Feed

教員養成課程が……

Posted on 10月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 この話題のコメントとも関連する。asahi.comの記事より。

教育実習1年・大学院2年必修を検討 教員養成で文科省
2009年10月14日15時11分
 教員養成をめぐり、文部科学省の政務三役は、大学の学部4年間だけでなく大学院の2年間も必修とし、修士号を免許取得の条件とする「教員養成課程6年制」を導入する方向で検討を始めた。現在は2~4週間の教育実習についても1年間に延ばす考えで、子どもと向き合う経験を増やし、よりていねいに教員を養成する方針だ。

 文科省の政務三役は、10年に1度、現役教員に大学などで講習を受けることを義務づける教員免許更新制を10年度限りで廃止する方針を固めており、教員養成の6年制化はそれに代わる教員の質向上の手だてと位置づけている。

 民主党の総選挙のマニフェストにも盛り込まれており、大学院修了後、最初に取得する一般免許状のほか、8年以上の実務経験を積んでから取得できる専門免許状を設けることも想定している。文科省は、現在の教員免許更新制で講習を受けた教員の受講分について、将来専門免許状を取る際の単位に振り替えられるようにすることも検討する。

 ただ、6年制の実現に向けては、大学院側の受け入れ態勢が整うか、1年間にわたる教育実習の受け入れ先が確保できるかという問題があり、相当の準備期間が必要になるとみられる。(青池学)

 現行の教員養成課程を、教育学部以外の立場から見ると、負担が中途半端に増えたために他学部の学生が教職の単位を取る負担が極端に上がっている(教職+学部の分が学生の負担になる)。それでも「教員になる資格もとれます」と大学案内に書かねばならないために、教職の単位を取ることが可能なように時間割編成をしなければならず、このため、学部本来の授業時間割の編成がえらく大変なことに……。教育学部なら小・中が主な対象だろうけど、いっそ高校まで含めて、学部4年間での資格取得が不可能な程度のカリキュラムをたててくれた方が、学部で変に悪あがきして教職の単位をそろえなくても良くなるので、それぞれの学部教育に集中できるんじゃないかな。

 6年間学費を払っても採用試験の枠は増えず、金が無駄になる可能性が高い、となると、見事に法科大学院の二の舞で、志願する人そのものが減りそうな予感がするが。

【追記】
 毎日新聞にも記事が出た。

教員:養成課程を6年に延長 民主党政権が導入へ

 民主党政権が導入する新たな教員養成制度の概要が分かった。大学院修士課程(2年)の修了を教員免許取得の条件とし、養成課程は計6年に延長。教育現場で実習する総時間を現行の2~4週間から1年程度に増やす。また、10年程度の現場経験を積んだすべての教員が、大学院などで1年程度研修を受け「専門免許状」を取得することを事実上義務化する。早ければ11年にも関連法案を成立させ、新制度に移行する。【加藤隆寛】

 鈴木寛副文部科学相は14日の政策会議後、報道陣に「来年度、教育現場と教員養成現場から意見を聞き、相当精力的に検討する。拙速にはしない。教員に不安を与えないようにしたい」と話した。

 10年ごとに教員に30時間の講習受講を義務付ける教員免許更新制度は、今年度スタートしたばかりだが、新制度移行後は専門免許制度に吸収される。鈴木副文科相は「(受講の実績は)専門免許取得時に単位換算するなどの配慮をする」との方針を示した。

 新制度の核になるのは全国24校の教職大学院。教育学部だけでなく他学部卒業生も受け入れ、実習を中心とした2年間のカリキュラムを組む。

 教育現場での実習は大学1年の段階から長期的に実施できるか検討する。「小1で出会った子が小6になるまで成長を見守るのが理想」(鈴木副文科相)という。

 教職大学院は現職教員再教育の場にもなる。専門免許は「学校経営」「教科指導」「生活・進路指導」の3種を想定し、各コースで高度な実務能力を養う。文科省は47都道府県に教職大学院を最低1校設置したい考えで、指導教員確保や能力向上、カリキュラム見直しなどを急ぐ。来年度実施予定の更新講習は縮小せず、3コースを意識したものへの変更を促す。

