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ネット上の実名匿名論争

Posted on 10月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 勝間和代のクロストーク「ネット上でも実名で表現を」を読んで。
 これまでさんざん議論になってきたネタだが、勝間さんの主張もそれに対する反論も、両方とも議論のポイントが違うだろうと思ったのでまとめておく。なお、クロストークの方には、実名賛成の立場でコメントをしてきた。

ネット上でも実名で表現を2009年10月04日

 インターネットはここ数年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ツイッター、動画投稿サイト「ユーチューブ」など、さまざまなツールの出現により、単なるメールとウェブ閲覧の手段から、人と人とが直接つながるメディアへと発展してきました。

 一方、ネット内ではまだ、匿名やニックネームが中心で、実名での表記はまれです。その結果、健全な助け合いが本来、ネットメディアの望ましい姿であるにもかかわらず、一部には、過激な中傷があとを絶ちません。「炎上」という形で多数の人から非難された結果、閉鎖するブログもあります。

 しかし、ネットがメディアとしての信頼性を高め、既存のメディアと肩を並べる存在になるには、表現者が自分の名前を開示し、責任の所在を明らかにすることが不可欠だと私は考えています。匿名コミュニケーションのままでは、いつまでもネットは周辺メディアの位置にとどまるでしょう。

 もちろん、ネット上のすべての表現について実名を開示する必要はありません。しかし、少なくとも人とのつながりを目的とした利用においては、できる限り実名を明らかにするのが好ましいと考えます。

 一方、実名にすると気軽なコミュニケーションが阻害され、あるいは、個人情報の漏洩(ろうえい)につながるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、クロストークも開始以来1年間、実名主義を貫いてきましたが、活発で的を射た討論が続いています。さらに、実名であることにより、複数のトピックにわたって投稿くださっている方の考えを追うこともできます。今のところ、問題は生じていません。

 もちろん、他人の名前をかたる人物が現れたり、名簿が売買されたりするリスクはゼロにはなりません。さらに、企業に勤務をしている方の場合には、社内情報の漏洩や、立場上まずい発言をしてしまうなどの問題も起こり得ます。しかし、これらはすべて、ネット外の実社会(オフライン)でも同じことです。他人の名前をかたることや、会社の守秘義務に反することは、どのような場であれ認められないのです。

 ネット上で実名主義をとるにあたって、プライバシーをどう守っていくかは、今後の課題です。しかし、自分の名前を開示して、発言に責任を持つことは、相手とのかかわりを深め、理解を求めるための必要条件と考えます。

 ネットを過激な陰口の場にしないためにも、思い切って、実名主義を進めてみませんか。それによって、コミュニケーションが円滑になるほか、ビジネス面での利用の際の信頼性も高まると確信しています。

 ネットで実名制をとったからといって、誹謗中傷が減ることは特に期待できない。実名を背負っている分だけ、対立が激化することがありうる。また、信頼性が高まるかというと、「面と向かってウソをつく」人だっていくらでも居るのだから、実名にしたところで発言の信頼性が高まるわけではない。ネットで実名にしようが膝詰め談判しようが嘘つきは嘘つきのままだろう。

 ネットで実名制をとった場合の最大のメリットは、事が起きた場合の責任追及に必要な手間が減る、という点にある。
 現状では、発言の責任を追及する場合、
(1)掲示板やblogのコメント欄なら、まずは管理者に頼んで書き込み元のIPを開示してもらう
(1)’無料ウェブサイトなら、利用者の個人情報が正しく登録されている保証はないので、やはりサイトのサーバ提供者に書き込み元IPの開示をしてもらう
(2)次のそのIPを使ってプロバイダに対して発信者情報の開示を求める(場合によってはここで訴訟になるし、ログ保存の仮処分が必要になったりする)
(2)’有料サーバなら支払情報から本人特定できるが、やはり業者に対して開示請求の手順が必要になる。
(3)本人特定の上で、書いた内容についての責任を追及する
という手順になる。本当にやりたいことは(3)なのに、(1)や(2)で手間と時間をとられるというのが、ネットの発言に対して責任追及する場合に問題となる。しかも、ログ保存期間を考慮すると、やろうとした場合は時間との戦いになることもある。実名制にすると、本人特定の手段は明らかに増えるし、その分だけ特定が楽になり、より少ない手間で本来の目的である(3)を実行できる。これが実名制のメリットである。

