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誇大広告等の規制(経済産業省)

Posted on 2月 10th, 2008 in 倉庫 by apj

 以前、不実証広告規制というエントリで、景品表示法4条2項適用のガイドラインについて紹介した。これは、公正取引委員会によるものであった(運用指針合理的な根拠)。
 同様のガイドラインが、経済産業省によっても出されている。「「特定商取引に関する法律第6条の2等の運用指針-不実勧誘・誇大広告等の規制に関する指針-」の公表について
(pdfファイル
 pdf版を読めばわかるが、具体的な内容は景表法の指針とほぼ同じである。
 「合理的な根拠」が満たすべき要件は、

1 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
2 勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された性能、効果、利益等と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

 「客観的に実証されたもの」とは

1 試験・調査によって得られた結果
2 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

となっている。さらに、

(1)試験・調査によって得られた結果
1 試験・調査によって得られた結果を勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠として提出する場合、当該試験・調査の方法は、勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された商品の性能、役務の効果、取引により得られる利益等に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施する必要がある。

<例>
・日用雑貨品の抗菌効果試験について、JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
・自動車の燃費効率試験の実施方法について、10・15モード法によって実施したもの。
・繊維製品の防炎性能試験について、消防法に基づき指定を受けた検査機関によって実施したもの。

2 学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法が存在しない場合には、当該試験・調査は、社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要がある。
社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法が具体的にどのようなものかについては、勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容、商品・役務の特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否か等を総合的に勘案して判断する。

3 試験・調査を行った機関が商品の性能、役務の効果、取引により得られる利益等に関する勧誘・広告を行った販売業者等とは関係のない第三者(例えば、国公立の試験研究機関等の公的機関、中立的な立場で調査・研究を行う民間機関等)である場合には、一般的に、その試験・調査は、客観的なものであると考えられるが、上記1又は2の方法で実施されている限り、当該販売業者等(その関係機関を含む。)が行った試験・調査であっても、当該勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠として提出することは可能である。

4 なお、一部の商品の性能、役務の効果、取引により得られる利益等に関する勧誘・広告には、消費者等の体験談やモニターの意見等を勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠にしているとみられるものもあるが、これら消費者等の体験談やモニターの意見等の実例を収集した調査結果を勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要がある。

 専門家の意見については、

(2)専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
1 当該商品・役務又は勧誘に際して告げられた、若しくは広告において表示された性能、効果、利益等に関連する分野を専門として実務、研究、調査等を行う専門家、専門家団体若しくは専門機関(以下「専門家等」という。)による見解又は学術文献を勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠として提出する場合、その見解又は学術文献は、次のいずれかであれば、客観的に実証されたものと認められる。

i. 専門家等が、専門的知見に基づいて当該商品・役務の勧誘において告げられた、又は広告において表示された性能、効果、利益等について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの
ii. 専門家等が、当該商品・役務とは関わりなく、勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された性能、効果、利益等について客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているもの

2 特定の専門家等による特異な見解である場合、又は画期的な性能、効果、利益等、新しい分野であって専門家等が存在しない場合等当該商品・役務又は勧誘に際して告げられた、若しくは広告において表示された性能、効果、利益等に関連する専門分野において一般的には認められていない場合には、その専門家等の見解又は学術文献は客観的に実証されたものとは認められない。
この場合、販売業者等は前記(1)の試験・調査によって、勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された性能、効果、利益等を客観的に実証する必要がある。

3 生薬の効果など、試験・調査によっては勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された性能、効果等を客観的に実証することは困難であるが、古来からの言い伝え等、長期に亘る多数の人々の経験則によって性能、効果等の存在が一般的に認められているものがあるが、このような経験則を勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる根拠として提出する場合においても、専門家等の見解又は学術文献によってその存在が確認されている必要がある。

 幻影随想さんのところで、少し前に「科学というモノサシ」というエントリーが上がった。

そして疑似科学批判は、彼らにとって、
・よく分からんモノサシを問答無用で押しつけられた揚句
・そのモノサシによって自分の信じたものを否定され、
・さらには自分のモノサシ(価値判断基準)まで否定された
に等しい暴挙なのである。
だからこそ彼らは、疑似科学批判者が「科学という絶対的モノサシ」を押し付けてくると感じるのである。

「疑似科学批判批判」とは、
突如「科学のモノサシ」を押しつけられ、自らのモノサシが否定されたと感じた彼らの、

「比較対象間違ってませんか!?あなたの物差しはそれですか!?」
「絶望した!科学のモノサシに絶望した!」
という彼らなりの異議申し立てであり、悲鳴なのである。

 「消費者」で有り続けるのならば、科学というモノサシを拒絶するという選択肢は有りだろう。それは個人の自由である。
 しかし、「事業者」になった場合は、「科学のモノサシ」を受け入れないという態度を取り続ければ、景表法4条2項にひっかかるし、さらに特定商取引法で規制される販売形態をとっていた場合は同時に特定商取引法6条の2にひっかかることになる。
 特定商取引法では連鎖販売取引(いわゆるMLM、マルチ商法)も規制されており、マルチのメンバーは事業者として扱われる。ところが、メンバー勧誘の時に「事業者である」ことが必ずしもきちんと説明されるとは限らない。「友人知人に勧めてあげて」「使いながら知り合いにも使ってもらいましょう」などと、事業者であることを意図的に隠すことで、参加のハードルを下げる形で勧誘が行われることがある。これで商品宣伝にニセ科学が含まれていたら、法規制にひっかかかる可能性が跳ね上がる。
 ニセ科学のうちの一部である「製品宣伝に登場するニセ科学」について、「科学のモノサシ」を拒絶した場合の実際の効果が、消費者と事業者では大きく異なるということは、共通認識として持っておいた方がよい。