
FAX 078-241-6278
hp 090-9623-0263
hp-mail yoffice@ezweb.ne.jp

 これに対する返事は以下の通り。

健康と環境の神戸クラブ 吉岡様

天羽です。

At 6:02 PM +0900 03.11.22, 健康と環境の神戸クラブ wrote:
> 磁力線の中を水が通ると、水はその性質を少し変えます。
> これまで測定された事実としては、磁力線の中に通す前の水と比較して
>
> 1.マイナスイオンが多くカウントされる。
> 2.ペーハー値が少し上がっている。
> 3.熱伝導率が少し上がっている。
> 4.界面活性が少し上がっている。
>
> という変化が起きています。
> これらの結果は、あるメーカーがまじめに取り組んで測定したものです。

 実験条件をお教えください。
具体的には,その時の磁場の状態,水の組成,流速です。

> マイナスイオンの化学種が特定されないうちは、そんな現象は認めたくない、
> と天羽さんは言っていますが、化学種が特定されなくても、
> 物理現象として、こういうことが現に観測にかかっているということです。

 私の主張を勝手にねじ曲げないでください。私の主張は,「空気中の
マイナスイオンについて効果云々を主張するのであれば,まず化学種
と濃度を特定してからにしてくれ」というものです。普通,物質の及ぼす
効果を調べるときは,濃度や組成を変化させて,効果がどう変わるかを
見るということをします。そこまでやらないと,一体何を見ているのか
いつまでもはっきりしないからです。磁化水の話とはとりあえず無関係です。

 次に,物理現象として観測にかかっていることが事実だとしても,
イオンカウンタでカウントされる「マイナスイオン」と水に含まれる
イオンは別物です。水の方は普通の電解質水溶液ですし,イオンカウンタで
みてるものは電荷を持った孤立粒子ですから。

> 1と2は、水の分子に生じる電気的な変化であろうと思われます。

 高校化学と,電気化学の初歩でいいですから勉強しなおしてください。
水の電気的な変化って何ですか?1も2も,水分子の電気的変化ではなく
水溶液としての組成の変化を示しているものではないですか。
> 3と4は、水の分子の運動の活発さ、いわば機械的な変化だろうと思われます。

 これも,組成の変化で説明できるものではないですか。
もし,分子の運動が活発になったというのなら,温度上昇として観測される
はずですけど。

> これらの測定結果には再現性があると思われますので、
> その水を入手して天羽さんご自身で確認されることをお勧めします。

 一体どの水でしょうか?メーカー名も製品名も示されない上に,実験
条件も無いのでは,そうおっしゃられても何とも・・・・。

> そして、この水を実生活で使うと、以下のようなことが起こります。
> これらのことはひとつひとつ、ふーん、と驚くことではありますが、
> ほとんどは、
> 上記の1,2,3,4の測定事実に関連して起こってくる現象として、
> 理解、説明できますから、不思議、ということはありません。

 その前に,これらの効果をどうやって「科学的に確かだ」といえる
ところまで確認したのか知りたいです。主観を排除して実験しようと
すると,それぞれの分野で確立された試験法が必要になるはずですね。
 実験条件をおおしえください。巷にあふれる,あなたが列挙したような
内容で,プロの評価に耐えられるだけの試験の裏付けのあるものは
ほとんどない(だから追及していくと消えてしまう)のですが,試験結果
をお持ちだということなら,それは面白いことです。

 効果の確認が科学的に行われておらず単なるデマか思い込みに
過ぎないのに,それが本当だという前提で話を始めた結果,どうしようも
ない方向に突っ込んでる例なら山ほどあります。ぜひともまともな
試験結果がほしいところです。

> しかし、ひとつだけ不思議なことがあります。それは4番目の
> 「この水に容器ごとつけると中の食品の味がマイルドになる」という事実です。
>
> たとえば、赤ワインを、封を切らずに瓶ごと、この水につけます。
> 30分ほどつけておくと、赤ワインの渋みが消えてマイルドになります。
> マヨネーズやケチャップ、日本酒などでも同じことが起こります。
> 味の刺激的な部分、とんがった感じがまろやかになるのです。
> その変化は、ふつうの味覚を持っている人なら分かります。

 そのときの温度はどうなっていましたでしょうか?味覚は温度によって
結構敏感に影響されます。飲みくらべたお酒の温度が同じでないと,
比較の対照になりません。
 水につける条件にもよりますが,30分もつけていれば,温度が
変わってしまう可能性はありますね。