 なお、実名制の定義があやふやだと困るので補足。訴状の送達が可能な情報と結びついていることがベストだが、それにつながるかなり強いヒントも可、といったところ。だから、実名の代わりに国民総背番号にしてIDと発言が結びつくようにしておいて、そのIDに対して特別送達が可能である(本名は後から判明)といった制度が作れるなら、日本人ぽい名前が具体的に出てこなくてもかまわない。
【補足】
 この点、単に日本人らしき名前を名乗ればそれで満足するのかといった屁理屈による反論が行われることがある。もちろん、アルファベットのハンドル名を名乗るかわりにそれらしい名前を記載したところで、その人物を特定して訴状が送達可能でなければ何の意味もないので、そのような反論はガキの屁理屈以下でしかない。実名制とは、つまりは特別送達可能あるいは送達先につながる重要なヒントが示されていることを意味する。

 実名匿名論争では、発言に責任を持つ云々という話が出てくるのが常で、責任とは発言者が自発的に負うものだとされてきたように思う。これは間違いで、この場合の責任とは、被害を受けた側が加害者に対して強制力を伴う方法で負わせるものだと考えるべきである。
 実名制で誹謗・中傷が減るという主張は、発言の段階で権利侵害が起きないようにすることが可能だという意味である。勝間さんもそう考えているらしい。実際には、そうではなくて、事後の救済の手続きの負担軽減の方がメリットとなる。

 では、匿名制のメリットは何か。

 刑事や民事の手続きが必要な状態になれば、本人特定を免れることはまず不可能なので、匿名で言いたい放題言えるというまでのメリットは無い。追求される場合のハードルを上げるというメリットはあるだろう。

 逆に、匿名が相手の名誉毀損が成立するかを考えてみた。この場合の匿名とは、ネット上にのみ存在する、いわゆるハンドル名のみがわかっているサイト制作者やblog主で、実社会の人格との結びつきが明らかになっていないものとする。
 ハンドル名のみの誰かを中傷した場合、相手が匿名に隠れようとしている限り、責任追及される可能性はまずない。ハンドル名だけでは告訴状も書けないし被害届も出せない。ハンドル名×××で○○○サイトの管理者が被害者だが、どこの誰かはわからず、1人なのか複数なのかも不明という状態では、書かれた内容について罪に問おうとしたって公判が維持出来るはずがない。民事訴訟だって、ハンドル名だけの訴状はそもそも受け取ってもらえない。つまり、被害者となる相手が匿名でいようとすればするほど、加害者にとって安全という結果になる。これを、加害者にとってのメリットと呼んで良いかどうかは微妙だが……。それでも、匿名によって訴訟までの手間を増やしてハードルを高くするというメリットを享受するかわりに、「人」として尊重されない(法的救済を受けられない)というデメリットを背負うというのは、バランスはとれているように思う。

【追記】
 加害者特定が時間との戦いになる、と書いたが、警察も同じ理由で困っていることが記事になっていた。
毎日.jpの記事より。

 ネット犯罪:ログの90日間保存を プロバイダーに要請へ

2009年10月15日 15時0分 更新:10月15日 15時9分

 インターネット上に犯罪を助長するサイトが横行していることを受け、警視庁は国内の大手プロバイダー事業者にネットの通信履歴(ログ)を最長90日間保存するよう要請する方針を固めた。振り込め詐欺に悪用される預金口座や携帯電話などの売買の摘発には、容疑者の特定につながるログの保存が不可欠と判断した。通信の秘密が侵されるなどの理由で事業者が難色を示すことも予想され、事業者の対応が注目される。

 警察による正式な要請は初めて。16日に警視庁で開催する「違法・有害サイト対策官民会議」で、出席したプロバイダーに保存を求める。

 日本は01年11月、「捜査機関が、90日間を限度に保全を命令できるような法整備を行う」とする条項を盛り込んだ「サイバー犯罪条約」に署名した。法整備が進まず、プロバイダーにログの保存義務はないが、警視庁は「保存期間が短かったり、保存していない業者もおり、捜査に支障が生じている」(捜査幹部)と要請を決めた。

