ビタミンK問題、読売新聞に詳しい解説

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[解説]「ビタミンK与えず乳児死亡」提訴

助産師の一部が代替医療、命への責任再認識を

 昨年10月、山口市内で生後2か月の女児がビタミンK欠乏症となり死亡した。女児の母親(33)は、出産を担当した同市内の助産師(43)が標準予防法のビタミンK2シロップを女児に与えなかったことが死亡原因だとして、助産師を相手取った損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こした。

 要約

 ・来月始まる裁判は、助産師の行った代替医療が注目点

 ・死亡乳児への療法は、効果が疑問視されている

 ・助産師は、医療従事者の基本に立ち返る必要がある

 第1回口頭弁論は8月4日に行われるが、この訴訟が注目されるのは、助産師がビタミンK欠乏症予防として代替療法「ホメオパシー」の錠剤を女児に与え、ビタミンK2を与えなかったとされる点だ。代替医療は現代医学には限界があるとして患者の自然治癒力に働きかける治療法の総称で、ホメオパシーはその代表的存在。約200年前に欧州で登場、治療者によっては軽い頭痛から心臓病、がんなどまで対応する。

 一方、ビタミンK欠乏症は、新生児の4000人に1人の割合で発症する。生後1か月頃に頭蓋
ずがい
内出血を起こして死亡する症例が多いが、ビタミンK2を生後1か月までに3回与える予防法は確立している。厚生省(当時)も1989年、投与を促す指針を策定し、10万人当たりの発症率は平均18人(78~80年)から2人(90年)まで低下した。

 しかし、投与は義務ではないため漏れもある。この助産師もビタミンK2を投与したと母子手帳に記していた。日本助産師会の岡本喜代子専務理事は「ビタミンK2投与は当然行うべき基本的な処置。助産師はホメオパシーなどの伝統医学や食事療法などを妊婦のケアに取り入れる人が多いが、極端に偏った考えの助産師がいたことを重く受け止めている」と話す。

 特にホメオパシーについては、同会支部主催で講演会が開催されたこともある。今回の助産師もホメオパシー普及団体の認定資格者の一人。予防接種などを否定する傾向の強い普及団体に関係している助産師もいて、同会の中でも懸念する声があがっていた。

 ホメオパシーで使う錠剤は、様々な成分をその分子が検出できないほど水で希釈して砂糖玉にしみ込ませたもの。それ自体有害ではないが、現代医療を受けていれば助かったはずの命が救えない恐れもある。

 今年2月には、英国議会も科学的根拠に乏しいことを理由に保険適用の中止を求める報告書を出した。唐木英明・東大名誉教授(リスク管理学)は「代替医療は『自然』『安全』といった言葉で語られるが、治療効果の検証が不十分で、医療従事者が提供すべき医療ではない」と指摘する。

 助産師主体で行う出産は全出産数の約1%に過ぎないが、現代医療が濃厚に関与する出産とは異なる選択肢として、一定の支持を得てきた。助産師など医療従事者は存在意義を失わないためにも、その姿勢が患者の命を左右することを肝に銘じるべきだ。(山口総局 橋谷信吾 科学部 片山圭子)

(2010年7月31日 読売新聞)

 講義資料に使うかもしれないのでメモ。
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