 それから,プラセボ効果ってご存知ですか?おいしくなるかも,
少なくとも味が違うかも,って思って飲食した場合,実際に味が違うと
感じてしまうことがあります。本当に違うことを確認するには,
被験者に,水処理したものとそうでないもののどちらを飲んでいるか
わからないようにして,違いを判定してもらう必要があります。さらに,
同じ物とを違うと判定したり,違うものを同じと判定したりする割合が
どの程度あるかも押さえなければならないでしょう。こういう手続きを
官能検査といいます。
 味覚には個人差があるので,人数を集めてデータをとって,統計処理
しないと判定は不可能です。

 昔,菓子メーカーの不二家でアルバイトしたことがありまして,それが
新製品開発のための官能検査でした。食べるのはメインユーザの女子高生
で,私達はアンケート用紙とお菓子を2種類配る仕事。隣の答えを見て
影響されないように,互い違いに配るということまでしていました。
毎回被験者を100人前後集めてやってましたよ。

> これも簡単に実験できますから、天羽さんも一度試されたらよいと思います。

 ですから,この手の官能検査を必要とするようなことを「簡単に実験」する
のは無理です。不二家での経験からいっても。

> 磁場による、水の変化の物理的本質が隠されているのでしょう。

 「簡単に実験」してこういう結論を出しているとしたら,逆に
その話は信用できない,と判断します。

> 1234の測定事実の背景にあるものは、おそらく、磁力の影響を受けて、
> 水が、その「分子のレベル」で少し変形している、ということだと思われます。
> その変形は、E=BxVという電磁誘導の原理によって生じているようです。

 これは測定で確認できる話です。
 もし,水が変形したのであれば,ウチで測定しているラマン散乱でみた
OH伸縮振動モードが必ず変わるはずなので。

> その作用が、水分子の軌道電子になんらかの変化を及ぼすことが、
> あり得ないと否定することは、そう簡単ではありません。
> むしろ、あるだろう、と考えるほうが自然です。

 で,これを支持する直接証拠は何ですか?
味の変化だの野菜の長持ちだのといった話じゃだめですよ。

> 電解質(自由なイオン)がない時は、
> その変化は電流という形では取り出せないので、
> これまで、何か変化が起きるとは認識されていなかったのですが、
> それが、その水を噴霧したときに、
> 空気中におけるマイナスイオンの増加という、
> 意外な、新しい形で検知できることが分かった、ということではないかと考えます。

 確か,水破砕で観測されるマイナスイオンの量(正確には正負の組成)
はもとの水の不純物によって変わるという論文が既にあるはずです。
また,マイナスイオンの測程ですが,正確にやるには部屋の湿度を
制御しないとだめのようです。ウチの学科で空気のマイナスイオンを
測定した先生に話をきいたんですけどね。

> 変形したあとの結果だけを測定することは、
> 既存の測定手法でできることですから、難しいことではありません。
> 上記のような変化だけでなく、
> その水の、比熱、比重、沸点、融点、蒸発潜熱、融解潜熱、粘度、などの
> 物性値に変化が起きている可能性があります。

 これらの変化は,組成の変化でも生じますね。
水溶液としての組成の変化を,まずは調べるべきでしょうね。
磁気水の効果としてよく宣伝されている赤錆の除去は,とどのつまりは管表面
での電気化学変化ですから,真っ先に考えなければいけないのは水の組成が
どう変わったかということではないでしょうか。

> これらのことは、これまでの人類の知見にはなかった、
> 新しい発見だと思われます。

 ちょっと主張に無理がありますね。ここまで言うのなら,誰もが認める
直接証拠を出さないとだめなんじゃないかと。

> さて、天羽さんは昨年の学会発表の「まとめ」のサイトで、
> 「マイナスイオン水」なるものはそもそも存在しない、単なる迷信である
> と結論しておられます。
>
> しかしそれは、考え方しだい、定義しだいです。

 はて・・・。私は普通の水溶液として考えましょうと主張したつもり
です。

> たとえば、
> 「フランスのルルドで湧く水をマイナスイオン水と命名する」
> とフランス政府が宣言して、
> それでみんなが納得すれば、「マイナスイオン水」というものは
> 少なくとも社会的には存在することになるわけです。

