VanaHに措置命令

 YOMIURI ONLINEの記事より。

飲料水・VanaH、「国連が評価」とウソ広告

ミネラルウオーターを製造販売する「VanaH」(山梨県富士吉田市)が、「国連から高い評価を受けた」などとうその表示をしたとして、消費者庁は20日、景品表示法違反(優良誤認)で再発防止などを求める措置命令を出した。

 同庁によると、マルチ商法(連鎖販売取引)を行う同社は、会員向けのお知らせ文書で「世界で初めて『国連認定証』を取得」「国連のロゴマークの使用許可を得た」などと表示して飲料水「VanaH」について広告。だが、国連が品質について評価したり、ロゴマークの使用許可を出した事実はなかった。

 文書は昨年10月と11月の2回、会員約6000人にファクスで送信された。昨年度の売り上げは2リットルのペットボトル(12本入り、6800円)で約62万ケースだったという。同社は「命令を厳粛に受け止め、再発防止に努める」としている。

(2012年12月20日19時18分 読売新聞)

 ニセ科学宣伝に引っかからないようにするための注意事項の一つが、有名人のお墨付きは信用するな、というものです。主に、タレント、スポーツ選手、なんちゃって学者によるお墨付きを想定しているのですが、いかにも権威のありそうな名前を無断で使うというのも、お墨付きをもらった体裁を整えている、という意味でこのカテゴリーに入りそうです。

何とかイオン、の顛末

 感染症学雑誌に論文が出ました。要旨が公開されているので引用します。

殺菌性能を有する空中浮遊物質の放出を謳う各種電気製品の,寒天平板培地上の細菌に対する殺菌能の本体についての解析
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター
西村 秀一
(平成24年6月22日受付)
(平成24年7月31日受理)
Key words: plasmacluster ion, nano-e particle, minus ion, bactericidal effect, ozone

要旨

 本邦では,空中へ特殊な物質の放出により環境中においてウイルス不活化や殺菌の効果をもたらすとする複数の電気製品が市販されており,寒天培地上に塗布した細菌に対する殺菌効果も謳っている.そこで本研究では,プラズマクラスター,ナノイー,ビオンの3機種について,腸球菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,セレウス菌での追試を試みた.一定数の生菌含有菌液を普通寒天平板上に塗布し,14.4 m3閉鎖空間に対象機器とともに置き,機器を2時間運転させた後培養し,出現するコロニー数を,非運転環境下においた対照のそれと比較した.その結果,調べた3機種,4種の菌のすべての組み合わせで,形成されるコロニーの数は対照のそれと変わらなかった.一方,細菌を塗布した寒天培地を容積0.2 m3の密閉グローブボックス内に置き,同様の実験を行ったところ,3機種すべてが,腸球菌と黄色ブドウ球菌のコロニー形成を,程度の差はあれ対照と比べて有意に減少させ,一方緑膿菌については減少させなかった.前二者に対するコロニー形成抑制/殺菌の機序について,これらの機器が放出するオゾンが原因である可能性を検討した.その結果,殺菌効果は,それらが発生させるイオンや特殊微粒子を除去しても変わらず,一方で発生するオゾンを除去すると激減した.

 以上の成績により,調べた電気製品には,1)通常の生活空間のような広い空間における使用では,ほとんど殺菌効果が期待できないこと,しかし,2)きわめて狭い空間における寒天培地上のある種の細菌という限定的な対象に対しては,ある程度の殺菌作用は認められること,だが,3)そうした効果は,一義的には,それらの機器が放出している特殊物質というより,それらが同時に放出しているオゾンによる殺菌効果で十分説明可能であること,が明らかになった.今回対象となった機器のみならず,こうした類の殺菌効果を謳う電気製品については,オゾンの関与を疑う必要があろう.

〔感染症誌 86: 723~733, 2012〕

 電気製品から、放電方式で出てくる何とかイオンの効果は、オゾンの効果で確定ということのようですね。
 滅菌効果を期待して使う側としては、原因物質がオゾンだとわかっても別に問題なありません。ただ、濃度度が薄いと効果が無いし、濃度が高すぎればオゾンの劇物としての効果が顕著になって、使用に注意が必要となりそうです。

 殺菌以外で、一連の「マイナスイオン」の生理作用として言われてきたものが、実は微量のオゾンによるものだった可能性もあるわけで、この先は普通の科学の研究になります。微量のオゾンの生理作用は、研究テーマとしては面白いと思います。しかし、製品にする場合は費用対効果が問題となります。わざわざコストをかけてまで実装する程のものかどうかは、買う側にとっても見極めが必要ではないかと。

 活性水素と同じ経過をたどっているのが興味深いですね。あっちは、活性水素というものがある→成分分析したり分けたりして調査した論文が出る→電気分解でできた微量の溶存水素ガスの効果でほぼ説明できる、という展開でした。