 16日の官民会議には、プロバイダーや通信事業者など17社が参加予定。違法サイトへの広告掲載が実質的にサイトの運営を支えているとして、広告代理店に仲介の中止を求めることも事業者に要請する。また、違法な書き込みを削除しないサイト管理者との契約解除を積極的に進めることなども要望する。

 警視庁によると、08年に寄せられたネットの違法・有害情報は約3万7000件あったが、立件できたのは約400件。このため、警視庁は先月末に「違法サイト対策統括事務局」を設置し、振り込め詐欺に使われる口座のほか、違法薬物や児童ポルノ画像などの売買を持ち掛けるサイトの情報を一元的に集めている。警視庁幹部は「通信の秘密への配慮やコスト増の懸念からログ保存をちゅうちょする事業者が出ることも予想されるが、違法サイトの蔓延(まんえん)は看過できず、協力をお願いしたい」としている。【川辺康広】

 通信の秘密、というのは、送った側と受け取った側が双方内容と通信があったこと自体を秘匿している場合なら意味がある。しかし、送った情報が公開済みである場合にまで適用することに意味があるか、というのは、議論の必要があるだろう。改憲の時には再検討してもらいたい項目である。

 本気で追求する場合は、ログ保存の仮処分を突っ込んで(これは民事手続だから被害者が自分でできる)、プロバイダに関連ログを保存させてから、警察に届け出る、といった工夫が必要になる(実際に、私は以前この手で証拠を保存してから告訴状を出した)。


ここからは旧ブログのコメントです。


by nomad at 2009-10-22 09:02:22
Re:ネット上の実名匿名論争

どこかで「匿名の発言」の自由の担保は取っておいて欲しいと思いますね。
僕も自分の会社に対してモノ申したことがありますが、これがまたどえらい苦痛な話で…
正論を言うのにコストがかかりすぎると、正論を誰も言わなくなってしまう。
そうした時にてコストをかけずに正論を唱えるという場がどこかに欲しいと思います。
「コストをかけない」手段の一つが匿名ということで。
もちろん正論を唱えることによって権利の侵害を受けないのであればそれにこしたことはないんですけども。


by apj at 2009-10-59 18:10:59
Re:ネット上の実名匿名論争

nomadさん、

>そうした時にてコストをかけずに正論を唱えるという場がどこかに欲しいと思います。
>「コストをかけない」手段の一つが匿名ということで。

 そのために、権利侵害された側が余計なコストを支払わなければ救済されない状態になることを容認できるか、という話になります。
 もっとはっきり言えば、匿名の誰かによって権利侵害された被害者に向かって、「発言の自由を確保したいので、あなたが救済されるためには余計な手間がかかることになってもあきらめてくれ」と主張できますか、ってことです。そう主張して匿名の自由を守る立場もあれば、そうでない立場もあるでしょうね。

 それはともかく、実名匿名論争で、被害者側の視点がこれまでほとんど出てこない状態で議論が進んでいたのが謎です。勝間さんのような人まで、今頃まだ勘違いしているような気が……。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-23 09:09:23
Re:ネット上の実名匿名論争

いえいえ、権利侵害されるリスクが高いからこそ、私はこうやって実名ではないわけで。(少なくとも、グローバルなネットワーク上では。)

基本的に誰でも見れるようなところで、自分の正体を明かしたりしないのは、私のような無名の人間だけではなく、著名な方も、実生活以外で、雑多な事に煩わしくなりたくないからではないかと。(上映直前の映画館に駆け込む芸能人のエピソードとか知りませんか? コンサートなんかもそうだけど。)


by Atlantis.sawamura at 2009-10-25 09:20:25
Re:ネット上の実名匿名論争

まあ、当然ながら匿名に隠れて罵倒を行うのは、ちゃんと責任追及されるべきだとは思いますが、日本の場合、個人への名誉毀損は、悪マニの事件を見ても分かるように、あまりに補償額が小さすぎて、裁判の苦労を考えると、あまりに実がなさすぎです。
誰もが裁判をできるほど、時間的金銭的な余裕もないし、危急的な救済手段こそが、現在必要とされ、求められている内容のように思います。