 そりゃそうですよ。
 でも,その科学的実体を議論するときはまた別ですね。
何がどれだけ入っている水か,どういう(測定できる)性質を持つ水か,
ということを押さえるしかありません。

> 私は独自に、
> 「その水を噴霧したとき、マイナスイオンがたくさん検出される水」を
> 「マイナスイオン水」と定義して、自著にもそう記述しています。
> どこでとれたか、作り方はどうか、pHはどうか、などは関係ありません。
> 「たくさん」とはどのくらいかは、業界などで協議すればよいでしょう。
> ほかの名前で呼んでもよいのですが、
> 大気中のマイナスイオンと関連づけて、
> こう定義し、こう命名することに、特に不合理、不都合はないと思います。

 そりゃご自由どうぞ。言論と出版は自由ですから。

> そこで私が考えている方法は、つべこべ言う人は後回しにして、
> 自分たちだけで勝手にどんどん先に進む、という方法です。

 これもご自由にどうぞ。
私はつべこべ言いますし,置いていかれても別に気にしません。

> 具体的には、日常生活を「マイナスイオン水」だけで暮らす人々が、
> すでに全国で10万人以上に達し、来年には20万人以上になりますから、
> そして、その全員が私たちの仲間ですから、
> それらの仲間の間で、疫学的な統計調査を実施します。

 ぜひちゃんと調査して,専門の学術雑誌にでも出してください。

> そのとき天羽さんは、「水で健康になることはあり得ない」という持論が、
> 格別には根拠のなかった憶測であったことに、ようやく気づくことになります。
> 5年後です。

 これも,私の主張をわざとにねじ曲げていますよ。
 私の主張は「単に水を飲む量を増やすだけで体調が良くなる人が居ることは
確かである。このこと自体に医学的な根拠もある。だからといって,特定の
**水にミラクルな効果を期待するのは間違いだ。安全な水であればそれで
足りる」というものです。

 ある量の水を摂取すること自体の生理学的効果と,「**水そのものに
何か健康になる効果がある」という主張は分けましょうということです。

> しかしそもそも、
> 中小メーカーには物理学や化学や生物学の学術的専門家はいませんから、
> まじめなメーカーであっても、カタログはどうせ、いい加減なものしかできません。
> まあ、格好のよさそうな文章を書いておけばいいだろう、くらいのものです。
> そのことは、天羽さんご自身がそう認識し、サイトに書かれていることです。
> ですから、そんなことに目くじらを立ててみても、実際には何も改善されません。

 別に,改善されることを目的としてやっているわけではありません。
メーカーがどういう宣伝をしようがメーカーの自由,公開された宣伝に
対してどういう批判をしようが批判する側の自由ですね。

> ですから、天羽さんは、現実の商取引において、
> 売り手にとっても買い手にとってもどうでもいいところをほじくり返して
> さかんに「つっこみ」を入れていることになります。

 そういう場合もありますね。そうでない場合もあります。

> しかしながら、そうは言っても、逆は真ならずで、
> 消費者は、権威筋から誹謗中傷されるような製品は、買いません。
> わけのわからない議論ではあっても、
> とにかく権威筋がダメと言うものは買わないのです。

 逆に,権威筋がイイと言うと買いに走るわけですね。そっちの方が
むしろ困ったものだと思います。

> たとえば、あるメーカーのカタログの表現に対して天羽さんは、
> 「それよりも何よりも、
> 高校の化学の教科書をちゃんと理解することが先ではないだろうか」
> という居丈高な「つっこみ」を入れています。
> 天羽さんは、国立大学の化学の教官の肩書きを見せながら、
> その会社の技術陣の化学の知識は高校生以下である、というご託宣を
> インターネットという「マスメディア」で天下に告知しているわけです。

 だって事実ですから。

 科学技術立国の掛け声をかけておきながら,高校の化学の範囲で
容易にわかる間違いが,インターネットという「マスメディア」で
企業の宣伝中に出まくる現実の方が憂慮すべきことではないですか。

 もともと,理科の知識というのは,試験がおわればそれまでよ,という
ものではなく,実際に物を売ったり買ったりするときの判断軸の1つと
しても使われるべきものだというのが私の考えで,それを実践したまでです。
もっと広い意味では,生活で使われるものだ,ということです。
 
> そこまで言ってなお、
> 「私は、製品の是非については何も言っていないのだ」
> という主張は、社会常識として通るものではないでしょう。
> それを読んだ消費者が、その製品を買い控えるのは当然です。