 民主党は「教員の質と数の充実」をマニフェストに掲げたが、教職員定数について文科省は、来年度概算要求に5500人の増員を盛り込むことを決めた。前政権下で8月に行った要求と同じ人数。今後、11年度以降の大幅増員と少人数学級の実現を目指し、複数年度にわたる定数改善計画を策定し、採用のあり方も抜本的に見直す。

 ◇教員志望学生や教育委員会から懸念の声
 教員養成期間の2年間の延長には、教員志望の学生や採用する側の教育委員会などから「負担が大きい」「教員希望者が減るのでは」と懸念する声が上がっている。

 早稲田大学の教員志望者でつくるサークルの代表で、教育学部3年の豊田昂希さん(21)は「6年間に延ばして何を学ぶことになるのかも、はっきりしない。現在の学部の教育の質を高めることが先決ではないか」と疑問を示す。同じサークルで1年の柴田直樹さん(20)は「経済的負担が増えることが心配。金持ちだけが先生になれるということになれば問題だ」と指摘する。

 東京都教委も「採用後4年間、一人前の教師に育てるための独自の研修システムがすでにある。今のままで十分」(選考課)と延長に否定的な立場。団塊世代とその直後の世代の教員が今後10年間、毎年2000人以上退職する都教委にとって、教員の確保はただでさえ懸念材料だ。「教育学部を避けたり、教員になることをあきらめたりする学生が増えれば元も子もない」と語った。

 鈴木副文科相は、志望者が減少するとの指摘に対し「今は年10万人強が免許を取得し、実際教員になるのは2万人強。6年制にすればより強固な意志を持った人たちが教員を目指すことになり、実習で受け入れる側の熱意も高まるだろう」と説明している。【井上俊樹】

 ◇日本教職員組合委員長は賛同
 民主党の支持母体の一つでもある日本教職員組合の中村譲・中央執行委員長ら幹部が14日、川端達夫文部科学相ら文科省政務三役を表敬訪問した。

 終了後に会見した中村委員長は「教員の質は、現場で鍛えられることと研修制度、採用や養成のあり方で、総合的に作られていく。免許更新制で作るものではない」と述べ、民主党の改革案に賛同した。

 また「意見を何が何でも聞けという態度は取りたくない。『ワン・オブ・ゼム』の現場の意見として受け止めてほしい」と文科相らに伝えたことを明らかにし、一定の距離感を保っていることを強調。中川正春副文科相は「ベタベタくっついていくのではなく、緊張感を持ちながらやろうと確認できた」と話した。【加藤隆寛】


ここからは旧ブログのコメントです。


by T.Kouya at 2009-10-27 06:11:27
落としどころが気になる

 単純に教職免許専用の,特に教育専門科目が増えるだけなら,特に私学から反対が上がりそうですね。教職課程維持のための教員を追加して雇うなんてそうそうできないし。
 まだまだ現実的な「落としどころ」が見えてないようなので,記事にもあるように,実現には時間がかかりそうですね。

 それより,今の免許更新講習のために総動員させられている教育学部の方々が気の毒です。こんな議論が始まろうとしているのに,来年度の講習,真面目に受講する人がどれだけいるんでしょう? そもそも受講する人がどれだけいるんだか・・・。


by なる at 2009-10-13 08:56:13
Re:教員養成課程が……

私も教免を取りましたが、
無理矢理時間割を作ったり、実習はなるべく夏休みとかに
押し込んだりと、苦労しました。
おかげで2回卒業できるくらいの単位が。

せめて本業の勉学とバッティングしないように
割り振りが出来ればいいのですがね。


by 酔うぞ at 2009-10-19 18:12:19
根本的に方向性を修正出来ない

文科省に代表される行政のやり方が、時代に合っていないのではないか?
と最近強く感じるようになりました。

大ざっぱになりますが、日本は戦後の物不足状態から高度経済成長時代を、供給側の視点で政策もビジネスも進めてきました。
それがプロダクトアウトとして批判されるようになって、需要家視点のマーケットインに転換したわけです。

ビジネスとはしてコンビニの定着となりました。

供給者論理を押し通すと、物事がドンドン高度化して誰にも使えないような商品になってしまいます。
そこで考え方を変えた商品やビジネスが新たに登場するのですが、例えば大型コンピュータからPCへの移行などもその代表です。