とはいえ、昨今の人権意識は、特に若年層に根付きつつあるようですが…。


by apj at 2009-10-38 11:13:38
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>いえいえ、権利侵害されるリスクが高いからこそ、私はこうやって実名ではないわけで。

 そういう話ではありません。今問題にしているのは、匿名の人間に不法行為をやられた場合にどうやって追求のコストを下げるか、ということです。
 仮に、強制的にネット利用は匿名以外不可、とやったとしても、実生活で何か逆恨みされる→匿名の誰かに実名晒して中傷される→中傷が巧妙でなかなか誰が書いたか特定できない、ということはあり得るわけです。ネットで最初から匿名でも、このケースには対応できませんよね。

 また、ただでさえ個人への名誉毀損の補償額が小さいときに、加害者が匿名であることによって、さらにハードルが上がるのは、ますます救済から遠のく結果になります。名誉の値段はもう少し上げる方向で今後は考えていかないといけないでしょう。少なくとも、裁判の手間を補える以上には。


by apj at 2009-10-38 11:32:38
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>いえいえ、権利侵害されるリスクが高いからこそ、私はこうやって実名ではないわけで。

 そういう話ではありません。今問題にしているのは、匿名の人間に不法行為をやられた場合にどうやって追求のコストを下げるか、ということです。
 仮に、強制的にネット利用は匿名以外不可、とやったとしても、実生活で何か逆恨みされる→匿名の誰かに実名晒して中傷される→中傷が巧妙でなかなか誰が書いたか特定できない、ということはあり得るわけです。ネットで最初から匿名でも、このケースには対応できませんよね。
 ネットで最初から匿名を使っていさえすれば自分の実名が誰かによってネットに登場することはない、とはいえないわけですよ。実生活でまで匿名でいられるなら話は別ですが。ネットでは匿名にしてます、という主張はほとんど何の意味もないんです。

 また、ただでさえ個人への名誉毀損の補償額が小さいときに、加害者が匿名であることによって、さらにハードルが上がるのは、ますます救済から遠のく結果になります。名誉の値段はもう少し上げる方向で今後は考えていかないといけないでしょう。少なくとも、裁判の手間を補える以上には。


by apj at 2009-10-00 11:42:00
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>いえいえ、権利侵害されるリスクが高いからこそ、私はこうやって実名ではないわけで。

 そういう話ではありません。今問題にしているのは、匿名の人間に不法行為をやられた場合にどうやって追求のコストを下げるか、ということです。
 仮に、強制的にネット利用は匿名以外不可、とやったとしても、実生活で何か逆恨みされる→匿名の誰かに実名晒して中傷される→中傷が巧妙でなかなか誰が書いたか特定できない、ということはあり得るわけです。ネットで最初から匿名でも、このケースには対応できませんよね。
 ネットで最初から匿名を使っていさえすれば自分の実名が誰かによってネットに登場することはない、とはいえないわけですよ。実生活でまで匿名でいられるなら話は別ですが。ネットでは匿名にしてます、という主張はほとんど何の意味もないんです。
 名誉毀損を例にしましたが、権利侵害には、肖像権の侵害とか著作権の侵害とかもあるわけで、こんな場合に「ネットではいつも匿名にしてます」と言ったところで何の関係もないでしょう。

 また、ただでさえ個人への名誉毀損の補償額が小さいときに、加害者が匿名であることによって、さらにハードルが上がるのは、ますます救済から遠のく結果になります。名誉の値段はもう少し上げる方向で今後は考えていかないといけないでしょう。少なくとも、裁判の手間を補える以上には。


by apj at 2009-10-05 11:46:05
別のバランスの取り方としては……

 加害者が特定されて損害賠償請求されるときに、加害者が実名でなかった場合は、人物特定に余分な手間を発生させたということで、賠償金の金額を相当に上乗せする、という運用も有りですよね。つまり、匿名で悪い事をした場合にはペナルティがその分だけ大きくなるというリスクを背負わせるわけです。
 毒にも薬にもならない内容を書いている場合は匿名でも安全だけど、そうでない場合は匿名のリスクを上げる、というやり方も有りかと。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-42 14:11:42
Re:ネット上の実名匿名論争

うーーん。
ちょっと前提が不明になってきたのだけど。
本人の特定を容易に。ですよね。
ネットワークで本人の特定を誰でも容易にしたら、それは匿名だろうが実名だろうが、実利として真の意味で実名使っていることと同じ事で、見事に本人の行動が串刺しで検索可能になって、プライバシーも何もあったもんじゃない、ってなりません?