 それは仕方がないでしょうね。
 ネット上の宣伝なんて,印刷媒体と違って手軽に後からいくらでも変更
できます。印刷媒体であれば,一般向けということで,細かい情報まで
書くのは宣伝として効率的ではないでしょうけど,ネットではいくらでも
知りたい人に情報提供できます。それをふまえて宣伝方法を変えた
企業が有利になることがあるかもしれません。

> そのくらいのことは、いくら中小メーカーでも分かっています。
> しかし、メーカーのカタログは科学論文ではありませんから、
> そこまでは書きません。カタログとはそういうものです。
> そのくらいは、分かってやってもいいのではないでしょうか。

 直前に,インターネットは「マスメディア」だとおっしゃいました。
 中小企業でもインターネットで宣伝すればそれは「マスメディア」で
宣伝してるのと同じことですよね。

 ネットを使うようになって変わってきたなあと思う点の1つは,
単なる広告が「メディアの提供する情報」として受け取られる傾向が
出てきたというところなんです。だから,これまでは広告だしパンフ
だから見やすいものになってるんだなあ,という共通の前提があった
ものが崩れつつあると思うんです。
 専門家向けの情報も一般向けの情報も,ほとんど変わらないコストで
発信できるのがネットの特徴です。また,すぐに訂正したり追加したり
できます。現実の広告だと印刷して配って,という手間がかかるから
訂正や追加情報を流通させるのが難しいけど,ネットではできる。
だから,ネットで宣伝していて「書かれてないことも分かってくれ」
は基本的に通用しないと思います。ちょっと書けば済んじゃうことなので。

 これまでにいくつか当サイトへの同様のクレームがありましたが,
共通して言えることは,ネットでの宣伝と従来の宣伝の質の違いを
理解していないのではないか,ということです。

 メディアである以上,新聞や雑誌の記事と同様に,書かれた内容に
ついて批判も議論もつっこみもあって当たり前なんです。ネットという
メディアを個人から企業に至るまでが手に入れた結果,そこで行われる
情報発信は従来のメディアと同様に批判にさらされる俎上に乗せられる
ということになった。私がやっている批判や突っ込みの記事は,企業の
宣伝が,まさに「マスメディア」を通して流れているから成立して
いるという面があると認識しています。

 もちろん,こういう見方は,ネットを使うということの理解が
変わればまた変わってくると思います。私が,1994年から今まで
約10年間ネットと付き合ってきた肌感覚としてこう考えるように
なったとご理解ください。メディア論の専門家や評論家の意見も
きいてみたいところではありますが。

> 次に
> 「湯は水よりもブラウン運動が大きい」という事実によって、
> 「磁場によってブラウン運動が大きくなる可能性がある」
> ことを否定しようとしていますが、そんなことはできません。

 どう読んだらこうなりますかねぇ?
・湯は水よりも(分子の)ブラウン運動(正確には熱運動と言うべき)
が大きい
は事実で,
・マクロな測程量である温度とミクロな熱運動の激しさが直結して
いる
も事実で,
「磁場でブラウン運動を大きくさせても温度を上げてブラウン運動
をさせてもその実体は同じはず」
が主張です。だから,「ブラウン運動を大きくさせる」が「磁場の
特異な効果」であるかのように主張するのは間違いだ,という
論理のつもりですが・・・・。ついでに,「わざわざ磁場を使わず
手持ちの湯沸かし器使えば?」って提案でもあります。

 そう書けてないとしたら私のミスですね。文章見直します。

> ブラウン運動とは、要するに熱によるランダムな分子運動である。
> ブラウン運動を大きくするには、温度を上げれば良いだけである。
> という、何ともあっけらかんとした、同義語反復的な表現は、
> 分子運動や熱や温度、振動といった物理現象に対する、
> 天羽さんの理解の深さを疑わせるものです。

 じゃあ,あなたはどう主張するんですか。お伺いしたいです。

> 第一の理由は、
> 国立大学の教官の権威のほうが信用が大きいので、
> 中小メーカーが何を言っても初めから勝負にならない、
> という点にあります。

 そういう風潮をなくしたくてウェブページを作ったんですけど
ねぇ。だからわざわざ権威じゃなくて内容で判断,って随所に
書いているわけでして。

 ちなみに,問題のコメントを書いたとき,私はほとんど無職でした。
学位は1つとったものの途中でテーマがつぶれたためまともな業績が
なく,何とか挽回しようと実験に明け暮れる傍らで書いたものです。
 もちろん,立派な肩書きとも無縁でした。
 一方,水商売業者は名誉教授を担ぎ出したりたくさんバイブル本
を出してる人を担ぎ出したりテレビや大新聞に広告を出したりして
いましたねぇ。

