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さて、効果はどの程度の濃度から現れるのか

Posted on 10月 1st, 2009 in 倉庫 by apj

 asahi.comの記事より。

水素入りの水はパーキンソン病防ぐ? マウス実験で効果
2009年9月29日20時28分

 水素を含んだ水を飲むとパーキンソン病などの予防や治療につながる可能性があることを、九州大やパナソニック電工の研究グループが発見した。脳の細胞の破壊が抑えられ、細胞を壊す原因とされる活性酸素も減ったことがマウスを使った実験で確認されたという。30日付の米科学誌プロスワンに論文を発表する。

 九大の野田百美(まみ)・准教授らのグループは、マウスに薬を投与して、パーキンソン病患者に見られる症状と同様に脳の神経細胞を破壊させる一方、前もって水素をわずかに含んだ水を飲ませた。

 その結果、水素を0.08ppm含んだ水を1週間飲ませたマウスでは、細胞死の進行が抑えられていたことを確認。薬の投与後から水を飲ませても同じ抑制効果が見られ、活性酸素の量も減っていたという。

 「ふだん飲まれている電解水に含まれている水素と同程度の濃度で効果があった」と研究にあたった同大院生の藤田慶大(きょうた)さん(25)。水素が細胞死を抑える仕組みはまだよくわかっていないが、研究グループは今後、臨床試験も実施して実用化を目指すという。(福島慎吾)

 溶存水素計を調べると、0.01mg/L(ppm)から測定できるものが普通に市販されている。
 普通の水道水で水素分子の溶存量がゼロかというとそんなことはない。ここ数年関わっている実験で、ごく微量の水素発生量を定量しなければならなくなって、実験前に水道水から作った純水(蒸留水や、純水製造装置で作ったもの)の水を加熱して溶存しているガスを抜くといったことをしているのだが、ガスクロで分析すると抜いたガスから水素のピークがばっちり出たりする。つまり、純水を作っているつもりでも脱気したガスの中にはガスクロにかかる程度は水素が含まれている(ただ、大抵の実験では微量なので影響しないから、純水を使う時に水素濃度を定量してから使うのは特殊な場合に限られる)。こうなると、どの程度の濃度なら影響が出るのかを押さえておかないと、知らずにたまたま水素濃度が高い水だったのを見落としていて結果がばらつきました、などということになりかねない。効果の水素濃度依存性を知りたいところ。この濃度以下なら効果は無いからまず安心、というのがどこか調べないと、あちこちで困ったことになりそうな……。多分、濃度依存くらいは調べてることを期待したいんだけど、新聞報道って一番知りたい情報をどうして入れてくれないのだろう。


ここからは旧ブログのコメントです。


by mimon at 2009-10-09 09:37:09
効果はともかく、作用がねぇ

パーキンソン病のように、病因のはっきりしないものに、予防的効果を謳うことは、ほとんど不可能に近いと思います。
もちろん、発症した人に対しては、ドーパミンを増やすとかいった、治療薬の効果は、認めます。

新聞報道のまま受け止めても、水素水には、「薬を投与して、パーキンソン病患者に見られる症状と同様に脳の神経細胞を破壊させる」という毒薬の解毒作用がある事しかいえません。
私は、医師とかではないので、適切な例をあげられませんが、例えば、高濃度のアスベスト雰囲気で飼育したマウスと同じ環境で防塵マスクをつけさせたマウス(イヤがるだろうな)とを比べたら、防塵マスクは、発癌を予防するようにも見受けられる結果が出るでしょう。
そんな、取るに足りない例で、一般的に防塵マスクの発癌予防作用は、謳えません。

日本トリムの出かたが楽しみです。
#コメントが、なんだか、あっちの掲示板みたいになっちゃいました。


by apj at 2009-10-07 09:44:07
Re:さて、効果はどの程度の濃度から現れるのか

mimonさん、

 パーキンソン病を押さえてなかったとしても、水素が影響するってことになると、他の実験結果に予期せぬばらつきをもたらしそうでイヤなんですよね。

 何かの動物実験をしていたら、結果の出るときとそうでない時があって、実は実験に使っていた水の水素濃度が……なんてことになったら気付くのはかなり難しいでしょうから、何に対してどこまで敏感に効くのかを知りたいところなんですよ。


by ごんべえ at 2009-10-47 17:25:47
一番知りたい情報

> 新聞報道って一番知りたい情報をどうして入れてくれないのだろう
今回はFujita K, …Noda M, PLoS ONE, September 30, 2009
てそろっているから十分じゃないでしょうか?