って、私の把握が間違ってる?


by Atlantis.sawamura at 2009-10-01 14:16:01
Re:ネット上の実名匿名論争

あ。違うか。誰でも、じゃなくて裁判命令があった時には。
ってことかな。


by Atlantis.sawamura at 2009-10-49 16:20:49
論争の元々の定義が、かなり曖昧なんでは。

でも、これって実名論争とは別なテーマの気がする。
それに、元々 TCP/IP ですので、IP記録さえどこかに保管して、裁判命令で提示すればいいのでは。(2chがそうですよね)


by apj at 2009-10-47 19:31:47
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>見事に本人の行動が串刺しで検索可能になって、プライバシーも何もあったもんじゃない、ってなりません?

 ならないです。だって、ネット=実生活、じゃないのが普通ですから、ネットにその人の行動の全てが出るわけじゃない。自分でバラした場合はそうなるけど、それはその人が望んだことだし、他人がバラして回ってる場合は、その他人を即座に特定してやめさせたり賠償金を求めたりすることになるけど、実名制だとその手間がかなり軽減できる。

>それに、元々 TCP/IP ですので、IP記録さえどこかに保管して、裁判命令で提示すればいいのでは。(2chがそうですよね)

 それでは手間が掛かりすぎて被害者救済のハードルが高くなっているから、実名制(ID制でもいけど)にすればハードルが下がり、これが実名制のメリットだろうというのが私の主張です。
 つまり、裁判は1回、エントリーで書いた(3)のみで済むような制度にするなら実名制にも意味がある、ということです。

 どうしても匿名を残せというのなら、実名晒さず悪さをやった場合の事後のペナルティが跳ね上がる、といったものにしないとバランスが摂れない。実名ならそれなりの賠償で済むけど、匿名使って悪さをすると懲罰賠償上乗せが適当だろうと。匿名のために、追求側が損をした分(当事者だけじゃなくて裁判所のリソースを余計に使ったという社会に対しても無亜をさせた分)を回収する、という意味合いもあるんだけど。

 要は、匿名をタダのままにしておくな、ということです。


by apj at 2009-10-41 19:39:41
いわゆる実名論争の方がずれていた

Atlantis.sawamuraさん

>でも、これって実名論争とは別なテーマの気がする。

 じゃなくて、これまでの実名論争の方がずれているだろうと考えたから、私は別な立場で書いてるんです。
 これまでの実名論争って、
・実名で書くと内容の信頼が云々←いやそれは内容次第だから実名関係ないし
・実名でないと営業で使えない←そのメリットがある人ばかりじゃないし
・実名で書くと内容に歯止めがかかって誹謗中傷が減る←いや実名でやってた場合だって罵り合いにはなるけど
とか、こういう展開ばっかり。
 でも、論点はそこじゃないでしょう、ということです。

 事後の救済にかかる手間がネットを使わない場合に比べて余計にかかる、ということがネットの問題点です。実名制に賛成の立場をとると、これらの典型的な議論の反論にすべて同意したとしてもなおメリットがあることを言えますから、本来の議論は、今回私が呈示した内容で進めておく方がいいのではないでしょうか。
 つまり、実名にすることが、どんなケースで誰にとってメリットがあるのかをはっきりさせようということです。議論の質の話などの価値判断が入らない形で、制度利用の問題として詰めようということなんですけど。


by apj at 2009-10-19 19:41:19
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>見事に本人の行動が串刺しで検索可能になって、プライバシーも何もあったもんじゃない、ってなりません?