> 国家から給料をもらって、めったにクビになることのない人と、
> 会社あってのサラリーマンで、
> その日その日の売り上げで暮らしている中小メーカーの技術者とでは、
> 身の安全度が違いすぎて、同じ土俵では戦えない、ということです。
> 国立大学から、公開の場で論争をふっかけられては、
> 中小メーカーは対抗できないし、対抗してもめてみても、
> 何の得にもならない、損するだけなのです。

 それで?デタラメを放置することに対する何の弁護にもなって
いませんが。

> 国家から保護される立場に長くある人には、
> このことがなかなか理解できないようです。

 ずいぶんステレオタイプな見方をなさってますけど,一体誰に
向かって言ってるんですか?事実誤認も甚だしい。

 私がまともに就職したのは,この10月からですよ。それまでは
次の職があるかどうかも怪しい状態で何とか食いつないでいました。
あなたがいろいろ指摘してくださったコメントは,私が将来どうなる
かもわからない時期に,自分の将来を賭けて書いていたものです。
国家の保護なんて,私に関する限り無かったですよ。あるのは
一定期間で確実にクビになって次の就職先も決まらないという状況
だけ。
 具体的にいうと,東大先端研協力研究員は,書類を出して登録
するだけで給料をもらえるわけではなく1年ごと更新,阪大VBL
は3年の任期制,広島は1年の任期制でした。非常勤が保護の
対象でないのは常識ですよね?私の略歴は公開していますので
ご確認ください。

 ウェブページに対するクレーム処理では,自分の就職先(学術方面)
も決まらないのに,修士課程の母校で博士(理学)をとったお茶の水
大を行政訴訟の対象にしました。まあ,第一回口頭弁論前に裁判外で
和解契約成立でしたが。
 ということで,国家(の出先機関である国立大学)が私を保護した
ことなどありませんでしたし,私にとっては交渉相手でした。

 トラブルを起こす人間を採用するところなどないかもしれない
ということを覚悟の上で,やるべきだと考えたからやったんです。
交渉の落とし所もそれなりに見えてはいましたけどね。

 「長く」がここ最近の2ヶ月を指すなら同意できかねます。職場が
変わって忙しく,この2ヶ月の更新は以前に比べて滞っておりますし。

> しかしそれは勝手なヒロイズムであって、その真の姿は、
> 国家の権威をカサに着て、弱者をいじめているに過ぎません。

 それはあなたの思い込みです。我々には我々の利害があってやって
いることです。ヒロイズムで行動するほどナイーブじゃありません。

 理由はいくつかあります。

 まず,大学やそれに関わる人に対して情報を出せ社会貢献しろと
要求してきているのは社会の側だという背景があります。工学部なら
特許を出すとか産学共同で何かするといったやり方がありますが,
理学部の場合は,そういう方向で研究することは少ないのです。
 それで,社会貢献の一貫として,正しい知識を世の中に提供する
ということを試みているのです。今の情報の出し方がベストだという
保証はありませんが,一般の方々があるていど取っつきやすい形にし,
かつ権威を利用した宣伝にもそれなりに対抗できるというものを,
と考えた結果,今のウェブページになりました。
#もっとも,あなたによれば間違いだらけだということらしいですけどね。

 次は,我々研究者の利害に直結する部分で,研究費の配分の問題です。
 お役所がテーマを限って配分する研究費が増えているんです
けど,どういうテーマに出すかが,社会の状況で決まったりするん
ですね。このとき,企業の宣伝でトンデモ水理論の方がメジャーに
なっていると,「その効果を利用した開発」ってテーマが設定されかねない
んですよ。まともな研究をしようと思ってる側にとっては困るんですね。
だから,変な話は変だという情報も出しておく必要があります。
この場合,文系のお役人にもわかりやすい方法であることが重要です。