> 知らずにたまたま水素濃度が高い水だったのを見落としていて結果がばらつきました、などということ
は水素に限らずいろいろあるので、普通は何かを添加したかどうかだけが異なる実験をセットで行うので、大勢に影響は無いと思います。生物の実験て大抵、物理やさんの実験に比べると、制御できないことがいっぱいありますのでそこは割り切るところでしょう。

予防話につながるかは、やっぱりその差が生じる分子機構がわかるかどうかが鍵じゃないでしょうか。可能性がある程度なら認めてあげてもいいでしょう。くれぐれも予防につながることがわかったわけではないのでそこを間違わなければ。本当に効くなら、東京都水道局の水道の根元で水素を吹き込めば安いですし。(どっかの会社の水素水を買う必要は結局ない)


by apj at 2009-10-32 18:02:32
横道

ごんべえさん

>本当に効くなら、東京都水道局の水道の根元で水素を吹き込めば安い

 虫歯予防でフッ素を入れるべきかどうかという話が根強くありますが、そこに今度は水素が参戦するかもしれないとw。
 水道水を原水にして純水を作って実験している側(しかも微量の水素の定量をしている)からすると、悪夢のような展開^^;)。


by pollyanna at 2009-10-42 19:33:42
最高で0.08 ppmくらいみたいですね

PLoS ONEで全文が読めます(http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0007247)が、水素ガスを吹き込むか、マグネシウムを入れるかして「水素水」をつくっているようですね。
反応直後の濃度は0.08 ppm程度で、8時間のうちにほとんどバックグラウンドレベルに抜けるようです。
(なので、水道局で吹き込んでも、あんまり影響ないかもですね ^^)

実験は、つくって8時間以内の水素水または普通の水をマウスに与えているので、濃度依存性は見ていません。
パナソニック電工との共同研究なので、整水器がらみなのかもしれませんね。


by ごんべえ at 2009-10-28 07:42:28
Re:さて、効果はどの程度の濃度から現れるのか

>反応直後の濃度は0.08 ppm程度で、8時間のうちにほとんどバックグラウンドレベルに抜けるようです。
>(なので、水道局で吹き込んでも、あんまり影響ないかもですね ^^)
少ない体積を空気中に放置すれば抜けるでしょうけど、水道管は密閉されているし、Heじゃあるまいに管から抜けるっていうことはあんまりないんじゃないでしょうか。

> 濃度依存性は見ていません。
Fig2Eが濃度依存性です。
0.04 ppmは若干上がっているけど有意差なし0.08 ppmが最大、
0.5ppmで少し下がって1.5ppmで再び上がっています。
1.5ppmがほぼ飽和ということのようです。


by pollyanna at 2009-10-37 08:22:37
あ、ほんとだ

>ごんべえさん
大変失礼しました。いいかげんなこと書いて申し訳ありません。
濃度依存性は見ていましたね。
ありがとうございます!


by ごんべえ at 2009-10-30 07:08:30
キター!

ZAKZAKだと

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20091016/dms0910161230007-n2.htm

「水素水の効用は、トップアスリートやエステティシャンの間では以前から知られていた。体内に蓄積した活性酸素は疲労や老化、重大疾病の原因とされる。それを水素が持つ強力な還元力で抑制。細胞やDNAの損傷を軽減することで疲労しにくい体を作るほか、高い美容効果も実証されている。」だそうです。

活性酸素は、そうそう蓄積しないだろうし(活性が高ければすぐ反応して別のものになる) 水素が強力な還元力なんか持っているわけないって高校レベルだと思うが。強力な還元力なら硫化水素なんかのほうが有効だけど有毒なのは有名。どうしてここまで不思議な文章を平然と公表できるのだろう。

これに比べれば、さきの朝日の記事はなんとまともなことか。