 ならないです。だって、ネット=実生活、じゃないのが普通ですから、ネットにその人の行動の全てが出るわけじゃない。自分でバラした場合はそうなるけど、それはその人が望んだことだし、他人がバラして回ってる場合は、その他人を即座に特定してやめさせたり賠償金を求めたりすることになるけど、実名制だとその手間がかなり軽減できる。

>それに、元々 TCP/IP ですので、IP記録さえどこかに保管して、裁判命令で提示すればいいのでは。(2chがそうですよね)

 それでは手間が掛かりすぎて被害者救済のハードルが高くなっているから、実名制(ID制でもいけど)にすればハードルが下がり、これが実名制のメリットだろうというのが私の主張です。
 つまり、裁判は1回、エントリーで書いた(3)のみで済むような制度にするなら実名制にも意味がある、ということです。

 どうしても匿名を残せというのなら、実名晒さず悪さをやった場合の事後のペナルティが跳ね上がる、といったものにしないとバランスが摂れない。実名ならそれなりの賠償で済むけど、匿名使って悪さをすると懲罰賠償上乗せが適当だろうと。匿名のために、追求側が損をした分(当事者だけじゃなくて裁判所のリソースを余計に使ったという社会に対しても無駄をさせた分)を回収する、という意味合いもあるんだけど。

 要は、匿名にコストを払わせろ、タダのままにしておくな、ということです。


by apj at 2009-10-28 19:45:28
Re:ネット上の実名匿名論争

Atlantis.sawamuraさん、

>見事に本人の行動が串刺しで検索可能になって、プライバシーも何もあったもんじゃない、ってなりません?

 ならないです。だって、ネット=実生活、じゃないのが普通ですから、ネットにその人の行動の全てが出るわけじゃない。自分でバラした場合はそうなるけど、それはその人が望んだことだし、他人がバラして回ってる場合は、その他人を即座に特定してやめさせたり賠償金を求めたりすることになるけど、実名制だとその手間がかなり軽減できる。

>それに、元々 TCP/IP ですので、IP記録さえどこかに保管して、裁判命令で提示すればいいのでは。(2chがそうですよね)

 それでは手間が掛かりすぎて被害者救済のハードルが高くなっているから、実名制(ID制でもいけど)にすればハードルが下がり、これが実名制のメリットになるだろうというのが私の主張です。
 つまり、裁判所の利用は1回、エントリーで書いた(3)のみで済むような制度にするなら「実名制」に意味がある、ということです。だから、書いたものにそれらしい署名がついているといった形式上の話ではなくて、そこから(1)や(2)で裁判所を使わなくてもその人への送達ができるシステムがあればベストで、そこまでが無理なら可能な限り(1)(2)を楽にできるようにしろ、という話になる。

 どうしても匿名を残せというのなら、実名晒さず悪さをやった場合の事後のペナルティが跳ね上がる、といったものにしないとバランスが摂れない。実名ならそれなりの賠償で済むけど、匿名使って悪さをすると懲罰賠償上乗せが適当だろうと。匿名のために、追求側が損をした分(当事者だけじゃなくて裁判所のリソースを余計に使ったという社会に対しても無駄をさせた分)を回収する、という意味合いもあるんだけど。

 要は、匿名にコストを払わせろ、タダのままにしておくな、ということです。


by ちはちょる at 2009-10-15 00:58:15
Re:ネット上の実名匿名論争

お久しぶりです。
このクロストークには、私も投稿しました。偽名を使って。

それにしても不思議なのは、他の投稿者が「ここでは実名で投稿することになっているので」と述べているのが目立ったことです。実名での投稿要請に誰もが従っていると信じ切っている人が結構いるようです。

さて勝間氏は、インターネットの技術論や倫理的な面を含めて、ネットリテラシーには極めて問題があります。それなのに今回はクロストークはもちろん、今朝の産経新聞にも一般向けのIT活用記事を載せるなど、勘違いが甚だしいと思います。


by apj at 2009-10-06 03:53:06
Re:ネット上の実名匿名論争

ちはちょるさん、

>このクロストークには、私も投稿しました。偽名を使って。

 私は実名で投稿しましたよ。別に、私の場合は、apjと書いても良かったんだけどほとんど変わりないし。別にわざわざ偽名を使わなくても「ちはちょる」で良かったんじゃないですかね。

>さて勝間氏は、インターネットの技術論や倫理的な面を含めて、ネットリテラシーには極めて問題があります。それなのに今回はクロストークはもちろん、今朝の産経新聞にも一般向けのIT活用記事を載せるなど、勘違いが甚だしいと思います。

 だからこうやって、私なりに指摘してるわけです。昔から出尽くしてる論点で実名匿名論争をやっても、何か収穫があるとも思えないもので……。