 もう1つは,トータルな社会的コストを減らすということです。
 もともと,当サイトは「クラスターの小さい水はいい水だという話
は嘘である」ということが出発点にあるんですけど,これは,中小企業
に就職した後輩からの問い合わせがきっかけとなっています。このデマ
のおかげで,酒造メーカーも含めた多数の水関係会社が,意味のない
NMR分析をやって,試験コストを費やしました。試験コストそのものの
無駄と,クラスター理論に振り回されなければ水成分の分析等の
まともな研究が進んだかもしれないのに実際はそうならなかったこと
による無駄は,それなりにあるんじゃないかと考えています。
 怪しい話は怪しいと指摘することで,こういう無駄を減らすことに
つながっていくというのが私の考えです。怪しい話をそのまま信じる
ことによって,本当に調べなければならないことが放置されてしまい,
その結果,中小企業の製品開発の方向まで歪んでしまっているように
思われます。

> 世にインチキ品は常にあるのであって、
> インチキ品が出回るのもまた、人の世のひとつの姿であって、
> なんでもかんでもビシビシ取り締まればいいというものでもなく、
> もしそれを取り締まったり摘発するとしても、
> それは政治や行政や司直の仕事であって、
> 頼まれもしないのに科学者がしゃしゃり出ることではありません。

 何を当然のことを言ってるんですか。私はウェブページでコメント
を書いただけであって,それは摘発でも取り締まりでもありません。
私にそんな権限は最初からありません。ウェブに書いたコメントに
そんな法的効力は発生しません。こんなことは自明だと思います。

 それに,インチキをインチキだと言ってはいけない理由もありません。

> 科学者は、問われたときに正確で公平な意見を述べればよいのです。
> 科学者の仕事はほかにあります。

 大きなお世話です。本来の論文を書く仕事もしてますし,教育も
やっています。

 ついでに言っておくと,司直の頼みで,浄水器の摘発の際の鑑定嘱託
も引き受けたことがあります。どう摘発するか,司直が勉強するのに
ウチのサイトの情報を使ったようです。その後,正式に書類が回って
依頼されたので,実験して,水処理の前後で水素結合の状態に変化は
ないという結果を,冨永教授と一緒に出しました。こっちは科学者の
業務の一部ですね。

 政治や行政や司直にこだわっておられますが,世の中の良識は,各人
が公的にも私的にも維持することを担っているものです。
政治・行政・司直はその一部に過ぎません。

> 結果として、国立大学の名をもって、
> 法律によらずに、他者の(弱者の)生活権を妨害する行為となっています。

 法律によらずに他社の生活権を妨害すれば,普通は法律によって
処罰されるものです。私は,法律の範囲内でやっているつもりです。

> その行為によって、収入を減らし、職を失い、生活を脅かされる者があっても、
> それはおまえが悪い、私のせいじゃない、カタログを書き直して来い、
> 私は科学者の正当な仕事をしているだけだ、
> というのが天羽さんとお茶の水女子大学の主張であり、行動です。

 それで?
 生活のためなら嘘をついても消費者をだましてもいいという主張を
したいんですか?
 だまされるのはまっぴらだという消費者の立場はどうなるんでしょうね?
 自社の営業を少しでもまともなものにするべく努力している中小企業の
営業や技術の現場の方々の立場は?

 あまりにも見方がステレオタイプ過ぎると思います。もう少し世の中
の現実を見て発言してください。中小企業とひと括りにできるような
ものでもないはずです。

> 天羽さんは、それを「言論の自由」と強弁していますが、
> 法によらないこのような独善的な行為を、
> 法治国家において、リンチ(私刑)と言います。

 独善かどうかはあなたの価値判断の問題です。

 言論による批評をリンチとは言いません。大体,私1人でリンチなど
不可能でしょう。言論によるリンチと言える事態が発生することも無い
とは言いませんが,それは,テレビや売れ筋の新聞がこぞって叩いたり
した場合だけではないでしょうか。

> インターネットは言論によるリンチを執行するのに便利な道具ですが、
> インターネットを利用して自由な言論を展開したいなら、
> せめて国立大学のサイトから出て、
> 国家の税金を使わず、個人の費用で個人のサイトで行うべきです。
> この点は安井氏のほうが常識があってフェアーです。
> さらに言えば、国立大学の肩書きも外し、個人の名で行うべきです。

 前述の理由により,研究者の利害もあっての行動ですから,
やめるつもりはありません。
 安井氏がどうしていようが私には関係ありません。

 再度吉岡氏からメールが届いたので,続きを掲載します。