教員の質を高めろという話に反対はもちろん反論すら無いと思いますが、文科省が教員資格を6年がかりで与える、という計画をしたのは正にプロダクトアウト的というか、良いモノを作るのが良いのだ、的な発想の帰結でしょう。

わたしに言わせれば、小中高に現在、着々と浸透しつつあるボランティアに部活を任せるとか、教員の助手を務めさせる、といった事の方がよほど効果が高いでしょう。

その一方で、小中高のネットワーク管理者を情報の先生にやらせる、といったどう考えても実際的でないこともしているし、IT化を叫びつつ紙でデータを作って、PCが使える先生に代理入力させるといったことが、まかり通っている状況の方がよほど問題だと思うのです。

先日、車で放送大学を聞いていたら教育学の進歩を振り返る講義がありました。

寺子屋から師範学校を経て、どのように教育学の視点が変わっていったのか、という話でしたがなかなかすごい変化をしているのですね。

同じような、大胆な方向性の変革こそが今、文科省に求められていることだと思うのです。

そういう視点で考えてみると、一番の問題は「教員養成課程を変えて、どういう結果を期待しているのか?」かがさっぱり分からない、事こそが一番の問題でしょう。


by apj at 2009-10-45 18:19:45
Re:教員養成課程が……

なるさん、

>無理矢理時間割を作ったり、実習はなるべく夏休みとかに
>押し込んだりと、苦労しました。

 苦労してもそれが可能だったということは、そういう取り方ができるように大学側がカリキュラムを決めていたということですよね。

 教職の負担(コマ数とか)が増えた場合何が問題かというと、必修を落とすと救済が困難になる、ということなんです。どんな学科でも、必修科目と選択科目がそれぞれの学年に対して決められています。どこの大学でも、必修の単位が足りないと卒業研究に入れなかったりといったハードルがあるのが普通ですから、たとえば、2年前期の必修と3年前期の必修の時間は重ならないように組みます。そうすることで、必修単位を落とした人が後からがんばれば留年せずにすむようにしているのです。こういった編成は、教職が大量に入ってきたら不可能となります。すると、教職のせいで1回必修を落としたら留年確定となるようなカリキュラムにならざる得なくなるわけです。必修だけ重ならないようにしても、もともと開講可能なコマが減ってしまっているため、今度は選択の総数を揃えられないといった、玉突き状態になります。教職の講義が入っているところは、学部の講義を一切入れられないので、余裕が全く無くなるのです。教職をとらない学生も、この余裕のないカリキュラムでいくしか無いんですよね。
 修士課程でとらなければならない講義の数はそれほどでもないので、いっそ、教員になる人は修士課程前期あたりで関連単位を集中して全部とる、といったシステムになれば、確実に学部に余裕ができると思います。


by miya-h at 2009-10-51 07:59:51
そういえば

>修士課程でとらなければならない講義の数はそれほどでもないので、いっそ、教員になる人は修士課程前期あたりで関連単位を集中して全部とる、といったシステムになれば、確実に学部に余裕ができると思います。

 あまり将来のことを考えずに進学したぼんくら学生だったので、大学院在学中にふと思いついて教育実習に行きました。その経験から云うと、修士の一年生あたりは比較的余裕のある時期ですので、良い案ではないかと思います。
 私の周囲において、新規採用教員は修士課程を修了した者(専修免許状取得者)が次第に増えている傾向が感じられ、義務化されても、高等学校の教員に関してはあまり志願者に変化がない様な印象があります。義務教育は様子が違うかもしれませんが……
 私が気になるのは、教育実習を一年にするという部分です。
 現在の新規採用教員に対する研修は、質量とも膨大で、それがきちんと実行できればこれは必要ないと思います。ことによると、不適格者の排除が目的かもしれませんが、私の勤務する地域でそういう事態が深刻化するのは、在職5~6年目くらいが多いので、少なくとも延長された教育実習でそれが解決される可能性に対しては悲観的です。
 まあ、他に目的がある可能性は否定できませんが、正直ちょっとメリットが思い浮かびません。